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Masterpiece (MotoGP 2009 Round-4 FRENCH GP)
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 V4型の優位性を揺るぎないものとした86'YZR500、”スペンサー・スペシャル”から脱却した87'NSR500、エンジン革命をもたらした”ビッグバン”92'NSR500…

 いくつものリーディングメーカーが熾烈な開発競争を繰り広げる近代のロードレースの歴史の中でも、斬新なアイデアとテクノロジーでその時代を圧倒した”傑作”と評されるマシンが確実に存在した

 そして、メーカーの威信が懸かったそのマシンには、その時代のエースライダーが跨り、あたかも当然のように勝ち続けた

c0041105_1514290.jpg しかし、4輪のレースに比べて人的要素が大きいと言われる2輪レースでは、その”傑作”は時としてライダーに思わぬ副作用をもたらす”両刃の剣”に姿を変えてしまう
 
 『あのマシンでなくては勝てない』
 『あのマシンだから勝てた』
 他のチームからやっかみ半分で漏れるそんな皮肉は、やがてパドックの外にまで『そのマシンにさえ乗れば勝てる』という理屈になって広まっていくからだ

 そんな”屁理屈”に、ミック・ドゥーハンは他のユーザーに勝たせないことで抵抗し、遂にはエンジンをかつてのスタイルに戻し、そしてそれまで以上に圧倒的な強さを見せつけることで”ライダーズ・パワー”を証明して見せた

 バレンティーノ・ロッシはどうたっだろう?

c0041105_1515752.jpg  125、250と強さを見せつけてきた彼もまた、そうした風評と決して無縁ではなかった
 同じはずのマシンで原田哲也とタイトルを争った時には『アプリリアからの先行開発パーツを優先的に実践投入している』と囁かれた
 
 そして何より、彼の最高峰クラスでの地位を不動のものにした時の傑作マシン…RC211Vの圧倒的パフォーマンスにより、彼の”アンチ”はおろか当のメーカーまでもが”マシンあってのライダー”という思考へと誘導されていった

 そんな風当たりに対して、ロッシはドゥーハンとは180度異なるアプローチで回答を出した

 それまで勝つことすらできなかったYZR M1に乗り換え、1年目にしてタイトルをモノにすると、何度もM1が悲鳴を上げ息絶えた2006年までRC211Vにタイトルを譲ろうとしなかった

 しかし今、三たびロッシに対してあの風評が囁かれ始めてきた
 
 『同じスペックのタイヤなら、ロッシは”4強”の中の一人でしかないんじゃないか?』

c0041105_1523225.jpg この日のノービスライダーのような転倒で、ポイントでも勝利数でも同じマシンに乗る2年目のチームメイト、ホルヘ・ロレンゾの後塵を拝することとなったロッシ…
 
 冷徹な走りでポイントを重ねながらも、かつてのような絶対的な強さをなかなか見せることができない今シーズンの彼は、序盤戦で圧倒的なポイント差をつけられてしまった2006年や2007年よりも、ある意味では深刻な状態に置かれていると言っていいのかもしれない

 おそらく後年”傑作”として語られるであろう09' YZR-M1…

 そのマシンとのコンビネーションでロッシがシーズンを支配するためには、次戦のホームタウンGPで有無を言わさぬ速さを、そしてその傑作マシンのパフォーマンスをも超越するような、稀代の傑物:バレンティーノ・ロッシ自身の絶対的な強さを見せつけることが必要だろう
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by taros_magazine | 2009-05-31 15:11 | motorcycle diary
18番目のライダー (MotoGP 2009 Round-3 SPANISH GP)
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 ほんの数年前まで、多くのファンや関係者が『ロッシを王座から引きずり落とすのは彼だ』と思っていた
 
 マルコ・ルッキネリやフランコ・ウンチーニを思い出させる、流麗にして時に熱い”正統派”のイタリアン・ライダー
 サテライト・チームで強烈な印象を残し、2008年、遂に迎え入れられたワークスチーム…しかし、そこでの日々は想像を絶する苦難の毎日だった

c0041105_23443695.jpg  チームメイトであるディフェンディング・チャンピオンにはラップタイムで3秒もの差をつけられた
 ブービー争いに終始し、ペースを上げればたちまちダートに飛び出した
 そして怪我の情報が伝わると、それはチーム退団どころか”引退”までささやかれた

 そんなマルコ・メランドリにとって、2009年は自らの存在意義を満天下に問う重要なシーズンになるはずだった
 
 かつては一蹴できたマシン、そして昨年は追いかけることも難しかったマシン…カワサキのマシンで走ることで、過去の、そして現在の彼自身のポテンシャル=”勝てるライダーであること”=を証明できるに違いないと思っていた

 しかし、彼の決意は経済の荒波を真正面から受け、大きく揺らいでしまった

 走るはずだったチーム、乗るはずだったマシンを失いかけた彼が、いわば”数合わせ”同然の扱いでMotoGPに滑り込んだのは開幕のわずか一月前だった
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 天候に翻弄された開幕戦カタールこそ思うような走りはできなかったものの、続くもてぎで6位を獲得すると、14万人もの大観衆を集めたこのヘレスでは5位に食い込んでみせた

 皮肉にもカワサキワークスの撤退が、メランドリ自身の実力を証明することになったのだ

 不況を口実にした”撤退ブーム”の犠牲者と思われていた彼が今、MotoGPという機械との極限のパートナーシップが求められる世界の中で、人間のパフォーマンスがどれほど素晴らしい結果をもたらすことができるのか、というこのスポーツの本質を満天下に知らしめる象徴的存在になったのだ

 これからラウンドを重ねていくにつれ、チームの総合力の差がマシンの戦闘力の差となってくるかもしれない。勝利も、表彰台も手の届かない夢に終わるかもしれない

c0041105_2345288.jpg でも、彼が”終わったライダー”でないことは世界中が認めている
 
 そして、レースを走ること、フィニッシュできることにこれほどの喜びを感じることができるチームに対し、きっと多くのファンが勝者に勝るとも劣らない賞賛を贈るだろう
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by taros_magazine | 2009-05-15 23:50 | motorcycle diary