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"without him (part 3)" (MotoGP 2010 Round-6 Dutch TT)
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 一瞬、グランプリは本来の秩序を取り戻したかに見えた

 先頭を走るホルヘ・ロレンゾ、熱い走りで追いすがるダニ・ペドロサ、様子を伺う復調したケーシー・ストーナー…

 ”4強”からバレンティーノ・ロッシをマイナスすれば、この3人がトップを激しく争うのが、当然あるべきグランプリの姿のはずであり、その頂点のバトルこそがグランプリの魅力なのだから…

 しかしラップを重ねるごとにその”理想形”は徐々に崩壊し、一人のライダーが掲げる新しい秩序の下にその姿を変質させていった

 見た目こそ接近戦を演じてはいても、その全ラップはパーフェクトにホルヘ・ロレンゾただ一人に支配されていた

 フィニッシュラインこそ2位との差は3秒を切っていても、すべてのラップをロレンゾが奪っていた
 ファステストラップこそソフトコンパウンドのペドロサに譲ったものの、その差はコンマ1秒でしかなかった

 むしろそんな記録よりも、当のライバル達の反応がすべてを物語っていた

 レース中はもちろん、レース後のコメントすらも”無抵抗”に、この新しい秩序を受け入れてしまったかのようなペドロサとストーナー…

 そのシーズン折り返し前にしては、あまりにもドライで現実的な対応…
 彼らはこの日、若きスペイン人の王者の誕生を誰よりも間近に肌で感じたのだろう

 しかし、この事実上のタイトル決定戦となったレースを終えてなお、激しく闘志を燃やし続けているライダーが2人いる

 そのプライドにかけて、新チャンピオンを叩きのめすべく爪を研いでいる王者ロッシと、そのロッシを倒すために、彼のいないレースを勝ち続け、そして彼の完全復帰を待ち望んでいるロレンゾ…

 このアッセンの地で、ひとつの争いが終止符を打ち、そしてさらに激しい戦いの始まりを告げる鐘が鳴った
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by taros_magazine | 2010-07-05 15:25 | motorcycle diary
"without him (part 2)" (MotoGP 2010 Round-5 Great Britain)

 誰も彼についていけない
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 予選から波に乗るランディ・ド・ピュニエも、本来のキレを取り戻したベン・スピーズも、そして前戦ではぶっちぎって勝ったダニ・ペドロサも…誰一人としてホルヘ・ロレンゾの影さえ踏むことができない

 250cc時代の圧倒的な強さを彷彿とさせるようなハイペース…しかしあの頃のように2位以下を挑発するかのような”傲慢”なレースコントロールはそこにはなかった…

c0041105_15192098.jpg まるでピットサインさえ見ていないのでは?と思えるほど自分の走りに集中し、電波時計のように正確にラップを刻み続ける姿は、彼が”レース”をしている相手が8秒後方で肉弾戦を繰り広げているアンドレア・ドヴィツィオーゾやニッキー・へイデン達ではないことをはっきりと物語っていた…

 レース前、いつもなら余裕さえ感じさせる振る舞いを見せる”定位置”のポールポジションのグリッドでも、ロレンゾはこれまで見せたことがないような張り詰めた雰囲気を醸し出していた
 自身のツイッターのPRボードも、そして彼へのメッセージを掲げることもなかった

 そして完璧なレースでチェッカーを受けた後の派手なウィリーとパフォーマンス、さらにはチームとブリジストンに感謝を述べながらも、病室のチームメイトには言及しなかった

 そう、この日ロレンゾは、わずか2週間前にあれほどの動揺を見せていたバレンティーノ・ロッシの不在という異常事態に対し、パーフェクトな対処法を身につけてきたのだ

c0041105_15194337.jpg 迫りくるM1のエキゾーストノートが聞こえなくてもマシンにムチを入れることができる精神力を
 青と黄色のニンジンが目の前にぶら下がってなくてもハイペースを刻み続けることができる冷静さを…

 そして、大英帝国のファンの前でビートルズを模したファンサービスでレースを締めくくった彼は、ロッシのいないグランプリへの対処法を、世界中にアピールしているようだった

 しかし、世界中のファンにそれを受け入れてもらうため、まだ成すべき事があることは、ロレンゾ自身が一番良く知っているだろう

 バレンティーノ・ロッシという、記録と記憶の巨大な塊を打ち消す方法…それは、勝つだけでも派手なパフォーマンスを見せることでもなく、グランプリ史上に永遠に刻まれるようなバトルの主人公にならなければならない

 そしてロレンゾがその主人公を演じるなら、ロッシほど”脇役”にふさわしい相手はいないだろう
  
 今、舞台の幕はまさに上がろうとしているのか、それとも…
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by taros_magazine | 2010-07-05 15:21 | motorcycle diary
"without him (part 1)" (MotoGP 2010 Round-4 Italy)
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 彼は、行く手を阻む高くそびえる壁でもなく、視界をさえぎる目の上のタンコブでもなかった
 彼は、自分を限界の向こう側に誘う重力であり、そしてレースを走る目的そのものだった

 バレンティーノ・ロッシのいないサーキットに一人放り出されたホルヘ・ロレンゾは、あの悲劇的なクラッシュ直後からロッシの残像を求めて彷徨い続けているようだった

 グリッドではいつもの”傲慢”なメッセージボードのかわりにロッシへの想いを表した
 レースではまるで地に足がついていない走りで、ダニ・ペドロサを易々と逃がした

c0041105_145942.jpg そして耐え難い屈辱的なリザルトであったにもかかわらず、"VALE46"の黄色いTシャツを着てポディウムに現われたロレンゾ

 それは、このムジェロに詰め掛けたチームメイトのファンのため、そして何よりもこのレースで彼が感じたあまりにも大きな心の隙間を埋めるため…

 しかし、このロレンゾの行為に対し、イタリアのティフォージ達は強烈な拒絶反応を示した

 この日、キレにない走りで2位に甘んじたロレンゾが見せたロッシへの”敬意”は、王者ロッシへのあふれる”愛”を隠そうともしないイタリア人にとって”侮辱”に等しい、到底受け入れられない行為だった

 ロレンゾが望んだものとは180度反対のはずだったムジェロの反応…
 しかし、皮肉にもこの瞬間、彼の胸にあいていた大きな穴は見事に埋まった

 彼にとってロッシは、壁でもタンコブでもなかった
 彼にとってロッシは、倒し、踏み越えていくべきライバルなのだ

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 沸き起こるブーイングを受け入れ、そして最後には笑みさえ浮かべてみせたロレンゾ
 
 ロッシ不在のグランプリで、ロッシの”存在”がロレンゾをさらに速く、強くしていく
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by taros_magazine | 2010-07-05 15:00 | motorcycle diary