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"愚か者の狂気" (MotoGP 2009 Round-13 SAN MARINO GP)
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 ”狂気”
 予選でのバレンティーノ・ロッシのラストアタックを見た時、瞬時にこの言葉が込み上げてきた

 残された時間は3分弱、アウトラップの後の1発勝負…
 それは、予選用のスペシャルタイヤが用意されていた昨シーズンまでならさておき、通常のレースタイヤではあまり意味がない行動に思えた

c0041105_9424299.jpg 事実、ロッシよりも数分長くタイヤを暖める時間のあったはずのホルヘ・ロレンゾもベストラップをたたき出すまでに3ラップ、ダニ・ペドロサも4ラップを要していた

 しかしロッシはアウトラップで感触を確認すると、最後のチャンスであった次のラップで一気にペースを上げた

 全セクターで自己ベストを更新したその走りは、今シーズン彼が見せてきた計算し尽されたような"perfect"なものとはまったく異なるものであった

 それは、一瞬にしてすべてを灰燼に帰することも厭わないような、あまりに危険で、それでいて妖しい輝きを放つ稲妻のように激しいものだった

 今シーズン、ただ完璧な勝利をめざして修行僧のように感情を押し殺して冷徹な走りを貫いてきたロッシ…
 その彼がなぜこのような”狂気”に満ちた走りをこのミサノで見せたのか?

 それは彼のスペシャルヘルメットが雄弁に語っていた
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 様々な憶測やエクスキューズが関係者から語られた前戦インディアナでのクラッシュ…
 あの悪夢のような出来事を、ロッシはどうしても許すことができなかったのだ

 削り取られたポイント差、身体と心に刻まれた痛み、そして何より、あの程度のコースコンディションと挙動に対応できなかった自らの反射神経と技術…

 それらすべてを胸にしまい、自ら”愚か者”の仮面を被ったロッシ

c0041105_9431271.jpg  しかしそんな道化師のような行動の裏には、自分が最高の”王者”であることを絶対に証明してみせるという強烈な意思が隠されていたのだ

 翌日の決勝レース、激しくやり合うスパニッシュ達のバトルを尻目にマシンのコンディションを確かめ、そして中盤でトップに立つとそのまま力の差を見せ付けるようにジリジリとロレンゾとペドロサを引き離した

 そしてトップでチェッカーを受けた後には、125や250ccクラスで走っていた時の様な派手なパフォーマンスを地元のファンの前で披露し、鮮やかに愚か者の仮面を脱いだロッシ…

 その姿は、このところ取り沙汰されてきた『”大人のロッシ”を本気で熱くさせるライダーはいないのか?』という、もうひとつの疑問に対する回答でもあった

 バレンティーノ・ロッシの魂に再び熱い炎を焚きつけたライダー…それは、急成長したチームメイトでも、かつて所属したチームのエースでもなく、前戦でミスを犯した”愚か者ロッシ”自身だった
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by taros_magazine | 2009-09-08 09:14 | motorcycle diary
"Former…" (MotoGP 2009 Round-12 INDIANAPOLIS GP)
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 2005年以前のレースで、バレンティーノ・ロッシが転倒したシーンというものを思い出そうとした

 しかし、はっきりと記憶しているのは2000年のムジェロ…トップを激走するロリス・カピロッシを執念で捕らえたものの、限界を遥かに超えた走りが最後に破綻してしまったレースくらいしかなかった

 この最高峰クラスデビューイヤーの、当時まだ表彰台に立てるかどうかだった頃の転倒が印象に残っているほど、その後のロッシのレースは”磐石”だったということなのかもしれない

 しかし2006年の開幕戦の1コーナーで始まったロッシとグラベルベッドとの”親密な関係”は、もはや見慣れた光景にすらなってしまっている

 ある時はオートバイというものに乗り始めたばかりのビギナーのようにフロントを滑らせ、またある時は精神面の不安定さがそのままマシンに伝わってしまったようなクラッシュを何度も喫した

 そしてこのインディアナの地でも、ロッシと彼のM1は土埃にまみれピットに戻ってきた

 「逃げにかかったホルヘ・ロレンゾに対するチャージが過ぎたのか」
 「ダスティなラインを走った後のグリップダウンが余りにも急激だったのか」

 おそらくどちらの理由も間違いではないだろう
 あのスピード域でのロレンゾのブレーキングに対抗するためには、いかにロッシと言えども相当のリスクを覚悟しなければならないだろう

 その結果、わずかなブレーキングミスによりタイヤが真っ白になるほど砂が浮いていたアウト寄りのラインを走らざるを得なくなり、そして温度の下がったタイヤで強引に切り返したことでフロントとリアを一気に持っていかれた…という理屈で決着することだろう

 しかし、もっと本質的な原因を見逃してはいないだろうか?

 ロッシの長いレースキャリアの中には、今回のインディアナのようなコースコンディションで、この1コーナーのようにラインを外したことは何度もあっただろう
 
c0041105_1528164.jpg 限界を超えたハードブレーキ、強引な切り返し、大きく滑るタイヤ…しかしそんな挙動を物ともせず、誰よりも速くコーナーを立ち上がってくるロッシの姿を何度も見てきたのではなかっただろうか?

 あの2000年のムジェロでの”無謀”な転倒と、2006年のバレンシアでの”臆病”な転倒は、起因する精神状態こそ対極にあるものの、どちらもロッシ自身のライディングスキルとは無縁の”感情”によるものだった

 しかしここ数シーズンのロッシの転倒のいくつかは、かつてのロッシなら”何とか出来たはず”であったように思えてならない

 もちろん、”今のロッシ”が”かつてのロッシ”とは比べようもないほど高いレベルでのレースを強いられているは間違いない
 
 かつて10秒のタイム加算にお釣りを付けて返して勝利したロッシも、今やライバルに序盤で3秒開けられてしまっただけで勝利が限りなく不可能に近いものになってしまっている

c0041105_15284279.jpg しかし、ライバル達ならミスを犯してしまうだろうコンディションだろうと、あるいは無理して転倒してしまうようなペースだろうと、そんな時こそ強さを見せつけてきたのがバレンティーノ・ロッシという”別格”のチャンピオンだった

 それが去年のラグナセカや、今年のカタルニアのようなスーパーな走りを何度か見せるかわりに、その他大勢のライダーと同じような転倒も見せてしまう…

 これがロッシの走りの”振り幅”なのか、それとも近年のハードウェアの進化による副作用なのか…

 その答えは、ポイント争いで”1レース差”に迫られたロッシの、文字通りのホームタウンGPである次戦ミサノでの走りにあるかもしれない

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by taros_magazine | 2009-09-06 15:34 | motorcycle diary