カテゴリ:motorcycle diary( 156 )
危険なライダー (MotoGP 2011 Round-4 France)
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 あらためて”クレイジー”と言われた89年から90年代初めのグランプリを振り返ってみた
 
 それまでのグランプリが牧歌的に思えてしまうほど激しいドッグファイトが、全レース…いや、全ラップ、そして全てのコーナーで繰り広げられていた時代…

 時にライバルのマシンに蹴りを入れたり、尻を触って挑発したりしながらの感情剥き出しのバトルは、”エキサイト”という言葉では生ぬるいほどのインパクトを持っていた

 しかし、そんな時代にあっても接触によるクラッシュの記憶は数えるほどしかない

c0041105_22114867.jpg それもブレーキに不調を抱えていたドゥーハンがローソンやシュワンツに追突したシーンくらいだ

 それに比べてこの数年の接触・転倒の多さはいったい何なのだろう?
 125cc、250cc、Moto2、そしてMotoGP…クラスを問わず、ライバル同士は接触をもってバトルを制しようと試み、その相手を転倒させることが”勝利”であるかのように振舞っている

 そこには戦略も技術も何もない 

 ただブレーキを遅らせ、相手のインサイドに飛び込み、自分だけは転ばないようなスピードとラインをキープするか、すぐそばにいるライバルの存在に気づかないフリをして激しくマシンを振るか、だ

 そうして”結果”を残してきたライダー達が、意気揚々と次なるステージへとステップアップしていく

 いつしかサーキットは結果さえ出せば何でも許される無法地帯になってしまった

c0041105_2222176.jpg アタックを邪魔する者には鉄拳を、一人でタイムを出すことのできない”金魚のフン”には目の前でアーリーブレーキを、パドックの裏では人格攻撃を…

 ただ、それらは必ずしもライダー個人の責任だとは言い切れない
 
 ある意味、そうした風潮を”容認”してきたのがFIMの曖昧な裁定だ

 原田哲也とロリス・カピロッシの件を紐解くまでもなく、”レーシング・アクシデント”を拡大解釈してきたFIM…

 しかし出走台数の減少に歯止めがかからない今、彼ら運営サイドは自らがこれまで下してきた判断のツケを払うためにやっきになっているように思えてならない

 今回のダニ・ペドロサとマルコ・シモンチェリの接触の件で言えば、個人的にはシモンチェリがこれまでのいくつかのオーバーテイクほど危険な走りをしたようには見えなかった
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 250cc時代、彼が初優勝を飾ったムジェロのレース…あのストレートでのエクトル・バルベラとの接触に比べれば、今回の接触など”よくあるレーシング・アクシデント”だとシモンチェリが思ったとしても仕方のない程度のようにさえ思えた

 しかし、今回の裁定は思いのほか早かった

 前戦ポルトガルのプレス・カンファレンスで自らの”危険性”を悪びれることなく主張してみせたシモンチェリには、あっさりと”クロ”の判断が下された…

 このまま”厳罰化”の方向に向かっていくのなら、それはそれで良いことだろと思う

 ただ、今回のような接触がもう一度起きた時、運営サイドは本当に同じ裁定が下せるのだろうか?
 アウトから被せていったライダーがバレンティーノ・ロッシやホルヘ・ロレンゾでも…
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by taros_magazine | 2011-05-22 22:47 | motorcycle diary
Runaway Boy (MotoGP 2011 Round-3 PORTUGAL)
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 ホルヘ・ロレンゾは、その瞬間まで思っていただろう
 
 『ダニのペースはそのうちに落ちる』と

 スタート直後から、わずかコンマ1秒ほどのディスタンスでへばり付いてくる同郷のライバルよりも、むしろ開幕戦で圧倒的なパフォーマンスを見せたケーシー・ストーナーこそが、最も警戒しなければならない”直接対決”の相手になるはずだった

 そのストーナーも同じマシンに乗るかつての同門のライバルよりも、むしろマシンパワーではハンディキャップを負っているはずのヤマハでカタールでただ一人食らいついてきたロレンゾこそが、最も逃がしてはならないターゲットとして見ていただろう

 ところが5ラップ、10ラップが過ぎても、ダニのペースは落ちない
 
 いつもと違うダニ・ペドロサに業を煮やしたロレンゾがペースを上げても、手負いのスパニッシュはまったく離されなかった

 それどころか無理にブロックするわけでもなく、ストレートエンドでもインを空けているのに、ペドロサは彼の本来のスタイルである”逃げ”を放棄したかのように、静かにロレンゾの背後で様子をうかがっているようだった

 そんな2人のスペイン人のペースに悲鳴を上げたのはストーナーだった

 落ちてくるはずのペドロサに幻惑されたかのように不安定なライディングに陥ってしまった彼は、中盤を過ぎると”因縁のライバル”であるバレンティーノ・ロッシ、そしてオフには一時シート争いを演ずることになった相手のアンドレア・ドヴィツィオーゾの2人のイタリア人が繰り広げる4位争いとの間隔をキープすることが先決となってしまった

 15ラップ、20ラップ…

 まだロレンゾの背後にはペドロサがいた

c0041105_14465733.jpg これまで何度も同じように後ろからペドロサを”料理”してきたロレンゾは、それでも自らのライディングスタイルを変えなかった

 『自分の信じるペースで走りきれば、きっとダニは…』

 しかし25ラップ目、ロレンゾのその確信が不安に変わった

 自身が最も得意とするストレートエンドでのハードブレーキング…
 
 敢えて無理なブロックをせず、今度は背後から追い詰めるべくほぼ無抵抗でペドロサにオーバーテイクを許したはずのロレンゾだったが、ペドロサの後姿はコーナーごとに小さくなっていった

 自らの完全な誤算で勝利を逃すことになったロレンゾは、ここで初めて今日最大のライバルになるはずだったストーナーとの差を計算するハメになった…

 逃げて逃げて、そして逃げ切って勝ってきた

 でもずっと競り負けてきた

 意地だけで飛ばして、最後には力尽きていた…

 それでも、ペドロサは純粋に速く走ることで勝とうとしてきた

 特にこの1年ほどの彼の走りは、まさに魂のライディングと呼べるほど気迫を前面に押し出してのものだった

 そんな走りを続けていたからこそ、この日見せたような本当の速さを身につけることができたのだろう

 そんな純粋さを持ち続けていたからこそ、この日見せたような本当の強さを手に入れることができたのだろう

 遂に壁を乗り越えたダニ・ペドロサは、どんなバトルになろうとも、誰が相手であろうとも、決して”逃げ”たりはしないだろう
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by taros_magazine | 2011-05-05 15:11 | motorcycle diary
"Rossi Rules" (MotoGP 2011 Round-2 SPAIN)
 あえて蒸し返そう、あの日のことを…

c0041105_17291663.jpg 1989年、鈴鹿。130Rをクリアしてきた2台のF1マシンの間隔は、これまでの数周の中では最も開いているように見えた

 『このラップは無理だろう…』

 しかし、それまで何度もシケイン進入でアラン・プロストのインをうかがっていたアイルトン・セナのマクラーレン・ホンダは、最初からこのラップで差すと決めていたかのように猛然と襲い掛かった

 インにネジ込んできたセナを、プロストが右のミラーで何度も確認しているのがシケインのスタンドからはっきりと見て取れた

 そしてプロストは軽く右にステアリングを切り、最もリスクの少ない方法でタイトルを決めた…

 
c0041105_17384216.jpg 1998年、アルゼンチン…もう何も起きないはずだった

 後は、最終コーナーを抜けてタイトル獲得を告げる歓喜のチェッカーを受けるだけだった

 そしてチームと喜びを分かち合い、中でも最後まで死力を尽くして闘ったチームメイトのイタリア人からは祝福の言葉をかけてもらうはずだった
 1993年にピエール-フランチェスコ・キリがそうしてくれたように…

 しかしこの年のチームメイト、ロリス・カピロッシが最終コーナー手前で原田哲也にくれたのは、コーナーリングとは程遠いスピードとラインの"suicide attack"だった

 当然のように下された失格の裁定を受け入れることのできなかったカピロッシは、コース外でもバトルを挑み、執念でタイトルを手に入れた

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c0041105_17553686.jpg ブレーキングポイントの手前の段階でも、バレンティーノ・ロッシとケーシー・ストーナーの差は"one chance"には見えなかった

 それでも、ロッシはストーナーのインの迷いなく飛び込んでいった

 追い上げてきたリズムを崩さないうちに
 タイヤのトレッドが加熱しないうちに…

 しかし、そのスピードはロッシのコントロールを完全に超えていた

 火花を散らしながらストーナーの212Vのフロントを払うように滑っていくロッシと彼のマシン…2人にとって最悪の瞬間が訪れたかに見えた

 しかし、最悪は”被害者”であるストーナーにだけ訪れた

 ストーナーが自力でマシンを起こし、コースマーシャルたちに「押してくれ!」と叫んだとき、ロッシはすでに多くのマーシャルたちの力を借りて再スタートを切っていたのだ

 結局、ストーナーのマシンは再び息を吹き返すことなかった
 ストーナーにできることは、走り続けるロッシに対して拍手してみせることだけだった


 ロッシが故意にストーナーに当てていったとは思わない。それどころか『もしかしたら…』とさえも思っていなかっただろうと思う

 レース後の謝罪についても、ストーナーが言うようにペナルティーを回避するためなどではなく、あの時できることをまずしただけだと思う

 それでも、この件を通じてなにか違和感を感じざるを得ない 
 
c0041105_1113510.jpg それは、あのラグナセカでのバトルについてストーナーが主張し、もてぎで同じようにホルヘ・ロレンゾが主張したこと…そしてこの日のマーシャル達に対してやはりストーナーが抱いた疑惑と同じモノではないだろうか?

 ”ロッシは特別扱いされている”

 それはロッシのライディングの問題ではなく、運営サイドに対する疑問である 

 近年、テレビマネーに媚びるあまりレースの本質から逸脱したレギュレーション改正を繰り返すF1…しかし、そんな運営の中で良心を感じる数少ないモノが”接触は原則審議対象になる”という傾向だ

 それに対しFIMは、シリアスな事故が続いているにもかかわらず、ストーナーやロレンゾの疑惑に対し口をつぐんだままだ


 『アラン、君がいなくて寂しいよ』 
 
c0041105_1454517.jpg あの因縁のクラッシュから5年
 テレビ中継の解説をしていたプロストにコックピットから無線で呼びかけたセナ…2人の和解はセナが天国へ旅立つわずか数時間前の出来事だった

 不毛な確執が取り返しのつかない事故の引き金にならないために、今一度ルールの明確化を望まずにはいられない 



 *高橋江紀選手の逝去に際し、謹んでお悔やみ申し上げますとともに、心からご冥福をお祈りいたします
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by taros_magazine | 2011-04-29 18:09 | motorcycle diary
"BLACK HOLE" (MotoGP 2011 Round-1 QATAR)
 ”ロッシ帝国”崩壊後のグランプリとは一体どんなものなのか

 4強と言われながらも、実際にはバレンティーノ・ロッシという巨星の圧倒的な引力によって周回を重ねてきた他の3つ星たちが、その力から開放された時に見せる軌道とは一体どんなものなのか…

 それは拍子抜けするほど予想どおりの風景だった
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 ケーシー・ストーナーはシーズン前からの好調そのままに全セッションでトップタイムを叩き出し、その速さをアピールするとともに、決勝ではこれまでのように逃げに徹するのではなく、相手の走りをじっくりと見切った上で一撃で仕留めるという強さをも見せつけた

 ディフェンディング・チャンピオンのホルヘ・ロレンゾも予選での絶望的なタイム差をものともせず、見事なレースマネジメントでストーナーに食い下がってみせた

 もう1つの星、ダニ・ペドロサも、ストーナーやロレンゾを相手に何度も限界ギリギリの激しいファイトを見せてくれた

 彼らはバレンティーノ・ロッシという恒星を失っても、その軌道を乱すことなくグランプリという銀河で輝きを放ち続けていた

 しかし、当のロッシだけが迷走していた
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 サテライト仕様の同じマシンに乗るエクトル・バルベラや、”元カノ”の新しい彼氏であるベン・スピーズ、さらには母国の若手ライダー2人を相手に必死にセカンドグループのリーダーを目指すその姿からは、かつて同じように電撃移籍後最初のレースとなったあの2004年の南アフリカのときに放っていた眩いばかりの光の欠片も見ることはできなかった

 長い間、タイトルはおろか勝利すらままならなかったヤマハでの最初のレースで勝って見せたロッシなら…
 ましてやストーナーが何度も勝利しているドゥカティなら…

 かつての巨星は、多くのファンや関係者が抱いたそんな期待を、すべて暗黒の渦の中に吸い込んでしまうブラックホールになってしまったかのようだった



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 このたびの震災に際し、下記のような支援が呼びかけられています。ぜひ一度ご覧ください

二輪車ライダー排気量募金









 
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by taros_magazine | 2011-04-29 15:48 | motorcycle diary
Aesthetics (MotoGP 2010 Round-18 VALENCIA)
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 ホルヘ・ロレンゾの速さを誰よりもよく知っているのは、ほかならぬバレンティーノ・ロッシだ

 同じマシンに跨り、同じタイヤを履き、何度も何度も一番近いところでその走りを見てきたロッシだから、ロレンゾがいかに凄まじい走りをしているのか身にしみて知っていた

 だからこそ、最後にもう一度その彼に勝ちたかった
 同じパッケージで走る最後だからこそ、自分の走りでホルヘ・ロレンゾという怪物を相手にどこまで戦うことができるのかをどうしてもハッキリさせたかった

c0041105_2322066.jpg 今シーズン、これまでならモチベーションを失ってしまっていたであろうほどスタートで出遅れても、キレのある走りで徐々に順位を回復し、前方にチームメイトを確認すると、予選でフライングラップを決めたマルコ・シモンチェリをアウトから豪快にオーバーテイクし、一気に勝負に出た

 ケーシー・ストーナーを前に、ダニ・ペドロサを後ろに従えてランデブーしながらも激しく火花を散らすロッシとロレンゾ…

 しかしその結末は、まるで前戦のリプレイを見るようだった

 わずかに空いたロッシのインにロレンゾがためらわずに飛び込んだ瞬間、ロッシには”退く”という選択肢しか残されていなかった

 その後も逃げるストーナーをロレンゾが追い詰めていく一方で、ロッシはジリジリとその2人から離されていった…

 それは不思議なほど爽快な敗北だった
 恨み節も言い訳もない、完全な敗北だった

 でも、もしかしたらこういう負け方をいちばん望んでいたのは、当のロッシ本人だったのかもしれない

 自らのマシンにだけ次々とトラブル襲いかかった2006年…
 圧倒的なタイヤの性能差に手も足も出なかった2007年…

 しかし、それが単なる”エクスキューズ”でしかないことを、ロッシ自身ははわかっていたのではないだろうか?

 かつての自分がそうしてきたように、ただ速く走った者こそが王者となる…
 だからこそ、前戦のエストリルでロッシは壮絶な走りを見せた

 自らのケガがロレンゾにタイトルをもたらしたのではなく、今シーズン誰よりも速かった者が王者になったのだということを自ら確認するために、そして彼が愛して止まないグランプリの理想の姿と、王者たる者の誇りを誰の目にも明らかにするために…

 この日も完敗したロッシがフィニッシュラインを通過して最初に感じたのは、タイトルへの未練でも、勝利できなかったことに対する失望でもなかった

 彼の時代を支えたYZR M1…
 コースサイドにその愛機を止めると、その前にひざまづきフロントカウルを愛おしそうに撫でた。頬を寄せ、何度も何度も…

 完璧な敗北と美しい別れ…

 その先にあるのは、希望なのか、それとも…

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by taros_magazine | 2011-02-20 23:15 | motorcycle diary
The End (MotoGP 2010 Round-17 PORTUGAL)
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 それは、王者としての誇りを賭けた渾身の走りだった

 その肩書きは、すでに”かつての王者”であり、その相手は”新チャンピオン”ではあったが、バレンティーノ・ロッシは間違いなく王者としてホルヘ・ロレンゾに立ちはだかった

 もてぎ以降、幾度と無く見せてきた卑しいブロックも、この日のロッシには不要だった
 ヤマハ離脱の発表以降、時折顔をのぞかせてしまった集中力の欠如もまったく感じさせなかった

 ただ純粋に速さ、そして強さでロレンゾを倒すこと…それこそがこの日のロッシを突き動かす強烈なモチベーションだった

 王者対王者のプライドを激しくぶつけ合うバトルは、調子を上げてきたはずのホンダ勢をはるか後方に置き去り、食らいついていこうとしたケーシー・ストーナーをコース外へと葬り去った

 悲劇的な怪我からの復帰以降、ロッシが初めて見せた鬼神の走りは、怖れを知らない”新チャンピオン”に対しての大きな大きな”釘”になるはずだった。12ラップ目までは…

 しかしロレンゾの速さ・強さは”かつての王者”の予想を遥かに超えていた
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 一度は2秒近くまで離されたロッシに対し、今度はラップあたりコンマ5秒も削るペースで追いすがり、17ラップ目の長いストレートエンドのブレーキングでロッシを一撃で仕留めて見せたのだ

 その後もペースを落とさない新王者がチェッカーを受ける姿を、かつての王者は8秒以上後方からただ眺めることしかできなかった…

 この日、明らかにひとつの時代が終焉を迎えた

 ロッシの時代が終わったのは、骨折したムジェロでも、タイトルを失ったセパンでもなかった

 それは、この日のエストリルの17ラップ目の1コーナーだったのだ

 怪我とその後遺症、チャンピオンシップポイントの計算、チームの思惑…さまざまな要因から、力と力の真っ向勝負をなかなか見せなかった2人の王者がついに演じたバトル…

c0041105_22524722.jpg そのあまりに明白な力の差に、多くの人はロッシが勝てなかったことに何か別の理由を探してしまうかもしれない

 でも、もう認める時だろう

 ロッシの時代は終わったのだと
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by taros_magazine | 2011-02-20 22:57 | motorcycle diary
Cold Wind (MotoGP 2010 Round-16 AUSTRALIA)
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 フリー走行:0.757秒
 予選:0.668秒…

 ケーシー・ストーナーが土曜日のそれぞれのセッションで2番手のライダーに対してつけたこの驚くべきタイム差に、他のすべてのライダー達は決勝レース前に早々と”白旗”を揚げてしまったようだった

c0041105_10385085.jpg ウォームアップでは2番手のマルコ・シモンチェリから10番手のミカ・カリオまでが1秒以内だというのに、当然のようにトップタイムをたたき出したストーナーは、そのシモンチェリの先1秒890という途方もない彼方にいた

 そして何よりこのタイムシートが如実に物語っているのは、今まさに大きな時代の節目が訪れている、ということではないだろうか?

 これまでもストーナーが驚異的な走りを見せることは何度もあった
 タイトルを獲得した2007年シーズンにはそれこそ”圧倒的”な速さ・強さを見せつけての戴冠だった

 それでも、それでも彼の速さの”真実”を見抜くのは容易なことではなかった
 
 確立された”勝ちパターン”を頑なに実践するそのスタイルと、王座を失った2008シーズンに見せた競り合いでの脆さ…

 そして台頭してきたホルヘ・ロレンゾという強烈なキャラクターの持ち主に対し、わずか3年前の王者という肩書きをもってしても”埋没”してしまった感は否めなかった

 しかし、その速さ・強さは錆付いていないどころか驚くべき進化を遂げていた

 決勝レースでは、タイトルを決め重石を下ろしたロレンゾのフルアタックを、ストーナーはまったく問題にしなかった

 彼だけが違うスペシャルタイヤを履き、違う排気量のマシンを走らせているかのように、本気でチェイスしている"New Champion"を置き去りにし、長いストレートを颯爽とウィーリーで駆け抜け、チェッカーを受けた

 この2人、ストーナーとロレンゾの勝負だけなら、『ストーナー、地元で圧勝』というフレーズで結ばれるだけのレースだった

 しかし、このレースから感じた”時代の節目”の本質はそれではない

 マレーシアGPがそうだったように、寝たフリをしていてもバレンティーノ・ロッシがこの抜群の相性を誇るサーキットでも勝利を狙ってくることは明らかだった

 しかし金曜日からすべてのセッションで中位に埋もれ、決勝でもベン・スピーズをやっとの思いでオーバーテイクし、食い下がるニッキー・ヘイデンにはもてぎの時のような"T-Bone アタック"でなんとか表彰台をキープするのがやっと…
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 そこには"Living Legend"としての誇りも、このスポーツ史上最大のスターであるという輝きもまったく感じられなかった

 だからこそ、スピーズやヘイデンはロッシに対しても接近戦をまったくためらわず、表彰式ではロッシがまるでそこに居ないかのようにストーナーとロレンゾは2人で盛り上がっていたのだろう 

 去年のここでのストーナーとのスーパーバトルが幻だったかのように、まったく存在感を示すことなく静かにポディウムから去っていったロッシ…

 バレンティーノ・ロッシという”ブランド”が守り続けてきたのは、彼の富や名声だけではない
 時にそれは若いライダー達にとってはコース上で”結界”として機能してきた

c0041105_1041258.jpg しかし、目に付くようになってきたラフな走りと時折見せてしまうモチベーションの低下がそのブランドの価値を下げてしまえば、もう誰もロッシに遠慮などしないだろう

 傾きかけた太陽の下、フィリップアイランドの寒風がロッシの背中に容赦なく吹きつけた


 

 
 
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by taros_magazine | 2010-10-28 10:44 | motorcycle diary
No More Excuse (MotoGP 2010 Round-15 MALAYSIA)
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 一体、あの強さは何処へ行ってしまったのか?
 あの速さは何だったのか?

 4強と言われた今シーズン、序盤からディフェンディング・チャンピオン バレンティーノ・ロッシを圧倒するような速さを見せ、そのロッシが不在の間にはすでに王者の風格さえも漂わせるほどの強さをも見せ付けていたホルヘ・ロレンゾ…

 しかしタイトルが現実のものとして近づいてくるにつれ、レース運びは手堅いものとなり、傲慢にさえ見えたメンタリティは萎縮してしまっていった

 そして目前で起こってしまったミザノの悲劇と、その後の気負い、さらに急ピッチで戦闘力を増してきたホンダ陣営に対し、これまで絶対的な信頼を寄せていたM1のウィークポイントが露呈すると、あの大胆でしなやかなライディングはすっかり影を潜め、もてぎではコンディションを取り戻したロッシのラフファイトに対し、レース後に”口撃”で応戦するのが精一杯だった
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 "2010 WORLD CHAMPION"
 
 あの屈辱のバルセロナから、血のにじむような思いで努力を重ね、そのために全てを捧げてきたチャンピオンシップが、皮肉なことに今の彼にとっては全てについての”エクスキューズ”になってしまっていたのだ
  
 このマレーシアでも、ロレンゾはその口実に対し忠実なレースをして見せた

 ダニ・ペドロサが欠場し、ケーシー・ストーナーが早々にレースから消えても、決してこのレースの勝利に対して色気など見せない

 スタートで出遅れたロッシが派手なオーバーテイクショーを繰り広げながら追い上げ、そして先行していっても、もてぎの時のように深追いなどしない
 
 250時代からのライバル、アンドレア・ドヴィツィオーゾがそのロッシに懸命に追いすがっていっても、あくまで傍観者に徹した
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 そして何とか表彰台の一角が確保されると、後は待ち焦がれた瞬間をただひたすらに待つだけだった…
  
 かくして、悲願のタイトルを獲得したロレンゾ…

 しかし、その栄光のチェッカーフラッグをもって、これまでのすべてのエクスキューズを彼は失うこととなった

 ほぼ完全復活となったロッシ、同じくレースに復帰してくるペドロサ、そして圧倒的なモチベーションで望んでくるストーナー、生き残りをかけるドヴィツィオーゾ、成長し続けるスピーズ…

 ”王者”ロレンゾの前に立ちはだかる、かつてないほど大勢の獰猛な野獣たちに、もう一切の言い訳は通用しない

 本当の”ビッグゲーム”が、今始まったのだ

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by taros_magazine | 2010-10-17 01:16 | motorcycle diary
Ruthless Aggression (MotoGP 2010 Round-14 JAPAN)
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 バレンティーノ・ロッシとホルヘ・ロレンゾのラスト6ラップに亘る激しい接近戦は、アンドレア・ドヴィツィオーゾを相手に”退屈な勝ちパターン”をほぼ決めたケーシー・ストーナーを無視するかのように、もてぎのファンを大いに熱狂させたという

 近年ではあのラグナセカでのロッシVSストーナーの大バトルを、そしてオールドファンには89年から何年も続いたウェイン・レイニーとケビン・シュワンツのそれを彷彿とさせ、久々にモーターサイクルレースのバトルの面白さを見せつけたレースとして、世界中のファンを喜ばせたようだった

 そしてレース後、ロッシがいつものようにバトルを”エンジョイ”できたとコメントしたのに対し、もう一方の主役であるロレンゾは、ラグナでのストーナーや2005年のヘレスのセテ・ジベルノーの件を引き合いに出し、ロッシとその走りを容認し続ける運営サイドを激しく非難した

c0041105_2351034.jpg しかし、これらの”激しすぎるバトル”を含めて、ロッシはグランプリを盛り上げるヒーローとして最終的には肯定されてきた

 ロレンゾを擁護すべきヤマハチームでさえも、バトルそのものの危険性ではなくチームの利益という観点からロッシに注意喚起して幕引きを図り、当然のごとく運営サイドからは何らペナルティを課されることはなかった

 つまりは『ロレンゾもほかのライバルも、ロッシと同じように熱いハートと圧倒的なテクニックを持って対抗すればいいだろう』…それが今回のようなバトルに対する大方の見方なのだろう

 しかし、今回に限っては違うような気がしてならない

 あのコークスクリューでのストーナーとのバトルは、チャンピオンシップを奪回する上で絶対に勝たなくてはならない1戦であり、またマシンの戦闘力の差をカバーするために、当のロッシ自身が誰よりもリスクを背負ったオーバーテイクだった

 ヘレスの最終ラップの最終コーナーも、ロッシは確かに強引にインに入ったが、その時点でジベルノーにはクロスラインという選択肢もあったように思えた

 そして何よりも決定的にこれまでのロッシと違うのは、バトルの相手に対する”Respect”が感じられなかったことだ

 お互いに激しい敵対心を持っていたAMA時代を経て、グランプリで対峙するようになったレイニーとシュワンツの”曲芸”とも言えるドッグファイトには、常に相手に対する絶大な信頼と敬意が感じられた
 
 だからこそ、あれだけ激しいオーバーテイクをお互いに繰り返しながらも、レースが終われば表彰台でヘラヘラと笑って話ができたのだ
 
 タイトルはもちろん、レース終盤のトップ争いでもないポジションで、すでにチャンピオンシップが絶望的なロッシがリタイヤだけは避けたいロレンゾに肉弾戦を挑む…”ドアを空ける、空けない”以前の段階ですでに”アンフェア”ともいえる状況で、ロッシは何を誇示したかったのか?

 こういう時こそ、純粋な走りの凄さでライバル達の尊敬を勝ち得てきたのがバレンティーノ・ロッシではなかったのか?

 すでにタイトルを失うことが決定した今、ロッシはもっと大切なものまで失おうとしていることに気づいているのだろうか?
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by taros_magazine | 2010-10-09 23:18 | motorcycle diary
the show must go on (MotoGP 2010 Round-13 ARAGON)
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 あの悲劇的な瞬間から、何度も何度も同じ疑問が脳裏をよぎる
 『いったい、僕たちは何度このような悲劇を繰り返してきたんだろう…』と


 かつて親友、若井伸之の死を目の当たりにし、今また愛すべき友を失った2人…
 
 このサンマリノのサーキットにやってきて、スタート前まで富沢にコースの攻略法を伝授していた坂田和人

c0041105_021363.jpg あの瞬間を現地で見た彼は、これからテレビ局のモニターに映し出されたクラッシュシーンを見ても、レース解説者として語り続けることができるのだろうか…
 
 そして世界に通用するライダーを育てるべく、自らのチームを率い、そして富沢のヨーロッパでの世話人でもあった上田昇

 事故直後から変わり果てた富沢に寄り添っていた彼は、これからも未来ある若者たちに”レース”を走ることの尊さを教えることができるのだろうか?

 
 同じ”サンマリノ”の名を冠したイタリアのイモラで、盟友アイルトン・セナのクラッシュを見た後藤治

 彼は、自らが開発したエンジンを駆った若き才能がまたもや散ることとなった今、これからもスピードを追求していくことができるのだろうか?

c0041105_0211484.jpg あの日、同じようにアスファルトに横たり、そしてストレッチャーで運ばれていった加藤大治郎の姿を見たバレンティーノ・ロッシ、ロリス・カピロッシ、マルコ・メランドリ…

 HRCから支給されたスクーターを譲ったダニ・ペドロサ

 ゼッケン48の後継者として弟のように富沢をかわいがっていたホルヘ・ロレンゾ…

 この日もつい数時間前まで、一緒に笑って話をしていた青山博一、小山知良…

 何度もいっしょに食事をしたり、ふざけあっていたエクトル・バルベラ、アルバロ・バウティスタ、マルコ・シモンチェリ…

 そしてデ・アンジェリス、レディング…

 彼らすべてが参加し、レース前に行われた1分間の黙祷
 それは、皆に愛されたひとりの若者への祈りとともに、彼ら全員が決意をあらたにする瞬間だった

 『俺たちは走り続ける。ショーヤのため、そして不幸にも命を落としてしまった全てのライダーのために…』

 そして彼らは今年も日本にやってくる。富沢の魂とともに…
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by taros_magazine | 2010-09-21 23:35 | motorcycle diary