カテゴリ:motorcycle diary( 156 )
Cause' (MotoGP 2011 Round-14 ARAGON)
c0041105_14125922.jpg ピットスタートのペナルティを受けてまでも実戦投入に踏み切った待望のアルミフレーム…
 しかし、中位グループに追いついた後の展開は今シーズン何度も見てきた”お馴染み”の光景だった

 『必要なのは時間だ』
 そういい続けてきたこの半年

 現レギュレーションで戦うレースは、すでにこのアラゴンでのレースを含めて5戦、しかも移動ばかりのフライ・アウェイの環太平洋ラウンドを含めた1ヶ月半しか残されていない

 タイトルでも勝利でもなく、ただ”マシン開発の場”と称してグランプリを走り続けるバレンティーノ・ロッシの姿を、1年前に誰が予想できただろうか?

 地元の圧倒的声援の押され最高の走りを見せるケーシー・ストーナーを相手に、すでにタイトルを決めていながらも激しく闘志を剥き出した2009年のフィリップ・アイランド
 そしてディフェンディング・チャンピオンとして新王者ホルヘ・ロレンゾに最初で最後の真っ向勝負を挑んだ去年のエストリル…

c0041105_14132343.jpg たとえ勝てなかったレースでも、ロッシがコース上で放つオーラは別格だった

 たとえ何位でどの位置を走っていても、遠目にもそれがロッシであることが瞬時にわかるほど、彼の走りは輝いていた

 しかし今やブルーやホワイトのマシンの集団の中にあっても、黄色のヘルメットやレザースーツが見えなければ、彼と彼が駆る鮮やかな赤いマシンは特別に目立つ存在ではなくなってしまった

 快走する”去年までのライバル”達のはるか後方で、サテライトのマシンを駆る”今年のライバル”達と組んず解れつを繰り広げるロッシの姿は、まるでピットスタートを言い訳として利用するがためのニューフレーム・エンジンの導入だったのでは?とさえ思えてしまうほど小さな存在に見えた

 残り少ない時間の中、今後も急造のパーツでタイムアップを試みるというロッシ

 ”問題”をマシンに求め続けるその姿が、逆にロッシ本人が”本当の問題”を悟ってしまったように思えてならない 

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by taros_magazine | 2011-10-14 14:40 | motorcycle diary
"魂" (MotoGP 2011 Round-13 SAM MARINO)
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 今シーズン、初めて見せた”攻めの走り”
 そして、ジリジリと後方に埋もれていく”見慣れた光景”・・・

 この日バレンティーノ・ロッシが見せた2つのシーンは、モーターサイクル・レースを戦うライダーにとって、決定的に重要な要素が何であるかをあらためて突きつけた。それは…

 1990年、最終戦のフィリップアイランドは、ついに前戦ハンガリーで初優勝を飾ったホンダの”新エース”、ミック・ドゥーハンの母国凱旋に沸きかえっていた

 ウェイン・レイニー、ケビン・シュワンツという傑出した天才2人に対し、一歩も引かない激しいライディングを身上とするこの若きオージーの一挙手一投足に、サーキット中の注目が集まっていた

 しかし、勝ったのはドゥーハンでも、レイニーでも、シュワンツでもなかった 

c0041105_121268.jpg 満身創痍の”かつてのチャンピオン”、ワイン・ガードナーがカウルの外れかけたマシンで見せた”魂の走り”は、このスポーツが戦闘力の高いマシンや恵まれた才能だけで競うものではないことをハッキリと見せてくれた

 まさにこの日の序盤のロッシのように、ホームタウンGPという特別な舞台で発揮された特別な力…それはロッシがまだ”錆び付いていない”ことを証明したかに見えたのだが…

 マルコ・シモンチェリに差された時のロッシの姿もまた、かつて見たシーンに酷似していた

 あの伝説的バトルの1989年、鈴鹿

 そこで、本来なら話題を独占するハズだった一人の”かつてのチャンピオン”の復活…
 全盛期を思わせるロケットスタートで大観衆を沸かせたフレディ・スペンサーは、なんとかトップグループに食らいついていた

 しかしヘアピンの入り口でケビン・マギーにインを差された時、スペンサーは驚いたように挙動を乱した

c0041105_174979.jpg 83年にはここからスプーンカーブまでブラックマークを引いて走った彼は、まるで”抜かれる”ということをまったく想定していなかったような反応を見せていた

 その後マギーと何度か順位を入れ替えたものの、不可解なコースアウトを何度か繰り返してはまたペースを上げるという不安定な走りでレースを終えた彼は、次戦以降も瞬間的な速さと脆さを見せながら、やがてグランプリを去っていった

 これまで幾多のバトルを制してきたロッシが、この日抜かれる際に見せた挙動と、その後の淡白な走り…

 ”ハンティング”の対象となったハンターが、その恐怖に耐えられなくなった時には、たとえどんなに優れた道具や技術を持っていても生き延びることができないという事もはっきりと見せたレースだった

 はたして、バレンティーノ・ロッシはこのままスペンサーのようにフェイド・アウトしてしまうのか?

 それとも、ガードナーのように再び勝利を手にすることができるのか?

 ただ、あのフィリップアイランドの激走の後のガードナーの唯一の勝利となった92年のドニントン…
 その魂の走りの原動力は、”ホーム”ではなく”引退”だったのだが…

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by taros_magazine | 2011-09-18 01:01 | motorcycle diary
"Apocalypse" (MotoGP 2011 Round-12 INDIANAPOLIS)
c0041105_2174045.jpg この虚しさは何なんだろう?

 目の前では久しく目にしていなかった”天才”が、その持てる能力を思う存分発揮し、驚異的なスピードでトラックを駆け抜けているというのに…

 それは以前から言われているような、ケーシー・ストーナーというライダーの他を寄せ付けない圧倒的な勝ち方が原因ではない

 バレンティーノ・ロッシが相も変わらずぎこちない走りで下位争いに終始しているからでもない

 多くのライダーのヘルメットに、レザースーツに、そしてマシンに貼り付けられた白地に赤の国旗がカメラに映し出されるたびにこみ上げてくる、この言いようのない気持ち…

 3月11日のあの出来事以降、被災した人ばかりではなく私たち日本人全てが、世界中から寄せられる支援とメッセージにどれほど勇気づけられたことだろう

 とりわけ日本と関わりの深いモーターサイクル・ロードレースの最高峰の舞台では、ライダー達がさまざまな手段でそれぞれの母国のファンに対して日本への支援を呼びかけてくれた
 
 しかし今、”復興の象徴”として開催されるはずだった”日いづる国”のグランプリは、メーカーや統括団体への忠誠心を計る”踏み絵”のようになってしまった…

c0041105_2175481.jpg 『300km/hでのクラッシュをも恐れないライダーが0.14μsv/hの放射線が怖いのか?』
 『日本から伝わってくる情報はウソばかりじゃないか!』 
 『フクシマじゃ何十万人もの人が普通に生活してるんだぜ?』
 『チェルノブイリの時には強制避難するほどの放射線量だろう!』

 誰が正しいのか、何が真実なのか、おそらく回答などない議論が9月30日が迫るにつれて感情論にかわっていく…

 震災のことなどひと時忘れて、世界のトップライダーたちの走りに酔うはずだった3日間も、今となっては開催の可否も含めて、どんな結末になろうとも決して後味の良いものになるとは思えない

 『日本には行きたくない』というライダーたちを非難しようとは思わない

 そういう彼らに失望するファンの気持ちも十分に理解できるつもりだ

 誰も悪くないのだ
 誰もが、この忌まわしい出来事に苦しんでいるのだ

 遠くアメリカの”モータースポーツの聖地”では、誰もが思い思いのスタイルでレースをエンジョイしていた

 はたして日本で、そこに集まったファン達が心からの大歓声をあげることができる日はいつのことになるのだろうか?

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by taros_magazine | 2011-09-02 16:39 | motorcycle diary
"Satisfaction" (MotoGP 2011 Round-11 Czech)
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 自分達が前に進めば、ライバル達はそれよりもさらに前へと進む
 自分達がコンマ5秒削れば、ライバル達は1秒削ってくる…

 バレンティーノ・ロッシがこんな迷宮に入り込んでから、もう8ヶ月が過ぎた
 
 ライバルはストーナーでもロレンソでもペドロサでもない
 シーズン当初は何とか手の届いたドヴィツィオーゾやシモンチェリですら、今では追いかけるのも難しくなってしまった

 コース外での発言も、『いまに見てろよ』的なものはすっかり鳴りを潜め、困難な状況の中にある米粒ほどの希望を語るだけになってしまった


c0041105_23525935.jpg それでも、このブルノの状況は違うものになるはずだった

 20日間のサマーブレイク、それは急造のGP11.1を熟成させる願っても無いインターバルになるはずだった

 そして迎えた土曜
 これまでカタルニア以外ではすべて”秒”差だった予選タイムは、ポールのペドロサから0.776秒差まで迫ってみせた

 それは、デスモセディチ×ストーナーを相手にタイトルを奪還した2008年を思えば、十分”射程距離”と言っていいほどのタイム差だった

 意気上がるドゥカティ陣営…しかしそれもレーススタートまでだった

 スタートダッシュに失敗すると、いとも簡単にホンダとヤマハのワークスマシンに先行を許すいつもの展開となった

c0041105_23531837.jpg 独走するストーナーには逃げられたが、表彰台を窺うベン・スピーズのテールに迫った、とは言うものの、逆に後からはスズキのバウティスタが猛然と突っつかれていた

 そして何よりもロッシが置かれている状況の深刻さを物語るのが、そのレース後の当のロッシのコメントだった

 このリザルトを『とてもうれしい』と表現し、マシンの改善に満足していると言うのだ

 昨年、このブルノで転倒した後、誰はばかることなく全身で”怒り”を表現した彼が、これまで9つの世界タイトルを獲得した伝説的ライダーが、昨年まで常に優勝争いに絡んでいたマシンに跨り、そして今、トップと10秒以上離された6位を大いに喜んでいるのだ

 はたして、この先表彰台へ、そして勝利へと進むために一体どれほどのマシンの進歩と時間が必要だというのか…
 
 まるで途方も無く遠い目標に対し、見ないフリを決め込んだかのように、小さな喜びをみつけてはポジティブなコメントを繰り返す姿は、かつて勝てないレースの中でもブリジストンタイヤの特性を掴もうとしていた頃に口にしていた発言と、言葉こそ同じではあるがそこに込められた”気持ち”がまったく違っているように思えてならない

c0041105_23505833.jpg 確かに、この日の彼の走りとリザルトに対する評価は分かれるかもしれない

 しかし、彼のレース後のコメントが”現実逃避”でないならば、その真偽はインディアナで明らかになるだろう

 そして、そのレース後のロッシのコメントの中にこそ、これまで覆い隠してきた本心が見えるはずだ
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by taros_magazine | 2011-08-27 23:58 | motorcycle diary
"myth" (MotoGP 2011 Round-10 United States)
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 1970年代、ケニー・ロバーツの登場がその幕開けだった

 ヨーロピアンが集う”クラブ”の中で、その発言やパドックでの過ごし方、そして何よりその突出した速さから”異星人”と称されたこのアメリカ人の成功こそが、その神話の始まりだった

 そのケニーと入れ替わるように現れたフレディ・スペンサーは、まさにその神話を具現化したライダーだった

 コース上で見せる誰にも真似することのできない圧倒的なライディングと、それに相反するように繊細でミステリアスな私生活…彼もまた神話だった

c0041105_2343930.jpg ほどなくグランプリ最高峰は、アメリカ人の独壇場となった

 100キロ少々の車体とプアなタイヤ、そこに搭載されたピークパワー重視のエンジン…そんなモンスターマシンを、エディ・ローソン、ウェイン・レイニー、ケビン・シュワンツらはまったく苦にしないどころか、そのコントロールを楽しんでいるかのように操り、勝ち続けた

 『ダートトラックをルーツに持つ彼らならではの速さだ』

 『いや、AMAの荒れた路面での経験が活きているんだ』

 『無駄にコーナーリングスピードを追求せず、ラップタイムをトータルで稼ぐという発想こそ画期的だ』

 彼らの速さを目の当たりにするたびに多くの人が様々な考察をしてみせたが、そこで交わされるどんな説も彼らの異次元の走りを裏付けているようには思えなかった

 ”アメリカン神話”

c0041105_235683.jpg 突如として現れては驚異的な速さを見せつけ、涼しい顔で勝利をさらっていくアメリカン達…いつしか彼らの母国を”神話の世界”としてとらえることが、彼らの速さを説明できる唯一の理論になっていった

 しかしジョン・コシンスキーを最後に、神話といえるほどの衝撃を与えるライダーは現れなかった
 そして神話は南半球やラテンの国のライダー個人へと移り変わっていった

 そんなミック・ドゥーハンの王朝以降、グランプリでは目にすることのできなくなったこの神話の久々の継承者を、ある日ワールド・スーパーバイク選手権で目撃した

 スポット参戦でのいきなりの勝利、ワークスのエース、トロイ・ベイリスを豪快なドリフトで追い詰めるライディング…
 ベン・ボストロムはまさしく神話の国からやってきたライダーに見えた

 しかしベイリスやコーリン・エドワーズ、さらには後輩のニッキー・ヘイデンがMotoGPにコンバートしていく中、マシンやスポンサーという”現実”の部分でほんの少し運が足りなかったボストロムは、WSBからAMAへと静かに戻っていった

c0041105_2352770.jpg その彼が10年の時を経て遂に上がってきた最高峰の舞台…しかしそこに用意されていたのはあまりに無情なシナリオだった

 Moto2の王者をもってしてもブービーが御の字というマシンをシェアしての参戦…

 フリー走行・予選と後方から迫ってくるレギュラーライダーの邪魔にならないことだけに神経を使いながら過ごし、『せめて決勝だけでも気持ちよく』と臨んだレースも、コースアウトした後はマシンをいたわるかのように走り、そしてチェッカーをあきらめてピットへと戻っていった

 ”10年前だったら…。せめてプラマックかグレシーニのマシンだったら…”
 
 いや、おそらく結果は大きくは違わなかっただろう  

  ”アメリカン神話”

 それは、類まれな才能と時の運に恵まれた一握りのライダーの輝きが創り出した”幻想”だったのだろうか?

 あるいは、もうひとりの”ベン”による第二章があるのだろうか
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by taros_magazine | 2011-08-27 23:08 | motorcycle diary
" #1 " (MotoGP 2011 Round-9 GERMANY)
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 ”エース” それは…

 ダニ・ペドロサがチームのメインスポンサーの本拠地がある国の出身でも、アンドレア・ドヴィツィオーゾがそのマシンのメーカーと10年ほどの付き合いがあろうとも、その座を手にすることができるのはコース上で一番速いライダー…つまり自分であるはずだった

 ケーシー・ストーナーは久しぶりのホンダに跨ると、開幕前のテストから当たり前のようにトップタイムを連発した

c0041105_22451123.jpg シーズンが始まるとその勢いのまま勝利とポイントを重ねていった

 調子の上がらない”かつてのライバル”バレンティーノ・ロッシがドカティのマシンに苦闘する姿を嘲笑し、そのロッシの転倒に巻き込まれてリタイヤした後には、謝罪に訪れたロッシに体調を気遣うようなコメントさえ吐かせた”エースの余裕”…

 誰もがこの新しいホンダの”エース”が、このまま王座にむかって勝ち続けていくだろうと思っていた

 そしてストーナー本人も思っていただろう
 『あの時の自分とは違う…どこまでも食い下がってくるロッシのプレッシャーに負け、転倒を繰り返した2008年とは…』と

 その絶対的な速さが小さなほころびを見せたのはアッセンだった

c0041105_22461421.jpg オープニングラップのアクシデントで一瞬開いたベン・スピーズとの差…
 その3秒が、どんなに攻め続けても取り戻せなかった

 最強のマシンに乗る最速のエースが、パワーで劣っていると思っていたマシンに乗る”ナンバー2”に力でねじ伏せられたのだ

 さらに、予選2番手となったそのスピーズにコンマ5秒ほどの差をつけてポール・ポジションを獲得したムジェロでは、そのほころびがはっきりと目に見えるほどの大きさになっていた

 レース中盤までトップを快走し、あと少しで逃げ切りパターンに持ち込めるはずだった

 しかし、猛然とスパートする”ヤマハのエース”ホルヘ・ロレンゾにあっけなくかわされると、最後には”ナンバー3”のドヴィツィオーゾにも抜かれてしまった

 だからこそ、このドイツでは誰が”エース”なのかをはっきりとさせなければならなかった

c0041105_22464998.jpg 病み上がりの前エースを抜き、前戦で屈辱を味わわされたナンバー3を抜き、そしてヤマハのエースをかわすと後はチェッカーまで攻め続けるだけだった

 しかし、またしても悪夢が蘇る

 どんなにマシンにムチを入れても離れない2人…
 トップに立ったペドロサがスパートすると、ロレンゾとの2位争いにも自らミスで敗れた”ガラスのエース”…

 プライベートのRC211でロッシに食い下がり、デスモセディッチを世界でただ一人乗りこなした彼が、最強のマシンを得て初めてぶつかった壁…

 『ケーシーは開発なんてしてなかった』

 シーズン序盤の”舌戦”の最中にロッシが放ったこの言葉に対して、ストーナーが今後のリザルトで反論できなければ、タイトルはおろか憧れだったホンダワークスのエースの座さえも、彼の手から滑り落ちてしまうだろう

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by taros_magazine | 2011-07-24 22:52 | motorcycle diary
"Rapsodia" (MotoGP 2011 Round-8 Italy)

c0041105_22333847.jpg 勝ちたい気持ちを優先させれば”無謀”
 確実にリザルトを取りにいけば”平凡”

 この日、マルコ・シモンチェリの気持ちは揺れ動いていた

 この、元来心優しい気さくなイタリアンに対する風当たりは、近年のグランプリでは類をみないほど痛烈なものだった

 ここまでの2戦でダニ・ペドロサ、ホルヘ・ロレンゾというトップスター2人を葬った”撃墜王”も、このムジェロでは大きな歓声で迎えられた

 そのファン達に見せるべき”自分の姿”はどっちなのか?

 5位でチェッカーを受けたシモンチェリの笑顔…喜びよりも安堵を感じさせるその笑顔は、彼が決して根っからの”危険なライダー”ではないことを物語っていた

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 サーキットを埋め尽くした赤と黄色のコラボレーション…

c0041105_2234253.jpg しかしバレンティーノ・ロッシと彼の赤いマシンは、この日もかつて彼が駆ったマシン達の後方で走り続けた

 アッセンで見せた一瞬の輝きさえも見せることができず、まるで足かせを着けているかのように不自由なライディングに終始しながらも、その意地だけでドゥカティ勢の最上位を走り続けるロッシ…

 決してファンを満足させられたわけではない
 復活の手掛かりを見出したわけでもない

 それでも、彼がチェッカーを受けた時の拍手は、この日一番の大きさだった

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c0041105_22355489.jpg いつも”二番手”だった

 ロレンゾと熾烈なバトルを繰り広げていた250ccの時も
 悲願のワークスチーム入りを果たした去年も…

 それどころか、ケーシー・ストーナーがチームに加入してからは、第3ライダーのポジョションを甘受せざるを得なかった

 そんなアンドレア・ドヴィツィオーゾが見せた魂のオーバーテイク…

 絶対的なエースの座を不動のものにしかけていたストーナーに後塵を浴びせた彼は、この日確かに何かを掴んだ

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 今シーズン急成長を遂げたニュースターも、9度の王座を獲得した生ける伝説も、そして最強のワークスチームのホープも、この地元で勝利することはできなかった

 それは、ともすれば辛辣な言葉が飛び交うことも予想されたリザルトであったかもしれない

 でも、この日集まった何万ものイタリアン達は、その結果以上に大切な何かを、このムジェロで確認したかのように大きな歓声で彼らのヒーローを称えた

 とびきり熱く、そして美しいレーシングDNAを持ったイタリアン達

 この日の本当の勝者は、こうしてレースを楽しむことのできる彼らだったのかもしれない
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by taros_magazine | 2011-07-24 22:39 | motorcycle diary
蜘蛛の糸 (MotoGP 2011 Round-7 Dutch TT)
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 もし、マルコ・シモンチェリがホルヘ・ロレンゾを道連れにしていなければ、リザルトは違うものになっていたかもしれない

 もし、"Dutch Weather"が路面を冷やしていなければ、GP11.1もまた”他人が作ったバイク”と同様に言うことをきいてくれなかったかもしれない

 しかし、そんな”タラレバ”もこの日のバレンティーンノ・ロッシにはどうでもいいことだった…

 
 かねてから噂されていた12年モデルとのハイブリッド・マシンを持ち込むとしたら、このアッセンしか考えられなかった

c0041105_1404419.jpg それは、これまで7勝を挙げている得意のコースだから、という理由ではない

 それは、このコースでこれまで何度も味わった逆境を、そしてそれを跳ね返してきた自分を今一度取り戻すために…

 フリー走行で手足を骨折しながらも強行出場し8ポイントをかっさらっていった2006年
 オープニングラップで転倒し、ハンドルバーを曲げシフトペダルを失いながらも鬼神の走りを見せた2008年
 
 今のロッシが復活を掛けて臨むにこれほどふさわしい舞台は他にないからだ 

 だから、目の前でシモンチェリとロレンゾが消えても関係なかった
 またもアンドレア・ドヴィツィオーゾに表彰台を阻まれても冷静でいられた

 何より大事なのは、着順やライバルのポイントよりも、彼の中にまだ”勝ちたい”という欲望と”勝てる”という自信が残っているかどうかを確かめることだから

c0041105_140594.jpg 果たして、ロッシはそれを確認することができたのか? 

 ただ言えることは、この日のロッシの走りはとても美しく、そして力強いものだった
 それは少なくとも希望を失った者の走りではなかった、ということだ

 もしかしたら、ロッシが見出したその”希望”は、まるで蜘蛛の糸のように細いものなのかもしれない
 
 しかし、それでも彼はその糸を登っていかなければならない
 赤いマシンに跨ることを選んだのは、ほかならぬ彼自身なのだ

 ロッシが必死でよじ登るその細い糸には、数え切れないほどのファンもまたぶら下がっている

 ロッシの希望の糸はそのプレッシャーに耐えられるのか?
 イタリアのファン達は今ロッシに何を求めているのか?

 ”審判の日”がいよいよ近づいてきた
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by taros_magazine | 2011-07-03 13:56 | motorcycle diary
" Bashing " (MotoGP 2011 Round-6 Great Britain)
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 今まさに、彼はこれまで築き上げてきた幾多の栄光を失おうとしている

 その圧倒的なヒューマン・パフォーマンスと愛すべきキャラクターで世界を虜にしてきた”グランプリの太陽”は、かすかな西日を放ちながら地平線の彼方へ落ちていこうとしている…

 走るたびにケーシー・ストーナーに3秒以上離され、決勝以外のすべてのセッションでストックのドゥカティに乗るプライベーター、カレル・アブラハムに遅れをとった

 12台しか完走しなかったその決勝レースで、彼はストーナーの遥か後方、1分遅れで青山博一、トニ・エリアスと死闘を繰り広げた

c0041105_10584644.jpg  かつてのチーム・メイトや自分の後釜のライダー、それに飛ぶ鳥を落とす勢いだった母国の後輩らの自滅に助けられ、いくつかポジションこそ上げたものの、表彰台を目指して奮闘する ”チーム・メイト” ニッキー・ヘイデンの30秒後方で ”ライバル” アブラハムをかわすのが精一杯だった…

 今、バレンティーノ・ロッシの身に起こっていることが、いったいどれほどの事なのかを知る術を誰も持たない

 これまで、人々はロッシ本人の発信する情報により、最初は右脚、そして肩の負傷へとその原因を求め、やがて未成熟なマシンへとすり替えてきた

 でも、何かが決定的に違っていた

 RC211V相手に手も足も出なかったM1でいきなり勝ってみせたロッシと

 初めてのブリジストンを、みるみる手なずけてみせたロッシと…

c0041105_119751.jpg それでも、彼が跨るマシンが赤くなければ、イタリアのファン達は今のような成績でも、あの2006年のムジェロのように"FORZA!"と言ってくれたかもしれない

 しかし、彼らは今まで何度も見てきたのだ 
 ストーナーがポディウムの一番高いところでシャンパンを開けるところを
 
 彼らは4年前の歓喜をいまだ鮮明に記憶しているのだ 
 イタリアンメイドのマシンが世界の頂点に立ったあの日のことを…

 去年8月…あの衝撃の記者会見以降、ティフォージたちはイタリア人が乗るイタリア製マシンが快走することを信じ、待ち続けてきた

 暗闇のカタール、雨のヘレスではただ見守った
 4位争いのエストリル、ついに表彰台を獲得したル・マンで、その期待はいよいよ現実味を帯びてきたハズだった

c0041105_1134370.jpg しかし得意のカタルニアで2大ワークスの後ろで淡々とレースを終えると、ついに火の手が上がった

 熱しやすく冷めやすいラテンの血は、いままでアンタッチャブルだった存在に公然と疑問符を突きつけた

 そんな状況の中、沸騰寸前の母国の不満に対し、このシルバーストーンで最悪の回答を示してしまったバレンティーノ・ロッシ…

 まるでタガが外れてしまったかのような激しいバッシングが吹き荒れる今、はたしてロッシは今まで何度も驚異的なライディングを見せたアッセンで、そしてドゥカティの地元中の地元ムジェロで、どんな言葉をもってファンに迎えられるのだろう?

 そして何より、ロッシ自身の胸中にあるものはいったい何なのか?

 わずかな希望の光に照らされた12年型のマシンを駆る自らの姿か、それとも赤いレザースーツではなく、赤い耐火繊維のレーシングスーツを着る姿なのか…

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by taros_magazine | 2011-06-17 10:58 | motorcycle diary
偽悪者 (MotoGP 2011 Round-5 Catalunya)
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 サッカーのディエゴ・マラドーナなら、あのスペインでのワールドカップのイングランド戦での”5人抜き”がある
 野球なら、”ミスター”長嶋茂雄が天覧試合という一世一代の見せ場で放ったサヨナラホームランだろう

 2輪のレースでも、傑出した速さを持つライダーなら決して忘れられることのないシーンというものがある

 それはホッケンハイムでのケビン・シュワンツのミラクルブレーキングやラグナセカでのバレンティーノ・ロッシのダート走行のように勝負を決めたシーンとは限らない
 アンダーストープで宙に舞ったウェイン・レイニーの姿、陽の落ちたホームストレートでウォールに立てかけられたTECH21…

 それらの記憶は、たとえリザルトシートには記載されなくとも、そのライダーの伝説をいっそう美しいものに飾り立てていくのである…
 
 この日、国際映像の主役は”ブービー”達のバトルだった

c0041105_15341441.jpg まるで4輪のF1のようにスタート直後から秩序だってチェッカーめざして走り続けるトップ6…
 レース終盤には、勝利めざして快走するストーナーにカメラが向けられることはほとんどなかった 

 ケーシー・ストーナーという卓越した速さを持つライダーが勝利することが”つまらない”と言われるようになって久しい

 それはホンダ時代のロッシのように『勝つことが当たり前』すぎてリザルトやレース展開に興味が持てない、というようなものではない

 タイトルを経験し、今シーズン無敵の強さを誇りながらも、これまで伝説や名シーンというものの主役を演じたことのないライダー…

 それが序盤からスルスルと前に出て後続をジワジワと引き離すや、そのまま大きなドラマを演出することなく淡々と速い周回を重ね、そのままフィニッシュする勝ち方…まさしくこの日のようなレーススタイルが”つまらない”のだと思ってきた
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 しかし、それがは大きな間違いだったに気づいた

 この日の彼はいつにも増して驚異的な走りをしていた
 
 誰よりも早いタイミングで、誰よりも大きくスロットルを開けていた
 誰よりもクイックにマシンを切り返し、誰よりも激しくリアをドリフトさせていた

 思い通りにならないデスモセディチで傑作マシンM1に乗るロッシを追いかけていた08、09シーズンのように、このカタルニアのダイナミックなコースを息が詰まりそうな限界の走りで攻めていた

 そんな魂のこもったライディングをしながらも、レース後に彼は”余裕の勝利”だと語ったのだ

 自分は騙されていたのだ
 誰よりも鋭い牙と爪を持ちながらも、”涼しい顔”で勝利をさらっていくケーシー・ストーナーというキャラクターに…
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 煮えたぎるような勝利への執着、あまりに貪欲なスピードに対する欲望…
 時にそれはライバルの地元での勝利という”空気の読めなさ”として、またある時はバトルすら不要なレースを量産してしまう

 彼の勝利が”つまらない”理由…それはストーナーの問題ではなく、彼のライバル達が彼以上に激しい走りをしていないからに他ならないのだ

 ”パーフェクトマシン”212Vのポテンシャルを100%引き出して走るストーナー以上に攻撃的な走りが期待できるライダー…それは、やはりマシンの性能を超えて120%で走ることのできるあのライダーしかいないのかもしれない

 そしてその時、ストーナーが真の主役になるとしたら、それはこれまで誰も見たことがないほどハイレベルで壮絶なシーンになるだろう
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by taros_magazine | 2011-06-12 15:36 | motorcycle diary