結局、雨は現地に着いても止むことはなかった
駐車場から眺める”湧水の川”では、茶色く濁った水が勢いよく小さな堰堤を乗り越えていた
先月、目の前で群泳する大きな鱒とのファイトに酔わせ、時が止まったような幻想的な風景の中でのイブニングを満喫させてくれた忍野は、今度は時おり激しく降りつける雷雨と、サイトの釣りを拒絶するかのような濁流で迎えてくれた
実はこの時点で、今日の”2つの目的”をすでに失っていた
水中を流れていく小さなフライを目で追い、そしてまるでドライフライに出た魚に合わせるように、ニンフを鱒の口に掛けるサイトフィッシング…
それは、フライを始めた頃、早朝の寒狭川を釣り歩きながら渕尻に定位するイワナを見つけては、鼻先1メートルに落としたフライに向かってくる姿に一喜一憂していた、あの独特の緊張感を思い起こさせる衝撃的な体験だった
しかし、この日は水中で流下物を待っている魚の姿を見ることは絶望的な状況だった
そしてもう一つ、この日は大きな目的があった
それは、前回の釣行時、イブニングの釣りを終えて駐車場まで戻るときに起きた”アクシデント”だった
ロッドを車に積み込もうとしたとき、ティップセクションが無くなっていることに気づいた
すでに暗闇に包まれた駐車場、それに川沿いの小径まで、その日同行した仲間たちまで一緒になって探してくれたが、結局見つからなかった
有名ブランドのものに比べれば、決して高価なロッドではなかったけれど、初めての忍野で素晴らしい1日を過ごした”相棒”…
すっかりあきらめていたのだが、自分の心中を察してくれたライズさんが事情をリバーズエッジの渡辺さんに話してくれ、その渡辺さんが数日後にまったく無キズの状態で見つけてくれたのだった
そのロッドを受け取るべく、渡辺さんのお店に伺おう、というのがこの日の目的だったのだが…リバーズエッジはこの木曜日は定休だったのだ…
テニスコート裏で慣れない#5ロッドに苦戦し、途方に暮れていた時、大きな犬を連れた見覚えのある男性の姿が近づいてきた
『おはようございます!』
この豪雨の中、渡辺さんはいつものように忍野の流れを見守りにきていたのだ
早速、ロッドの件を話すと、『お昼なら店に帰っているので、開けておきます』と快く応えてくれた
さらにこの日は表層に浮いているヤマメがヤル気満々であることも教えてくれた
その言葉どおり、川の様子を見ると、ところどころ濁りにない区間があり、その前後ではヤマメが盛んに水面を流れるモノに反応していた
何年も前に巻いたビートルに結び替えると、すぐにグッドサイズのヤマメをキャッチすることができた
その後、上流へ移動しながらも同じようにヤマメ、レインボーを何匹も釣ることが出来た
ランチタイムを挟んだ後も、雨は相変わらず降り続き、ときおり雷鳴までが轟いた
最後までクリアな流れの中で、フライをくわえ反転する鱒を見ることはできなかった
それでも、この日は前月と同じように、とても満ち足りた気分で帰路に着くことができた
なぜなら、厳しいと思われたコンディションの中でも、条件さえ整えばファイトを楽しませてくれる忍野の鱒たちの記憶と、多くの人たちの暖かい手助けで自分の元に返ってきた”相棒”…
この”2つの結果”を携えて帰ることができたのだから…
*other side …
『
sammyの大好き!管理釣り場』(by Mr,sammy)
*today's tackle
rod:"fujimaki"Special 8'06 #5 (Factory Haru)
reel:Halcyone Trout (KIRAKU)
taro's magazine mainsite …