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荒涼
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 チョロチョロと流れる、浅く細い流れから飛び出したのは、いかにも真夏の根羽川という小さなアマゴだった

 長野県最南端に位置する小さな村が管轄する小さな漁協のそのまた支流では、ゴールデンウィーク過ぎにはキープサイズはほとんど姿を消してしまう
 そして梅雨明け頃に再び放たれた稚魚達が、ようやくフライをくわえることができる大きさにまで成長するのがこの時期なのだ

 それでも、この日はちょっとだけ”大物”の姿も期待していた
 数日前まで降り続いた雨、そして平日釣行…
 『もしかしたら』という思いを抱いてやってきたのだが、目にしたのは思いも寄らぬ光景だった

 例年になく伸び放題になっていた川岸の雑草が数日前の増水に押し流され、至る所で横倒しになり、そして蒸れた匂いを放っていた
 上流部ではその堆積物をさらったのか、泥にまみれた草木が土手に山積みにされていた

 そんな景色の中を、すっかり寂しい水量になってしまった細い筋が流れていた 
 
 釣り上がれば釣り上がるほど荒涼としていく川の様子に疲れてしまい、ポイントを移動するべく川沿いの細い道路を歩いていたときのことだった
 
荒涼_c0041105_2231349.jpg 山沿いに駐車していた他県ナンバーのワンボックスカーの横に、地元ナンバーの4駆が道をふさぐように止められていた
 そしてその2台の車の陰から、男性の大きな声が聞こえてきた

 『どうせタケノコなんてほったらかしになってるくせに、採って何が悪いんだ!』
 
 どうやら山菜採りに来た男性が、それを咎めた地元の人に食ってかかっているようだった

 渓流釣りのフィールドではよく耳にするトラブル…ただ、他県ナンバーの男性が右手に持っている大きなカマが、小さなトラブルだったはずの出来事を激しく荒んだモノに見せていた

 『こんにちは』
 僕はそう言いながら、2人の間をわざと大げさに通りにくそうなそぶりを見せて通り過ぎ、自分の車へと向かった
 第三者の存在を意識した2人は、多少穏やかな口調になったものの、まだ何事か言い続けているようだった

 移動した先の支流では路肩の大規模な補修が行なわれていた
 
 以前は澄んだ渕の底に潜む良型のアマゴがはっきりと見えた渕も、堆積した土砂に埋まっていた
 ときおり見える小さなアマゴも、最後まで毛針をくわえることはなかった
 
 それでも、さっきの川のように荒んでは見えなかった
 
 何よりも、ここには刃物を持って大声を出す人間はいなかったから
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*today's tackle  
rod:Cremona 7'11 #3 (coatac), RIGHTSTAFF 7'10 #2 (CFF)
reel:MARQUIS 2/3 (HARDY) , CT 2/3 (Redington)

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by taros_magazine | 2006-08-25 22:07 | fly fishing diary


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