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Team Mate (MotooGP 2017 Round-5 FRANCE)


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 今日だけは、どうしても勝ちたかった

 かつて後ろ足で砂をかけて出て行った自分を笑顔で再び迎え入れてくれたヤマハ…
 その記念すべき節目の勝利を、自らの走りでもたらすために

 本当に久しぶりに、ポイントリーダーとして次戦の母国グランプリに乗りこむために

 そして何より、最高のチームメイトだった彼に勝利を捧げるために…

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 最悪な時、いつも彼の存在が救いになった

 2015年のバレンシア…悪夢のようなシーズンを終えた直後
 彼は何も言わずに手を差し伸べてきた

 2人には、それで十分だった

 あの2006年の同じバレンシアでもそうだったように
 手を握り合い視線を交わすだけで、すべてを理解し合うことができた

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 タイトルどころかポディウムさえもままならなかったドゥカティでの2年間

 孤独なレースの後に戻る、パルクフェルメから遠く離れたピットボックス…
 そこにある数少ない救い…それもまた彼の存在だった

 かつて壁の向こうにいた”もう一人のチームメイト”が、声高に”エース”の振る舞いとチーム内での格差を批判した時には、彼は「自分はロッシのチームメイトとして、一度たりともイヤな思いをしたことなどない」というコメントを、遠く離れた地からわざわざ発表した

 その彼に、レーサーとしてできる唯一の、そして最高の贈り物を届けるために、シーズンベストの走りを見せたバレンティーノ・ロッシの願いは、ファイナルラップの残り半周で潰えてしまった

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 もしかしたらmoto3のオイルの影響があったのかもしれない
 レコードペースで逃げる新しいチームメイトを追い詰めるにはリスクが大きすぎたのかもしれない

 それでも、今日だけは勝ちに行かなければならなかった…



 失意のレースを終えた後に届いた悲報に対し、ロッシがソーシャルメディアにアップした画像は、ホンダやドゥカティ時代の2ショットではなかった

 それは、彼が苦戦しながらも最後まで諦めないレースを戦っていたSBKのマシンで、豪快なウィリーを見せているものだった

 なぐさめてばかりじゃなかった

 ニッキー・ヘイデンはロッシに、諦めずに力強く前に進むことも伝えて、そして旅立っていった

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thank you #69 , we'll never forget you











# by taros_magazine | 2017-05-24 21:37 | motorcycle diary
No Side Spirit (MotooGP 2015 Round-18 VALENCIANA GP)
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 2015 ラグビー・ワールドカップ

 お互いが決勝トーナメント進出に向け、負けられない状況で戦うことになった日本とサモア

 試合はサモアが一時退場者を2名出すほど激しい死闘となり、最後はサモアの反則で得たペナルティをうまく活かした日本が勝利した

 ラグビーの世界では”格上”のはずだったそのサモア代表の主将 トゥシ・ピシは、試合直後のインタビューできっぱりと言い切った
 『レフェリーの判定は公平だった。自分たちの"規律"がとれていなかった』

 そして決勝トーナメント進出どころか、過去の同国のラグビーワールドカップ史上最悪のリザルトが現実味を帯びることとなったその試合後、彼らは日本のエース 五郎丸歩のもとを訪れた

 彼らの目的…それは、終わったばかりの、サモアの選手にとってみれば屈辱的であったはずの試合の(サモアのメンバーで話し合って決めた)MVPを称える、小さな手作りのトロフィー渡すことだった


No Side Spirit (MotooGP 2015 Round-18 VALENCIANA GP)_c0041105_12115214.jpg やはり、バレンシアでは何も解決しなかった

 タイトル争いの決着も、グランプリを覆っているグレーな雲を晴らすことはなかった
 それどころか、事態は悪化の一途をたどっている

 決勝レースの上位争いをビデオでしか見ることのできなかった敗者は、チームメイトのタイトルに『八百長』という言葉を贈った

 30ラップのレース中のほとんどをトップからコンマ5秒以内で走り続けたアグレッシブが売りの前王者は、一度もアタックすることなくそのまま2位でフィニッシュした

 一旦は涙ながらに"スペイン連合"の恩恵を口にした王者は、一夜明けるとチームメイトを『速くもないし、もう勝てない年寄り』と罵った

 地元スペイン勢の表彰台独占、そしてスペイン人の逆転タイトル獲得を目の当たりにしたファンがポディウムに送ったのは大きな拍手と口笛、そしてそれを上回るかと思えるほどの盛大なブーイングだった


 ライダー、チーム、ファン、メディア…皆が出口の見えない暗闇の迷路の中で、自分の向かっている方向だけに光が見えてくると思ってバラバラに突き進んでいる

 もはや誰かが正しかったということが証明されたり、誰かが間違っていたと認めるような解決法はあり得ないだろう


No Side Spirit (MotooGP 2015 Round-18 VALENCIANA GP)_c0041105_12123523.jpg だからこそ、皆が過ちを認めなければならない

 シーズンがクライマックスを迎える中で、コース外で他のライダーに対する疑惑を公言し、さらにコース上で怒りを爆発させたことを

 タイトルが懸かっているライダーを相手に、序盤から1ラップに10回もオーバーテイクの応酬を挑むことを

 ドライなら、転倒がなければ、などと弱点を認めようせず、勝った時の結果だけでタイトルにふさわしいと吹聴することを

 相手が引かなければ共倒れするしかないようなオーバーテイクが野放しになっている現状を

 そして、勝者を祝福せず感情のままにブーイングを浴びせたことを…


 グランプリがスポーツである限り、王者は1人しかその存在を許されない

 しかし、残りの全てのライダーには、良き敗者として皆から敬意を集められる機会が与えられる

 そして今シーズンに限っては、良き敗者はチャンピオン以上の存在になれるはずだ



 あの日、小さなトロフィーを受け取った五郎丸選手はツイッターでこう述べた

 『敗者となった彼らから貰った贈り物は試合のMVPカップより価値があり我々もこんなチームになりたいと思えた。』

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# by taros_magazine | 2015-11-11 12:14 | motorcycle diary
Catastrophe , part4 (MotooGP 2015 Round-17 MALAYSIA GP)
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 『次戦での最後尾グリッドからのスタート』

 これがタイトル争いをかろうじて維持させるためだけに、運営側がひねり出した苦肉のペナルティであることは誰の目にも明らかであり、レースディレクションが認めたようにロッシの"蹴り"がなかったとしても、ロレンソの言うとおり"軽すぎる"処分だろう

 しかし、そのロレンソの行為もまた、この件の後味の悪さを際立たせた

 2010年、もてぎ…悲願の初タイトル目前のレースで、タイトル争いから脱落したロッシが仕掛けてきた接触上等のバトルを終えた後、そのライディングを激しく非難した彼は、このマレーシアで勃発したロッシとマルケスの論争については無関係の姿勢を貫こうとした

 確かにあのもてぎで、ロレンソはロッシをコース脇に追い詰めたりしなかったし、走行中にあからさまな非難のアクションをすることもなかった

 しかしこの日、ロレンソは何が起きたのかを正確に知る前の段階で、勝者を称える儀式を無視してポディウムから去って行った

Catastrophe , part4 (MotooGP 2015 Round-17 MALAYSIA GP)_c0041105_085599.jpg その行為は、レース中に彼のサインボードに示された『MARQUEZ OUT』の文字と同様、すり減ったロッシの神経を不必要に逆なでし、この問題をさらに複雑にするだけだろう

 事ここに至っては、どんな展開になろうともチャンピオン決定戦であるはずの最終戦が素晴らしいレースになるとは思えない

 タイトルに無関係のライダー…例えばアンドレア・イアンノーネやダニロ・ペトルッチがロレンソのインに10回や20回ネジ込んだところで、お咎めはないのだ

 ポイント争いをしている相手が真横に並んできたら、時速60キロでコース脇まで押し出してしまえばいいのだ。それでもポイントを剥奪されることはないのだから

 そして遠くない将来、F1のように『抜かれる方が進路変更できるのは1回だけ』などというレギュレーションが明文化される日がやってくるのかもしれない…


 21世紀に入ってからのグランプリを、圧倒的な強さと絶大な人気で支えてきた巨星、バレンティーノ・ロッシ

 願わくば、どんな結果になろうとも最終戦バレンシアのチェッカーフラッグの後、自分からホルヘ・ロレンソにその手を差し伸べてほしい

 輝かしい時代と伝説が、彼自身の行為で汚されたまま終止符を打たれることのないように…

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# by taros_magazine | 2015-10-29 20:55 | motorcycle diary
Catastrophe , part3 (MotooGP 2015 Round-17 MALAYSIA GP)

 タイプの似た"ファイター"同志…
 そう言われてきたロッシとマルケスの2人

 しかし、実はまったく違うライダー同志なのだということに、ロッシは気づいていた

 彼らのバトルの見どころであるオーバーテイクのシーンについても、マルケスの武器がハードブレーキングからの巧みなターン・インであるのに対し、ロッシはマシンを切り返す瞬間のラインコントロールの絶妙さを武器にしてきた
 
Catastrophe , part3 (MotooGP 2015 Round-17 MALAYSIA GP)_c0041105_21433078.jpg マシンの限界を超えるようなライディングも、110%の速さを瞬間的に何度も見せてぶっちぎってきたマルケスに対し、ロッシは110%の爆発力を必要な時には必ず出しきって勝ってきた

 そして何より、ロッシは”古き良きグランプリ”を知る最後のライダーだろう

 彼がグランプリで最初に味わったのは、老獪かつ抜群のテクニックを持つ125ccのライダーたちからの”洗礼”だった

 ただ速く走るだけではない、時に冷静に、時に熱く…マシンではなく人間同士が繰り広げるレースから、彼はグランプリでの戦い方を学んできた

 250ccには自分とはまったくタイプの違う”天才”がいた
 MotoGPでは目の前でライバルが、親友が旅立ってしまう瞬間を目にした

 このマレーシアで誰よりも多くグランプリを経験したライダーとなった彼だからこそ、すべてを背負って戦っているという自負があるからこそ、タイトルに対して必要以上に気持ちを昂ぶらせてしまうのかもしれない

Catastrophe , part3 (MotooGP 2015 Round-17 MALAYSIA GP)_c0041105_21434968.jpg 片やマルケスは文字通りの新時代のライダーだろう

 彼がデビューした当時、既に125ccクラスには年齢制限が設けられ、若いライダー達による派手なぶつかり合いがそこかしこで見られるようになっていた

 そんな中で結果を出し、生き残ったライダー達は、パワーユニットがワンメイクのマシンで争われるMoto2でさらに過激な争いを繰り広げることになる
 
 転倒か優勝かという激しい走りを見せたマルケスは、そこでもタイトルを獲得するとルーキールールをも撤廃させ、最強のワークスマシンを手に入れた
 そして、そのライディングスタイルを不安視する声をよそに、彼は見事にMotoGPマシンをモノにし、瞬く間に最高峰を制した

 持てる全てを駆使して、誰よりも速く走ること
 誰であろうと、何と思われようと、とにかく前にいるライダーを抜き去ること…

 それこそが、マルク・マルケスというライダーの哲学であり、現在のグランプリシステムが育んだ正常進化型のチャンピオンなのだ

Catastrophe , part3 (MotooGP 2015 Round-17 MALAYSIA GP)_c0041105_23364880.jpg 負け方を知らないマルケス

 負けることの悔しさを誰よりも知ってるロッシ

 2人のライダーは、1枚のコインの裏表のように隣り合わせにいながらも常に反対側を向いていた

















# by taros_magazine | 2015-10-28 23:01 | motorcycle diary
Catastrophe , part2 (MotooGP 2015 Round-17 MALAYSIA GP)
Catastrophe , part2 (MotooGP 2015 Round-17 MALAYSIA GP)_c0041105_13322893.jpg 
レースは悪い意味でロッシの予想通りのものになった

 序盤からハイペースで走るロレンソは、あっという間にロッシとマルケスを抜き去り、トップを快走するペドロサを追いかけて行った

 そしてロッシの目の前にはマルケスがいた

 マルケスは、一瞬のミスを突かれオーバーテイクしていったロレンソを追いかけることを早々にあきらめたかのように、前に出ようとするロッシとの肉弾戦を開始した

 1ラップで10回近くも順位を入れ替える異常なオーバーテイク合戦…業を煮やしたロッシがマルケスを何度もにらみ付け、左手でアクションを起こしても、マルケスはインからアウトからロッシを攻撃し続けた。前を行く2台から1秒も遅いタイムで…

 それは明らかにレースにおける”バトル”ではなかった

Catastrophe , part2 (MotooGP 2015 Round-17 MALAYSIA GP)_c0041105_13324037.jpg 89年に鈴鹿でシュワンツとレイニーが演じた究極のバトルが今だに伝説として語り継がれているのは、あのコース幅の狭い鈴鹿で、1ラップに5回、6回と順位を入れ替えながらも、3位以下を毎ラップ1秒近く引き離していくという離れ業を見せたからだ

 そしてシュワンツはシケインでレイニーの鼻先をカットして行った後には、ストレートで軽く詫びるサインを見せていた

 レイニーはバックストレートでシュワンツのブレーキレバーに手を伸ばしたりもした。ただ、それは明らかにシャレの範囲とわかるものだった

 アメリカ時代から自他共に認める犬猿の仲だった二人は、このバトルを境にお互いに対する絶大な信頼と敬意を持つようになった

 もちろん異なるメーカーのエース同士、パドックで談笑するようなシーンこそ見せなかったが、その後何度となく繰り返された2人のバトルは、常に超接近戦ではあっても最後の一線を超えるようなことは決してしなかった

 しかし、ロッシは遂に切れてしまった

Catastrophe , part2 (MotooGP 2015 Round-17 MALAYSIA GP)_c0041105_13373417.jpg 勝利に向けたバトルではもつれればもつれるほど強さを発揮する彼が、ことチャンピオンシップがもつれた時には意外なほどにナーバスになってしまうのだ…あの2006年のバレンシアのように…

 グランプリのレースとは程遠いスピードとラインで、彼は明らかに意図的にマルケスをコースの淵に押し出した

 そのままストップするか、強引にロッシを押しのけて前に行くかしかない状況に追いやられたマルケスは、当然のように後者を選択した

 意を決してロッシのマシンに向けてリーンを再開したマルケスの体とロッシの左足が重なり合った直後、レジェンド王者の完全復活で大いに盛り上がった2015シーズンは事実上幕を下ろした

 それは、高く上がったシャボン玉がはじけて消えるように、あっけないものだった

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# by taros_magazine | 2015-10-28 22:29 | motorcycle diary