<   2010年 09月 ( 3 )   > この月の画像一覧
the show must go on (MotoGP 2010 Round-13 ARAGON)
c0041105_0255970.jpg

 あの悲劇的な瞬間から、何度も何度も同じ疑問が脳裏をよぎる
 『いったい、僕たちは何度このような悲劇を繰り返してきたんだろう…』と


 かつて親友、若井伸之の死を目の当たりにし、今また愛すべき友を失った2人…
 
 このサンマリノのサーキットにやってきて、スタート前まで富沢にコースの攻略法を伝授していた坂田和人

c0041105_021363.jpg あの瞬間を現地で見た彼は、これからテレビ局のモニターに映し出されたクラッシュシーンを見ても、レース解説者として語り続けることができるのだろうか…
 
 そして世界に通用するライダーを育てるべく、自らのチームを率い、そして富沢のヨーロッパでの世話人でもあった上田昇

 事故直後から変わり果てた富沢に寄り添っていた彼は、これからも未来ある若者たちに”レース”を走ることの尊さを教えることができるのだろうか?

 
 同じ”サンマリノ”の名を冠したイタリアのイモラで、盟友アイルトン・セナのクラッシュを見た後藤治

 彼は、自らが開発したエンジンを駆った若き才能がまたもや散ることとなった今、これからもスピードを追求していくことができるのだろうか?

c0041105_0211484.jpg あの日、同じようにアスファルトに横たり、そしてストレッチャーで運ばれていった加藤大治郎の姿を見たバレンティーノ・ロッシ、ロリス・カピロッシ、マルコ・メランドリ…

 HRCから支給されたスクーターを譲ったダニ・ペドロサ

 ゼッケン48の後継者として弟のように富沢をかわいがっていたホルヘ・ロレンゾ…

 この日もつい数時間前まで、一緒に笑って話をしていた青山博一、小山知良…

 何度もいっしょに食事をしたり、ふざけあっていたエクトル・バルベラ、アルバロ・バウティスタ、マルコ・シモンチェリ…

 そしてデ・アンジェリス、レディング…

 彼らすべてが参加し、レース前に行われた1分間の黙祷
 それは、皆に愛されたひとりの若者への祈りとともに、彼ら全員が決意をあらたにする瞬間だった

 『俺たちは走り続ける。ショーヤのため、そして不幸にも命を落としてしまった全てのライダーのために…』

 そして彼らは今年も日本にやってくる。富沢の魂とともに…
c0041105_0203923.jpg










 
[PR]
by taros_magazine | 2010-09-21 23:35 | motorcycle diary
"in memories of …"(MotoGP 2010 Round-12 SAM MARINO)

「おとうさん、とみざわ君だいじょうぶなの?」

「どうかな・・・大丈夫だといいね・・・」

「きゅうきゅう車きたかなぁ?」

「たぶん、もう乗ってると思うよ。中で先生が『大丈夫ですか?』って診てるよ」

「痛いのかなぁ?」

「痛いかもしれないけど、がまんしてるよ、きっと」

「だいじょうぶかなぁ?」

「・・・」

「なんか、しんぱいになってきちゃった」

「・・・」

「きっと大丈夫だよ。もう遅いから、先に寝てて。おとうさんすぐに行くから・・・」


***************************************

 でも、状況が良くないことはドルナの経過発表を待つまでまでもなく明らかだった

 コスタ医師が診て、命に別状がなければすぐにテロップが入るだろう時間になっても、Moto2のレースが終わっても、その朗報はもたらされなかった

 チーム…加藤大治郎が最後に所属した…の地元で勝ったトニ・エリアスの沈痛な表情は、疲労感が原因でないことは明らかだった

 MotoGPの決勝レースが周回を重ねていっても、病院へ搬送された以後の情報は入らなかった

 それは、最悪の結果がチェッカーを待って知らされるであろうことを暗示していた

 残酷なカウントダウンとなったMotoGPの最後の数ラップ…そして…

****************************************

c0041105_0524549.jpg娘はもう寝ていた

『とみざわ君、ダメだったよ…』



 でも、これだけはわかってほしい

 オートバイの競争は、いっしょうけんめい練習して、いっぱい頑張って、運転がものすごく上手になった人たちがやっているんだ

 その人たちは「死んでもいい」とか「ぶつかってもいい」なんて考えてないんだ

 ほかの選手たちとはかぞくのように仲が良くて、いつもはみんなえがおでお話してるんだ

 だけどものすごく速いスピードで走るから、ときどきころんじゃうこともあるし、けがをしちゃうこともある

 だからそうならないように、選手も、コースで働いている人たちも、みんないろいろ考えて頑張っているんだ

 おとうさんもこういうふうにころんで病院に行ったこともあるし、ずーっと前にはころんで死んじゃったお友だちもいる

 でも、オートバイに乗っていろんなとこへ行ったり、ほかの人と競争したりするのはほんとうはとても楽しいんだ

 きれいな景色を見て、風をからだで感じて、友だちみんなで笑ったり、喜んだり…

 でも、それでも悲しいけど死んじゃう人もいるんだ

 それは死んじゃった人が悪いんじゃないんだ

 ぶつかった人も悪くない

 誰も悪くないんだ

 だから、そういうときにはこう言うしかないんだ

『とみざわ君、ありがとう。ほんとにカッコよかったよ。ずっと忘れないよ』って





c0041105_05698.jpg

富沢祥也選手のご冥福を心よりお祈り申し上げます
[PR]
by taros_magazine | 2010-09-07 00:59 | motorcycle diary
"burn"(MotoGP 2010 Round-11 INDIANAPOLIS)
c0041105_1715178.jpg

 案の定、そこに笑顔はなかった

 最高峰の舞台での初めてのフル参戦イヤー、”4強”が群雄割拠する近年稀に見る熾烈な表彰台争いの中での2位、そしてそれが母国グランプリであるというのに、パルクフェルメに戻ってきたベン・スピーズの表情からは悔しさばかりが溢れていた


c0041105_1732448.jpg それは ”勝てなかったから”…果たしてそうだろうか?

 渾身のフルアタックでポールを獲得した土曜日…ヘルメットの中の表情をうかがい知ることはできなかったものの、観衆の大声援に大きく手を振って応えた

 パルクフェルメに戻ってきた時も、やはり硬い表情ではあったものの、その中には満足感が感じられ、何より笑顔があった

 もちろん、彼自身がレース後のインタビューで述べたように、土曜日には『1番』だったのにレースでは『2番』だった、という”落胆”もあったことは確かだろう

 しかし、その同じインタビューの中に、彼の本心を垣間見ることができる一言があった

 『ヤマハ勢の中でトップだから…』

 彼は見抜いていた

 ホルヘ・ロレンゾが今回明らかにリスクを負わない走りに徹していたことを
 バレンティーノ・ロッシの体調は未だ100%には程遠いことを
c0041105_173431.jpg
 その中で、最高に気合の入った走りをしながらも、ケーシー・ストーナーが転倒し、さらに実績では彼ら3人に及ばないダニ・ペドロサにまったくついていく事がまったくできない中での2位だったこと…

 もし、予選のようなガチンコ勝負での2位なら…いや、仮に3位だったとしても、スピーズの表情は違ったものになっていたのではないだろうか?

 いずれにせよこの日のレースは、ベン・スピーズというライダーの心に重大な変化をもたらすだろう

 タイトル争いに無縁の”その他大勢”の中の一人だった男
 ロッシの移籍がもたらした”繰り上がり昇格”のワークスライダー

c0041105_1744236.jpg 大いなる自信といわれなき屈辱を胸に秘め、静かなる男はその爆発寸前にまで膨らんだファイティングスピリットのはけ口を、遂に見つけようとしている
[PR]
by taros_magazine | 2010-09-05 17:08