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殺気
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 何年か前、ハイシーズンになってもまったく釣れない日が続いたことがあった
 朝マヅメ、イブニング、少ないフライバリエーションのありったけを試しても、とにかく釣れなかった

 ”釣りきられた…いや、漁協が放流していなんじゃないか…”
 そんな言い訳は、何年かぶりに渓に立つ友人が目の前で次から次へとヒットさせることで木っ端微塵に吹き飛んでしまった

 『きっと…”殺気”が出てるんじゃない?それで魚が逃げるんだよ。あはは』

c0041105_232431.jpg 彼にとっては軽い冗談だったのかもしれないが、そのとき自分は激しく動揺していた…

 フライフィッシングを初めて3~4年の頃…魚のいそうなポイントもだんだんわかってきて、ちょっと高級な道具も手に入れた。そして、テクニックも向上しているつもりになっていた
 『おー、○○センチか!』とか『これで○匹目』というコトばかりを意識し、とにかく釣果=楽しさという感覚で川に通っていた

 そんな釣りはとっくに”卒業”したつもりだった
 しかし、この日はとにかく”釣り”たかった

 『土曜日がNo Fishだったから?』『先週、目の前でデカいイワナを見せられたから?』
 そんなことはこれまでだって何度もあったけど、だからと言ってその後に釣果だけを求めて川に出掛けたことなどなかったはずだ

 とにかく自分でもよくわからないまま、小さな漁協の支流の、そのまた枝沢の上流部に向かって車を走らせた…

c0041105_23204447.jpg 根羽川は季節外れの雪だった
 寒さと増水に何度も足をもつれさせながら、ただ黙々とロッドを振り続けたが、まったく反応はなかった
 やがて、立木にラインを絡めて切ってしまった
 
 大きく溜息をひとつ…そして空を見上げるといつしか雪は止んでいた
 視線を下に戻すと、日差しは小さなプールの川底までを照らし、そこにいる魚の影を映し出していた

 これまで張りつめていた何か…それは、もしかしたら”殺気”だったのかもしれない…が緩んだ
 石に腰掛け、ベストのポケットからティペットを取り出し、普段はほとんど使わないCDCのフライを結んだ
 
 すると、この川特有の色白のアマゴが水面を割った…そしてその後も…

 すっかり明るくなった林道を戻り、ついさっきまで修行のような釣りをしていた流れを見ながら、おにぎりをほおばり、今日の釣りを振り返ってみる

c0041105_2321351.jpg 大きさなんて計ってないし、(そんなに多くはないけど)何匹釣ったかも覚えていなかった
 
 でも、アマゴはとても綺麗だったし、とても楽しい1日だったことは間違いなかった


*today's tackle
rod:Cremona 7'11 #2/3 (Coatac)
reel:MARQUIS 2/3 (HARDY)

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by taros_magazine | 2006-04-26 23:27 | fly fishing diary
Andante
c0041105_22523771.jpg 午前中に釣りを終えた週末…ゆっくりと午後を過ごし夕食をとった後、1歳半の娘を連れ、ほんの数十メートル離れた自分の両親が住む家に向かった
 
 電柱に据え付けられた街灯、散歩中の犬、走り去る自動車…何度も歩みを止め、振り返り、手を振る彼女に合わせてゆっくりと歩いていると、実家に着くまでに10分ほどもかかってしまった

 『2~3分あれば十分な距離なのに…』 そんな短い距離を、本当に楽しそうにゆっくりと進む彼女を見て、午前中の釣りを振りかえっていた
  
 いつ頃からなのか…自分は”1ポイント3キャスト”ほどでどんどん釣り上がっていくスタイルになっていた

 ”手前、左、右…念のため真ん中…”
 それで反応がなければ、次のポイントで同じコトを繰り返す…そうして渓を早足で駆ける…

 この数週間、相次いで目撃したシーンは、そんな釣り方をする自分にとって、ある意味で”衝撃的”だった
 先週、DUSKの店長さんがランディングした見事なイワナは、誰もが『もう出ないんじゃ…』と思い始めた頃に、突然水面を割ったものだ

c0041105_2250873.jpg そして今週…同じような小さな流れで、同行したBILLさんは数度のフライチェンジを繰り返し、そして丹念に流しては、自分のワンパターンのパラシュートに見向きもしなかったアマゴを何度も引きずり出してみせた

 『自分のスタイルは間違っているのか?』
 
 そんな気持ちにさせられたここ何回かの釣行だった

 実家を出て、ふたたび娘を連れて自宅に戻る
 彼女は今度は何か歌いながら、すたすたと歩き数分で自宅に着いた

 その姿を見て”はっ”と気づく
 『何も間違ってなんかいない。いや、正解も不正解も、きっとないんだろう…』

 歩く速さは人それぞれ
 自分がいちばん心地よいと感じるリズムで釣ることが、一番”正解”に近いんだろうと思った


(1st Photo … by MR,BILL)

*today's tackle
rod:Right Staff 7'10 #2 (CFF) , Freestone FS 8'03 #3 (Shimano)
reel:CT 2/3 (REDINGTON) , setter classic1 (Caps)

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by taros_magazine | 2006-04-24 23:03 | fly fishing diary

 この川で、フライフィッシャーの友人たちと釣りをする…これが、実はものすごく久しぶりだった
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 寒狭川…それも支流あたりでは何人もの釣り人が一緒に竿を出すというのは、正直に言って”愚行”なのかもしれない
 魚影が特別濃いわけでもない。ましてや目を見張るような美しい自然環境や、アフターフィッシングが楽しめる温泉なんかがあるわけでもない
 少しばかりの渓魚を、早朝から多くの釣り人が先を争って奪い合うような典型的な都市近郊の渓なのだから…

 『空色ライフ』の洋さん、『Step into the river』のBILLさん、そして名古屋のフライタックルショップ”DUSK”の店長さんに自分を加えた4人が集まったこの日も、朝から霧雨が舞う中でのスタートなった
 
 だけど、この日はメチャクチャに楽しかった

c0041105_14203579.jpg 2人ずつに分かれたファーストラウンド…増水した小さな流れは、小さなフライをなかなか綺麗に流させてくれない
 それでも退屈しない程度に出たり、釣れたり、合わなかったり…そのたびに、いつもは声に出さない”叫び”をあげることがとても気持ちよかった

 第2ラウンドは、あろうことかこのあたりでももっとも小さな谷のひとつに4人で入った

 ところが、ここでもため息が、歓声が、笑い声が次々とわき起こる
 誰かのラインが絡まると次に誰かがキャストし、釣れたらまた次の人と交代…ときには一つのポイントを自分の勝負フライで代わるがわる攻めてみたり…

 こんな楽しい釣りもそろそろタイムアップを迎えようとしていたとき、まるで台本があったかのようにこの日最大…いや、この数年寒狭川では見たことのないような大きなイワナがDUSKの店長さんのロッドをしならせた

c0041105_142048100.jpg ランディングネットの中で窮屈そう身体を曲げているイワナを取り囲むように、みんなで撮影会、そして品評会が始まった

 WEBがきっかけで広がった自分のフライフィッシングの輪…そして、この日集まった4人が作り出す輪の中心にいるイワナ…

 それはまるで、その大きなイワナが作り出したライズリングの波紋であるかのように、いつまでもいつまでも止むことはなかった


*today's tackle
rod:Right Staff 8'10 #3 (CFF) , EUFLEX XFP 7'09 #2 (TIEMCO)
reel:CT 3/4 (REDINGTON) , CFO1 (ORVIS)

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by taros_magazine | 2006-04-16 14:33 | fly fishing diary
”…らしさ”
 
 学生の頃、社会人として真面目に働くことがまったく想像できなかった

 『毎日8時間、机に向って何をしているのか?”仕事”って、そんなに都合良く毎日8時間でキリがつくのか?本当に休日以外はちゃんと出勤しなきゃいけないのか?』
 就職活動に走り回る友人たちにそんな疑問を投げかけると、きまって言われるセリフがあった
 『ハハハ!まったく”お前らしい”ものの考え方だな!』

 そんな自分も『でも、いざ働くようになったらきっとキチンと毎日仕事して、有給とかもほとんど使わずに過ごすんだろうな…』などと漠然と思っていた…

c0041105_165903.jpg ところが社会に出てからすでに17年余…
 実際には、学生の頃のアルバイトとあまりかわらない感覚で仕事をしている
 「会社のために!」といった責任感や「将来は○○に…」といった向上心のカケラも持たず、金髪にしたり、ドレッドにしたり、ピアスを着けて仕事をしてきたこともあった 
 
 もちろん、天気が良ければあっさりと休んで釣りに出かけたりする…
 
 というわけで、この日も午後から仕事を早退して根羽川へやってきた

 有名どころの漁協が競い合うように解禁日を早めたり、PRに躍起になる中、この小さな村の小さな漁協は相変わらず4月解禁という、のどかな時の流れの中にあるようだ
 そしてそこを流れる細い里川では、自分のように昼過ぎにノコノコとやってきたフライフィッシャーにも、小振りながらも愛嬌たっぷりのアマゴが相手をしてくれる

c0041105_16591088.jpg お世辞にも綺麗とは言えない水質、周囲の緑に似つかわしくない白く真新しい護岸…
 だけど、この川で釣りをしていると、何とも言えないゆったりとした心地よさを感じることができる

 今年も、そんな”根羽川らしさ”は健在だった

 そして、そんな根羽川らしさを味わうためなら、アッサリと仕事を休んでしまう”自分らしさ”も、困ったことに相変わらず健在のようだ…


*today's tackle
rod:Right Staff 7'10 #3 (CFF)
reel:Caprice miu (GRAIN)

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by taros_magazine | 2006-04-15 17:07 | fly fishing diary
旋風 (motogp 06' Round-2 カタールGP)
 
 レース中盤、バレンティーノ・ロッシがケーシー・ストーナーの背後に迫ったシーンを見たとき、思わず鳥肌が立った…
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 何かの因縁が渦巻いているわけでも、突き抜けたバトルをしているわけでもない
 映像は今年からmotogpに参戦している若いライダーを、前年まで5年連続の絶対王者が追い抜こうとしている、いわば”よくあるシーン”をただ映し出していただけだ

 なのに2人の走るラインが交錯する瞬間、この10年ほどの間にグランプリが忘れかけていた”旋風”を思い出さずにはいられなかった

 ワイン・ガードナー、ケビン・マギー、ミック・ドゥーハン…
 アメリカンが圧倒的に強かった80年代のGPシーンを、彼らはあっという間に大混戦が繰り広げられるスペクタクルなショーにしてしまった
 ”オージー”…グランプリのファンや関係者は、オーストラリアからやってきた恐れを知らないライダーたちを、南半球で発生し猛威をふるう”サイクロン(台風)”と同じようにある種の畏怖を込めてそう呼んだ
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 しかし、ダリル・ビーティ以降、サイクロン級の旋風がグランプリにやってくることはなかった
 そしてドゥーハンの引退後、グランプリを沸かせたのはクリビーレやロッシといったヨーロッパのライダーたちだった
 彼らはその20年の間にアメリカンに、そしてオージーに奪われてしまっていた”スポットライト”を、”本場”ヨーロッパに取り返してみせた

 そして今、スペインやイタリアといった国々では、まさにモータースポーツは”旬”のイベントだ
 ロッシのほかにもジベルノーやカピロッシ、それにメランドリにペドロサ、エリアス…次々と誕生するヒーローはすべてヨーロピアン。そして彼らのマシンを彩るスポンサーの多くも同様だ

 でも、何かが物足りなかった。グランプリをかき回すような強烈な風を感じなかった

 この日のストーナーの走りは、少なくともニッキー・ヘイデンの心をかき回したに違いない
 予選でもストーナーのタイムを激しく意識したアタックを繰り返し、決勝では何度もロッシと接触スレスレで順位を入れ替えてみせた 
 
 北半球とは逆回りに吹くという南半球の台風…ストーナーは、これまでグランプリに吹いていた風を確実に乱していくだろう
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by taros_magazine | 2006-04-12 22:55 | motorcycle diary
病気
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 あの夜からもう3日経ったというのに、その余韻は冷めるどころか加速度的に深まってきている…

 彼らの魅力を、言葉で言い表すことは極めて困難であり、もしかしたら意味のないことなのかもしれない
 いつかのアルバムのライナーノーツに書かれていたように、それは『同じ病を持つ者にしかわからない…』のだろうと思う

 自分がそんな”病”に感染した瞬間を今も覚えている

 まだ深夜0時頃にはテレビ放送が終了していた時代…いつもならあの独特の寂寥感あふれる放送終了の案内番組が流れ出す時間に、突然『このプログラムはノースポンサーで放送します』とのテロップが表示された

c0041105_15592217.jpg そして唐突に、巨大なフットボールスタジアムでのコンサートが始まった

 それが"the Rolling Stones"だということは、当時エレキギターに夢中だった自分にはすぐにわかった
 でも、これまで雑誌で見たりラジオで聞いていた彼らのスタイルや曲は、『たいしたテクニックもない連中がノリだけでやってるバンド』程度にしか思っていなかった

 そのとき初めて見た”動く”ストーンズも、最初はやっぱりそんなふうに見えた
 10万人以上が詰めかけているコンサートのオープニングを、何の抑揚もなければ客を煽るでもない曲(under my thumb) で始めるむさ苦しい3shot…

 でも、この曲の途中…ちょうどギターの短い間奏が入るあたりから、自分の彼らに対する認識が、まるでギアが切り替わるように変化したのがわかった
 あわててビデオに録画した、そのCM抜きの81’のUSツアー"Let's Spend The Night Together"のテープを見るたびに、”病”は深刻度を増すことになった…

 そして15年以上前の初来日も、3日前の公演での彼らも、あの夜に見たコンサート映像とまったくかわらない”○○”だった

 その”○○”に、どんな言葉をあてはめればいいのか、今もわからない…
 でも、同じ”病”を共有している人なら、きっとわかってくれると思う

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 『ウマい』『ヘタ』…
 
 それを論じて何になる
 
 イッツ・オンリー・ロックンロール

 (字余り)


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 taro's magazine "Dark Side" 「ストーンズ名古屋公演狂想曲」
 taro's "mono" magazine 「ストーンズグッズあれこれ」
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by taros_magazine | 2006-04-08 16:02