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Easter (MotoGP 2009 Round-2 Japanese GP)
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 ずっと彼に憧れ続けてきた

 その速さ、強さ、放ち続けるオーラ、すべてを支配するようなカリスマ性…
 彼は、ホルヘ・ロレンゾが望むすべてを持っていた

 だから、250ccクラスでどれほどの勝利を積み重ねても、どんなに圧倒的な強さでタイトルを獲得しても、彼は手の届かない”雲の上の存在”だった

c0041105_2352856.jpg だからこそ、エース待遇が約束されていたであろう他のチームではなく、彼と同じチームで、彼と同じマシンで走ってみたかった

 その彼は、チームメイトとなることに難色を示したとも伝えられた
 いざシーズンが始まると、契約するタイヤメーカーの違いを理由に彼との間には厳重な”壁”が築かれてしまった

 それでも、コース上でロレンゾが見た彼はやっぱり光り輝く”別格”な存在だった
 ともにマシンを並べたパルクフェルメで、一緒に立ったポディウムで、彼に話しかけられ、彼とシャンパンファイトすることが心から嬉しかった

 もしかしたら、そんな気持ちが250や、あるいはこのMotoGPクラスの”その他大勢”のライダーをロレンゾが抜き去る時のような切れ味を、彼に対してだけは鈍らせていたのかもしれない

c0041105_236061.jpg それは、ポール・ポジションを獲得しながら、最後まで2位を走行する彼に並びかけることをしなかった昨年のへレスや、何度もためらった後でやっとマージンを残しながらオーバーテイクして初優勝したポルトガルからも見てとれた

 彼に良く似たゼッケンを外し、彼と同じタイヤで走ることになった今シーズン…

 テストや開幕戦での各セッションのタイムを見る限り、ロレンゾと彼の差は無いに等しいものだった
 ロレンゾは、去年彼があれほど苦しんだタイヤコンバートを、新レギュレーションの短いセッションの中でいとも簡単に克服して見せたのだ

 それでもまだ、ロレンゾ本人だけが彼との”差”を意識し続けているようだった

 そして、遂にロレンゾと彼は2年目の決戦の場で相まみえた

 まるで何かを逡巡するかのように、彼の影を踏まない距離でのランデヴー走行をしばらく続けた後、ロレンゾは昨年と同様にマージンを少し残して彼を差しにいった

c0041105_2363774.jpg しかし、この日明らかにペースの上がっていないように見えた彼は、すぐさまロレンゾを厳しく差し返してきた

 その短い応酬が、ロレンゾの本能を目覚めさせた
 ”雲の上”にいた彼が、今まさに”手の届くところ”にいることに遂に気づいたのだ

 長いストレートの後のハード・ブレーキング…ホルヘ・ロレンゾが伝家の宝刀を抜くと、バレンティーノ・ロッシにはもう抵抗する余力は残っていなかった…

 去年、彼がタイトルを決めたこのもてぎに、自らの”王国”の旗を誇らしげにたなびかせたロレンゾ

 これからは、憧れ続けた彼から辛辣な言動を浴びることも増えるかもしれない
 でも、もうロレンゾはためらわない。相手が誰であろうと遠慮などしない

 あの手がつけられないほど速く、傲慢なまでに強いロレンゾ・ランドの国王が遂にMotoGPに降臨した
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by taros_magazine | 2009-04-29 02:38 | motorcycle diary
CHANGE (MotoGP 2009 Round-1 Qatari GP)
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 何もかもが、昨年と同じように見えた
 
 予選タイムでバレンティーノ・ロッシにコンマ5秒もの大差をつけたケーシー・ストーナーは、1コーナーを制するとそのまま後続を振り切りにかかった
 そしてわずかに出遅れたロッシがストーナーの追撃体制に入ったとき、その差は約3秒にまで開いていた

 ロッシがペースを上げ、その差を2秒まで削り取ると、ストーナーも測ったようにスパートして再び間隔を広げ、ついに最後まで鍔迫り合いをすることなく、それぞれ単独走行でチェッカーを受けた2人…
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 それは、昨年、そして一昨年と何度となく見せ付けられたストーナーの”必勝パターン”そのものだった

 幾多の激震が襲ったオフシーズン、さらには前代未聞の決勝レース1日順延という異常事態も、レースシーンには微塵の変化ももたらさなかったかのようなリザルト…
 
 しかし、その2人の走りの本質は、これまでとはまったく違っているように見えた

c0041105_22274295.jpg 勝ったストーナーは、型落ちのRC211で最高峰クラスにデビューした時のように、あれほど従順にみえたデスモセディッチをねじ伏せるようなライディングで走り続けていた
 
 何度もエンジンをオーバーレヴさせ、跳ねまくる前後のホイールを全身でコントロールするその走りは、86年のじゃじゃ馬NSRを操るワイン・ガードナーや、ダンロップタイヤを120%の集中力で使い切った89年のウェイン・レイニーを彷彿をさせるほど激しいものだった

 一方のロッシもまた、昨年までとはまったく異なる”哲学”を持って走っているようにみえた

 初めてタイトルを”失う”という経験をした2006年、そして初めて”奪還”というものを経験した2008年… 
 その二つの経験からロッシが学んだもの…それは自らの才能と実力だけでは抗いがたい”現実”という巨大な壁だった

c0041105_22281568.jpg  そして3年ぶりにディフェンディング・チャンピオンとして迎えるレースで彼が見せた走りは、勝ち続けていたあの頃はもちろん、チャレンジャーとして臨んだ過去2シーズンとも完全に異なる、恐怖すら感じさせるほど冷徹なものだった

 射程距離まであと一歩と迫りながら、あえて急激なペースアップをせず、コンマ1秒ずつディスタンスを削り取っていき、残り集回数が少なくなればターゲットを前から後ろに変更し、獲得しうる最大のポイントを確実にモノにするような走り…
 
 それは、時にマシンにハンデを負いながらも王者として君臨し続けたエディ・ローソンや、何人ものライバルの悲劇的なクラッシュを目の当たりにすることで、自らに決定的に足りなかったものを知り、そしてついに王座を獲得した93年のケビン・シュワンツを思い起こさせるような強固な意志を感じさせるものだった

 一見、見慣れた光景が淡々と繰り広げられた09シーズンの開幕戦…
 しかし2人のスピードスターがこの砂漠のサーキットに携えてきたスピリットは、昨年までとは根本から変化していた

 ”神の領域”に達してなお、進化しつづけるロッシとストーナー
 2つの巨星は、他の星たちをも巻き込みながら、グランプリをさらに激しく変化させていくだろう
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※mainsiteの方は都合によりただいま更新が滞っております。申し訳ありません
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by taros_magazine | 2009-04-19 22:26 | motorcycle diary