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   宝物
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 この渓で、この区間で、フライフィッシングの楽しさを知った

 地図とニラメッコして渓相を想像し、初めて自分の判断で選んだポイント…
 わずかな踏み跡をたよりに下りた谷には、白い沈み石の上で悠々と定位しているアマゴの姿がはっきりと確認できた

 未熟な技術とあり合わせのマテリアルで巻いたフライ…それは、基本的には今も変らないけど…を、精一杯のソフトプレゼンテーションで鼻先1メートルに落としたあの日…

 あれから10数年が経過した
 
c0041105_0204859.jpg あの頃毎週のように通ったこの区間は、何度かの水害と未曾有の渇水、それに着々と進むダム計画の影響が、ぱっと見にもわかるほど変化してしまっていた
 
 いつしか、その区間にまったく足を運ばなくなっていた。そして、その区間を避けるように源流域を目指したり、別の支流へ通っていた。あの沈み石のあった流れを車窓から眼下に眺めながら…

 今日は、あの頃と同じように路肩のスペースに車を止め、かすかな木漏れ日の差し込む椎茸の原木の間を抜け、廃屋となってしまった一軒家の近くにある小さな滝の上から入渓した
 すると目の前に開けたのは、すっかり川幅が広くなってしまっていたけど、紛れもなく懐かしい香りのする大名倉川だった

 もう、それだけで胸がいっぱいになってしまっていた
 あの頃、この区間で釣れたアマゴやイワナが、どんなフライにどんなふうに飛び出してきたのか、そのとき自分はどんな帽子を被って、どんなロッドを振っていたかさえも思い出すことができた
 
 そして、あの”白い沈み石”があったところにやってきたとき、思わず「あ…」と声を出してしまった
 その区間だけが…本当にその岩肌に沿って流れる細い筋だけが、何事もなかったかのようにそこにあったのだ
 
c0041105_021410.jpg あのときと同じように、精一杯のソフトプレゼンテーションで落としたフライは、あの沈み石があるはずの付近で、飛沫とともに消えた
 しかし、合わせたはずのロッドに伝わってきたのは鈍い感触だった

 手前の渓石あたりに沈んでいた枯れ木にラインが引っ掛かっていたのである
 2度3度と激しくロッドを振り、やっとラインを解放したときには、すでにフライは水面に還っていた…

 思えばあの時もそうだった
 フワーっと浮いてきたアマゴがくわえたヘタクソなパラダンは、合わせた瞬間にティペットごと切れてしまったのだ
 ウィンドノットができているのを見ていたのに、そのまま釣りを続けていた結果だった

 今日も手前に枝があることはわかっていた
 なのに、はやる気持ちを抑えられずにラインを垂らしてしまっていた…

 激しい後悔と反省…なのに…
 それすら楽しくて仕方がない
 
 だって、何年も前に無くしたはずの”宝物”が戻ってきたのだから
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*today's tackle
 rod:Euflex XFP8'03 #3 (TIEMCO)
 reel:CFO1D (ORVIS)

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by taros_magazine | 2006-02-24 00:26 | fly fishing diary
誰もいない川
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 中寒狭は解禁以来、連日多くの釣り人で賑わっているという
 早くからフライ・ルアー専用区を設定し、高名なフライフィッシャーもことあるごとに訪れるこの漁協の管内は、2月頭の解禁ということもあり愛知県内ではダントツの知名度を誇っている

 でも、自分はこの管内で釣りをした記憶がほとんどない
 ハイシーズンには毎週のように通う上寒狭と隣接する漁協であり、なおかつ自宅からは車で4~50分というアクセスの良さにありながら、いつも素通りしてその上流へ、そして峠を越えて長野県の根羽川へ向かってしまうのだ

c0041105_1857171.jpg 正直、理由はよくわからない
 「川の雰囲気が良くないから」という訳ではない
 バイクのツーリングの際には、フライ・ルアー専用区のほとりに立つカフェにいつも寄って、テラスの席から流れる川をぼーっと見ている
 「釣れないから」というのとも違うと思う
 解禁時には20、30と釣る人も多い
 それに2月の喧噪の去った後には、ちょっとしたポイントではイブニングライズを随所に見ることもできる

 でも、今年も誰もいない男川にやってきてしまった
 ここでは解禁初日特有の(川の外の)緊張感も、立ち並ぶロッドもない
 ただ、そのことはここに棲む魚たちもまた多くない…いや、ほとんどいないということも物語っている
 そんな護岸された川の中を、細い流れがただ静かに流れていた

 去年と同じように、最初はマーカーを付けたニンフを浅い流れにキャストしてみたが、何度も草木に絡め取られ、結局いつもの小さなドライフライに付け替えた
 「釣れるワケはないんだけど…」
 でも…やっぱりアマゴが水面を割って食いついてくるシーンを心のどこかで期待して…

c0041105_1857174.jpg そして、その願いは2年越しで叶えられた
 古いランディングネットに横たわる小さな魚は、冬の装いの中にまぎれもなくパーマークを纏っていた

 川に立ち込み、ロッドを振りながら言うのも妙だけど、”ハプニング”と呼んでしまいたい1匹…

 こんな感動的な出会いがあるから、また来年もきっと誰もいない川へ向かってしまうだろう


*today's tackle
rod:Cremona 8'07 #3/4 (Coatac)
reel:Philius small trout (KIRAKU)

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by taros_magazine | 2006-02-13 19:02 | fly fishing diary
 
 ほぼ4ヶ月ぶりに地元の川に立つ

 いや、この宇連川に限って言えば、ちょうど2年ぶりの”再会”である
 なのに、川の流れも、それに沿って続く道も、ひなびた街の風景も、まるで昨日も訪れたかのように微塵の違和感もなくそこにあった
 待ちこがれた解禁、押さえきれない高揚感…なのに、まるで自分の家のすぐ近くにいるような不思議な感覚…

c0041105_21374554.jpg 意外なほど落ち着いて振る、新しいシーズンのファーストキャスト
 重いマーカーの付いたビーズヘッドは、気持ちよく…とは言っても4~5メートル…宙を舞い、小さな波紋を立てて水面下に消えた

 誰もいない小さなプール、ゆったりと流れる時間…
 ただ、足下の砂地に刻まれた無数の足跡が、2日前の喧噪と、ここに残っている魚がほとんどいないことを物語っていた

 昨夜までの雪の影響もどうやら心配ないようなので、上流部の支流へ移動してみた
 カーナビ画面を見るまでもなく街道を外れ、勝手知ったる路肩に車を止め、記憶を辿るまでもなく小さな集落の細い路地の先にある橋を渡り川に下りる

 以前は大きなアマゴが何匹もライズしていたポイントではカワムツが群泳していたけど、大きな木のトンネルが続くこの流れもまた”自宅の裏庭”のように飾らずに過ごせる場所だった

c0041105_21375843.jpg 結局、数匹のカワムツを釣っただけの”待望のシーズンイン”…
 川から上がり、タックルとウェアを荷室に放り込んで、”裏庭”から自宅へ1時間かけて戻る
 
 乾き始めたアスファルトに、うっすらと刻まれた轍…
 
 そのとき、朝から感じていた不思議なほどの”落ち着き”の理由がわかった

 もう何年も、何十回もこの道を走り、喜怒哀楽のすべてをこの川で味わってきたのだ
 そんな川と、ここへ来るまでの道中にこれまで振りまいた膨大なエネルギー…それは消えてなくなったのではなく、年を重ねるごとに、この道に、街に、川に、轍となって残っていたのだ…
 その自らの”匂い”が濃厚に漂う轍の上をなぞっていたからこそ、久しぶりに訪れたはずのこの川で、まるで自分の家にいるかのようにリラックスして釣りを楽しむことができたんだと

 地元で感じるゆったりとした気分…
 初めての川で味わうドキドキ… 

 今年もこのふたつの感覚を楽しむことができる季節がやってきた

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*today's tackle
rod:Cremona 8'07 #3/4 (Coatac)
reel:Philius small trout (KIRAKU)

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by taros_magazine | 2006-02-08 21:50 | fly fishing diary