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川のほとりで
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 川のほとりの駐車場からその流れを見て、もう一度聞いてみた
 「ここが”忍野”の釣り場なんですか?」

 両側がしっかりと切り立った水路のような川の中を、かすかに濁った水がゆっくりと流れる…この川こそ、自分がフライフィッシングを始めた頃から憧れていた”現実”の忍野の桂川だった

 名にし負う”湧水の川”、”フライフィッシングの聖地”…雑誌やwebでそんな”殺し文句”をさんざん聞いているうちに、いつしか自分の頭の中の忍野は、幻想的な景色の中を流れる川にはバイカモがゆらめき、手つかずの自然の中で育った鱒たちが悠然とライズを繰り返す…かつて釣行したことのある阿寒川や西別川に引けを取らない風景を想像していた。この都市近郊の観光地のど真ん中にある桂川を…

c0041105_0443623.jpg ただ、その魚影は想像を遙かに超えていた
 ブラウン、ヤマメ、ニジマス…どれも30センチ前後、中には50センチほどのものが、ロッドで突っつけそうな距離に群泳していたからだ

 景色、魚影、そして高い土手の上からのサイトでのニンフィング…いろんなことに戸惑いながら投じたフライに、いきなりレインボーが食いついた

 これを皮切りに何匹ものレインボー、そしてヤマメがヒットした
 それらのパワフルな引きと、柄の長いネットで土手からのキャッチを繰り返しているうちに、この川の隠れていた魅力が見えてきたような気がした

 この川…正確には、河川敷の中でも水の流れている部分にだけ、人を寄せ付けない気品のようなものを感じるようになっていた

 ランディングの際も水中に入らず(入れず)長い柄のネットで魚をキャッチする
 もちろん、ウェーディングして釣りをしている人も皆無だった

 切り立った土手ではない下流でも、他の川なら迷わずウェーディングするようなポイントでも、誰一人水中に足を踏み入れていなかった

c0041105_0475870.jpg 川の小径を挟んだ反対側には、釣り堀、テニスコート、それにパチンコ店など、およそ”聖地”にふさわしくない”俗物”が林立していた
 だけど川のほとりにたたずむフライフィッシャー達は、みんな楽しそうな表情の中にも、どこかストイックな雰囲気を漂わせているように見えた

 そしてそんなフライフィッシャーが多く集まるカフェレスト&フライショップ”Rivers Edge”…
 ここのオーナーの渡辺さんを、何度も川のほとりで見かけた

 ビニール袋を片手に持ち、吸い殻や空き缶を集めながら釣り人一人一人に声を掛けてまわる、文字通りの”忍野のリバーキーパー”…
 
 そんな氏が、自らのショップに”川のほとり”と名付けたのは、もしかしたら忍野の”聖域”を守るという揺るがない意志の現れなのではないだろうか…

 そんな人が支えている川、そして全国から集まってくるリリース派のフライフィッシャーたち…
 景色こそ違っていたものの、やはりそこは自分が憧れていた忍野・桂川だった 
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*other side …
輝ける沢の辺で』(by Mr,Rise)
一から出直し修行的毛鉤釣』(by Mr,godzilla2004)
空色ライフ』(by Mr,Hiroshi)
terry's FlyFishing Bar』(by Mr,Terry)
釣り三昧・猫三昧』(by Mr,NENEKO)


*today's tackle
rod:Cremona 8'07 #3/4 (Coatac)
reel:Philius smalltrout (KIRAKU)

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by taros_magazine | 2006-07-31 00:41 | fly fishing diary
忘れ物
 
 20代の頃、春から秋にかけては毎週のようにバイクでツーリングに出かけては、飯盒やコッフェルを使ってキャンプを楽しんだ
 30代になると、林道や河原でお湯を沸かし、コーヒーで一息入れた
 そして数年前、キャンプ用食器なんかのアルミが脳ミソに激しく良くないらしいということを知った…

 ということで、このところ物忘れがヒドい
 『あ、あれだ、あれあれ…あのー…あれだよ、例のヤツ!』などという会話はもはや日常茶飯事で、先日は3年前まで一緒に働いていた同僚の名前を思い出すのに2日もかかった
 しまいにゃ調べモノをしようとPCを起動させ、グーグルのページを開いたときには、肝心の調べモノの内容を忘れている有様だ

c0041105_21425542.jpg そして先日、またまたやってしまった…
 いつものように堰堤のヨコに車を止め、ベストを羽織ろうとすると…『あ、ランディングネットが!』なかったのである

 先日もまったく同じコトをやってしまい、集落に1軒だけあったスーパーで買った、子供が使う虫取り用の網でイワナをキャッチしたばかりなのに…
 
 「はぁ…いったい何のために北海道のNAOさんや地元のharuさんの芸術作品のようなネットを持っているのか…」
とため息をつきながらふとトランクに目をやると、そこにおよそ渓流にはふさわしくないゴツいネットがあった
 
 「あ、そういえば来る途中に買ったんだ…忍野用」

 そう、今週末の忍野釣行に備えて、とにかく”柄の長いネットを”ということで、釣り具量販店に並んでいた980円のスライド式のネットを買ったばかりだったのだが、そのことすら”忘れて”いたのだった…

c0041105_21432242.jpg そんな力の抜けっぷりに合わせたかのように、小さな堰堤上のプールでは小さなアブラハヤがポコポコと釣れた
 
 昼下がりののどかな止水の釣りは、こんな状況でもなんとなく笑顔になってしまう
 ふと上流に目をやると、友人がやはり10センチほどのアマゴを釣って『アハハ』と笑っていた

 少し移動して流れ込みの浅い瀬を狙ってみた
 ついさっきまでアブラハヤの遊び相手になっていたパラダンが、そのとき何故か急に違うフライになったように凛として輝き始めた

 思わず腰をかがめ、フリップアップしていた偏光グラスを戻し、フライを凝視した

 一瞬の間をおいて、フライは飛沫とともに水中に消えた
 思いのほか激しいファイトを見せた後、980円のネットに納まったのは、この川特有の朱点の少ない、円形に近い斑紋の見事な色艶のアマゴだった

c0041105_2143382.jpg その後、下流ではイワナの顔も見ることができた。友人も滝下の淵でグッドサイズのアマゴを数匹釣っていた

 釣り始めた頃の脱力感は、納竿の頃には心地よい疲労感と満足感に変わっていた

 いつのまにやら重ねた40年の月日…これからもいろんなコトを忘れていってしまうだろうけど、釣りの楽しさだけは忘れそうもないナ…そう思いながら、アルミ缶に入ったコーラをグィっと飲み干した


 *today's tackle  
rod:EUFLEX XFP 7'09 #2 (TIEMCO)
reel:CFO 1 (ORVIS)

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by taros_magazine | 2006-07-28 21:50 | fly fishing diary
咆哮 (motogp 06' Round-11 USGP)
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 胸の中に溜まりに溜まっていた鬱憤を吐き出すかのように、ニッキー・ヘイデンは叫んだ
 いつものクールな笑顔ではなく、まるで阿修羅のような表情で、何度も何度も拳を突き上げ、雄叫びを上げた

 AMAの主要タイトルを総ナメし、鳴り物入りで2003年にmotogpにやってきた”アメリカの最終兵器”…
 しかし、この4ストローク化され、彼に向いていると思われていた最高峰クラスで、彼がたった1つの勝利を上げるまでには、2年半もの歳月…昨年のこのUSGPまで…を要した

c0041105_0313042.jpg ”常勝”ホンダのエースとして期待された今年、彼はランキング首位を走り続けていた
 しかし、世界の注目はmotogp参戦わずか4戦目で初勝利を上げた彼のチームメイト、ダニ・ペドロサに集中した
 待望の2勝目は”ロッシの怪我の間”と言われ、メランドリの後塵を拝すると”サテライトにワークスが負けた”と言われた

 そうして表面張力ギリギリまで溜まっていった彼の”澱”を吹き飛ばす唯一の方法…
 それは、このラグナセカで”勝つ”ということ、そしてそのために”全てを賭ける”ということだった

 『もしかしたら、このままポイント差を計算しながら残りのレースを戦った方がタイトルは堅いかもしれない』
 『このラグナセカなら、じっくり様子見しながら勝負しても上位は可能かもしれない』

c0041105_0322262.jpg でも、彼は『自分の力を全て出し切ればオレが世界一だ』ということを証明するために、このラグナセカでロッシの影も、ペドロサの足音も度外視して32ラップを走りきった
 
 その走りは、この数年GPでは誰も見せたこともないような力強い走りだった
 バレンティーノ・ロッシがマシンにムチを入れたときの”研ぎ澄まされた”速さとは全く異質の、肉感的な力強さとあふれる感情を路面に叩きつけるような激しい速さだった

 くしくも”地元の利”の一言で片づけられてしまった初勝利の地で、彼はその走りで”世界一”を高らかにアピールした

 サマーブレイクを前に、ついに”化け”たニッキー
 自ら”もうタイトルへのプレッシャーはない”と言い切ったロッシ

 motogpは今、初めて大きく動き出そうとしている
 

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by taros_magazine | 2006-07-26 00:35 | motorcycle diary
 
 この10日間ほど、行こうと思えばいつでも釣りに行ける準備はできていた
 
 本流までカバーできる長めの#3、藪沢でも活躍できる#2の短めのロッド…
 でもその2本は、それぞれリーダー、ティペット、そしてフライまでもが装着された状態で、玄関の片隅に立て掛けられたままになっていた

 車のトランクにはウェーディング・ギア一式も積載されていたし、地元の渓で1,2時間竿を出すだけなら十分な時間もあったはずだった
 
c0041105_2025413.jpg でも、そのロッドを車に積み込むことはなかった
 雨に打たれて、汗だくになって、蜘蛛の巣にまみれて谷をさまよわなくても、バイクで走ったり、家族でドライブに出かけるだけで十分楽しかったから…

 この日曜日も、朝食後いつものように子供が散らかしたオモチャを片づけていた
 玄関に置かれたおもちゃ箱を取り出そうとしたとき、ふと2本のロッドが目に止まった
 
 その瞬間、交通事故に遭ったわけでもないのに、そのロッドとともに歩いた川の景色や魚の美しさがフラッシュバックした
 それは、広葉樹の森の中を流れる細く澄んだ流れの中で、小さなイワナと過ごした夏の日の記憶だった
  
 ふと我に返ると、子供のおもちゃをおもちゃ箱にしまい込んだ
 そして、残されていた”大人のおもちゃ”を車に積み込んだ

c0041105_2054448.jpg 下流部の大増水とも、中流部の濁りとも、その谷は無縁だった

 植林が原生林に変わりはじめるこの付近の森の中では、頭上を覆う木々の枝葉と川岸を覆う苔のおかげで、雨音はおろか雨に打たれることさえほとんどなかった
 
 そして、あのとき記憶によみがえったイワナたちも健在だった
 
 どれも10センチから15センチほどのかわいいイワナたち…しかし、その姿はどれも”無垢”という言葉がふさわしい美しさと気高さを兼ね備えていた

 そんなイワナたちに甘えて、ふとこれまで使う機会のなかったフライを試そうと思った

 見よう見まねで巻いたフォーム・ビートル…
c0041105_2055027.jpg 何故だかわからないけど、今日ここで使わなければ二度とフライボックスから取り出すことがないような気がしたからだ

 落ち込み下の小さなプールの真ん中に落ちた、毒々しくバランスの悪いフライが淵尻まで流れたとき、茶色い大きな口が水面から飛び出した

 瞬間、軽く合わせた細いロッドがそのままゴリゴリと絞られた時、初めて何が起きたのかを把握した
 『でかい!まさか…こんなところに…!』

 しかし数秒後、フライは水中から力無く戻ってきた
 
 今年も何度も繰り返してきたシーン…ただ、この日は少し違った

 全然、”惜し”くなんかなかった
 ただただ、この森のイワナが健在だったことが嬉しかった


 *today's tackle  
rod:Factory Haru 8'07 #3 , George Selvin Marryat 8'00#2 (SMITH)
reel:Halcyone baby trout (KIRAKU) , Marryat CMR 3/4 (SMITH)

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by taros_magazine | 2006-07-24 21:08 | fly fishing diary
天下一武闘会 (motogp 06' Round-10 ドイツGP)
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 ”オートバイに乗ったら誰にも負けない”
 10代…いや、子供の頃からそんなふうに信じてきた連中が世界中から集まっているのがグランプリだ
 
 そんな”誰にも負けない”はずのライダーを、この最高峰の舞台は勝者と敗者に明確に分けてしまう
 そんな”弱肉強食”の世界では、持てる体力、技術、知力のすべてを出し切ったとき、最後の最後に優劣を付けることになるのは、そのライダーの持つ”必殺技”の威力だ

c0041105_9442539.jpg  あの伝説のホッケンハイムで見せたようなケビン・シュワンツの狂気に満ちた”突っ込み”、ウェイン・レイニーなら鈴鹿の2コーナーからS字あたりで見せる超高速の”切り返し”、フレディ・スペンサーの暴力的なアクセルワークによるロケットのような”立ち上がり”、そしてエディ・ローソンの驚異的な精神力の賜物であるラップタイムコントロール…
 
 こうした”フィニッシュホールド”を持つ彼らは、どんなに激しく、限界ギリギリのバトルをしていながらも、最後の最後で対戦相手をねじ伏せてきたのだ… 

 4台から6台によるバトルが繰り広げられたこのドイツGPでも、最後にロッシが勝つということは、多くの人が予感していたのではないだろうか
 速く走るための要素のすべてを高次元でバランスさせている彼の、その中でも特に突出した部分…無理なラインでオーバーテイクした後もほとんどタイムをロスしない…は、こういうレースでこそ威力を発揮するはずだからだ

c0041105_9444099.jpg そうした意味で、結果的には4位までがコンマ3秒以内でフィニッシュするという近年にない大接戦も、どこか緊迫感の薄いレースという印象は否めなかった

 次々と渾身の力を込めた大技を繰り出す王者に対し、挑戦者であるはずのメランドリも、ヘイデンも、ペドロサも、ただ”受け”ているように見えた
 彼らがロッシに勝つためには、強烈なパンチを受けても耐え、なおかつ己の”フィニッシュブロー”を見舞わなければならないのに…

 気がつけば、ロッシとニッキーのポイント差は”ほぼ1ゲーム差”になっていた
 
 次のレースは、ランキング1位での凱旋レースとなる母国GP…
 ニッキーがロッシの猛攻をはね返す”カウンターパンチ”を放つとすれば、最大のチャンスといえるこのラグナセカで、ヨーロッパとアメリカの”番長”同士の今シーズン最大の”喧嘩”が見られるかもしれない

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by taros_magazine | 2006-07-19 09:51 | motorcycle diary
隙間
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 この地方では2月初旬から9月末までが渓流釣りシーズンとなる
 休日の大部分を川で過ごすことになるこの8ヶ月間…フライフィッシャーにとってはあっという間の”短い”シーズンなのに、例年1ヶ月ほど渓から遠ざかってしまう時期がある
 
 今年はこの1ヶ月ほどがそうだった
 古傷の腰痛や持病の腱鞘炎の悪化、降って湧いた急な仕事、家族・親族らとの年中行事…
 
 いろんな原因が重なり合って週末を街で過ごしていたのだが、本当の理由は…こんなに長い間の”禁欲生活”に耐えることができたのは、 その”欲=釣欲”自体が薄れてしまっていたからだ

c0041105_21203778.jpg 先月初め、大好きな下伊那の里で感じた疎外感、その後に出かけた地元の渓で派手に魚を傷つけてしまった後味の悪さ…
 それに不順な天候、伸び放題の雑草、ビッシリと張り巡らされているであろう蜘蛛の巣のことを考えると、フライフィッシングの大きな魅力である”心地よさ”を見いだすことができなくなってしまっていた

 たまたま仕事が休みとなった木曜日。特に吟味するわけでもなく、適当にタックルを車に放り込んで”とりあえず”川に出かけてみた
 
 現地に着いてみると、このところの雨のせいか普段は浅く細い流れの枝沢も、それなりの渓流らしい流れになっていた

 それを見たとき、一気に妄想が膨れあがった
 『これは大爆釣するんじゃないか!』と、『もしかしたらものすごい大物が出るんじゃないか!』と…

 いつも良形が飛び出す小さなプールに、葦の影から慎重にフライを落とすと、小さな魚がまるで尺イワナのように悠然と浮きあがり、その小さな口に不釣り合いな大きさのフライを吸い込んだ

c0041105_21201450.jpg 10センチにも満たないアマゴだった

 その後も見える魚影は#18のフックでも掛からないような稚魚ばかりだった
 
 移動した先では、最初のうちこそ小さなイワナやアマゴが姿を見せてくれたが、上流へ向かうにつれて反応が鈍くなり、最後は川から上がり道路を歩いて上流の脱渓予定地に置いてあった車まで戻った

 もしかしたら、あのとき変な期待を持たなければ、小さなアマゴとイワナで充分満足の1日だったかもしれない
 そうでなくても、もう少し涼しい日だったら、もう少しキャストがしやすい川だったら、もう少し水量が少なくて歩きやすかったら、もう少し…

 今、こうして2日前の釣りを振り返ってみても、”楽しかった!”と思うことができない
 
 例年、釣行記録にポッカリ空くスケジュール 
 でも、こんなふうに心の中までポッカリと空いてしまったことはなかった

c0041105_21265118.jpg その隙間を埋めるために何が必要なのか?
 その答えも、やっぱり渓にあるのだろうか?


 *today's tackle
 rod:Euflex XF 8'02 #2 (TIEMCO)
 reel:FatesTM-1 (TENRYU)


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by taros_magazine | 2006-07-08 21:27 | fly fishing diary
屈辱 (motogp 06' Round-9 英国GP)

c0041105_21111180.jpg 完璧なレース・ウィークだった
 
 コンマ5秒もの差を付けてのポール・ポジション、あわや転倒という激しいスライドを立て直し、再びトップに返り咲いたファイティング・スピリット、そして渾身のスパートで後続を振り切って独走で受けたチェッカー・フラッグ…
 
 ダニ・ペドロサはグランプリ”母国”のファンに、その溢れんばかりの才能と強さを見せつけたはずだった
 
 彼はその会心の勝利を自ら祝福するべく、マシンにまたがったまま立ち上がり、何度も両手を大きく振るという、彼にしてはめずらしいほどのストレートな感情表現で”目の肥えた”英国のファンの声援に応えようとした
 
 しかし、そのペドロサの視界に飛び込んできたのは、興奮しフェンスを乗り越え、雄叫びを上げながら…彼に一瞥をくれただけでその脇をすりぬけていく観衆たちと、その先で何百、何千という熱狂した群衆に囲まれているバレンティーノ・ロッシの姿だった…
 
 motogpのニューカマーに4秒近く遅れての2位フィニッシュだというのに、完勝したカタルニアでのウィニング・ランのように、ウィリーやバーンナウトを繰り返したロッシは、痛めている右手を何度もファンに手荒く叩かれることも顧みないファンサービスを繰り返した
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 長い”ウィニング・ラン”の後、ロッシがパルクフェルメに戻ってきた時には、すでに”勝者”ペドロサの顔から笑顔は消えていた
 
 その時、ロッシが思わぬ行動に出た

 スタッフとこの日のレースについて何か話し合っていたペドロサのすぐ横で、ロッシは激しくリアホイールをスピンさせ、あたり一面を白煙に包んでしまったのだ
 
 いや、それだけならいつものロッシなら”アリ”な行為だったかもしれない
 ただ、彼がいつもと違っていたのは、ホイールスピンの最中も、そしてマシンを降りてスタッフに駆け寄った後も、何度もペドロサの方に向かって挑発するような視線を送っていたことだ 
 
 もちろん、その直後には互いに健闘をたたえ合う仕種を見せてはいたが、それはまるで”儀式”のように形式張ったものだった…
 
 表彰式でもファンの声援はロッシのものだった
 
 勝ったはずのペドロサがこのドニントンで味わったのは、勝利の美酒ではなく、ある意味ではあのなすすべ無く離されていったフランスGPよりも遙かに大きな屈辱だったのかもしれない
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 大観衆にも、そして国際映像にも完全に無視された若き才能…
 満身創痍の身体で、タイトなスケジュールをしのぎきった最強王者…
 
 今シーズン、ここまで微妙にスレ違ってきた2人の”ライン”が完全にクロスする日は近い

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by taros_magazine | 2006-07-04 21:18 | motorcycle diary