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"Newtype" (MotoGP 2012 Round-3 PORTUGAL)
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 今やケーシー・ストーナーの速さは誰もが認めている

 オープニングラップの1コーナーからいきなり100%で攻めていき、そのまま食い下がる後続を力で引き離す圧倒的な速さ…

 いったん秒単位で引き離せば、ライバルがどれほどチャージしようと、タイヤがとうにグリップを失っても、マシンにさらにムチを入れることのできる驚異的なマシンコントロール…

 それでもなお、彼の”アラ”を探しつづけてきたシニカルなファンは”バトル”の弱さを主張してきた

 しかし、今シーズンのストーナーはそんな見方に彼なりの最終回答を突きつけたかのような走りを見せている
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 前戦のスペイン、そしてこのエストリルで見せたストーナーの回答…

 それは、たとえライバルがフロントタイヤをネジ込んでこようとも、ラインの取り合いや残り周回を睨んだタクティクスなどではなく、自らの力だけで倒してみせるという強烈な意思表示だった

 だからこそ、ダニ・ペドロサはタイヤに熱が入るのを待てずにスロットルを大きく開けてしまった
 できることなら少しでも長くストーナーのペースとラインを塞ぎ、彼に自由なラインとペースを与えないように…
 
 そんなペドロサの目論見はオープニングラップ早々に潰えてしまった


 予選から入念に戦略を練ってきたホルヘ・ロレンゾも、逃げていくストーナーを目の当たりにするとすぐさま追走体制に入った
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 終盤、タイヤが厳しくなったところでの勝負…しかし、そのために万全にセットアップしたはずのマシンは、序盤からフロント・リアとも激しくスライドし続けるレプソルカラーのマシンにあっという間に1秒のディスタンスをつけられてしまった

 ロレンゾがストーナーを逃がさないための唯一の戦略…ペース配分を無視した猛チャージで背後に迫っても、ストーナーの走りは異様なまでにアグレッシブで、それでいてパーフェクトだった

 この日、ストーナーは派手なオーバーテイクも接触寸前の接近戦も演じることはなかった

 しかし、強力なライバルたちの果敢なチャレンジに対し、薄皮を1枚ずつ剥いていくように限界を超えたところでマシンをコントロールし続け、そして倒していった彼の走り…

 それはまるで、MotoGPという宇宙の中で進化し続けたハードウェアがもたらした”突然変異”のようだった

c0041105_16582820.jpg グランプリにおける”バトル”というものの概念さえ一新してしまった"Newtype"王者の覚醒…
 ストーナーは今、誰も経験したことのない領域に踏み込もうとしているのかもしれない

 その彼に対抗するための手段が、はたしてロレンゾやペドロサにあるのだろうか? 

 そして、彼に対抗する”赤い彗星”の復活はあるのだろうか?
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by taros_magazine | 2012-05-20 17:03 | motorcycle diary
"Showstopper" (MotoGP 2012 Round-2 SPAIN)
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 グレーの空、上がらない路面温度、ウェットパッチの残る路面…

 マシンを操り速さを競う上で本来ならマイナス要因にしかならないこれらの条件も、”熱く”なったライダーを止めることはできないことを多くのファンが知っている

 ついさっきまで降っていた雨がやっと乾きかけた89年春の鈴鹿のフリー走行
 
 2台で絡みながらコースレコードどころか”永遠”と言われた絶対レコードまで更新してみせたウェイン・レイニーとケビン・シュワンツのタイムが”進化したタイヤとマシンの賜物”でないことは、同じセッションを走っていた他の3人のワールドチャンピオンのタイムが、この2人から1秒も遅いものだったことが証明していた

 国内選手権で、そしてこのグランプリで、常に比較されてきた同郷のライバル

 それは1つしかない頂点を目指す時、必ず立ちはだかる強大な壁であり、その速さを知っているからこそ全力で倒さなければならない相手だから

 
 まるでその姿やサインボードに表示されるライバルのタイムにアドレナリンを誘発されたように、冷えた空気の中に吹き抜ける熱風…
 
 このヘレスの予選で見せたホルヘ・ロレンゾとダニ・ペドロサの2人の”熱”は、ここがホームタウンということも相まってもはや手が付けられない熱さだった

 ロレンゾは信じられないほど深いバンク角で旋回し、ペドロサは最終コーナーのクリッピングからコントロールラインまでフロントを浮かせたまま駆け抜けた

 1000ccのYZR-M1と抜群の相性を見せるカル・クラッチローをグラベルに葬り、王者ケーシー・ストーナーをも蚊帳の外に追いやっての2人だけの文字通りの"Heat"…

 残り15分からの”叩き合い”は、日曜日のレースが息を呑むような"show"になることを確信させるに十分な”予告編”だった。しかし…

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 スタートダッシュを決めたかに見えたペドロサを、ストーナーは一気に追い詰めた

 すぐさま反応したロレンゾを引き連れながらも、一度も振り返らずただひたすらにハイペースで走り続けるストーナー…

c0041105_14391357.jpg 予選”ヒート”を見ていた10万人を超える地元の大観衆も、テレビで見ていた多くのファンも、ここからスパニッシュ主演のドラマが始まると期待したことだろう

 しかし、ここで3位以下の経験がないペドロサも、序盤にリズムを乱し、なかなかトップグループに迫ってこない

 様子を窺っているかに見えたここで2連勝中のロレンゾも、ワンチャンスの射程距離ギリギリのところから詰められない

 異様な膠着状態が続く中、残り4ラップとなったところで遂にロレンゾがストーナーに迫っていった

 何度も最終コーナーでインを狙うロレンゾ…しかし、腕上がりに苦しんでいるはずのストーナーが最終ラップを前にさらにマシンにムチを入れると、ロレンゾに追いすがる余力は残っていなかった…

 これまで何度も、ライバルの地元でその速さを見せつけて勝ってきた"KY"ストーナー

 しかしこの日の彼は決して"Show Spoiler"ではなかった

 最後にスパートした際の、イン側の縁石にさえブラックマークを引いていく驚異的な走り…それは、真後ろで見ていたロレンゾはもちろん、ライバルの地元のファンをも納得させる見事なものだった

 絶好調でホームタウンに帰ってきた英雄2人を両脇に従えて、初めてこのヘレスの表彰台の真ん中に立ったストーナー

 新時代のMotoGPの聖地で、大観衆に拍手で迎えられた彼は、まるでオーストラリアで勝った時のように嬉しそうだった

 決して雄弁でもなければ、派手なパフォーマンスでウイニングランをするタイプでもない
 
 しかし、純粋にその走りの凄さで自らを主張しつづけてきたストーナーは、この日堂々たる”Showの主役”として、誰よりも輝いていた

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by taros_magazine | 2012-05-04 15:01 | motorcycle diary