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"Fear the Rossi …" (MotoGP 08' Round-9 Dutch TT)
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 ピットガレージに帰ってきたバレンティーノ・ロッシは、軽く両手を左右に広げて落胆の気持ちを表すと、いつものように足をタンクの上から通してマシンを降りた
 そして何人かのメカニックやクルーと短い会話を交わし、カメラの前から姿を消した…

 オープニングラップ、自らの致命的なミスでランディ・ド・ピュニエを巻き込み、最後尾まで順位を落とした
 それでも、30秒ほどもあったマルコ・メランドリやトニ・エリアスを追いかけ、そして追い抜き、やっとの思いで得た11位、5ポイント…

 しかし、彼がチェッカーを受けたとき、すでにケーシー・ストーナーは圧倒的な速さでのシーズン3勝目を祝うウィニングランの最中で、ロッシを逆転してポイントリーダーに返り咲いたダニ・ペドロサと健闘を称え合っていた

 チェッカー直前に失速したニッキー・ヘイデンをかわし表彰台に滑り込んだコーリン・エドワーズは、終始笑顔でインタビューに臨み、一方のニッキー・ヘイデンも失望の中にありながらも、おそらくは確かな手応えを感じ取っていたことだろう
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 誰もが、ロッシの転倒を『不運なアクシデント』とくくり、そしてそれはこのレースウィーク中に起きた多くの出来事のうちの一つに過ぎないと思っていた
 
 この日アッセンに詰め掛けた10万人近い観客達もまた、最後尾まで順位を落としながら、最後までレースをあきらめずに何度かのオーバーテイク・シーンを見せてくれたことに対し、まるでマラソンの最後尾のランナーに送るかのような拍手で盛り上がってみせた

 だが、ストーナーをはじめとしたライダー達も、そして観客達も何もわかっていなかった

 驚異的なダッシュで逃げていったストーナーのファステスト・ラップからわずかコンマ5秒落ちで、1ラップで30回ほどのシフトチェンジを強いられるこのアッセンの難解なサーキットを、曲がったハンドルバーとシフトペダルの折れたマシンを駆ってロッシが激走していたことを…

 レースを終え、ロッシのマシンに何が起きていたかを知ったライバル達は、おそらく何度もこのレースの映像を見るだろう
 そしてゼッケン46のマシンが映し出されるたびに、ラップタイムが表示されるたびに、彼らはその走りに畏怖するだろう

c0041105_12534888.jpg ピットガレージで、カメラが回っていることを知りながら、大げさにマシンのダメージをアピールすることもなく、静かに去っていったロッシ…

 それは、もしかしたら自らのミスに対する後悔の念ではなく、自分のいないパルクフェルメではしゃぐライバル達に対する無言の”恫喝”だったのかもしれない


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by taros_magazine | 2008-06-29 12:58 | motorcycle diary
"yardstick" (MotoGP 08' Round-8 British GP)
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 ラップを重ねるごとに、ケーシー・ストーナーからコンマ3秒ずつ離されていくバレンティーノ・ロッシの姿が、長い間胸につかえていたひとつの疑問に答えを出した

 『ケーシー・ストーナーというライダーは、いったいどれほど速いのか?』

 最高峰デビュー2戦目にしていきなりバレンティーノ・ロッシを相手にドッグ・ファイトを演じて見せた時からこの日に至るまで、きっと多くのファンや関係者が明確な答えを出せずにいただろう

 
 もう何年もの間、MotoGPではライダーの速さを測る絶対的な基準が存在している
 それは言うまでもなくバレンティーノ・ロッシというライダーの存在である
 
 ロッシに対して『どれほど接近することができるのか』、『何回前に出ることができたか』、そして『何度勝利をもぎ取ることができたか』というような数値によって、他のライダーはその実力を示すことになった

c0041105_012516.jpg アレックス・バロスやカルロス・チェカでは手が届かず、マックス・ビアッジやセテ・ジベルノーでさえもロッシに指先を引っ掛ける距離まで接近するのがやっとだった
 そして2006年チャンピオンのニッキー・ヘイデンや、この日ロッシと熾烈な2位争いを繰り広げたダニ・ペドロサまでもが、その走りの性質においては対ロッシという基準が有効であるように見える

 しかし、ストーナーの速さだけは測定不能だった
 彼がどれだけロッシにタイム差をつけ、何回勝っても、彼自身の持てる速さを正確に現しているようには見えなかった

 その理由も明らかだった
 言うまでもなく、彼の速さを”デスモセディッチ+ブリヂストン”というハードウェアとの”パッケージ”でしか見ることができなかったからだ
 それ故に、マルコ・メランドリはその”パッケージ”を得ることでストーナーとの差の有無を確かめようとし、逆にロリス・カピロッシはその”パッケージ”を捨てることで、自らの速さを証明しようとした

 さらにロッシ自身がストーナーの最大の武器を手中に納め、FIMはレギュレーションまでも変更して、ケーシー・ストーナーというライダーの実力を、グランプリ・スタンダードに照らし合わせようとした

 それでも、ストーナーはロッシを中心とした同心円の輪の中に入ることを拒絶するかのように、BS勢総崩れのカタールで勝ち、このドニントンでは同じパッケージのメランドリに1分半の差をつけて勝利のチェッカーを受けた
 
 しかし、それ以上に衝撃的だったのは、このレース中盤、ペースを上げたはずのロッシをさらに離していったあの走りだ
 
 あのときハッキリと見えたストーナーの”速さ”…あれは、バレンンティーノ・ロッシという物差しでは測ることができない存在が、遂にその姿を白日の下に現した瞬間だったのではないだろうか?
 
 昨シーズンは自分に言い聞かせるように、そして今シーズンはある種の余裕さえ漂わせながら、インタビュールームでロッシが語る『20ポイントの重要性』…しかし、この日の彼の表情はこの数年で一番引きつった作り笑いに見えた
 さらに、ダニ・ペドロサに至っては笑顔さえ浮かべてストーナーの速さを称えた…

c0041105_0122120.jpg 様々な要因で、これまで意外なほどバトルにならなかったロッシとストーナー…
 2人があの2006年のカタール以来、久しぶりに真っ向勝負をしたら一体どういう結末を迎えるのか?

 新たなる疑問の答えは、もうすぐそこまで迫ってきているのかもしれない


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by taros_magazine | 2008-06-23 23:55 | motorcycle diary
"Inat" (MotoGP 08' Round-7 Catalunya GP)

 決勝のリザルトを伝える画面の表示…それは、今まで見たこともないくらい”青”と”赤”がごちゃ混ぜになっていた

c0041105_2302320.jpg その時、昨シーズンから身についてしまった悪い癖に気がついた
 何となく勝負に”タイヤ”という要素を絡めることで、リザルトを理解し、納得したような気分になる…
 そんなレース後の生半可な分析を、この日のカタルニアのレースは許してくれなかった
 
 しかし、そのかわりに今のMotoGPで勝てるライダーだけが強烈に放っている個性を感じるシーンをいくつも見ることができた

 もはや完全にエースの座から降ろされ、サテライトチームがライバルとなってしまったニッキー・ヘイデンは、予選で得た好感触を自らを奮い立たせる自信へと昇華させ、敢然とバレンティーノ・ロッシに立ち向かった

 ロッシが最も得意とするセクションで一歩も引かないブレーキング勝負を挑んだその姿は、彼がまだ何一つ諦めていないということを確信させるに十分な意思表示だった

 開幕戦以来勝利から遠ざかってはいても、ケーシー・ストーナーは常に戦闘態勢を整えていた 
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 決してセッティングが出ているとは言えないようなマシンでも、リアが、そしてフロントタイヤが音を上げようとも、彼は絶対に勝負を捨てない
 たとえコンマ1秒ずつ離されていこうとも、勝利の女神が振り向くことを信じ、最後までアクセルは緩めない

 だからこそ、バレンティーノ・ロッシもそんな彼らの”意地”を真っ向から受け止める
 彼もまた最後のスパートの切れ味で、ダニ・ペドロサを逃がしてしまった悔しさに対してせめてもの”意地”を見せてくれた

c0041105_231897.jpg そのペドロサにも、今回ははっきりと”意地”が見えた

 『競り合いに弱い』…そんな風評に対し、彼がとった行動は『競り合いを制する』のではなく、『だったらトコトン逃げてやろう』という強烈な意趣返しだった
 
 そんな彼らを見て、さらなる”意地”を燃えたぎらせているライダーがいる

 手足を骨折していてさえ表彰台に立った(座った?)男、ホルヘ・ロレンゾ…
 地元スペインで、口もききたくないライバルの会心の勝利を指をくわえて見ているだけだった彼の意地は、それこそ爆発寸前に違いない

 このカタルニアでいよいよ混沌としてきたマシン、タイヤのパワーバランス…
 そこでモノを言うのは、やはりライダーの”意地”なのかもしれない



※"Inat"・・・たとえどんなに過酷な境遇にあっても、必ず耐えて、そして最後には笑ってみせる、そんな気持ちを、セルビアでは"Inat"(イナット)という言葉で表現するという


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by taros_magazine | 2008-06-10 23:04 | motorcycle diary
夏が来る前に…
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 もう何年も前から、『年末だから…』といって大掃除などしなくなった
 別に部屋が散らかっていようが車が汚れていようが年など越せるに決まっているのだから…

 でも、ことフライフィッシングに関しては、もうずーっと前から『○○の前に△△しなきゃ…』と実践しているコトがある

 それは解禁前に毛鉤を巻くとか、ティペットを新調するというようなごく当たり前の準備とかではなく、それこそやらなきゃやらないで済むようなコトで、しかもやったからといって大した達成感もないようなコトだ

 もう、それを実行する”期限”がギリギリまで迫っていることは明らかだった
 だから平日の朝だというのに向かった先は、この時期のこんな時間にはまず先行者もいなければ魚影もあるかどうかあやしいような藪沢だった

 今にも踏み抜きそうな木造の橋を渡り、朝露に濡れた草木をかき分け土手を降りその沢に降りると、幾筋もの蜘蛛の糸が水面の上に架かっていた

c0041105_23441057.jpg 『ちょっとだけ、遅かったかな…』

 そう、本当は蜘蛛の糸が張り巡らされる前に来たかったのだ
 ティペットを絡めとる蜘蛛の糸、フォルスキャストを許さない生い茂る草木、容赦なくまとわりつき、刺していく虫たち…

 それらによってこの沢がクローズされる前に、ここで釣りをしなければ…それがこの日の、そして自分の夏が来る前の年中行事なのだ

 この沢にはいろんな思い出がある
 上流部の小さなプールでは、漁協のエリアである長野県側から禁漁の愛知県側に向かってキャストし、上流のキャンプ場にある管理釣り場から”密放流”されたレインボーを何匹もキャッチしたこともあった
 ドライブの途中、土手から見ている妻に魚影を指差してもらい、そこをめがけて落としたフライに一発でグッドサイズが飛び出し、2人で狂喜したこともあった

 この日顔を見せてくれたのは、数匹の小型のアマゴだけだったけれども、ここで釣りをしている間中、かつてのいろんな出来事を思い出し、とても穏やかな時間を過ごすことができた

c0041105_23445567.jpg 次に向かったのも、やはりあと一ヶ月もすればキャストはもちろん、歩くことさえままならなくなるような谷だった

 寒狭に残された数少ない天然イワナの棲家…しかし、そこで感じたのはかつてない危機感だった

 いつのまにか川底は堆砂でフラットになり、至る所で伐採された短い丸太が川の流れを不自然に蛇行させていた 
 
 いつも必ず反応があった小さなプールのすぐ上流では、赤土がむき出しになった斜面がV字型に大きく削り取られていた

 それでも、イワナは確かにいた。10センチにも満たないイワナが、今までのどのポイントよりも上流でやっと釣れた…

 もうすぐ夏が来る
 この谷もしばらくの間、釣り人から少しは開放され、そのまま秋を迎えるだろう

c0041105_23452021.jpg そして、その次の夏が来る前…この日流れに戻っていった小さなイワナはどうなっているのだろう…


*today's tackle  
rod:Geroge Selvin Marryat 8'00 #2 (Marryat)
reel:SK-1 (Caps)



【information】
 現在、田口方面から大名倉へ向かう県道が、松戸橋上流で土砂崩れのため通行止めになっています(国道257号線経由で迂回可能です)。
 また栗島川沿いを走る県道も、西川合流点下流付近で工事のため通行止めとなっています(栃洞川~西川ルートで迂回可能です)。
 どちらも6月中をめどに復旧の見込みとのことですが、釣行の際は十分お気をつけください
 (※詳細は設楽町観光協会のサイトの新着情報(6月4日付)でご確認ください)


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by taros_magazine | 2008-06-06 23:31 | fly fishing diary
" I´m sorry for him, but happy for myself "(MotoGP 08' Round-6 Italian GP)

 よく『レースにアクシデントは付き物だ』と言うセリフを聞く
 そして、ある一面でそれは正しいと思う

 ただ、”アクシデント”と呼ばれるものは、モータースポーツのレースに限らずどんなスポーツにも伴うもののはずなのに、ことモータースポーツに関してこの言葉が用いられる時、自分は何とも言えない嫌悪感を抱かずにはいられない

 モータースポーツにおけるアクシデント…それは多くの場合、マシンの破片が散乱する現場であり、ライダーが路面に叩き付けられるシーンだ
 そして、その”不測の事態”と言うにはあまりにもシリアスなその瞬間は、間違いなくそれ自体が悪夢である
 
 しかし、レースにとっての真の悪夢は、起きてしまったその出来事が”アクシデント”という言葉で免責されるのだ、という考え方にあるのではないだろうか?
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 その身も凍るような”アクシデント”が起きたのは、250ccクラスのレースが最終ラップを迎えようとしたホームストレートだった
 ストレートスピードに勝るエクトル・バルベラにスリップストリームに入られるのを嫌ったマルコ・シモンチェリは、マシンが今まさにトップギアに入ろうかという瞬間、マシンを勢いよく左に振った

 その時、スリップから抜け出し、彼の左側からパスしようとしていたバルベラのフロントまわりと、シモンチェリのマシンが接触した

 フロントをロックさせ、縦回転して一瞬のうちに大破するバルベラのマシン、コース脇のフェンスに向かって弾かれていくバルベラ、そして凍り付くムジェロサーキット…

 自力で立ち上がったバルベラの姿を見た時、この”アクシデント”が”悪夢”たり得なかったことに安堵できるはずだった
 しかし、その後で国際映像に映し出されていたものは、起きてしまった”アクシデント”と同様か、もしくはそれ以上に見たくない光景だった
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 接触時の挙動、さらにはストレートで後ろを振り返り、何が起きたかを把握していたはずのシモンチェリは、派手なウィリーと大きなガッツポーズでチェッカーを受けた。大破したバルベラのマシンのすぐ横で…

 さらにバーンナウトとシャンパンファイトで初優勝を満喫した後、インタビューで開口一番『最高の日だ』と切り出し、バルベラとの接触については『申し訳ないとは思うけど、自分はハッピーだ』と言い切った

c0041105_23314333.jpg スリップに入られたくないライダーと、少しでもスリップを有効に使いたいライダーが接触してしまうことは、”レース”が順位を争うものである以上、起こりうることだろう

 でも、”レース”だからこそ、モータースポーツだからこそ、その起きてしまった”アクシデント”に対して、リザルトやファンサービスよりも大切にしなければいけないことがあるように思えてならない

 バレンティーノ・ロッシがこの日、地元で会心の勝利を飾った後、バーンナウトもいつもの大仕掛けなファンサービスもせずに足早にピットに戻ったのは、何も熱狂する観衆に取り囲まれることを恐れたばかりではない

 それは、今彼が最も大切にしている”チーム”のために、勝利の喜びとマシンのデータを一刻も早く届けようと考えたからだろう

 同じように地元で勝利を飾ったシモンチェリにも、派手なパフォーマンスをする前に、するべきことが、あるいは思いをめぐらせなければならない事があったのではないだろうか?

c0041105_23324411.jpg ニューヒーロー誕生を祝うはずのウィニングラン…
 しかし、勝利を決定付けた”アクシデント”が場内のモニターに何度もリプレイされるにつれ、歓声と拍手が少なくなっていったことに、はたしてシモンチェリは気づいたのだろうか?


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by taros_magazine | 2008-06-02 23:01 | motorcycle diary