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Dutch Weather (motogp 06' Round-8 オランダ・ダッチTT)
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 アッセン、ダッチTT…

 60年に及ぶグランプリの歴史の中でも格別の敬意と注目度を集めるこのサーキットは、輝かしい伝統とは裏腹に、常に不吉な影をその湿った路面に落としてきた

 最も乗れていた頃のエディ・ローソンを何度も芝生に這わせ、トップを独走していたケビン・シュワンツの足下をすくい、飛ぶ鳥を落とす勢いだったミック・ドゥーハンから足の自由を奪い、そして世界に羽ばたこうとしていた永井康友の命をも奪ったサーキット・ファン・ドレンテ…

c0041105_059186.jpg そんな暗い過去に終止符を打つべく、安全性の向上のために大幅なコース改修を行った今年…
 その新装アッセンでの最初の犠牲者は、皮肉にもこれまで大きなケガとは無縁だったバレンティーノ・ロッシだった

 前戦カタルニアで最高の復活劇を演じた王者が、初日の最初のセッションで負ったのは、左足のくるぶし、そして右手首の骨折だった…

 かつて「バイクレースで早く走るのに一番大切なのは?」と質問されたランディ・マモラは、「ココとココさ」と頭と右手を指さした
 フレディ・スペンサーも、ケビン・シュワンツも、上田昇も最後まで苦んだ右手首の負傷…
 
 もしかしたらレーシングライダーとしてのキャリアのターニングポイントに立ってしまっているかもしれない状況下で、ロッシは信じられないほど冷静な走りを見せた

c0041105_14115.jpg スタートも良くなかった。何度もコースアウトした。そして最後までトップの姿は見えなかった…

 結局8位でレースを終えた満身創痍の王者…それでも彼は、前戦カタルニアで勝ったときと同じように満足げな笑顔でピットにいた。そしてニッキー・ヘイデンとの壮絶な”チキン・ラン”の結果、派手に宙を舞ったコーリン・エドワーズを慰める役までやって見せた

 久しぶりのアメリカ国歌が流れるアッセンの上空には、いつものような黒い雲は皆無だった

 その空をモニター越しに見るロッシの瞳にも青い空、そして翌週のドニントンの青写真が見えていたに違いない
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 another side of dutch TT …"Colin version"

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by taros_magazine | 2006-06-27 01:27 | motorcycle diary
Performance (motogp 06' Round-7 カタルニアGP)

 そこにいたのは、紛れもなくあの”手がつけられないほど強い”ロッシだった
 
c0041105_0325917.jpg 前戦イタリアでは、ただ勝利の余韻に浸っていた彼が、このカタルニアでは何度も派手なウィリーやバーンナウトを繰り返し、さらにはコース上で記念撮影に応じるほど無邪気に喜ぶ姿…
 それは勝ち続け、タイトルを獲得してはいるものの、どこか”ルーチンワーク”としてパフォーマンスを見せていたこの数年の”王者・バレンティーノ”の姿ではなかった

 それは上田昇や坂田和人といった老獪なテクニシャンを弄ぶように勝利を重ねていた”恐るべきルーキー”だった125cc時代や、原田哲也やオリビエ・ジャックを力でねじ伏せ”底知れぬ速さ”を見せていた250cc時代、そして500ccからmotogpへと時代が変る中で、その才能をいかんなく発揮し、誰もが認める”天才ライダー”として輝きはじめた頃のロッシそのものの姿だったのだが… 
 
 スタート直後の多重クラッシュにより赤旗中断となったとき、ピットに戻った彼はヘルメットも取らずにテレビ中継を映し出しているモニターに向かい、何が起こったのかを食い入るように見つめていた
 何度も様々な角度からの映像がリプレイされていたそのモニターには、1コーナー先のグラベル上で、横たわったまま動こうとしないマルコ・メランドリの姿があった

c0041105_0344355.jpg コースオフィシャルやメディカルスタッフに囲まれた彼の姿に、ロッシはあの日の悪夢を思い起こしたに違いない

 2003年、鈴鹿…
 シケイン手前のアスファルトの上で、加藤大治郎は猛スピードで駆け抜けるマシンのすぐ横で、ぐったりと横たわっていた
 遅い救急車、出ない赤旗…そしてレース後の勝利者インタビュー前にスタッフから告げられた絶望的な彼の容態…

 そのとき、ロッシは両手で顔を覆いテーブルに突っ伏し、しばらくの間顔をカメラの前に向けることができなかった
 そして記念すべき開幕戦のウィナーは、テレビカメラの前で一度も笑顔を見せることなく控え室に去っていった…

c0041105_0402588.jpg あの日以降、彼の勝利後のパフォーマンスは、自らの勝利に対して喜びを爆発させている、というよりも、自分を応援してくれているファンのために”見せて”いたように思う
 
 いつも自分を映し出すカメラに気がつけば、お茶目におどけてはいたものの、ときおりふっと見せる疲れ切った表情…そんな姿が印象的な、この数年の彼のウィニング・ランだった

 しかし、そんな彼がなぜこの多重クラッシュが起きたカタルニアで、久々に歓喜のパフォーマンスを見せたのか?

 その答えを、彼自身がレース後のインタビューで語ってくれた
 「すごく心配だったけど、再スタート前にクラッシュしたライダーが皆大丈夫だと、ドクター・コスタから聞いたんだ」

 今も彼のヘルメットに貼られている”74”のステッカー…
 彼が、自らの勝利やタイトルと同じように…いや、それより遥かに強く願うこと…
 そんな彼が、”心からのパフォーマンス”を見せることができるレースを、これからも…
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by taros_magazine | 2006-06-26 23:59 | motorcycle diary
鮮血

 「また…だ…」

 やっとの思いで手にした1匹…そのアマゴの口元から流れ出る血を見たとき、言葉にできない衝撃を受けた
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 今までもランディングした魚が出血していたことは何度もあった
 何も考えずにバーブの付いたフックを使っていた頃は、外すのに手間取り出血させてしまうこともたびたびあった
 ほかにもスレ掛かりしたときや、深く飲み込まれてしまったときなど、申し訳ない気持ちを感じながらフックを外し、魚その後の無事を祈ってきた

 ところがこの1ヶ月ほど、どういう訳か釣れた魚の口元からは血が流れ出ていることが多かった
 そしてその口元を注意深く見てみると、まるで刃物で切ったかのように傷口が開いているのだ

 始めのうちは、使っているフックのせいだと思った
 
 大手メーカーが数年前に発売したそのフックは、先端部が平べったくなっており、”掛かりの良さ”を謳い文句に大々的に売り出されたが、その刃物のような先端形状が、ファイトする魚の口元を切ってしまうのでは?と思っていた

c0041105_193739.jpg でも、ある日違うフックを使っていたのに、同じように出血しているアマゴを見て愕然とした
 しかも、3匹立て続けに出血しているのを見るに至り、もはや自分自身の釣り方に問題があるとしか思えなくなっていた

 心当たりがあった
 今年の3月…寒狭で初めての尺アマゴに撮影前に逃げられてからというもの、一刻も早く写真を撮ろうとするあまり、フックの外し方が強引になっていたことを薄々感じていた

 さらに5月に二度にわたって体験した西野川での尺オーバーとのファイト…その感触が忘れられず、いつのまにか寒狭や根羽でも大合わせをしていたことにも気づいていた

 顔面を鮮血に染め、口をパクパクさせているアマゴを前に、自分ができること…
 それは1秒でも早く、その魚をもとの住処に帰すことしかないはずなのに、その苦悶の表情のアマゴの写真を撮影してしまった

 出血させてしまったことと、それを撮影してしまったことに対する痛烈な懺悔と後悔…
 それ以上釣り上がる気にもなれず、イブニングを前に川を後にした 

 今こうして眺めるその写真…
 それは、自分にとっては”伊達や酔狂”であっても、魚にとっては生死を賭けた格闘であること…それがフライフィッシングであるということを、あらためて胸に刻ませてくれた


*today's tackle
 rod:Euflex XFP 6'09 #3 (TIEMCO)
 reel:CANTATA 2200 (UFM ueda)

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by taros_magazine | 2006-06-15 22:03 | fly fishing diary
前田 淳 (1967'~2006')
 こんな悲報を聞くたびに、ただでさえいたたまれない気持ちに輪をかけるかのような報道のあり方に怒りを覚える

 あのバイクブームといわれた80年代でさえ、新聞やテレビがレース結果を報道することはほとんどなかった
 記憶にあるのは86年の最終戦で平忠彦が250ccクラスで優勝した時くらいなものだ

 そんなマスコミがタボハゼのように食いつくのがレース中の死亡事故である
 
 いや、レース中はおろか、練習走行中の事故でさえも報道され、そのたびにサーキット側の安全管理と同時に、ライダーの操作ミスやらマシンに何らかの異常だのと書き立て、誰かに責任をとらせようとする…
 
 申し訳程度のプロフィールだけでも掲載されればマシな方で、多くは”現場検証”をした警察発表をそのまま記事にするだけだ

 確かに、生身の身体で300キロ近いスピードで街を駆け抜けるTTレースは、もはや伝統や格式というもので言い訳できる領域を踏み越えてしまっているのかもしれない
 毎年のように死者を出すこのイベントがもたらすのは、華やかな栄光ではなく、血塗られた悲劇だけなのかもしれない
 
 でも、そういう批判の前に、逝ってしまったライダーのことを…本当の意味で命を賭けて、何かをつかもうとしたライダーのことを、もう少しだけ尊重してくれないか? 
 2輪のレースの危険性を訴えるだけでなく、その魅力についてもう少し理解してくれないか?
 
 
 今はただ、彼の事を想っている
 
 マエジュンよ、お前は生き急いだのか?それとも時を止めたのか?
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by taros_magazine | 2006-06-08 21:53 | motorcycle diary
やり残したコト (motogp 06' Round-6 イタリアGP)
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 1990年10月。鈴鹿サーキットに姿を見せたアイルトン・セナは、氷のように冷たく、そして固い意思を秘めているのがハッキリとわかるほど、その全身から張り詰めた雰囲気を漂わせていた

 予選で前年に失格裁定を受ける原因となった因縁の相手、アラン・プロストと壮絶なタイムバトルを演じ、そしてポールを獲得した後、レースウィーク中沈黙を守ってきた彼の”想い”が爆発した

 『去年も勝っていたのは自分だ。タイトルも僕のものだったハズだ』
 
 そして決勝レースを前にこう言い切ったという
 『絶対にラインは譲らない。どんな結果になろうとも…』

c0041105_12295.jpg かくして、2年連続の両者接触…そしてセナは2年越しのタイトルを”奪還”した
 
 『このムジェロに、バレンティーノ・ロッシがどんな表情で現われるのか…』
 このイタリアGPの前、それを考えると、少なからず不吉な予感がしていた

 なぜなら、昨シーズン終盤から不運に見舞われ続けてきた彼が、前戦でのリタイヤ直後に見せたこれまでにない沈痛な表情…
 
 その後のホームタウンGPでの”勝利”というものに対し、彼が”手段を選ばない走り”をするのではないか…と思ったからだ
 
 もし、ロッシの瞳にあのときのセナのような”氷の意思”が見えたら、このレースはおろか、今後のmotoGPの存在すら危うくなるのではないかとさえ思っていた

c0041105_124413.jpg しかし彼は見事なまでにリフレッシュされていた

 そしてその大きな力となったのが、これまで彼に巨大なプレッシャーをかけてきただろう地元のティフォーシたちだったのは間違いない

 このイタリアGPに詰めかけたファンは、これまでのようにロッシの華麗な走りに酔い、そして騒ぐ、という雰囲気とは明らかに違っていた
 
 スタンドで、そしてパドックでロッシに送られる拍手や声援は、日本で言うならサッカーや野球のスタジアムのものではなく、むしろ苦悶の表情を浮かべて走り続ける駅伝の選手に対する声援に近いものに感じた

 もしかしたら、ロッシは勝てない自分に対して、イタリアのファンは怒っている、と思っていたのかもしれない

c0041105_13347.jpg しかし、ランキング8位でイタリアに”帰ってきた”彼に対して送られた暖かい声援…
 それは、彼が失いかけていた”誇り”、そして天性の”明るさ”を取り戻すのに充分な大きさだった  

 『まだmotoGPでやり残したコトがある』
 
 この数ヶ月、さまざまな憶測が乱れ飛んだ自らの今後について、このイタリアでヤマハとの契約延長を発表した彼は、そう言い切ってレースに臨み、そして自ら”ベストレース”と言うほどの感動的な勝利を地元で飾った
 
 チェッカー後、いつものように取り巻きたちと派手なパフォーマンスをする前に、満員のスタンドのファンの前で、大声援をその全身で味わうかのように仁王立ちしていたロッシ

 そのとき、彼がバイクを止めたコースサイドのフェンスにあった『6』の文字… 

 そう、まずは6年連続の最高峰のタイトル獲得こそが、やるべきコトだと彼が言っているように見えた
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by taros_magazine | 2006-06-07 00:55 | motorcycle diary
表情
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 『あ…、まただ…』

 日の出と同時に川に入った直後から、何度も何度もフライには良型のアマゴがヒットし続けたが、そのすべてがことごとフライを自力で外して流れに帰っていってしまった
 
 今シーズン初めてやってきた下伊那の里川…
 そこでは何とも言えない郷愁を感じさせる風景と、美しく力強いアマゴが今年も出迎えてくれたのだが、ネットに入ることだけは頑なに拒んでいるようだった

c0041105_14333498.jpg 日もだいぶ高くなり、川沿いの道路を通勤の車が行き交うようになった頃、ようやく1匹のアマゴがネットに納まってくれた
 
 それは、明らかにこれまでバラしてきたものよりも一回り小さなアマゴだった
 
 しかし、何か怒っているようにすら見えたそのアマゴは、写真撮影を終えるか終えないかのうちに早々と川へ戻っていってしまった

 ほぼ1年ぶりにやってきた下伊那の大好きな渓に立ちながらも、何か心の中に小さなスキマが開いてしまったかのように、いつしか心から楽しむことができなくなっていた

 川から上がり、狭い道路を歩いていると向こうから村営バスがやってきた
 めいっぱい左側のガードレールまで寄って歩いていた自分に対し、バスは右側に余裕を残しながら、自分のスレスレを速度を上げて通過していった

c0041105_1433477.jpg 去っていくバスをにらみつけていると、朝には清々しく見えた里の風景も、すぐ横を流れる川も、遠くで農作業をしている住民も、すべてが敵意を持っているようにすら見えた

 とても虚しい気持ちでこの里を後にした

 そして下伊那のいくつかの支流で様子見程度に竿を出した後、最後に寄ったのは”いつもの渓”だった

 下伊那の豊かな自然の中を流れる渓に比べると、随分貧相に見える里川だけど、その水の中に足を踏み入れた瞬間、さっきまでの不愉快な気分は霧散していった

 いつも1発でアマゴが飛び出す瀬、丹念に攻めれば必ず良型が出てくる深み、そしていつもライズしているプール…
 それらすべてのポイントから、この川らしい色白のアマゴが姿を見せ、そしてランディングネットまで来てくれた

 まるで、この川も、そこに棲むアマゴたちも、すべてが自分を歓迎してくれているかのようだった

c0041105_1434351.jpg 『ありがとう…』
 魚に向かって言うのは、照れくさくてあまり好きじゃないけれど、この日はそっとつぶやいてみた

 この時、アマゴが微笑んだように見えたのは、錯覚なんかじゃないと思いたい


*today's tackle
rod:Euflex XF 8'03 #3 (TIEMCO)
 Freestone FS 8'00#3 (Shimano)
reel:CMR 3/4 (Marryat)
 SK-CL (Caps)

 
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by taros_magazine | 2006-06-03 14:44 | fly fishing diary