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Catastrophe , part4 (MotooGP 2015 Round-17 MALAYSIA GP)
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 『次戦での最後尾グリッドからのスタート』

 これがタイトル争いをかろうじて維持させるためだけに、運営側がひねり出した苦肉のペナルティであることは誰の目にも明らかであり、レースディレクションが認めたようにロッシの"蹴り"がなかったとしても、ロレンソの言うとおり"軽すぎる"処分だろう

 しかし、そのロレンソの行為もまた、この件の後味の悪さを際立たせた

 2010年、もてぎ…悲願の初タイトル目前のレースで、タイトル争いから脱落したロッシが仕掛けてきた接触上等のバトルを終えた後、そのライディングを激しく非難した彼は、このマレーシアで勃発したロッシとマルケスの論争については無関係の姿勢を貫こうとした

 確かにあのもてぎで、ロレンソはロッシをコース脇に追い詰めたりしなかったし、走行中にあからさまな非難のアクションをすることもなかった

 しかしこの日、ロレンソは何が起きたのかを正確に知る前の段階で、勝者を称える儀式を無視してポディウムから去って行った

c0041105_085599.jpg その行為は、レース中に彼のサインボードに示された『MARQUEZ OUT』の文字と同様、すり減ったロッシの神経を不必要に逆なでし、この問題をさらに複雑にするだけだろう

 事ここに至っては、どんな展開になろうともチャンピオン決定戦であるはずの最終戦が素晴らしいレースになるとは思えない

 タイトルに無関係のライダー…例えばアンドレア・イアンノーネやダニロ・ペトルッチがロレンソのインに10回や20回ネジ込んだところで、お咎めはないのだ

 ポイント争いをしている相手が真横に並んできたら、時速60キロでコース脇まで押し出してしまえばいいのだ。それでもポイントを剥奪されることはないのだから

 そして遠くない将来、F1のように『抜かれる方が進路変更できるのは1回だけ』などというレギュレーションが明文化される日がやってくるのかもしれない…


 21世紀に入ってからのグランプリを、圧倒的な強さと絶大な人気で支えてきた巨星、バレンティーノ・ロッシ

 願わくば、どんな結果になろうとも最終戦バレンシアのチェッカーフラッグの後、自分からホルヘ・ロレンソにその手を差し伸べてほしい

 輝かしい時代と伝説が、彼自身の行為で汚されたまま終止符を打たれることのないように…

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by taros_magazine | 2015-10-29 20:55 | motorcycle diary
Catastrophe , part3 (MotooGP 2015 Round-17 MALAYSIA GP)
 タイプの似た"ファイター"同志…
 そう言われてきたロッシとマルケスの2人

 しかし、実はまったく違うライダー同志なのだということに、ロッシは気づいていた

 彼らのバトルの見どころであるオーバーテイクのシーンについても、マルケスの武器がハードブレーキングからの巧みなターン・インであるのに対し、ロッシはマシンを切り返す瞬間のラインコントロールの絶妙さを武器にしてきた
 
c0041105_21433078.jpg マシンの限界を超えるようなライディングも、110%の速さを瞬間的に何度も見せてぶっちぎってきたマルケスに対し、ロッシは110%の爆発力を必要な時には必ず出しきって勝ってきた

 そして何より、ロッシは”古き良きグランプリ”を知る最後のライダーだろう

 彼がグランプリで最初に味わったのは、老獪かつ抜群のテクニックを持つ125ccのライダーたちからの”洗礼”だった

 ただ速く走るだけではない、時に冷静に、時に熱く…マシンではなく人間同士が繰り広げるレースから、彼はグランプリでの戦い方を学んできた

 250ccには自分とはまったくタイプの違う”天才”がいた
 MotoGPでは目の前でライバルが、親友が旅立ってしまう瞬間を目にした

 このマレーシアで誰よりも多くグランプリを経験したライダーとなった彼だからこそ、すべてを背負って戦っているという自負があるからこそ、タイトルに対して必要以上に気持ちを高ぶらせてしまうのかもしれない

c0041105_21434968.jpg 片やマルケスは文字通りの新時代のライダーだろう

 彼がデビューした当時、既に125ccクラスには年齢制限が設けられ、若いライダー達による派手なぶつかり合いがそこかしこで見られるようになっていた

 そんな中で結果を出し、生き残ったライダー達は、パワーユニットがワンメイクのマシンで争われるMoto2でさらに過激な争いを繰り広げることになる
 
 転倒か優勝かという激しい走りを見せたマルケスは、そこでもタイトルを獲得するとルーキールールをも撤廃させ、最強のワークスマシンを手に入れた
 そして、そのライディングスタイルを不安視する声をよそに、彼は見事にMotoGPマシンをモノにし、瞬く間に最高峰を制した

 持てる全てを駆使して、誰よりも速く走ること
 誰であろうと、何と思われようと、とにかく前にいるライダーを抜き去ること…

 それこそが、マルク・マルケスというライダーの哲学であり、現在のグランプリシステムが育んだ正常進化型のチャンピオンなのだ

c0041105_23364880.jpg 負け方を知らないマルケス

 負けることの悔しさを誰よりも知ってるロッシ

 2人のライダーは、1枚のコインの裏表のように隣り合わせにいながらも常に反対側を向いていた
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by taros_magazine | 2015-10-28 23:01 | motorcycle diary
Catastrophe , part2 (MotooGP 2015 Round-17 MALAYSIA GP)
c0041105_13322893.jpg レースは悪い意味でロッシの予想通りのものになった

 序盤からハイペースで走るロレンソは、あっという間にロッシとマルケスを抜き去り、トップを快走するペドロサを追いかけて行った

 そしてロッシの目の前にはマルケスがいた

 マルケスは、一瞬のミスを突かれオーバーテイクしていったロレンソを追いかけることを早々にあきらめたかのように、前に出ようとするロッシとの肉弾戦を開始した

 1ラップで10回近くも順位を入れ替える異常なオーバーテイク合戦…業を煮やしたロッシがマルケスを何度もにらみ付け、左手でアクションを起こしても、マルケスはインからアウトからロッシを攻撃し続けた。前を行く2台から1秒も遅いタイムで…

 それは明らかにレースにおける”バトル”ではなかった

c0041105_13324037.jpg 89年に鈴鹿でシュワンツとレイニーが演じた究極のバトルが今だに伝説として語り継がれているのは、あのコース幅の狭い鈴鹿で、1ラップに5回、6回と順位を入れ替えながらも、3位以下を毎ラップ1秒近く引き離していくという離れ業を見せたからだ

 そしてシュワンツはシケインでレイニーの鼻先をカットして行った後には、ストレートで軽く詫びるサインを見せていた

 レイニーはバックストレートでシュワンツのブレーキレバーに手を伸ばしたりもした。ただ、それは明らかにシャレの範囲とわかるものだった

 アメリカ時代から自他共に認める犬猿の仲だった二人は、このバトルを境にお互いに対する絶大な信頼と敬意を持つようになった

 もちろん異なるメーカーのエース同士、パドックで談笑するようなシーンこそ見せなかったが、その後何度となく繰り返された2人のバトルは、常に超接近戦ではあっても最後の一線を超えるようなことは決してしなかった

 しかし、ロッシは遂に切れてしまった

c0041105_13373417.jpg 勝利に向けたバトルではもつれればもつれるほど強さを発揮する彼が、ことチャンピオンシップがもつれた時には意外なほどにナーバスになってしまうのだ…あの2006年のバレンシアのように…

 グランプリのレースとは程遠いスピードとラインで、彼は明らかに意図的にマルケスをコースの淵に押し出した

 そのままストップするか、強引にロッシを押しのけて前に行くかしかない状況に追いやられたマルケスは、当然のように後者を選択した

 意を決してロッシのマシンに向けてリーンを再開したマルケスの体とロッシの左足が重なり合った直後、レジェンド王者の完全復活で大いに盛り上がった2015シーズンは事実上幕を下ろした

 それは、高く上がったシャボン玉がはじけて消えるように、あっけないものだった

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by taros_magazine | 2015-10-28 22:29 | motorcycle diary
Catastrophe , part1 (MotooGP 2015 Round-17 MALAYSIA GP)
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 2006年、バンレンシアGP

 それはいくつもの印象的な光景が積み重なった、狂おしくも美しいレースだった

 前戦でチームメイトに追突されポイントリーダーの座を失ったニッキー・ヘイデンと、思いもしない形でタイトルに王手をかけたバレンティーノ・ロッシ

 彼本来の力強い走りで、がむしゃらに先行するヘイデン
 ポイントの計算に集中力を削がれ、カオスの深渕に嵌っていくロッシ
 大きな十字架を背負い、ニッキーのサポートのために力走するダニ・ペドロサ
 そして、2人の決戦を息をひそめて見守るかのように周回を重ねるライダー達・・・

c0041105_13275262.jpg 自らの痛恨のミスで、ほとんど手中におさめていたタイトルを逃したロッシは、数分前まではチャンピオンシップ・ランとなるはずだったそのコース上にニッキーの姿をみつけると、マシンをそっと横に並ばせ、そして新たな王者へ祝福の手を差しのべた


 あのシーンから9年、何もかもが変わってしまった

 そこには世界最高峰のカテゴリーで戦うというプライドも、他のライダーに対するリスペクトも存在しなかった

 思えば、今シーズン序盤まで噛み合っているように見えた2人のバトルも、一皮剥けば感情むき出しの肉弾戦に過ぎなかったのだ

 久々の栄冠を前にしたかつての絶対王者は、タイミングも場所もお構いなしに絡んでくる若造に辟易としていた

 すでに3連覇の望みを断たれた若き王者は、コース上の速さではなく人気を傘に着た”口撃”で常に優位に立とうとするロートルに我慢できなくなっていた


c0041105_13292987.jpg そんなフラストレーションを先に爆発させたのはロッシだった

 ジワジワと真綿で首を絞められるようにポイントを削り取られていった彼は、このグランプリが始まるとマルク・マルケスが自分を意図的に妨害していると公然と批判した

 それは、彼が長いグランプリ生活の中で何度も駆使してきた得意の心理戦…ではなかった

 彼は本気で、マルケスが自分ではなくホルヘ・ロレンソにタイトルを獲らせるために意図的にドアを閉めようとしていると思っていた

 一方でマルケスの本心はわからないままだった

 ただ、このロッシの発言が”若造”の涼しげな笑顔の裏側で燃えさかる炎にとびきりオクタン価の高い燃料を注いだことだけは確かだった
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by taros_magazine | 2015-10-28 22:26 | motorcycle diary