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46% (MotoGP 2009 Round-7 DUTCH TT)
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 バレンティーノ・ロッシのこの週末の過ごし方は極めてシンプルなものだった
 
 『ここで勝った者がポイントリーダー』であり、『ここで勝った者がシーズン最多勝利』というシチュエーションの中、速さ・技術・経験全てが問われるこのアッセンでのレースに対し、ロッシは”速く走って、勝つ”という自身の最もナチュラルな精神状態で望むことができたからだ

 この数年、常に呪縛され続けてきた複雑なポイント計算も必要ない
 この数年、イヤというほど味わわされたマシンやタイヤの有利不利も関係ない

 ただ目の前のレースを全力で走り、最高の勝利を得る…13年前、125ccクラスにデビューした時のように純粋な気持ちでマシンを操るロッシ…
 そんな彼に、この日ついていけるライダーは皆無だった
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 こうして彼が積み重ねた100もの勝利…
 
 その驚異的な数字だけをとっても、彼がこのスポーツの歴史において最も偉大なライダーであろうことを物語るに十分ではあるが、ロッシが真に偉大な王者としての姿を見せてきたのは、彼が勝つことのできなかった117のレースの中にあったと思う

 サテライトチームの"繰り上がりナンバー1"だったセテ・ジベルノーに競り負けたレースを振り返り、『まるでダイジロウとレースをしているみたいだった』と穏やかな表情で語った2003年の南アフリカ

 5年間守り続けてきた王座を自らの転倒で失った直後に、新王者に自分から祝福の手を差し伸べた2006年バレンシア

 そしてオープニングラップの転倒によりシフトペダルを失いながら、神業ともいえるライディングで驚異的なラップタイムを刻むも11位というリザルトに終わったレースで、一切の言い訳をせずに黙ってピットから去っていった1年前のこのアッセン…

 本来なら負の感情が爆発してもおかしくないような状況において彼が見せるこうした態度こそが、積み重ねてきた幾多の記録よりも遥かに雄弁にバレンティーノ・ロッシというライダーの偉大さを物語っているのではないだろうか?
 
c0041105_2305339.jpg この日の大きな横断幕によるパフォーマンスが、これまで99回見せてきたどの演出よりも感動的だったのは、その横断幕に記された100の画像の背後に、勝てなかったレースでの彼の姿をも私達の脳裏によみがえらせたからだろう

 そんな数え切れないほどたくさんの記憶が放つ輝きは、100の優勝トロフィーが放つそれよりも遥かに美しく、そして永遠だ


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by taros_magazine | 2009-06-30 23:14 | motorcycle diary
Big Wave (MotoGP 2009 Round-6 CATALUNYA GP)

 あと300メートルで歴史が変わろうとしていた
 新しい時代の始まりを告げるチェッカーフラッグまで、あとコーナー1つだった

 偉大なるチャンピオンと新進気鋭の英才の全ラップ・全コーナーに亘る技術・体力・頭脳を駆使したバトルは、21世紀の幕開けと同時に始まった”1極支配”に遂に終止符を打つかに見えた
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 このバルセロナの素晴らしいコースで繰り広げられたのは、まるでバレンティーノ・ロッシというライダーが君臨してきた時代を振り返る回想ビデオのようなレースだった

 序盤から先頭に躍り出ると、そのまま追いすがるライバル達を引き連れてラップを重ねる姿は、勝ち続けた2005年までのとにかく速さを見せ付けてきた彼のようだった

 後半、ホルヘ・ロレンゾにかわされ、何度となく並びかけながらも前に出られないシーンは、度重なるマシントラブルやタイヤのパフォーマンスに苦しみ続けた2006、2007シーズンを象徴するようだった

 そして終盤、一旦は見事なオーバーテイクでトップに返り咲いたロッシ…タイトル奪還に成功した2008年の彼…だったが、驚異的なマシンコントロールで差し返してきたロレンゾに先頭を譲ってしまうと、もう”フィナーレ”はすぐそこまで迫っていた

c0041105_23433143.jpg 今シーズン、ここまで決して無理をしなかったロッシが、何度も限界を超えたブレーキングを、寝かしこみを、アクセルオンを繰り返して”勝ちにいっている”状況でありながら、同じマシンに乗るライダーに勝てない…それが”ロッシの時代”の終わりを意味することは誰の目にも明らかだった

 しかし、ロッシは新しい時代の大きな波に飲み込まれることを敢然と拒否した

 レース後自らが振り返ったように、あのコークスクリューのアウト側のダートでMotoGPマシンを切り返した時のように、ロレンゾのインにわずかに空いたナイフのエッジのように細く狭いラインに、彼と、彼が全幅の信頼を寄せるM1は飛び込んでいった…

 時代を変えるということがいかに難しいことなのかを、この日ロレンゾは知っただろう
 
 しかし、押し寄せる時代の波を跳ね返すということが、それよりも遥かに困難であるということを、そしてそれができるライダーこそがバレンティーノ・ロッシだということも覚えておくべきだろう
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by taros_magazine | 2009-06-14 23:46 | motorcycle diary
Eclipse (MotoGP 2009 Round-5 ITALIAN GP)
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 それは、バレンティーノ・ロッシ自身が描いていたレースプランニングどおりだったのかもしれない
 そして、ロッシにとってほんのちょっとの不運…乗り換えたマシンのセッティングや路面コンディションの変化…が、前を行くケーシー・ストーナーやホルヘ・ロレンゾにとっては少しだけ有利に働いただけなのかもしれない

 フロントロウを逃すというまさかの予選順位も、レインタイヤで走った序盤ですぐさま挽回できた
 おそらくはタイトル争いには絡んでこないであろうマルコ・メランドリにこそ先行を”許した”ものの、直接のライバル達とは同じタイミングでピットインし、イコールコンディションでドライの勝負に持ち込み、後はこの”得意中の得意”のコースで存分にその強さ・速さを見せつけてチェッカーを受けるはずだったのに、ちょっとだけ…

c0041105_239124.jpg 果たして、この3位は本当に”運”で片付けられるリザルトだったろうか?

 確かに今シーズンのロッシは、かつてないほどのタイトルへの執念を見せている
 しかし、その執念とは裏腹に『1レースごとの勝利というものへの執着を薄れさせているのではないか?』という疑念を持たずにはいられなかった

 そんな疑念は、このムジェロで払拭されるはずだった

 絶対に勝ちたいホームタウンGP、知り尽くしたトラックとの絶対的な相性、そしてチームメイトに対して遅れをとっている勝利数とポイントを挽回する絶好の機会…

c0041105_2393976.jpg このグランプリに散りばめられたあらゆる要素が、ロッシに対して”勝ちに行くべきレース”であることを示していた

 それでも、ロッシは勝てなかった
 もしそれを”運”と言うのなら、それは気象条件やマシンのセットアップによるものではなく、勝ちに行こうとする意志を最後まで貫くことができなかった彼自身が手放してしまったのではないだろうか…

 スリックで再スタートしたロッシは、その直後のラップをストーナーより7秒近く遅いペースで回ってしまった
 前戦ル・マンのそのトラウマからやっと立ち直ったかに見えた終盤、ファステスト・ラップを叩き出しロレンゾの背後まで迫りながらも、ロレンゾがペースを上げるとその背中を(あっさりと)見送ったロッシ…

c0041105_2310038.jpg 最悪のコンディションの中、一線を超えながらも勝利への執念をぶつけ合ったマティア・パシーニとマルコ・シモンチェリの感動的なバトルや、同じくこの1戦に格別の覚悟で臨んだことが手に取るように感じられたロリス・カピロッシ、マルコ・メランドリ、そしてアンドレア・ドヴィツィオーゾの激走…

 多くのイタリアン・ライダーが鮮烈な走りで大観衆を魅了したこのイタリアGPのメイン・イベント、そのクライマックス…
 
 3位チェッカーを目指して走り続ける”主役”ロッシの姿は、今までに見たことがないほど”普通のライダー”だった
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by taros_magazine | 2009-06-11 23:11 | motorcycle diary