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"to the turning point" (MotoGP 07' Round-8 British GP)
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 ただタイトルを獲得した、という記録上のチャンピオンではなく、グランプリという舞台で圧倒的な輝きを放っていた”真の王者”が、新たな勢力に追われるように去っていくという光景を、思えば久しく見ていない

 90年代後半を”支配”したミック・ドゥーハンは、度重なるケガとの闘いに疲れきったかのようにマシンを降り、そのドゥーハンに最後まで王座を渡さなかった”誇り高き王者”ウェイン・レイニーは、たった一つの致命的なミスで引退を余儀なくされた
 さらに、およそ10年にわたり頂点のカテゴリにトップライダーとして”君臨”し続けたエディ・ローソンに至っては、すべてをやり遂げた上でグランプリを去っていった

 ”渾身の走りで追いすがる王者と、はかり知れない速さで逃げていく若きスピードスター” 

c0041105_2331197.jpg 今、バレンティーノ・ロッシが置かれているシチュエーション…
 その行方をフラッシュバックさせるのは、全12戦の勝利をたった2人で分け合った"KING"ケニー・ロバーツと、"天才"フレディ・スペンサーが火花を散らした1983年まで遡ることになる

 あの年、もしもケニーが敗れた相手がフランコ・ウンチーニやランディ・マモラだったとしたら、ケニーは引退などしなかっただろうと思う
 
 ただ積み重ねたポイントの大きさで負けたのではなく、自らの常識を越える速さを持ったライダーの出現を一番近いところで見ていたからこそ、"KING"と呼ばれた男はグランプリを去る決意をしたのだろう…

 前戦のカタルニア、そしてこのドニントンと、これまでロッシが絶対的な強さを見せてきたサーキットで、ケーシー・ストーナーは世界中のファンに、そして当のロッシに、その驚愕の底力を見せつけた
 
 速いだけでなく、そのしたたかなレース運びを見ていると、これまで『ストレートスピード』や『ブリヂストンタイヤ』とセットで評価されてきたことも、彼の本当の速さをライバル達に警戒させないためのカムフラージュだったのでは…とさえ思えてしまうほどだ

c0041105_23311675.jpg そして築かれた26ポイントの差…
 
 昨シーズン、残り6戦という時点でニッキー・ヘイデンとの間には51ポイントもの差があったことを考えれば、これまでのロッシにとってそれは”楽観”していいはずの数字だったろう

 しかし今、ストーナーを相手に26ポイントをひっくり返すために、どれほどの代償を支払わなければならないのか…
 
 クールダウンラップで、観衆の声援に応えるストーナーの横を、一瞥をくれることすらせず足早に素通りしていったロッシの姿が、その過酷な道のりを物語っているように思えてならない

 次戦の舞台は、昨年予選で負った骨折を抱え、何度もコースアウトしながらも、しぶとい走りで8ポイントを獲得し、ニッキーに対し反撃の狼煙を上げたアッセン…
 
 シーズンの折り返しとなる次のダッチTTが、ロッシにとって掛け値なしの、大きな大きなターニングポイントになる…
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by taros_magazine | 2007-06-25 23:32 | motorcycle diary
小さな村の小さな漁協

 自分が初めて購入した年券は寒狭川上流漁協のもの、そしてその次が岐阜の宮川下流漁協のものだった

 当時、片道でたっぷり4時間かかった旧河合村までの道程…それでも、モンカゲロウのスーパーハッチと圧倒的な濃さを誇る魚影に魅せられ、夜明けからイブニングまで竿を振り続け、最後に温泉に入って帰る…という、タフな日帰り釣行を5月末から9月の禁漁まで間、何度も繰り返した

c0041105_22281666.jpg その一方で、寒狭上流からわずか峠を一つ越えたところにある小さな漁協の管内には、何故か足が向かなかった

 県道や国道に沿って流れる小さな渓…それは、自分にとってはフライフィッシングを始めるよりずっと前から、バイクで何度も何度も走った場所だったせいか、『釣りをするところ』というよりも、『缶コーヒーでも飲みながら休憩する場所』というふうに見ていたのかもしれない

 『釣りをしたことのない川に行ってみたい…』 
 そう思ったのは、北海道を1週間ほどかけて釣って回った遠征から帰ってきた翌週のことだった
 そして、いつもバイクで走る茶臼山の周辺の、のどかでどことなく北海道に似た雰囲気の景色が頭に浮かんだ 
 
 写真も要らない、そして3500円という”破格の安さ”の年券に少々拍子抜けしながらも、国道のすぐ脇を流れるごく普通の里川に入った

 この地域特有の白っぽい川底と未熟な技術のため、いつも寒狭川で使っていたエルクヘアカディスを何度も見失いながら、やっと手にした最初の1匹…それは、その川底と同様に色白で朱点の美しいアマゴだった

 それ以来、自分のフライベストの背中には、毎年寒狭上流と根羽川の年券がブラ下がっている

c0041105_22283147.jpg クーラーボックスを抱えた釣り人が何人か入れば、たちまち魚影が消えてしまうような小さな村の小さな漁協管内での今シーズン初釣行…
 いつになく不安な気持ちで迎えた遅い”根羽川解禁”だったけど、それは杞憂に終わった 

 大型トラックが100キロ近いスピードで走り去っていくすぐ脇で、あの日と同じ色白の美しいアマゴが何度も飛び出した
 民家の軒先を流れる細い筋では、いつものように悠々とライズを繰り返す良形のアマゴの姿があった

 そんな9ヶ月ぶりのこの川での釣行は、あの北海道帰りの日のように新鮮で印象的なものだった…

 東海豪雨の後遺症のため両岸はキッチリと護岸され、最上流部ですらドライブインや別荘地が林立する根羽川
 そこには、かつての小鳥川のようなスーパーハッチや濃密な魚影もなければ、道東の河川のようなバイカモもクレソンももちろんない

 でもそこに立つだけで、不思議とリラックスした気分でゆったりと釣りができるのは、きっとその渓自体が、無理に飾らない、ありのままの姿だからなのだろうと思う

 そして、その渓が流れる小さな村の小さな漁協は、”ありのまま”でいることの素晴らしさを、その小振りながらも抜群に美しいアマゴを通じて教えてくれているのかもしれない

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*today's tackle
rod:Rightstaff 7'10 #2 (CFF)
reel:TR-L (Abel)

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by taros_magazine | 2007-06-21 22:20 | fly fishing diary
ちょっとロッシに会いに…

 カタルニアの興奮もさめやらぬ先日。ちょっと機会があったので静岡県は磐田市にある『ヤマハ コミュニケーションプラザ』へ出掛けてきた
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 ”ジュビロ磐田のスタジアムの近く”という情報だけを頼りに行ったけど、案内看板の類はまったくなく、付近に山ほどあるヤマハの関連施設をシラミつぶしにまわり、やっとの思いでたどりついた
 『本気で”コミュニケーション”するつもりがあるのか!』

c0041105_034587.jpg さて、予想外に立派な施設に入ると、目の前に鎮座していたのは…

 ”TOYOTA”2000GT…
 気持はわかるけど、やっぱり…”YAMAHA”って名前の付いた製品を展示するべきじゃないのか?

 そしてその脇の常設展示コーナーには…ありましたロッシ号!
 もうコレを見ただけで瞬時にボルテージが沸騰するが、ココでデジカメのメモリーを消費してはいけない。お楽しみは2階にあるはず…

c0041105_0355545.jpg さすがに平日の真昼間。エスカレーターなんかは動いてなく、もちろん自分一人のため(見学者。ほかには休憩中の社員と思われる人が数人ウロついてるだけ)にクーラーなんかは入れてくれない
 『さすがはPASやEC-02を世に出したエコ企業だ』などと心にもないコトをつぶやきながら2階に上がると…

 「YZR-M1の挑戦」と書かれたコーナーを発見。そして中に入ると…『あ!ロッシだ!』

c0041105_0365999.jpg ストーナーに競り負けたショックからか、心なしか落ち込んでいる様子…

 ほかにもノリック号やビアッジ号、SBKのハガノリ号、さらには今年のカタールや去年のバルセロナのテストに使われた車両が所狭しと展示されている(常設コーナーにはケニー、ローソン時代のYZRや悲願の優勝を果たした87年モデルの"TECH21カラー"の8耐マシンなんかもある…感涙…)

 そしてその先にには…『あ、ロッシとコーリンだ!』

c0041105_0373842.jpg ほかに見学者がいないのをイイことにだんだん写真がエスカレートしてくる

 すっかり心も満たされたところで、3階のレストラン(どうやら平日は社員食堂として機能しているらしい)でお腹も満たし再び2階へ降りて、今度は「ライブラリー」へ向かう…

 雑誌も含むバイク関係の書籍がこれでもかと並んでいる中でみつけたのは「グランプリイラストレイテッド」…
 
c0041105_0384515.jpg 坪内隆直氏の写真と文章が好きで、かつて毎号購入していたが、惜しくもあの89年の歴史的バトルを前に「年鑑」という形になってしまってからは読んでいなかった

 『坪内さんは、あの事をどう綴っているんだろう…』
 そう思って探した2003年の年鑑…あの大治郎の事故の原因について、その後のホンダの対応について、氏がどのように考え、語っていたのかを知りたかったのだが、なぜか2003年の年鑑だけがライブラリーにはなかった…

c0041105_040459.jpg その後、1階に降りてライディングシミュレータに跨って遊んでみる
 
 なんとビアッジ号での模擬走行が体験できるハズのそのマシンだったが…使い方がよくわからない(苦笑)
 
 とりあえずシフトをガチャガチャやりながら、適当にスロットルを回して遊んでいたら、長身の外人サンが見て笑ってた(帰りに駐車場に横浜ナンバーのアルファが置いてあったが…もしかしたら、SBKの関係者か?)

 そしてシミュレータの横にあるグッズコーナーにあったロッシグッズにクラっときながらも、グッとこらえて家路に…
 
 カワサキ車で行っても(ゴメンなさい…)、もちろん駐車場も入場料も無料。機会があれば、皆さん是非一度足を運んでみてください
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 *「YZR-M1の挑戦」の企画展示は6月23日までです 
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by taros_magazine | 2007-06-15 00:43 | motorcycle diary
"Crazy Hour" (MotoGP 07' Round-7 Catalunya GP)
 
 目の前で繰り広げられていたのは、にわかには信じがたい、壮絶なバトルだった

 1988年、鈴鹿8耐。各組のエースが一斉にスタートした最初のセッションで、この鈴鹿で絶対的な強さを誇る前年の世界GPチャンピオン、ワイン・ガードナーが、8耐初参戦のライダーにキリキリ舞いさせられていた

 S字で、デグナーで、そしてスプーンで…”帝王”ガードナーがまるで”1時間のスプリントレース”のように、何度となくその意地とプライドを賭けて仕掛けてくる猛攻を、彼は真っ向から受けて立ち、そして力でねじ伏せるように常に先行してペアのケビン・マギーにマシンを託した…

 翌年の鈴鹿の世界GPで伝説のドッグファイトをケビン・シュワンツと演じることになる彼=ウェイン・レイニーは、このたった1時間のセッションで8耐に君臨する王者…ガードナーとRVF…を玉座から引きずり落とし、世界GPでの”序列”までも覆してしまったのだった

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 この日のカタルニアでも、そんな”序列”の崩壊を見た思いがした

 本気で勝ちに行き、その方程式の答えが見えるところまでたどり着きながら、MotoGP参戦2年目の21歳のライダーに力負けしたバレンティーノ・ロッシ…

 そしてこれまで最高峰のタイトルを独占してきたミシュランタイヤ、モーターサイクルレースの巨人ホンダ、さらにはヨーロッパやアメリカからやってきたレーシングエリート達…
 
 その全てが、ケーシー・ストーナーというライダーがこの日見せた1時間弱の走りによって、これまで築き上げてきたモノを狂わされ、そして音を立てて崩れていってしまったかのようだった

c0041105_063476.jpg ロッシは努めて冷静を保ち、シーズンの終着点に目標を切り替えることで、この”狂った時間”を何とか受け入れようとした

 ペドロサはいつものポーカーフェイスすら取り繕うことが出来ず、『自信はあったのに、ペースが速すぎて見ていることしかできなかった…』と思わず弱音を漏らすほど心理状態を”狂わされて”いた…

 そんな中、”狂喜”していいハズのストーナーだけが、自分をしっかりと取り戻していた

 パルクフェルメでヘルメットを脱いだ彼の目からはレース前の不安げな表情は霧散し、これまでにないほど強い自信と決意が見て取れた
 彼はこのおよそ1時間で、自らがMotoGPのチャンピオンとしてふさわしいライダーだという確信を得て、そしてそれを絶対に獲得するという決意を持ったのだろう

 
 あの8耐の翌週、ウェイン・レイニーはイギリスGPで初勝利を挙げ、翌年にはランキング2位を、そしてその翌年以降3年連続のチャンピオンとなった

 次のグランプリは、くしくも英国・ドニントン…

 世界中のレースファンや関係者は、そこで今シーズン…いや、今後数年の展開を見ることになるのかもしれない
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by taros_magazine | 2007-06-11 00:26 | motorcycle diary
"aura" (MotoGP 07' Round-6 Italian GP)
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 国際映像がピットレーンに佇むその男の横顔を映し出した瞬間、全身に鳥肌が立った

 ジョン・コシンスキーが、マックス・ビアッジが、そしてバレンティーノ・ロッシがいた時代の250ccクラスで”本当の天才”と呼ばれたライダー…

 あの狂気をはらんだ眼つきこそ、いくぶん柔和なものになってはいたが、そこにいたのはあの頃とまったく変わることのない圧倒的なオーラを漂わせる原田哲也その人だった…

 
 グランプリというステージで頂点に立とうというライダーなら、その誰もがそれぞれ独特の雰囲気を身に纏っている

c0041105_23144431.jpg 原田と同じようにこの日ムジェロに姿を現したミック・ドゥーハンの現役時代は、一見素朴ながらも決してある一線を超えさせない”結界”にも似た近寄りがたい雰囲気を、その全身から滲み出させていた
 
 パドックでは物静かなエディ・ローソンは、コースインした瞬間にサーキットの温度を1度下げ、さらにアタックラップに入るや否や、今度は周りの空気を凍り付かせてしまうような緊張感を漂わせるのが常だった

 そんなライダー個人がその背後に持っている”オーラ”とでも言うべき部分に関して、このムジェロで気がかりな点がいくつか見られた

c0041105_2315675.jpg 今シーズン、破竹の勢いで勝利とポイントを重ねてきたケーシー・ストーナーは、レース開始前すでに疲れきったような表情を見せていた
 
 その姿は、ホームタウンGPを迎え意気上がるチームの”プレッシャー”と、4輪のスーパースター、ミハエル・シューマッハーを相手にしてさえ、まったく動じない彼の母国の英雄、ミックがグリッド上で放つ強烈な存在感に、彼のこれまで見せてきた輝かしいオーラが消されてしまったかのようだった

 もう1人、かつてのオーラを取り戻せないライダーがいた

c0041105_23151618.jpg 今シーズン、まったく見せ場を作ることもなく、若いチームメイトの後方で、ただ幾ばくかのポイントを重ねることだけに腐心しているように見えるディフェンディング・チャンピオン、ニッキー・ヘイデン…
 
 もはや苦悩する段階を通り越し、何かを諦めてしまったかのようなその表情の背後にあるのは、皮肉なほど派手なカラーのパーテーションだけだった

 一方、この日力強い走りで地元のファンを狂喜させたバレンティーノ・ロッシ…
 こんなにもドラマティックなレースを見せているというのに、不思議なことに彼からも歴代のチャンピオンが醸し出していたようなオーラを感じなかった。何故か…?

 それは至って簡単な理由だった

 彼の背中には、オーラなんて入り込むスペースがなかったのだ
 なぜなら、この日彼の”背後”には、何万もの熱狂的なイタリアンが”憑いて”いたのだから…
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by taros_magazine | 2007-06-04 23:46 | motorcycle diary