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Tear Off  (MotoGP 2012 Round-7 Dutch TT)
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 バレンティーノ・ロッシがピットに入ってくる姿を見ても、自分は驚かなかった

 むしろタイヤを交換して再びレースに戻ったことの方が意外だった…

 伝統のアッセンで、彼は明らかに苦戦していた

 それはこの赤いマシンに乗って以降、常に悩まされてきた”セットアップ”というようなレベルではなく、さらに深刻で出口の見えない問題に見えた

 繰り返してきたフレームやスイングアームの改良、数え切れないほど試してみた足回りやハンドリングのセッティング…一縷の望みを繋いできた1000ccマシンも、乗ってみたらむしろそれまでよりも”ダメ”なマシンだった

c0041105_2334642.jpg タイトルはもちろん、勝利も…いや、表彰台すらすっかりおぼつかなくなってしまった"THE DOCTOR"が自分に言い聞かせてきた唯一のモチベーションだった”開発”…

 それすらも完全に瓦解し、ダッチウェザーにさえも見放されたこの日の彼にとっては、グリッドにつく理由は”契約”以外にはなかったのかもしれない

 そう思わせたのがレース前の彼の姿だった

 ピットではいつものようにコース図を手にレースシミュレーションをするわけでも、PCでデータを確認するわけでもなかった

 ロッシは集まったスタッフ、とりわけブリヂストンのエンジニアを前に厳しい表情でまくしたてているように見えた

 さらにグリッド上では、あきらめたような笑みをうかべるジェレミー・バージェスらスタッフと視線も合わさない
 さらに目の前のテレビカメラにさえしばらく気がつかず、ただ視線を下に落としていた

 いざレースが始まると、彼に幾分運がめぐってきたような展開となった

 アルバロ・バウティスタがポイントリーダーのホルヘ・ロレンゾを道連れにクラッシュし、目下のライバルのうちの一人であるステファン・ブラドルも早々にリタイアし、オープニングラップを終えるとなんと”望外”の5位につけていた

 しかし、それすらもこの日のロッシの闘争本能を呼び覚ますことはなかった

 ラップごとに1秒ずつ4位から離され、一度はコースアウトしたチームメイトにまであっさりとかわされ、そしてサテライトチームの同じマシンの攻撃に耐え切れなくなると、彼はそのままピットを目指した

 ゆっくりとピットに戻るロッシと対照的に見事な手際でタイヤ交換を行うチームを見たとき、あのレース前のピットでの出来事を理解した

 あの時、おそらくロッシはこう言っていたのだろう
 『このコンディションじゃ絶対にタイヤはもたない。もしそうなったらオレはピットに戻る』と…

 ソフトタイヤを履き、ふたたびコースに戻ると同時に、かつて彼が纏っていたカラーリングのマシンが2台、猛然と彼の横をかすめていった

 周回遅れとなったロッシがそのとき感じたのは、屈辱などではなく、あのマシンに対する憧憬だったのではないだろうか?

 ピットアウトしていくロッシが捨てたのは、ティアオフシールドだけでなくもっと大切なものだったのかもしれない…
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by taros_magazine | 2012-07-02 23:36 | motorcycle diary
CRTとは何だったのか?(MotoGP 2012 Round-6 Great Britain)
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 素晴らしいマシンを得て、その才能を思う存分発揮するケーシー・ストーナーの走りや、精密機械のようにハイペースでラップを刻み続けるホルヘ・ロレンゾのレースコントロール、さらにはカル・クラッチロウやアルバロ・バウティスタの急成長など、この数年になく見所の多い今シーズン…

 暗い話題が先行していた昨シーズン終盤以降の流れからすれば、グランプリは”盛り上がっている”と言ってもいいのかもしれない

 しかし、多くのファンが見つめるトップグループの遥か後方で繰り広げられているCRT勢の”レース”を何と表現すればいいのだろう?

 2003年にはCAS(スポーツ仲裁裁判所)の判断を仰いでまでも失格にした市販車ベースのエンジン…その”禁じ手”を、FIMは寂しくなる一方だったグリッドを何とか埋めるために今度は”グランプリの未来”とまで言って推奨した

c0041105_22312021.jpg しかし、少なくとも”レース”をする上ではメリットどころかハンディキャップでしかないようなレギュレーションに則ったマシンは、あわよくばプロトタイプを食うどころか、タイム的にはライバルはむしろSBKのマシンという有様だ

 そしてグランプリの救世主になるはずだったそのマシンは、皮肉にも現役グランプリ王者がレースに対する情熱を失い引退を決意する原因のひとつになってしまった

 もちろん、CRTマシンに乗るライダーや走らせているチームの情熱は本物だろう

 プロトタイプの台数がそろわない中、この困難な状況でもMotoGPというカテゴリーに留まる決断を下したランディ・ドピュニエやコーリン・エドワーズは十分に尊敬に値する奮闘を見せているし、新たに参入したチームの勇気も大いに賞賛されるべきだろう

 それでも、そのマシンが最高峰の舞台を走るにふさわしいとはどうしても思えない

 かつて北川圭一がXフォーミュラーのマシンでワークスのスーパーバイク勢を追い回していた全日本ロードレースのような光景を、グランプリのトップカテゴリーに求めるのは何かが違うのではないだろうか?

 これから勝ち目のないレースに臨もうとしているライダーが、グリッド上で無邪気にテレビカメラに向かって手を振る姿や、その”カテゴリー”でトップフィニッシュしたマシンがパルクフェルメに並び、そこで関係者が大喜びする姿を目にするたびに、また拭い去れない違和感が積み重なっていく…

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by taros_magazine | 2012-07-02 22:38 | motorcycle diary
Behind the Mask (MotoGP 2012 Round-5 Catalunya)
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 誰よりもハードプッシュしているという自負もある
 勝ち方も、タイトル獲得に必要なものも、125ccや250ccで十分に学んできた

 それなのに、もう6年もの間、ライバル達が喜びを爆発させ歓喜している姿を真横で見ていることしかできないでいる…

 このカタルニアでも、”母国の英雄”を称える熱狂的な声援が渦巻くポディウムで、もう一人のスペイン人は小さく手を振ることしかできなかった

 予選で抜群の速さを見せたケーシー・ストーナーがセカンドグループの混戦に巻き込まれ、何とか追いすがっていたアンドレア・ドヴィツィオーゾをふるい落とすと、レースは早くもペドロサとホルヘ・ロレンゾによる一騎打ちの様相を呈していた

 250ccでも自分の方が先にタイトルを獲った
 MotoGPだって自分の方が先にステップアップしてきた

 でも、先に頂点に立ったのはロレンゾだった

 メディアがライバル関係を煽る間でもなく、ごく当たり前に強烈に意識するようになっていた
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 一発の速さでも、レースディスタンスでの戦略でも、決して劣っているとは思えない
 むしろスタートダッシュの鋭さや、ライバルに食らいついていく時のライディングスタイルは、ストーナーやロレンゾ以上にアグレッシブなものだ

 しかし、彼がたどり着くのはいつも”2番目”… 

 この日もマシンを降りると彼はいつものようにポーカーフェイスでインタビューに答え、ロレンゾに拍手を送った

 これまでもそんな優等生ぶりだけが目に付いてきたペドロサだったが、この日ホームタウンのテレビカメラは彼が覆い隠してきた素顔を一瞬だけ映して見せた

 パルクフェルメでファンに向けたメッセージを掲げた後、くるっと後ろを向いた時の怒りに満ちた眼差し

 そしてポディウムに向かう通路では、優勝者に渡されるトロフィーに悲しそうに目をやった後、すぐにスタンドの大観衆の声援に笑顔で手を振ってみせた
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 これまでも競り合いでの弱さからその闘争心に疑問を持たれてきたペドロサ…

 しかし彼は強烈な怒りを、そして執念を、その笑顔の裏側に隠してきたのだ

 もし、その彼が抑えてきた感情を爆発させるような劇的な勝利を挙げることができたら…その時彼はもはや”2番目”などではないだろう
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by taros_magazine | 2012-07-02 15:13 | motorcycle diary