<   2011年 07月 ( 3 )   > この月の画像一覧
" #1 " (MotoGP 2011 Round-9 GERMANY)
c0041105_22444929.jpg
 ”エース” それは…

 ダニ・ペドロサがチームのメインスポンサーの本拠地がある国の出身でも、アンドレア・ドヴィツィオーゾがそのマシンのメーカーと10年ほどの付き合いがあろうとも、その座を手にすることができるのはコース上で一番速いライダー…つまり自分であるはずだった

 ケーシー・ストーナーは久しぶりのホンダに跨ると、開幕前のテストから当たり前のようにトップタイムを連発した

c0041105_22451123.jpg シーズンが始まるとその勢いのまま勝利とポイントを重ねていった

 調子の上がらない”かつてのライバル”バレンティーノ・ロッシがドカティのマシンに苦闘する姿を嘲笑し、そのロッシの転倒に巻き込まれてリタイヤした後には、謝罪に訪れたロッシに体調を気遣うようなコメントさえ吐かせた”エースの余裕”…

 誰もがこの新しいホンダの”エース”が、このまま王座にむかって勝ち続けていくだろうと思っていた

 そしてストーナー本人も思っていただろう
 『あの時の自分とは違う…どこまでも食い下がってくるロッシのプレッシャーに負け、転倒を繰り返した2008年とは…』と

 その絶対的な速さが小さなほころびを見せたのはアッセンだった

c0041105_22461421.jpg オープニングラップのアクシデントで一瞬開いたベン・スピーズとの差…
 その3秒が、どんなに攻め続けても取り戻せなかった

 最強のマシンに乗る最速のエースが、パワーで劣っていると思っていたマシンに乗る”ナンバー2”に力でねじ伏せられたのだ

 さらに、予選2番手となったそのスピーズにコンマ5秒ほどの差をつけてポール・ポジションを獲得したムジェロでは、そのほころびがはっきりと目に見えるほどの大きさになっていた

 レース中盤までトップを快走し、あと少しで逃げ切りパターンに持ち込めるはずだった

 しかし、猛然とスパートする”ヤマハのエース”ホルヘ・ロレンゾにあっけなくかわされると、最後には”ナンバー3”のドヴィツィオーゾにも抜かれてしまった

 だからこそ、このドイツでは誰が”エース”なのかをはっきりとさせなければならなかった

c0041105_22464998.jpg 病み上がりの前エースを抜き、前戦で屈辱を味わわされたナンバー3を抜き、そしてヤマハのエースをかわすと後はチェッカーまで攻め続けるだけだった

 しかし、またしても悪夢が蘇る

 どんなにマシンにムチを入れても離れない2人…
 トップに立ったペドロサがスパートすると、ロレンゾとの2位争いにも自らミスで敗れた”ガラスのエース”…

 プライベートのRC211でロッシに食い下がり、デスモセディッチを世界でただ一人乗りこなした彼が、最強のマシンを得て初めてぶつかった壁…

 『ケーシーは開発なんてしてなかった』

 シーズン序盤の”舌戦”の最中にロッシが放ったこの言葉に対して、ストーナーが今後のリザルトで反論できなければ、タイトルはおろか憧れだったホンダワークスのエースの座さえも、彼の手から滑り落ちてしまうだろう

c0041105_22485776.jpg

[PR]
by taros_magazine | 2011-07-24 22:52 | motorcycle diary
"Rapsodia" (MotoGP 2011 Round-8 Italy)

c0041105_22333847.jpg 勝ちたい気持ちを優先させれば”無謀”
 確実にリザルトを取りにいけば”平凡”

 この日、マルコ・シモンチェリの気持ちは揺れ動いていた

 この、元来心優しい気さくなイタリアンに対する風当たりは、近年のグランプリでは類をみないほど痛烈なものだった

 ここまでの2戦でダニ・ペドロサ、ホルヘ・ロレンゾというトップスター2人を葬った”撃墜王”も、このムジェロでは大きな歓声で迎えられた

 そのファン達に見せるべき”自分の姿”はどっちなのか?

 5位でチェッカーを受けたシモンチェリの笑顔…喜びよりも安堵を感じさせるその笑顔は、彼が決して根っからの”危険なライダー”ではないことを物語っていた

********************************

 サーキットを埋め尽くした赤と黄色のコラボレーション…

c0041105_2234253.jpg しかしバレンティーノ・ロッシと彼の赤いマシンは、この日もかつて彼が駆ったマシン達の後方で走り続けた

 アッセンで見せた一瞬の輝きさえも見せることができず、まるで足かせを着けているかのように不自由なライディングに終始しながらも、その意地だけでドゥカティ勢の最上位を走り続けるロッシ…

 決してファンを満足させられたわけではない
 復活の手掛かりを見出したわけでもない

 それでも、彼がチェッカーを受けた時の拍手は、この日一番の大きさだった

********************************

c0041105_22355489.jpg いつも”二番手”だった

 ロレンゾと熾烈なバトルを繰り広げていた250ccの時も
 悲願のワークスチーム入りを果たした去年も…

 それどころか、ケーシー・ストーナーがチームに加入してからは、第3ライダーのポジョションを甘受せざるを得なかった

 そんなアンドレア・ドヴィツィオーゾが見せた魂のオーバーテイク…

 絶対的なエースの座を不動のものにしかけていたストーナーに後塵を浴びせた彼は、この日確かに何かを掴んだ

********************************

 今シーズン急成長を遂げたニュースターも、9度の王座を獲得した生ける伝説も、そして最強のワークスチームのホープも、この地元で勝利することはできなかった

 それは、ともすれば辛辣な言葉が飛び交うことも予想されたリザルトであったかもしれない

 でも、この日集まった何万ものイタリアン達は、その結果以上に大切な何かを、このムジェロで確認したかのように大きな歓声で彼らのヒーローを称えた

 とびきり熱く、そして美しいレーシングDNAを持ったイタリアン達

 この日の本当の勝者は、こうしてレースを楽しむことのできる彼らだったのかもしれない
c0041105_22361269.jpg

[PR]
by taros_magazine | 2011-07-24 22:39 | motorcycle diary
蜘蛛の糸 (MotoGP 2011 Round-7 Dutch TT)
c0041105_13561786.jpg
 もし、マルコ・シモンチェリがホルヘ・ロレンゾを道連れにしていなければ、リザルトは違うものになっていたかもしれない

 もし、"Dutch Weather"が路面を冷やしていなければ、GP11.1もまた”他人が作ったバイク”と同様に言うことをきいてくれなかったかもしれない

 しかし、そんな”タラレバ”もこの日のバレンティーンノ・ロッシにはどうでもいいことだった…

 
 かねてから噂されていた12年モデルとのハイブリッド・マシンを持ち込むとしたら、このアッセンしか考えられなかった

c0041105_1404419.jpg それは、これまで7勝を挙げている得意のコースだから、という理由ではない

 それは、このコースでこれまで何度も味わった逆境を、そしてそれを跳ね返してきた自分を今一度取り戻すために…

 フリー走行で手足を骨折しながらも強行出場し8ポイントをかっさらっていった2006年
 オープニングラップで転倒し、ハンドルバーを曲げシフトペダルを失いながらも鬼神の走りを見せた2008年
 
 今のロッシが復活を掛けて臨むにこれほどふさわしい舞台は他にないからだ 

 だから、目の前でシモンチェリとロレンゾが消えても関係なかった
 またもアンドレア・ドヴィツィオーゾに表彰台を阻まれても冷静でいられた

 何より大事なのは、着順やライバルのポイントよりも、彼の中にまだ”勝ちたい”という欲望と”勝てる”という自信が残っているかどうかを確かめることだから

c0041105_140594.jpg 果たして、ロッシはそれを確認することができたのか? 

 ただ言えることは、この日のロッシの走りはとても美しく、そして力強いものだった
 それは少なくとも希望を失った者の走りではなかった、ということだ

 もしかしたら、ロッシが見出したその”希望”は、まるで蜘蛛の糸のように細いものなのかもしれない
 
 しかし、それでも彼はその糸を登っていかなければならない
 赤いマシンに跨ることを選んだのは、ほかならぬ彼自身なのだ

 ロッシが必死でよじ登るその細い糸には、数え切れないほどのファンもまたぶら下がっている

 ロッシの希望の糸はそのプレッシャーに耐えられるのか?
 イタリアのファン達は今ロッシに何を求めているのか?

 ”審判の日”がいよいよ近づいてきた
c0041105_1411270.jpg

[PR]
by taros_magazine | 2011-07-03 13:56 | motorcycle diary