"Rapsodia" (MotoGP 2011 Round-8 Italy)

c0041105_22333847.jpg 勝ちたい気持ちを優先させれば”無謀”
 確実にリザルトを取りにいけば”平凡”

 この日、マルコ・シモンチェリの気持ちは揺れ動いていた

 この、元来心優しい気さくなイタリアンに対する風当たりは、近年のグランプリでは類をみないほど痛烈なものだった

 ここまでの2戦でダニ・ペドロサ、ホルヘ・ロレンゾというトップスター2人を葬った”撃墜王”も、このムジェロでは大きな歓声で迎えられた

 そのファン達に見せるべき”自分の姿”はどっちなのか?

 5位でチェッカーを受けたシモンチェリの笑顔…喜びよりも安堵を感じさせるその笑顔は、彼が決して根っからの”危険なライダー”ではないことを物語っていた

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 サーキットを埋め尽くした赤と黄色のコラボレーション…

c0041105_2234253.jpg しかしバレンティーノ・ロッシと彼の赤いマシンは、この日もかつて彼が駆ったマシン達の後方で走り続けた

 アッセンで見せた一瞬の輝きさえも見せることができず、まるで足かせを着けているかのように不自由なライディングに終始しながらも、その意地だけでドゥカティ勢の最上位を走り続けるロッシ…

 決してファンを満足させられたわけではない
 復活の手掛かりを見出したわけでもない

 それでも、彼がチェッカーを受けた時の拍手は、この日一番の大きさだった

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c0041105_22355489.jpg いつも”二番手”だった

 ロレンゾと熾烈なバトルを繰り広げていた250ccの時も
 悲願のワークスチーム入りを果たした去年も…

 それどころか、ケーシー・ストーナーがチームに加入してからは、第3ライダーのポジョションを甘受せざるを得なかった

 そんなアンドレア・ドヴィツィオーゾが見せた魂のオーバーテイク…

 絶対的なエースの座を不動のものにしかけていたストーナーに後塵を浴びせた彼は、この日確かに何かを掴んだ

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 今シーズン急成長を遂げたニュースターも、9度の王座を獲得した生ける伝説も、そして最強のワークスチームのホープも、この地元で勝利することはできなかった

 それは、ともすれば辛辣な言葉が飛び交うことも予想されたリザルトであったかもしれない

 でも、この日集まった何万ものイタリアン達は、その結果以上に大切な何かを、このムジェロで確認したかのように大きな歓声で彼らのヒーローを称えた

 とびきり熱く、そして美しいレーシングDNAを持ったイタリアン達

 この日の本当の勝者は、こうしてレースを楽しむことのできる彼らだったのかもしれない
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# by taros_magazine | 2011-07-24 22:39 | motorcycle diary
蜘蛛の糸 (MotoGP 2011 Round-7 Dutch TT)
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 もし、マルコ・シモンチェリがホルヘ・ロレンゾを道連れにしていなければ、リザルトは違うものになっていたかもしれない

 もし、"Dutch Weather"が路面を冷やしていなければ、GP11.1もまた”他人が作ったバイク”と同様に言うことをきいてくれなかったかもしれない

 しかし、そんな”タラレバ”もこの日のバレンティーンノ・ロッシにはどうでもいいことだった…

 
 かねてから噂されていた12年モデルとのハイブリッド・マシンを持ち込むとしたら、このアッセンしか考えられなかった

c0041105_1404419.jpg それは、これまで7勝を挙げている得意のコースだから、という理由ではない

 それは、このコースでこれまで何度も味わった逆境を、そしてそれを跳ね返してきた自分を今一度取り戻すために…

 フリー走行で手足を骨折しながらも強行出場し8ポイントをかっさらっていった2006年
 オープニングラップで転倒し、ハンドルバーを曲げシフトペダルを失いながらも鬼神の走りを見せた2008年
 
 今のロッシが復活を掛けて臨むにこれほどふさわしい舞台は他にないからだ 

 だから、目の前でシモンチェリとロレンゾが消えても関係なかった
 またもアンドレア・ドヴィツィオーゾに表彰台を阻まれても冷静でいられた

 何より大事なのは、着順やライバルのポイントよりも、彼の中にまだ”勝ちたい”という欲望と”勝てる”という自信が残っているかどうかを確かめることだから

c0041105_140594.jpg 果たして、ロッシはそれを確認することができたのか? 

 ただ言えることは、この日のロッシの走りはとても美しく、そして力強いものだった
 それは少なくとも希望を失った者の走りではなかった、ということだ

 もしかしたら、ロッシが見出したその”希望”は、まるで蜘蛛の糸のように細いものなのかもしれない
 
 しかし、それでも彼はその糸を登っていかなければならない
 赤いマシンに跨ることを選んだのは、ほかならぬ彼自身なのだ

 ロッシが必死でよじ登るその細い糸には、数え切れないほどのファンもまたぶら下がっている

 ロッシの希望の糸はそのプレッシャーに耐えられるのか?
 イタリアのファン達は今ロッシに何を求めているのか?

 ”審判の日”がいよいよ近づいてきた
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# by taros_magazine | 2011-07-03 13:56 | motorcycle diary
" Bashing " (MotoGP 2011 Round-6 Great Britain)
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 今まさに、彼はこれまで築き上げてきた幾多の栄光を失おうとしている

 その圧倒的なヒューマン・パフォーマンスと愛すべきキャラクターで世界を虜にしてきた”グランプリの太陽”は、かすかな西日を放ちながら地平線の彼方へ落ちていこうとしている…

 走るたびにケーシー・ストーナーに3秒以上離され、決勝以外のすべてのセッションでストックのドゥカティに乗るプライベーター、カレル・アブラハムに遅れをとった

 12台しか完走しなかったその決勝レースで、彼はストーナーの遥か後方、1分遅れで青山博一、トニ・エリアスと死闘を繰り広げた

c0041105_10584644.jpg  かつてのチーム・メイトや自分の後釜のライダー、それに飛ぶ鳥を落とす勢いだった母国の後輩らの自滅に助けられ、いくつかポジションこそ上げたものの、表彰台を目指して奮闘する ”チーム・メイト” ニッキー・ヘイデンの30秒後方で ”ライバル” アブラハムをかわすのが精一杯だった…

 今、バレンティーノ・ロッシの身に起こっていることが、いったいどれほどの事なのかを知る術を誰も持たない

 これまで、人々はロッシ本人の発信する情報により、最初は右脚、そして肩の負傷へとその原因を求め、やがて未成熟なマシンへとすり替えてきた

 でも、何かが決定的に違っていた

 RC211V相手に手も足も出なかったM1でいきなり勝ってみせたロッシと

 初めてのブリジストンを、みるみる手なずけてみせたロッシと…

c0041105_119751.jpg それでも、彼が跨るマシンが赤くなければ、イタリアのファン達は今のような成績でも、あの2006年のムジェロのように"FORZA!"と言ってくれたかもしれない

 しかし、彼らは今まで何度も見てきたのだ 
 ストーナーがポディウムの一番高いところでシャンパンを開けるところを
 
 彼らは4年前の歓喜をいまだ鮮明に記憶しているのだ 
 イタリアンメイドのマシンが世界の頂点に立ったあの日のことを…

 去年8月…あの衝撃の記者会見以降、ティフォージたちはイタリア人が乗るイタリア製マシンが快走することを信じ、待ち続けてきた

 暗闇のカタール、雨のヘレスではただ見守った
 4位争いのエストリル、ついに表彰台を獲得したル・マンで、その期待はいよいよ現実味を帯びてきたハズだった

c0041105_1134370.jpg しかし得意のカタルニアで2大ワークスの後ろで淡々とレースを終えると、ついに火の手が上がった

 熱しやすく冷めやすいラテンの血は、いままでアンタッチャブルだった存在に公然と疑問符を突きつけた

 そんな状況の中、沸騰寸前の母国の不満に対し、このシルバーストーンで最悪の回答を示してしまったバレンティーノ・ロッシ…

 まるでタガが外れてしまったかのような激しいバッシングが吹き荒れる今、はたしてロッシは今まで何度も驚異的なライディングを見せたアッセンで、そしてドゥカティの地元中の地元ムジェロで、どんな言葉をもってファンに迎えられるのだろう?

 そして何より、ロッシ自身の胸中にあるものはいったい何なのか?

 わずかな希望の光に照らされた12年型のマシンを駆る自らの姿か、それとも赤いレザースーツではなく、赤い耐火繊維のレーシングスーツを着る姿なのか…

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# by taros_magazine | 2011-06-17 10:58 | motorcycle diary
偽悪者 (MotoGP 2011 Round-5 Catalunya)
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 サッカーのディエゴ・マラドーナなら、あのスペインでのワールドカップのイングランド戦での”5人抜き”がある
 野球なら、”ミスター”長嶋茂雄が天覧試合という一世一代の見せ場で放ったサヨナラホームランだろう

 2輪のレースでも、傑出した速さを持つライダーなら決して忘れられることのないシーンというものがある

 それはホッケンハイムでのケビン・シュワンツのミラクルブレーキングやラグナセカでのバレンティーノ・ロッシのダート走行のように勝負を決めたシーンとは限らない
 アンダーストープで宙に舞ったウェイン・レイニーの姿、陽の落ちたホームストレートでウォールに立てかけられたTECH21…

 それらの記憶は、たとえリザルトシートには記載されなくとも、そのライダーの伝説をいっそう美しいものに飾り立てていくのである…
 
 この日、国際映像の主役は”ブービー”達のバトルだった

c0041105_15341441.jpg まるで4輪のF1のようにスタート直後から秩序だってチェッカーめざして走り続けるトップ6…
 レース終盤には、勝利めざして快走するストーナーにカメラが向けられることはほとんどなかった 

 ケーシー・ストーナーという卓越した速さを持つライダーが勝利することが”つまらない”と言われるようになって久しい

 それはホンダ時代のロッシのように『勝つことが当たり前』すぎてリザルトやレース展開に興味が持てない、というようなものではない

 タイトルを経験し、今シーズン無敵の強さを誇りながらも、これまで伝説や名シーンというものの主役を演じたことのないライダー…

 それが序盤からスルスルと前に出て後続をジワジワと引き離すや、そのまま大きなドラマを演出することなく淡々と速い周回を重ね、そのままフィニッシュする勝ち方…まさしくこの日のようなレーススタイルが”つまらない”のだと思ってきた
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 しかし、それがは大きな間違いだったに気づいた

 この日の彼はいつにも増して驚異的な走りをしていた
 
 誰よりも早いタイミングで、誰よりも大きくスロットルを開けていた
 誰よりもクイックにマシンを切り返し、誰よりも激しくリアをドリフトさせていた

 思い通りにならないデスモセディチで傑作マシンM1に乗るロッシを追いかけていた08、09シーズンのように、このカタルニアのダイナミックなコースを息が詰まりそうな限界の走りで攻めていた

 そんな魂のこもったライディングをしながらも、レース後に彼は”余裕の勝利”だと語ったのだ

 自分は騙されていたのだ
 誰よりも鋭い牙と爪を持ちながらも、”涼しい顔”で勝利をさらっていくケーシー・ストーナーというキャラクターに…
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 煮えたぎるような勝利への執着、あまりに貪欲なスピードに対する欲望…
 時にそれはライバルの地元での勝利という”空気の読めなさ”として、またある時はバトルすら不要なレースを量産してしまう

 彼の勝利が”つまらない”理由…それはストーナーの問題ではなく、彼のライバル達が彼以上に激しい走りをしていないからに他ならないのだ

 ”パーフェクトマシン”212Vのポテンシャルを100%引き出して走るストーナー以上に攻撃的な走りが期待できるライダー…それは、やはりマシンの性能を超えて120%で走ることのできるあのライダーしかいないのかもしれない

 そしてその時、ストーナーが真の主役になるとしたら、それはこれまで誰も見たことがないほどハイレベルで壮絶なシーンになるだろう
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# by taros_magazine | 2011-06-12 15:36 | motorcycle diary
危険なライダー (MotoGP 2011 Round-4 France)
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 あらためて”クレイジー”と言われた89年から90年代初めのグランプリを振り返ってみた
 
 それまでのグランプリが牧歌的に思えてしまうほど激しいドッグファイトが、全レース…いや、全ラップ、そして全てのコーナーで繰り広げられていた時代…

 時にライバルのマシンに蹴りを入れたり、尻を触って挑発したりしながらの感情剥き出しのバトルは、”エキサイト”という言葉では生ぬるいほどのインパクトを持っていた

 しかし、そんな時代にあっても接触によるクラッシュの記憶は数えるほどしかない

c0041105_22114867.jpg それもブレーキに不調を抱えていたドゥーハンがローソンやシュワンツに追突したシーンくらいだ

 それに比べてこの数年の接触・転倒の多さはいったい何なのだろう?
 125cc、250cc、Moto2、そしてMotoGP…クラスを問わず、ライバル同士は接触をもってバトルを制しようと試み、その相手を転倒させることが”勝利”であるかのように振舞っている

 そこには戦略も技術も何もない 

 ただブレーキを遅らせ、相手のインサイドに飛び込み、自分だけは転ばないようなスピードとラインをキープするか、すぐそばにいるライバルの存在に気づかないフリをして激しくマシンを振るか、だ

 そうして”結果”を残してきたライダー達が、意気揚々と次なるステージへとステップアップしていく

 いつしかサーキットは結果さえ出せば何でも許される無法地帯になってしまった

c0041105_2222176.jpg アタックを邪魔する者には鉄拳を、一人でタイムを出すことのできない”金魚のフン”には目の前でアーリーブレーキを、パドックの裏では人格攻撃を…

 ただ、それらは必ずしもライダー個人の責任だとは言い切れない
 
 ある意味、そうした風潮を”容認”してきたのがFIMの曖昧な裁定だ

 原田哲也とロリス・カピロッシの件を紐解くまでもなく、”レーシング・アクシデント”を拡大解釈してきたFIM…

 しかし出走台数の減少に歯止めがかからない今、彼ら運営サイドは自らがこれまで下してきた判断のツケを払うためにやっきになっているように思えてならない

 今回のダニ・ペドロサとマルコ・シモンチェリの接触の件で言えば、個人的にはシモンチェリがこれまでのいくつかのオーバーテイクほど危険な走りをしたようには見えなかった
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 250cc時代、彼が初優勝を飾ったムジェロのレース…あのストレートでのエクトル・バルベラとの接触に比べれば、今回の接触など”よくあるレーシング・アクシデント”だとシモンチェリが思ったとしても仕方のない程度のようにさえ思えた

 しかし、今回の裁定は思いのほか早かった

 前戦ポルトガルのプレス・カンファレンスで自らの”危険性”を悪びれることなく主張してみせたシモンチェリには、あっさりと”クロ”の判断が下された…

 このまま”厳罰化”の方向に向かっていくのなら、それはそれで良いことだろと思う

 ただ、今回のような接触がもう一度起きた時、運営サイドは本当に同じ裁定が下せるのだろうか?
 アウトから被せていったライダーがバレンティーノ・ロッシやホルヘ・ロレンゾでも…
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# by taros_magazine | 2011-05-22 22:47 | motorcycle diary