この地方では2月初旬から9月末までが渓流釣りシーズンとなる
休日の大部分を川で過ごすことになるこの8ヶ月間…フライフィッシャーにとってはあっという間の”短い”シーズンなのに、例年1ヶ月ほど渓から遠ざかってしまう時期がある
今年はこの1ヶ月ほどがそうだった
古傷の腰痛や持病の腱鞘炎の悪化、降って湧いた急な仕事、家族・親族らとの年中行事…
いろんな原因が重なり合って週末を街で過ごしていたのだが、本当の理由は…こんなに長い間の”禁欲生活”に耐えることができたのは、 その”欲=釣欲”自体が薄れてしまっていたからだ
先月初め、大好きな下伊那の里で感じた疎外感、その後に出かけた地元の渓で派手に魚を傷つけてしまった後味の悪さ…
それに不順な天候、伸び放題の雑草、ビッシリと張り巡らされているであろう蜘蛛の巣のことを考えると、フライフィッシングの大きな魅力である”心地よさ”を見いだすことができなくなってしまっていた
たまたま仕事が休みとなった木曜日。特に吟味するわけでもなく、適当にタックルを車に放り込んで”とりあえず”川に出かけてみた
現地に着いてみると、このところの雨のせいか普段は浅く細い流れの枝沢も、それなりの渓流らしい流れになっていた
それを見たとき、一気に妄想が膨れあがった
『これは大爆釣するんじゃないか!』と、『もしかしたらものすごい大物が出るんじゃないか!』と…
いつも良形が飛び出す小さなプールに、葦の影から慎重にフライを落とすと、小さな魚がまるで尺イワナのように悠然と浮きあがり、その小さな口に不釣り合いな大きさのフライを吸い込んだ
10センチにも満たないアマゴだった
その後も見える魚影は#18のフックでも掛からないような稚魚ばかりだった
移動した先では、最初のうちこそ小さなイワナやアマゴが姿を見せてくれたが、上流へ向かうにつれて反応が鈍くなり、最後は川から上がり道路を歩いて上流の脱渓予定地に置いてあった車まで戻った
もしかしたら、あのとき変な期待を持たなければ、小さなアマゴとイワナで充分満足の1日だったかもしれない
そうでなくても、もう少し涼しい日だったら、もう少しキャストがしやすい川だったら、もう少し水量が少なくて歩きやすかったら、もう少し…
今、こうして2日前の釣りを振り返ってみても、”楽しかった!”と思うことができない
例年、釣行記録にポッカリ空くスケジュール
でも、こんなふうに心の中までポッカリと空いてしまったことはなかった
その隙間を埋めるために何が必要なのか?
その答えも、やっぱり渓にあるのだろうか?
*today's tackle
rod:Euflex XF 8'02 #2 (TIEMCO)
reel:FatesTM-1 (TENRYU)
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