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The Great Journey (MotoGP 08' Round-15 Japanese GP)

c0041105_23273739.jpg ビートルズが解散した1970年、自分は4歳だった
 もちろん、リアルタイムで彼らを見たことはないし、彼らの音楽に人生を左右されたわけじゃない
 でも、ビートルズというバンドがこの世に存在していたのと同じ時代に生きていたというそのこと自体が、何か自慢気に感じられたものだった

 マイケル・ジョーダンがNBAでプレイしていた頃、自分はBSで放送されていたシカゴ・ブルズの試合に熱中していた

 重力や慣性の法則に逆らうかのような空中での身のこなしや、そのカリスマティックな雰囲気…『バスケットボールの100年の歴史はマイケル・ジョーダンをプレイさせるためにあった』という言葉に酔い、そして彼のプレイを生中継で見ることができる時代にいることに感謝した

 そして今…
 バレンティーノ・ロッシというライダーの走りを見ることができる時代にいるということが、心から幸せだと思う

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 コースとの相性、マシンのセットアップのスケジュールを狂わした金曜日の雨、ケーシー・ストーナーとのポイント差…

 悲願のタイトル奪還に向けて、このもてぎにちりばめられたありとあらゆる条件は、ロッシに”勝たなくてもいい”という結論を指し示していた

 125や250の頃の彼だったら、迷わず勝ちに行くことだろう
 ホンダに乗り始めた頃でも、きっとそうだっただろう

c0041105_23334171.jpg しかし、失って初めて知ったタイトルの重さ、年々シビアになるマシン開発、急成長を見せる若いライバルたち、そして何より一緒にヤマハへついてきてくれたチームスタッフのために、この決勝で最優先しなければいけないものは何なのか、そしてそのために彼がすべきことは何なのか…それはきわめて明白なはずだった

 それでも、ロッシは胸にこみ上げてくる熱いモノと格闘していた

 『何のためにヤマハに移籍したのか?』
 『ポイントを重ねるためにレースをするのか?』

 ”勝って決めたい”という気持ちと、”ここで確実に決めておきたい”という気持ちの狭間で、ロッシは激しく揺れ動いていた

 そんな時、彼の背中を押したのは…

c0041105_23295898.jpg ちょうど1年前のこのツインリングもてぎ…めまぐるしく変わるコンディションの中で、もがき苦しんでいたロッシをFIAT YAMAHAのピットから見守っていた彼…
 そして、そのわずか2週間後に雲の上へと旅立ってしまった彼…

 その彼がGPデビュー戦で見せた何者も恐れない果敢な姿…ロッシの”レーサー”としての原点でもあったその姿と、彼の魂をその身に纏ったロッシに、もう迷いはなかった

 14ラップ目、決してセーフティとは言えないオーバーテイクでトップに立つと、2006年の開幕戦…そのオープニングラップの1コーナーから始まったロッシの長い旅をしめくくる最後の戦いが始まった

 あの転倒から49のレース、1,274ラップの長い道程を、ある時は歓喜の中で、ある時は冷たい雨の中で、そして時には薄暗いマーシャルカーの中で旅してきた

c0041105_2330467.jpg まるでそんな長い旅路を暗示していたかのように、2007年のへレスのコースサイドでなかなか倒れなかった8本目のピン…それを今度こそ綺麗に、そして力強く倒すために最後の10ラップを激しく攻め続けるロッシの姿…
 それはまさしく、2位や3位の表彰台ではなく、勝利をもぎ取るために攻め続けたあの日のノリックの姿そのものだった

 「あと2年、このチームで走る」という彼の発言…それは、残り2本のピンをも倒してみせるという決意表明だろう

 残りの2本…それは、もしかしたら大きなスプリットなのかもしれない
 でも、それを獲れるのも彼しかいないだろう

 そして、そんな瞬間をこの目で見ることができた時、心からこう思えるだろう
 『モーターサイクルレースの歴史はバレンティーノ・ロッシというライダーを走らせるためにあった』と…
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by taros_magazine | 2008-09-29 23:24 | motorcycle diary
"without asterisk" (MotoGP 08' Round-14 Indianapolis GP)
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 雨のレースでは、レーシングライダーという者が普段心の奥にしまい込んでいるある種の”葛藤”というものを垣間見ることができる

 些細な操作ミスが、あるいは一瞬の判断ミスが自らの命を奪いかねないこのスポーツの”業”を十分に理解しながらも、並外れた闘争本能と自らの技術に対する自身で限界に挑む彼らが、狭い視界と想定外のマシンの挙動に直面したとき、まるで死神とタンデムしてしまったかのように、心を乱し身体を硬直させてぎこちない走りに陥ってしまう

c0041105_21555978.jpg その時、彼らは転倒しないライディングを心がけながら周回を重ね、チェッカーや赤旗が振られるのをひたすら待ち続ける一方で、ここまで耐えて守ってきたポジションに、あるいは目の前にあるさらに上の栄光に固執する…

 このインディアナのGPをはじめ、4輪のF1イタリアGP、そして先週のスーパーバイク選手権と、週末にテレビで見た3つのレースはすべてウェットレースだった

 F1ではレース開始早々から心が”折れて”しまったドライバーもいた。乾いたレコードラインの奪い合いの中で、濡れた芝生に他のマシンを押し出してでも前に突き進むドライバーもいた

 スーパーバイクでは清成龍一が素晴らしいテクニックで雨を克服した陰で、トロイ・コーサーはレースの中断を訴えるアクションを何度も見せた

 そしてインディアナ…

c0041105_21562672.jpg ニッキー・ヘイデンとのバトルを制し、バレンティーノ・ロッシがトップに立つと、金曜日からこの伝統あるレーストラックを悩ませ続けてきたハリケーンがまたもや牙を剥いた

 スタンドに近いセクションではゴミが飛来し、インフィールドでは折れた木の枝が舞っていた
 仮設のホスピタリティブースは崩壊し、暴風にあおられたクラッシュパッドは風船のように激しく揺られていた

 レースの継続はロッシの”左手”にかかっていた
 彼が左手を軽く挙げれば、それで念願のタイトルに王手をかける4連勝と25ポイントが転がり込んでくることは容易に推測できたからだ

 しかし、彼の左手は最後までハンドルバーを握ったままだった
 序盤から何度もマシンが真横を向くようなスライドを味わいながらも、彼はレースオーガナイザーが赤旗を提示するその瞬間まで戦い続けた

c0041105_2157982.jpg もしかしたら、それは賢明な判断ではなかったかもしれない
 むしろ新しく舗装し直された路面や悪天候の原因を考えれば、彼は左手を挙げるべきだったのかもしれないし、彼自身ですら走りながら赤旗を願っていたという

 それでも彼が自らレースを終わらせようとしなかったのは…
 それは彼のプライドにほかならない

 2006年、『度重なるロッシのマシントラブルがあったから…』
 2007年、『ブリヂストンタイヤの圧倒的パフォーマンスのおかげで…』

 MotoGPクラスの創設以来ロッシが全霊を捧げて守り続けた”王座”は、皮肉にも彼が失ったことでさまざまな”アスタリスク”を付されてしまった

 しかし今、再びその座に返り咲こうとしている彼は、そんな”注釈”を抜きにした純粋で美しいタイトルを欲しているのではないだろうか?

c0041105_2159383.jpg そのためにも、このアメリカンモータースポーツの聖地で、そこに集まった目の肥えたファンに、バレンティーノ・ロッシという”王者”の存在をその目と記憶に刻みたかったのではないだろうか

 この日、ロッシが吹き荒れる嵐の中でさえも必死に守ろうとしたその”完全なるタイトル”は、まもなく海を越えてこの日本の地で完結することになる

 その時、日本のファンが目にする”チャンピオン”バレンティーノ・ロッシの姿は、いつもの笑顔なのか、それとも…


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by taros_magazine | 2008-09-16 22:15 | motorcycle diary
four seasons
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 どこへ行くとも決めず、ただ何となく釣りがしたいという気持ちで車を走らせると、大抵の場合いつも同じ場所にたどり着く

 そこは、何時間も高速道路を走ることになる石徹白や忍野ではもちろんない
 思い入れの強い大名倉でも、魚がどこにいるかほとんどわかっている根羽の小川川でもない

 茶畑に囲まれた小さな集落を抜けると見えてくる、古びた橋と青い欄干…そのたもとにある公民館横に車を止め、7月よりもずっと濃くなった緑の中で深呼吸をする

 栃洞川は何の変哲もない、ごくありふれた小さな支流だ

c0041105_2241446.jpg 段戸の原生林を水源とするこの流れは、雨の後でも濁りを気にすることはほとんどない
 早春からドライの釣りを楽しむことができ、時には思いもよらない大物に出会えたりする…そんな飾らない普段着の釣りが似合う渓だ

 だからここでは、息を詰めてライズを狙うような釣りではなく、ただのんびりとフライを流し、魚が遊んでくれるのを待つような感覚で過ごすことが多い

 この日は魚たちもリラックスしているのか、いくつものポイントで大らかに水面を割って出てきた
 25センチはあろうかというアマゴをバラしたのはご愛嬌だったが、最初の堰堤までの短い区間を、いつもよりもゆっくりと釣り上がっていった

 風景が一変したのは、その堰堤を越えてからだった

 いや、正確には見た目はそれほどいつもと違ってはいなかったのかもしれない
 ただ、底に沈む葉っぱの筋まで見えるほど透明なプールや頭上を覆う緑のトンネルが創り出すいつもの“癒し”の景色が、この日は妙に殺伐としたものに感じられたのだ

c0041105_222291.jpg 原因はすぐにわかった
 そのプールの横のスペースには、何カ所もの黒々とした焚き火と乗り入れた車の跡、そして付近にはゴミが散乱していた

 川原に残された、夏休み、そしてお盆休み明けの“名物”…それまでの反応が幻だったかのようにパッタリと途切れてしまった魚の反応に、自分が渓から遠ざかっていたこの1ヶ月余りの間に進んだ季節を痛感した

 キャッチ&リリース区間でもなければ、フライ専用区でもない寒狭上流…ましてやアクセスの容易なこの流れで、シーズンを通じて楽しめることの方がもしかしたら異常なのかもしれない

 5月には何匹ものアマゴがライズを繰り返していた二股手前のプールに群れるカワムツの姿を見て浮かんだのは“限界”という言葉だった

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 その釣行から10日ほどが過ぎたある夜、とあるブログを見ているとあの支流での釣行の様子が記されていた
 ひとしきりコメントを入れ、そしてパソコンの電源を落とし、遅い食事をとりながらも1つのことが頭から離れなかった

 『さっきのアマゴの姿…あれはもしかして…』

 どうしても気になり、ふたたびパソコンに向かい、そして目にしたアマゴ…その体型、パーマーク、そして朱点…それがハードディスクに保存されていたあの日自分が釣ったアマゴとまったく同じだとわかった瞬間、震えるような感動がこみ上げてきた

 あの流れで昨年からいくつもの季節を過ごしてきたであろうあのアマゴは、きっと何人もの釣り人に笑顔をもたらし、そしてその釣り人たちにより再び渓に戻されてきたのだろう

 そして今、過ぎゆく渓流シーズンを前に、このような形でその“生”を目にしたことが、あの日ネットにおさまった姿を見たときよりもはるかに嬉しかった

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*special thanks
"スマイル Days"(by Mr.まっす~)

*today's tackle  
rod:Geroge Selvin Marryat 8'00 #2 (Marryat)
reel:CT 2/3 (Redington) 

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by taros_magazine | 2008-09-10 22:25 | fly fishing diary
"Legend" (MotoGP 08' Round-13 San Marino GP)
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 ただ勝ち星を積み重ねただけでは、決して到達できない領域がある
 どれだけ多くの記録を塗り替えても、それだけでは得られないものがある

 8耐で一度も完走すらできなかったケニー・ロバーツの美しくもはかないそのライディングの残像…
 ケビン・シュワンツ、ミック・ドゥーハンという怪物2人に真っ向勝負を挑み、そして散った94年鈴鹿での18歳のノリック…

 リザルトには何も記されない彼らの強烈な走り…しかしその記憶に刻まれた”感動”は、やがて多くの人々に共有され、そして後世に語り継がれていくことになった

 これこそ、「記録」という数字だけをいくら並べても手にすることのできない勲章であり、たどり着けない世界…”伝説”である 
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 人力だけでは絶対に超えられない壁を、機械を操ることで乗り越えていくモータースポーツはこうした”伝説”の宝庫だ

 この日、もはやアンタッチャブルと思われていたジャコモ・アゴスチーニの最高峰クラス勝利数記録に並び、イタリア人のGP700勝目をも獲得したバレンティーノ・ロッシ…

c0041105_23553575.jpg レース中に裁定の下った10秒のタイムペナルティをコース上でお釣りをつけて帳消しにした2003年のフィリップアイランド
 ブレーキレバーの折れたマシンで驚異的なラップを刻んだ2006年のへレス
 折れたシフトぺダルで800回近いギアチェンジを行い、最後方から追い上げて5ポイントをもぎ取った今年のアッセン
 そして記憶に新しいラグナセカ、コークスクリューでのダート上での切り返し…

 おそらくMotoGPのすべての記録を塗り替えるであろう彼は、その数字上の業績だけでなく、”伝説”というものが紡ぎ出されていく瞬間を、現在進行形で世界中に見せつけている

 レース序盤には、予選でコンマ5秒、決勝日朝のフリー走行では自分より1秒近くも速かったケーシー・ストーナーを、当たり前のように追い詰め、そしてブラック・ホールに引きずり込んだ
 中盤以降は追いすがるロレンゾに対し、今度はキッチリと3秒の差でコントロールするという、ストーナーが自身を自滅に追い込んだタクティクスを、まるでストーナーに見せ付けるかのようにパーフェクトにこなして見せた

c0041105_012741.jpg 週末には早すぎる伝説になってしまった加藤大治郎のメモリアルイベントでスピーチを行い、スタート前のグリッド上ではサッカー界の伝説、ディエゴ・マラドーナと固い握手をかわしたバレンティーノ・ロッシという”生ける伝説”

 その存在を前に、ついにストーナーはレース後白旗を掲げた…

 75ポイントという途方もない差を逆転するためには、それこそいくつもの”伝説”となる走りが必要になるだろう

 そしてそんな走りができるのは、他でもないバレンティーノ・ロッシ以外に存在しない…
 それをこのレースが終わるまで認めることができなかったケーシー・ストーナー

 しかし、彼ならこの屈辱と無念のミサノの日曜日を、新たな”ストーナー伝説”の幕開けとなった日として思い出させる時がきっと来るだろう

 そしてその時、彼が対峙する相手は…
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by taros_magazine | 2008-09-02 00:12 | motorcycle diary