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only one

 通勤の車が長い列をなす反対車線…
 いつもならひねくれた優越感と、ほんの少しの罪悪感を感じながら眺めるそんな光景も、この日はただぼんやりと見つめるだけだった

c0041105_22244543.jpg 市街地を抜け、山の緑が間近に見えるところまで来ても、前を走るもみじマークのセダンの後ろをダラダラと走り続けた

 『仕方ない。寒狭”でも”行くか…』

 岐阜、あるいは長野方面への遠征を計画していた平日釣行は、時間的な都合から急遽予定変更となり、結局、半日で行って帰ってこられる寒狭”しか”選択支がなくなってしまったのだ

 『石徹白じゃ、きっと今頃そこらじゅうでライズしてるんだろうなぁ…』
 『この時期の下伊那はベストコンディションなのに…』

 そんな後ろ向きな気持ちに輪をかけるように、いつも駐車する公民館横のスペースには、釣り人のものであることが一目でわかるワンボックスカーと、その横で今まさに身支度を整えている釣り人の姿があった

c0041105_22252711.jpg ただ、この日は先行者がいようと、多少増水していようと自分にはあまり関係なかった
 『どうせ時間もないし、ほかに行く先もない…ここらを適当に釣り上がって、帰りにあそこの堰堤上のプールをのぞいて、ライズでもあれば軽く竿を出してオシマイ…』そんな程度でこの日は過ごすつもりだったから…

 ワンボックス氏と挨拶がてら簡単な情報交換をしていると、車の傍らに置かれたロッドに自然と目がいった

 『フライロッドだ…』
 無性に嬉しくなり、相手が支度中であるにもかかわらずベラベラと寒狭上流のフィールドについてひとしきり講釈をたれてしまった
 おそらく自分より経験のあるだろうそのフライマンは、終始笑顔で自分の拙いポイント案内に耳を貸してくれた

 お互いに良い釣りができるよう健闘を祈り、ワンボックス氏は上流へ、自分は支流へと向かった
 
c0041105_22255065.jpg 鼻歌で生い茂る草木をかき分け、入渓路の急斜面を降りた
 すぐにこの支流らしい飴色のアマゴがヒットし、その後も何匹かの小ぶりなアマゴが短い釣りを楽しませてくれた

 空を見上げれば文字通りの五月晴れ、後ろを振り向けば新緑のトンネルに木漏れ日が差し込んでいた
 そして、目の前にはいつもの…いや、いつもより一際輝いて見える渓があった

 ”もし、夜明けから石徹白で釣りをしていたら…”
 ”もし、あのときワンボックスを避けて別の支流の向かっていたら…”

 そんな”タラレバ”に、あまり意味はないんだろうと思う
 同じように、この日出かけるときに感じていた”デモシカ”だって、後になれば全然些細なことだった

 ”一期一会”
 どの川のどんなポイントも、一瞬たりとも同じ表情じゃない
 その一瞬一瞬の”出会い”を楽しむことができる場所…それは、その日のその場所に”しか”ない

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*today's tackle  
rod:Rightstaff 7'10 #2 (CFF)
reel:TR-L (abel)


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by taros_magazine | 2008-05-29 22:55 | fly fishing diary
"Champion" (MotoGP 08' Round-5 French GP)
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 ロッシは心から楽しんでいた
 
 出遅れたがために多少無理な走りで前に出て行くことになってしまったコトも、何度となく強引にかぶせてくるペドロサの熱さも、そしてもちろん思い通りに応えてくれるマシンの挙動も…

 彼と同じ”5times champion”のミック・ドゥーハンは、レイニー、シュワンツといったライバルが去っていった後、必要最小限の力で勝利を重ねる走りを確立した
 何度も酷いクラッシュを経験した彼にとって、それは王者で有り続けるための最良の方法であったのだろうし、それを実践できる技術と精神力は賞賛に値するものだろう

 しかしロッシは、それがもう90回も繰り返してきた出来事だとしても、このルマンで感じたような”楽しさ”があるからこそ、もっと速くなるためにさらに高い限界に挑み続け、そしてもっと強くなるためにこれからも努力を惜しまないだろう…

c0041105_2351992.jpg ついにその身に降りかかった破綻を前にしても、ストーナーはあきらめなかった

 「マシンが壊れたから」
 「スペアマシンがレイン仕様だったから」

 何とでも言える状況の中でも、彼は息絶えたマシンをピットまで運び、グリップしないタイヤで、トップを快走するロッシの25分の1のポイントを獲るために全力を尽くした

 ちょうど20年前…彼と同郷の”ディフェンディング・チャンピオン”ワイン・ガードナーは、戦闘力を上げたヤマハと本調子となったエディ・ローソンを相手に苦戦を強いられていた
 
 思うように走らないマシン、手の平を返すメディア、台頭してくる後輩達…
 
 やがて誰からも愛された苦労人チャンプは、マシンやチーム、それにライバルたちに対する怒りを爆発させ、前年のタイトルの価値すら貶めるような言動を繰り返した

 同じようにプレッシャーにさらされているディフェンディング・チャンピオンに、これまで絶対的な信頼性を誇っていたデスモセディッチも、何度も運を呼び込んだ雨もこの日は味方してくれなかったが、ストーナーが見せた純粋な執念は、とても崇高で美しいものだった

c0041105_2353816.jpg 走れば走るほど鬱積していくフラストレーション…ニッキー・ヘイデンは今週もつまらない週末を過ごすことになった
 
 国内タイトルを総なめし、最強のワークスチームからのグランプリデビュー、ついに花開いた2006年、そして屈辱の2007年…

 エースの座を剥奪され、その才能さえも疑問視されるようになってしまった今こそ、あの偉大なチャンピオンのことを思い出してほしい

 1984年、ニッキー同様にアメリカでの華々しい実績を引っ提げ、満を持して乗り込んだグランプリで、慣れないマシンと押しがけスタート、そしてヨーロッパでの生活に追われるように去っていった挫折…
 しかし、彼は88年に再びその場所に戻ると、以前とは見違えるような威厳と自信に満ちたライダーに成長していた

 ”偉大なるチャンピオン”ウェイン・レイニーの3連覇は、屈辱の84年の後も決して自信を失わず、自らの才能を信じ、そして自らの意志で走り続けたからこそ、掴むことができた栄光なのだ

 ニッキーから笑顔が消えて久しい
 しかし、彼の目は未だ強烈な輝きを放ち、しっかりと前を見据えている
 そしてその目線の先には、きっとあの日のバレンシアと同じような栄光の瞬間が見えているはずだ

c0041105_2355786.jpg "Champion"

 その真の栄冠は、グランプリを、レースを、バイクを愛し、そしてバイクに愛された者に与えられる…



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by taros_magazine | 2008-05-19 23:19 | motorcycle diary
八つ当たり

 この2~3年、地元である寒狭や根羽へ行く回数と、忍野や西野、それに石徹白へ行く回数がほとんど同じような状況だった

 確かに高速道路の整備が進み、下伊那へ行くより石徹白へ行くほうが早かったりするという交通事情もあるだろう
 それに何より”魚影”という部分での魅力も大きい

 しかし、解禁からほぼ地元だけで釣りをしてきた今年、それ以外に大きな理由が…本能的に感じ取っていた理由があったことに気づいた…

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 明け方まで降り続いた雨は、この植林の合間を流れる里川を増水させ、田畑やむき出しの山肌から流れ出た土でその水を濁らせることは容易に想像できた

 そして、そんなコンディションの中で釣りができる数少ないフィールド…比較的川幅が広く、多くの堰堤が水量を調節しているこの支流に釣り人が集中することも予想どおりだった

 平日だというのに、合流点から中流域まで、めぼしいポイントには、どこもかしこも準備中の釣り人やいかにもの車の姿があった
 普段着そのままで川に降りようとする若いルアーマン、フル装備の自分と同年代の2人組、名古屋ナンバー、浜松ナンバー、豊田ナンバー…

 それらを横目に見ながらなんとか潜り込んだポイントでは、#18のフックすら口にできないようなサイズの魚が何度かアタックしてきただけだった…

c0041105_21545445.jpg 相変わらずコンディションは最悪だったが、混雑を避けて実績のある上流域に向かった

 中流域ほどではないものの、それでも普段の平日よりは格段に多い釣り人に閉口しながら目的のポイントに着くと、そこには真新しい轍が濡れた芝生にくっきりと残されていた

 小さな流れの細い筋を、いつもより慎重に、そして入念に叩くと、いつもより小さな波紋を残してイワナがヒットした

 何とも言えない疲労感に包まれた帰り道、魚籠を腰にぶら下げた初老の釣り人が川から上がってくる姿が目に入った

 それは、この都市近郊の里川ではごくありふれたスタイルのはずだった
 いつもなら『ここにも一人…』くらいの感覚でやりすごす光景のはずだった

 しかし、この日はその姿に強烈な嫌悪感を抱いた
 車を降りて「そんなに持って帰ってどうするつもりなんだ?」と言おうとさえ思った

 でも、それは”八つ当たり”なのだ

c0041105_21565293.jpg いつも『川に立っていれば、それで幸せ』みたいなキレイ事を口にしていながら、お気に入りのポイントで先行者に阻まれ、思うような釣りができなければ、、結局は”魚の数を減らす=自分が釣れる可能性を低くする”行為がやっぱり容認できないだけなのだ

 翌日、地元スポーツ紙の釣りコーナーには、その川での釣果が誇らしげに踊っていた
 ”アマゴ26匹!”という文字と、例によって新聞紙の上に並べられた無数のパーマーク…

 その写真から感じる強烈な不快感は、”命”とか”自然”というもの以前に、その数だけ減ってしまった”自分のターゲット”に対する悔しさなのだと思った

 それに先月の終わりに訪れた根羽川でも、東海豪雨の復旧工事がやっと一段落し、蘇りつつある渓に立ちながらも、復旧工事中に比べて格段に増えた釣り人の姿に閉口した…


 結局、どんなにその川を愛し、どれだけ通いつめても、何人かが魚籠をもってやってきたら、そこはもう渓流釣りのフィールドではなくなってしまう…そんなことを考えるのがイヤで、キャッチ・アンド・リリースの川へ通っていたのがこの数年だったんじゃないだろうか?

 ”魚がいる”、”魚影が見える”ということがC&Rの良さだと思っていた
 でも、本当に大事なのは”魚がいなくならない”ということだと、今あらためて思う

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*tackles  
(Apr 26)
rod:Euflex XFP 6'09 #3 (Tiemco) , reel:CANTATA 2150 (ufm ueda)
(May 14)
rod:G882 8'08 #2 (Scott) , reel:CMR #3/4 (Marryat)

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by taros_magazine | 2008-05-17 21:51 | fly fishing diary
Reconquista (motogp 08' Round-4 CHINESE GP)
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 その瞬間、彼と彼のマシンを包む空間だけが、時間を超えたように見えた

 16ラップ目の後半セクション、長いストレートに向かう手前のコーナーにさしかかったバレンティーノ・ロッシは、それまでよりも明らかに低い姿勢で、そして早いタイミングでスロットルをひねった

 そのロッシを包む空気の変貌を、彼の真後ろで仕掛けるタイミングを計っていたダニ・ペドロサも、瞬時にその本能で感じ取った
 残りラップ数は5周以上…しかし、ダニにとっての勝負所はもう”そこ”しか残されていなかった
 もし”そこ”で捉えることができなければ…結果は…
 
c0041105_23572594.jpg その数ラップ前まで、ダニはストレート区間では敢えて並びかけることをせず、ロッシのブレーキング・スキルを解析していた

 これまで何度となく煮え湯を飲まされてきたロッシとのブレーキング勝負…
 しかし、今のロッシ相手なら、今年のマシンでなら、そして何より今の自分なら…そう信じて選んだ勝負所のストレートエンドで見せた渾身のハードブレーキング…

 グランプリ最強の”ブレーキ・キング”ロッシの背中に触れることができそうな距離までは迫った。でも、そこまでだった

 前を行くロッシと追走するダニ…2人はその後しばらくの間、わずか数メートル、時間にしてコンマ5秒ほどの距離でエキサイティングなレースを”演出”してはいたが、それはダニが見せた最後の”意地”の成せる技でしかなかった…

 バックファイヤーを噴きながら逃げていくロッシの姿…それは、2006年に何度も見せつけられた”最強最速の王者”の姿と寸分違わぬものだったろう

 しかし、ロッシ自身には大きな変化があった

c0041105_012796.jpg  これだけのパーフェクトなレース、そして勝利を手にしながらも、彼は派手なパフォーマンスを一切しなかった

 チェッカーこそウィリーとガッツポーズで受けたものの、すぐにコースサイドにマシンを止め、フロントカウルにキスをし、穏やかな笑みを浮かべながらゆっくりとウィニングランをするロッシ…

 その手に握られていたのは、イタリア国旗ではなく『46』と染め抜かれた黄色いフラッグだった

 きっと、今の彼が伝えたいコトの全てが、このフラッグに凝縮されているのだろう

 ささやかれる限界説に対して、タイヤメーカーの選択をめぐる批判に対して、そして自分を踏み台にしていこうとする若きライバル達に対して、ロッシは黄色いフラッグの下で高らかに宣言したのだ

 『オレがバレンティーノ・ロッシだ!』と…
 
 インタビューの最後に、『これからは自信を持ってチャンピオンシップを獲りに行く』と言い切ったロッシ
 
 そう、バレンティーノ・ロッシは、この日の16ラップ目から、失ったモノを奪い返す旅に出たのだ
 
 いつのまにか”ロレンゾ王国”になってしまった土地を、ニッキー・へイデンが、ケーシー・ストーナーが持ち去っていった王冠を、そして失いかけていた自信と誇りを再びこの手に取り戻すために…

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by taros_magazine | 2008-05-04 23:56 | motorcycle diary