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心から…
 
 そこにいるのはわかっている
 たとえ、もう半年この場所に近寄っていなくてもわかる。こんな日には絶対にいると…

 この流れでは、いつもそう信じてキャストしてきた
 そしてその思いが裏切られることはほとんどなかった

c0041105_21503432.jpg 今年初めての寒狭支流での釣り上がりに選んだのは、この日と同じような雨の後には何かが起きる魔法の川…
 
 狙い通りにイワナはヒットした。この流れのレギュラーサイズとでも言うべきイワナが…
 しかし、その愛嬌ある姿を今年も確認できたことに安心する裏側で、何か満たされない感覚がヒットからランディングに至るまでの間中、胸につかえていた

 その原因が何なのか、だいたい見当はついていた 
 でも、それを否定したくて早足でポイントを叩いて釣り上がった
 
 そしてやはりレギュラーサイズのアマゴを何匹がヒットした後も消えないその感覚に突き動かされるように、予定にはなかった淵を目指しその小さな谷から上がり、上流を目指した

 過去に何度も尺アマゴにラインを切られたその淵…しかし、この日は最後まで魚の反応はなかった
 そして胸に支えていたモノはいよいよ押さえがたい衝動となっていた

 『もっと大きな魚を、もっと重く激しいファイトを…』

c0041105_21561064.jpg そんな気持ちになったのは何もこの日が初めてではなかった
 下伊那で尺近いアマゴを連発した時も、あの西野川の後も、もちろん今回のように忍野の直後の釣行でも…
 少なからず”サイズ”に対する欲求不満を抱えて釣りに出かけたものだった

 でも、今までは手のひらに収まりそうな寒狭や根羽の1匹が、そんな気持ちを吹き飛ばしてくれたのに…

 そんな気持ちを抱えたまま峠を越え、4月から解禁となった根羽川へ向かった
 実は、この日根羽へ向かったのは年券の購入の他に、もうひとつ目的があった

 『今まで禁漁だったあの区間に入れば…』

 今年から禁漁区間が大幅に削減されたこの漁協管内では、数年前にやはり漁区設定が変更された時、それまで禁漁だった枝沢に入ると何匹もの(痩せてはいたけれど)グッドサイズのイワナをキャッチしたことがあった
 そのことがあったので、今回も”そこに入りさえすれば…”という目論見があったのだ

 期せずして一致を見たこの日の予定と欲求不満の解消法…

c0041105_21512565.jpg しかしその“究極の解決法”は、路肩に止められていた4輪駆動車の姿で実行不可能となってしまった

 その4駆の横を通り過ぎ、そのまま惰性で支流のそのまた支流にやってきた
 
 “大物”とはおよそ縁遠いその流れの最初の1匹は、まるでレインボーのように激しくファイトする20センチほどのイワナだった

 そのイワナをきかっけに、次から次へとイワナやアマゴがヒットした
 
 流れるフライ、割れる水面、振動を伝えるロッド、そして響いてくる小さな魚達の生命感…

 やっと気づいた
 ビッグトラウトとのファイトの後の物足りなさを、なぜ地元の小さな魚が解消してくれたのか

 それは、このフィールドでの1匹は、単純に”魚”だというだけでなく、そこにある景色や雰囲気、そしてそこで日出会った人達との会話や川のほとりで食べた弁当…そんなすべてを感じながら手にした1匹だったからなんだと
 
 そう気づいた今、心から思う

 きっと今度忍野で大物を手にしたら、前回よりもっと気持ちいいだろう
 そして今度地元の渓に立つときは、今日よりずっと満たされた気持ちになれるだろうと…
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*today's tackle  
rod:cremona 7'11 #2/3 (Coatac)
reel:philius babytrout (KIRAKU)

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by taros_magazine | 2008-04-23 21:58 | fly fishing diary
Race for freedom (MotoGP 08' Round-3 Portuguese GP)

c0041105_23431689.jpg 2戦連続の”表彰台獲得”が、今の彼にとってどの程度重要なことなのか…それは世界でただ一人、M1+BSのパッケージで走る彼にしかわからないコト…

 それは充分にわかっているつもりだったが、それでもレース後の共同インタビューでのバレンティーノ・ロッシの不思議なまでの落ち着きぶりが理解できなかった…

 自分の記憶に刻まれたロッシ…それは、ただ目の前のライバル達を追いかけ、抜き去り、そしてさらに速く走ることに至福の瞬間を見いだしてきた驚速のファイター…
 そしていつしか全てのライダーに追われる立場となり、ベテランと呼ばれる年齢に達してもなお、ただ勝利だけを求めて己の持てる力を振り絞ってきた偉大なる王者…

 そんな彼が、ある日レースでの勝利よりも優先させるべきモノの存在にすり寄ってしまう
 2006年、エストリル…
 辛酸を舐め尽くしたシーズン終盤にもたらされた初めての甘い蜜…
 彼はその蜜の甘さに思わず我を忘れ、そして勝利の美酒を放棄した

 あの日、ロッシが失ったのはタイトルだけだったのか?
 エストリルの海風は、ロッシの情熱の炎までも吹き消してしまったんじゃないのか?

 今シーズンも序盤からMotoGPルーキーとのポイントを計算し、タイヤの開発に忙殺され、レースではなく政治的な発言で世界中から注目されてしまった彼の本心がいったい何処にあるのか、ハッキリと見えないままこの因縁のエストリルでの走りを見つめていた

 そんなもどかしさに輪をかけるリザルト、そしてインタビュー…
 
c0041105_23433013.jpg しかし、”負けた”レースを『悪くない結果』と自らに言い聞かせるように語っていた昨年とは違い、同じ単語を並べながらもその碧い瞳にはこれまでとは違う光が宿っていることに気づいた

 『もしかしたら、今ロッシはかつてないほど”自由”なのかもしれない』

 速く走り、勝つこと”だけ”に喜びを見いだしたあの瞬間…
 勝ち続け、タイトルの数を増やすことに価値を見いだしていたあの時代…
 そして、自らの力だけでは乗り越えることのできない壁を知った今…

 あの運命のエストリルから537日、この同じサーキットで、彼はまったく新しいチャレンジを”楽しむ”境地に達したのではないだろうか?

 才能に満ちた若いライダー達のほとばしる情熱を受け止め、逆境に立ち向かうタイヤメーカーの熱い魂とともに戦い、そしてこの素晴らしいスポーツを通じて世界中にメッセージを送る…

 そんな新しい楽しみ方を見つけた彼は、このままリザルトと折り合いをつけ、カドを落として丸くなるのか、それともかつて何度も見せつけたように、ファンやライバルの度肝を抜くような走りで再び頂点に立つのか…

 その答えが出る次戦は、昨年ケーシー・ストーナー相手に壮絶なブレーキング勝負を挑み玉砕した中国・上海…
 
 今、ロッシが心の中に秘めているモノが何なのか、それを白日の下に晒すには申し分のない舞台が用意されている

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by taros_magazine | 2008-04-14 23:52 | motorcycle diary
Release
 
 冬の天竜のビッグレインボー、早春の寒狭のシラメ、数年ぶりの宇連川のアマゴ…

 これまでになく、精力的にオフの釣りに精を出し、渓流解禁の声に胸を躍らせて出かけ、そして充実した渓でのひとときを過ごしながらも、正直に言えば心のどこかに引っかかっているものがあった

 それは『自分はいつになったらドライで釣り上がる気なのか?』ということだった

c0041105_21353160.jpg もちろん、ニンフでの釣りに否定的な訳じゃない
 ドライで釣ることがニンフで釣るより価値があるなんて思っている訳でもない
 マーカーをひったくるように持っていく天竜でのレインボー相手のルースニングは例えようもなくエキサイティングな釣りだと思う
 寒狭中部で目の前で悠々と定位しているスレッカラシのシラメの鼻先にニンフを流し込み、それを加えさせるまでの一部始終を目撃した日には、しばらくの間その光景が脳裏から離れないほど刺激的だ

 そんな釣りを繰り返しているうちに、今までなら当たり前のように解禁からドライで釣り上がっていた寒狭上流でも、この1~2年の春は大場所で魚影を探し、そしてニンフとマーカーをセットするようになっていた

 そして今、あれほど積もっていた雪が解け、ぶ厚いフリースのインナーがいらない季節になってもまだ相変わらずニンフのフライボックスにしか手が伸びない自分に、焦りにも似た違和感を感じるようになっていた

 『どこかで、切り替えなければ…』

c0041105_21355394.jpg 選んだのは忍野だった

 『忍野でニンフを満喫したらそこで一区切り。次からは地元でドライの釣り上がりを…』

 そう思って、いつものように高い足場からのサイトフィッシングに興じた

 最初の1匹は思い通りにヒットした
 だけど、その次がまったく続かない

 持っている全てのニンフはことごとく無視された。サイトフィッシングをあきらめ、ルースニングで下流部を探ってみたが、マーカーが引き込まれることはなかった

 気がつけば、澄んだ流れでは何匹ものヤマメやレインボーがライズしていた
 彼らは、水生昆虫にはまったく知識のない自分にもわかるほどのサイズと色の流下物を片っ端から口に入れていた

 寒狭での釣り上がりに使うフライをティペットに結び、タイミングを計ってフィーディングレーンに運ぶと、それまでニンフで悶絶していたのがウソのようにあっさりと口にした

 そのまま二又、テニスコート、湧水、釣り堀とドライで”釣り上がり”を楽しんだ

c0041105_2136109.jpg その頃には、もう妙な”焦り”は消えていた
 それは待ち望んだ”ドライの季節”に入ったことを実感したからではなく、ドライだニンフだという区分けが無意味だと気づいたからだった

 一昨年の夏、自分の”ドライ”という固定観念を取り払ってくれた忍野は、今度は”ニンフ”という呪縛から自分を解放してくれた

 予定とは随分違った1日になってしまったけれど、やっぱり忍野を選んで正解だったと思った


*today's tackle  
rod:G2 8'08 #4 (SCOTT)
reel:CMR 3/4 (Marryat)

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by taros_magazine | 2008-04-13 23:59 | fly fishing diary
熱波 (MotoGP 08' Round-2 SPANISH GP)
     
 "Special Jerez atmosphere builds for big race"
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 毎年、決勝日だけで10万人以上の大観衆が押し寄せるこのヘレスでの3日間は、国際映像が冠したキャッチフレーズのとおり、掛け値なしに"Specail"で"Big"なグランプリだ

 そしてその異様な熱気は、これまでも幾多の信じられないような結末を演出してきた

 1996年にはスペインの英雄 アレックス・クリヴィーレの快走に興奮を抑えきれなくなった多くのファンが、トップスピードでGPマシンがレースしているコース真横まで押し寄せ、最終ラップの最終コーナーでの悲劇を彼ら自身が演出してしまった

 2005年には、やはり地元スペインのセテ・ジベルノーとバレンティーノ・ロッシが、その異様な熱気に呑み込まれたかのように、同じく最終ラップの最終コーナーで引くに引けないチキン・ランを演じてしまった

 そして今年のヘレスでも、125cc、そして250ccと、多くのライダーがその独特な雰囲気に煽られ、我を忘れての肉弾戦に興じた

c0041105_0134718.jpg そんなレースを目撃した大観衆はさらにヒートアップし、新たなる2人のスペインの英雄を迎えたMotoGPクラスのスタート時にはその熱気は頂点に達した

 サーキットを覆う熱波は、予選3番手だったコーリン・エドワーズのストレスを暴発させ、上り調子だったニッキー・へイデンの闘争心を暴走させ、王者ケーシー・ストーナーの尻に火を付けてしまった

 しかし、そんな熱いヘレスの中心に、氷のように冷静な男が3人いた

 他でもないスペインの2人の”英雄”、ダニ・ペドロサとホルヘ・ロレンツォ、そしてこのヘレスの"7times winner"バレンティーノ・ロッシだ

 デビュー戦となったカタールから2戦連続のポールで迎えたホームタウンGPで、ロッシを”喰う”というギャンブルに手を出さず、しっかりとマシンのコンディション把握しきってポジションをキープしたロレンツォ

c0041105_014578.jpg 毎ラップ、毎コーナー…いや、それこそタイヤの1回転ごとに、そのポテンシャルを研ぎ澄まされた五感で感じ取るように、丁寧に、それでいてハイペースで走り続けたロッシ

 そして過去2年、この”聖地”であと一歩届かなかった栄光のチェッカー…
 何が何でも欲しい勝利を目の前にしながら、限界の向こう側にある”快楽”の誘惑に耳を貸さず、自身のベストの走りに徹したペドロサ

 熱いヘレスのポディウムを占めた3人のクール・ガイ…

 その3人の中で唯一、レース序盤に一瞬だけ本能を剥き出しかけたロレンツォ…彼はカタールでのレースの後にこう言ったという

 『このクラスでは、子羊のような走りをしていたら食べられてしまう。一瞬も油断できない』

 決して満足できない3位でレースを終えた彼は、今その言葉を反芻し、あらためて感じていることだろう

 MotoGPに棲む狼は、ただ獰猛なだけではなく、とんでもなく狡猾で、そして冷徹だったと…

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by taros_magazine | 2008-04-01 00:10 | motorcycle diary