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CRTとは何だったのか?(MotoGP 2012 Round-6 Great Britain)
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 素晴らしいマシンを得て、その才能を思う存分発揮するケーシー・ストーナーの走りや、精密機械のようにハイペースでラップを刻み続けるホルヘ・ロレンゾのレースコントロール、さらにはカル・クラッチロウやアルバロ・バウティスタの急成長など、この数年になく見所の多い今シーズン…

 暗い話題が先行していた昨シーズン終盤以降の流れからすれば、グランプリは”盛り上がっている”と言ってもいいのかもしれない

 しかし、多くのファンが見つめるトップグループの遥か後方で繰り広げられているCRT勢の”レース”を何と表現すればいいのだろう?

 2003年にはCAS(スポーツ仲裁裁判所)の判断を仰いでまでも失格にした市販車ベースのエンジン…その”禁じ手”を、FIMは寂しくなる一方だったグリッドを何とか埋めるために今度は”グランプリの未来”とまで言って推奨した

c0041105_22312021.jpg しかし、少なくとも”レース”をする上ではメリットどころかハンディキャップでしかないようなレギュレーションに則ったマシンは、あわよくばプロトタイプを食うどころか、タイム的にはライバルはむしろSBKのマシンという有様だ

 そしてグランプリの救世主になるはずだったそのマシンは、皮肉にも現役グランプリ王者がレースに対する情熱を失い引退を決意する原因のひとつになってしまった

 もちろん、CRTマシンに乗るライダーや走らせているチームの情熱は本物だろう

 プロトタイプの台数がそろわない中、この困難な状況でもMotoGPというカテゴリーに留まる決断を下したランディ・ドピュニエやコーリン・エドワーズは十分に尊敬に値する奮闘を見せているし、新たに参入したチームの勇気も大いに賞賛されるべきだろう

 それでも、そのマシンが最高峰の舞台を走るにふさわしいとはどうしても思えない

 かつて北川圭一がXフォーミュラーのマシンでワークスのスーパーバイク勢を追い回していた全日本ロードレースのような光景を、グランプリのトップカテゴリーに求めるのは何かが違うのではないだろうか?

 これから勝ち目のないレースに臨もうとしているライダーが、グリッド上で無邪気にテレビカメラに向かって手を振る姿や、その”カテゴリー”でトップフィニッシュしたマシンがパルクフェルメに並び、そこで関係者が大喜びする姿を目にするたびに、また拭い去れない違和感が積み重なっていく…

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by taros_magazine | 2012-07-02 22:38 | motorcycle diary
Behind the Mask (MotoGP 2012 Round-5 Catalunya)
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 誰よりもハードプッシュしているという自負もある
 勝ち方も、タイトル獲得に必要なものも、125ccや250ccで十分に学んできた

 それなのに、もう6年もの間、ライバル達が喜びを爆発させ歓喜している姿を真横で見ていることしかできないでいる…

 このカタルニアでも、”母国の英雄”を称える熱狂的な声援が渦巻くポディウムで、もう一人のスペイン人は小さく手を振ることしかできなかった

 予選で抜群の速さを見せたケーシー・ストーナーがセカンドグループの混戦に巻き込まれ、何とか追いすがっていたアンドレア・ドヴィツィオーゾをふるい落とすと、レースは早くもペドロサとホルヘ・ロレンゾによる一騎打ちの様相を呈していた

 250ccでも自分の方が先にタイトルを獲った
 MotoGPだって自分の方が先にステップアップしてきた

 でも、先に頂点に立ったのはロレンゾだった

 メディアがライバル関係を煽る間でもなく、ごく当たり前に強烈に意識するようになっていた
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 一発の速さでも、レースディスタンスでの戦略でも、決して劣っているとは思えない
 むしろスタートダッシュの鋭さや、ライバルに食らいついていく時のライディングスタイルは、ストーナーやロレンゾ以上にアグレッシブなものだ

 しかし、彼がたどり着くのはいつも”2番目”… 

 この日もマシンを降りると彼はいつものようにポーカーフェイスでインタビューに答え、ロレンゾに拍手を送った

 これまでもそんな優等生ぶりだけが目に付いてきたペドロサだったが、この日ホームタウンのテレビカメラは彼が覆い隠してきた素顔を一瞬だけ映して見せた

 パルクフェルメでファンに向けたメッセージを掲げた後、くるっと後ろを向いた時の怒りに満ちた眼差し

 そしてポディウムに向かう通路では、優勝者に渡されるトロフィーに悲しそうに目をやった後、すぐにスタンドの大観衆の声援に笑顔で手を振ってみせた
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 これまでも競り合いでの弱さからその闘争心に疑問を持たれてきたペドロサ…

 しかし彼は強烈な怒りを、そして執念を、その笑顔の裏側に隠してきたのだ

 もし、その彼が抑えてきた感情を爆発させるような劇的な勝利を挙げることができたら…その時彼はもはや”2番目”などではないだろう
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by taros_magazine | 2012-07-02 15:13 | motorcycle diary
" Let it rain " (MotoGP 2012 Round-4 France)
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 カルメロ・エスペレータがどれほど目を吊り上げて否定してみせても、それは傾きかけたMotoGPにとってあまりにも痛烈な一撃だった

 現王者にして今シーズンも圧倒的な速さを見せつけている稀有な才能が、驚くほど率直な言葉で語った引退宣言…

 現在のグランプリの方向性を真っ向から否定し、「楽しくない」と言い放ったケーシー・ストーナー…
 もちろん「シーズン終了までは全力で走る」と約束はしたものの、その思いを吐き出した彼を濡らすル・マンの冷たい雨は、いまや風前の灯となってしまった彼の情熱の炎をそのまま消し去ってしまうのではないかと思えた

c0041105_11572161.jpg 今の彼にとって何より大事なのは、時に限界を超えたプッシュでリザルトを追い求めることでも、来年の契約のためにチームに忠誠を尽くすことでもない

 この数年、何度も残酷な瞬間を目の当たりにしてきた彼の最大の願い…それは11月にバレンシアのパドックから自らの足で去り、そして笑顔で家族の元に戻ることだろう

 『ストーナーは本気で走らないかもしれない…』

 レースが始まるとその危惧が現実のものとなってしまったようだった

 オープニングラップから毎周1秒ほども逃げていくホルヘ・ロレンゾに対し、ストーナーはほぼ無抵抗だった

 その差が4秒まで広がった時、ようやくペースを上げ追撃体制に入ったかに見えたが、微妙に変化していく路面コンディションに翻弄され激しく暴れるマシンに対し、いつものように超人的なマシンコントロールでムチを入れるのではなく、後方の3位争いとのギャップをキープすることに専念するかのように、マシンを立てて丁寧に走り続けた

 それは、すでに引退を口にした王者としてはごく当たり前のレースだった
 後は、いつものようにポイントを積み重ねてフィニッシュするだけだった

 しかし、いつもと違う点がひとつだけあった

 3位との差がみるみる縮まってきたのだ
 サインボードに"ROSSI"の文字が現れるようになってから…

 やがてストーナーの耳にも、久しく間近で聞くことのなかったデスモセディッチの咆哮が響くようになった

 ”ロッシが来た”

 同じく引退が噂されながらも、反対にキッパリと否定したバレンティーノ・ロッシが
 子どもの頃からの夢だったグランプリを変貌させたドルナの”至宝”が
 そして、去年の雨のヘレスで自分をグラベルに沈めた”かつての”最大のライバルが…

 ストーナーの真後ろに付けたロッシの姿が、当のストーナーはもちろん、見る者全ての緊張感を高めていく

 しかし、ロッシは動かない

 明らかに挙動の不安定なストーナーのマシンを見ても、ラップタイムでは明らかに自分が速いということを分かっていても、ロッシはなかなか動かなかった 

 本来は得意なはずだった雨…でも、いつの間にか”リスク”にしか思えなくなっていた雨…
 
 あのヘレスはもちろん、ここ数年のレインでの苦い経験を逡巡しながらも、ロッシが遂に動いた
 
 その瞬間、ストーナーも何かを振り切った
 ラップペースで上回るロッシを抑えるきるために、彼は本気でロッシに立ちはだかった

 すぐさまクロスラインで差し返し、めったに見せないブロックラインを走り、マシンを震わせながらもアウトから寄せていく…その走りは、くしくも2人の確執のきっかけとなった2008年のラグナセカでのロッシのように情熱的だった

 最終的にはロッシが見せた入魂のラストスパートに突き放されてしまったものの、この3位はストーナーにとって”いつもの”2位よりもはるかに満足できるものだったろう

 そしてロッシ…彼がこのリザルトから得た自信は、今後のレースにおいてニューシャシーよりもはるかに大きな武器となるだろう

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 おそらく、ストーナーの引退の決意は覆らないだろう
 でも、彼がグランプリに対して抱いていた失望のうちいくつかを解消することはできたはずだ

 あの因縁のバトルから始まり、雨のヘレスでピークに達した2人の王者の確執…それを流し去ったのも、やはり2人のバトルと雨だった

 ロッシとストーナー

 遂に認め合った2人が奏でる最終楽章は、はたしてどんなものになるのだろうか…

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by taros_magazine | 2012-06-01 11:20 | motorcycle diary
"Newtype" (MotoGP 2012 Round-3 PORTUGAL)
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 今やケーシー・ストーナーの速さは誰もが認めている

 オープニングラップの1コーナーからいきなり100%で攻めていき、そのまま食い下がる後続を力で引き離す圧倒的な速さ…

 いったん秒単位で引き離せば、ライバルがどれほどチャージしようと、タイヤがとうにグリップを失っても、マシンにさらにムチを入れることのできる驚異的なマシンコントロール…

 それでもなお、彼の”アラ”を探しつづけてきたシニカルなファンは”バトル”の弱さを主張してきた

 しかし、今シーズンのストーナーはそんな見方に彼なりの最終回答を突きつけたかのような走りを見せている
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 前戦のスペイン、そしてこのエストリルで見せたストーナーの回答…

 それは、たとえライバルがフロントタイヤをネジ込んでこようとも、ラインの取り合いや残り周回を睨んだタクティクスなどではなく、自らの力だけで倒してみせるという強烈な意思表示だった

 だからこそ、ダニ・ペドロサはタイヤに熱が入るのを待てずにスロットルを大きく開けてしまった
 できることなら少しでも長くストーナーのペースとラインを塞ぎ、彼に自由なラインとペースを与えないように…
 
 そんなペドロサの目論見はオープニングラップ早々に潰えてしまった


 予選から入念に戦略を練ってきたホルヘ・ロレンゾも、逃げていくストーナーを目の当たりにするとすぐさま追走体制に入った
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 終盤、タイヤが厳しくなったところでの勝負…しかし、そのために万全にセットアップしたはずのマシンは、序盤からフロント・リアとも激しくスライドし続けるレプソルカラーのマシンにあっという間に1秒のディスタンスをつけられてしまった

 ロレンゾがストーナーを逃がさないための唯一の戦略…ペース配分を無視した猛チャージで背後に迫っても、ストーナーの走りは異様なまでにアグレッシブで、それでいてパーフェクトだった

 この日、ストーナーは派手なオーバーテイクも接触寸前の接近戦も演じることはなかった

 しかし、強力なライバルたちの果敢なチャレンジに対し、薄皮を1枚ずつ剥いていくように限界を超えたところでマシンをコントロールし続け、そして倒していった彼の走り…

 それはまるで、MotoGPという宇宙の中で進化し続けたハードウェアがもたらした”突然変異”のようだった

c0041105_16582820.jpg グランプリにおける”バトル”というものの概念さえ一新してしまった"Newtype"王者の覚醒…
 ストーナーは今、誰も経験したことのない領域に踏み込もうとしているのかもしれない

 その彼に対抗するための手段が、はたしてロレンゾやペドロサにあるのだろうか? 

 そして、彼に対抗する”赤い彗星”の復活はあるのだろうか?
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by taros_magazine | 2012-05-20 17:03 | motorcycle diary
"Showstopper" (MotoGP 2012 Round-2 SPAIN)
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 グレーの空、上がらない路面温度、ウェットパッチの残る路面…

 マシンを操り速さを競う上で本来ならマイナス要因にしかならないこれらの条件も、”熱く”なったライダーを止めることはできないことを多くのファンが知っている

 ついさっきまで降っていた雨がやっと乾きかけた89年春の鈴鹿のフリー走行
 
 2台で絡みながらコースレコードどころか”永遠”と言われた絶対レコードまで更新してみせたウェイン・レイニーとケビン・シュワンツのタイムが”進化したタイヤとマシンの賜物”でないことは、同じセッションを走っていた他の3人のワールドチャンピオンのタイムが、この2人から1秒も遅いものだったことが証明していた

 国内選手権で、そしてこのグランプリで、常に比較されてきた同郷のライバル

 それは1つしかない頂点を目指す時、必ず立ちはだかる強大な壁であり、その速さを知っているからこそ全力で倒さなければならない相手だから

 
 まるでその姿やサインボードに表示されるライバルのタイムにアドレナリンを誘発されたように、冷えた空気の中に吹き抜ける熱風…
 
 このヘレスの予選で見せたホルヘ・ロレンゾとダニ・ペドロサの2人の”熱”は、ここがホームタウンということも相まってもはや手が付けられない熱さだった

 ロレンゾは信じられないほど深いバンク角で旋回し、ペドロサは最終コーナーのクリッピングからコントロールラインまでフロントを浮かせたまま駆け抜けた

 1000ccのYZR-M1と抜群の相性を見せるカル・クラッチローをグラベルに葬り、王者ケーシー・ストーナーをも蚊帳の外に追いやっての2人だけの文字通りの"Heat"…

 残り15分からの”叩き合い”は、日曜日のレースが息を呑むような"show"になることを確信させるに十分な”予告編”だった。しかし…

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 スタートダッシュを決めたかに見えたペドロサを、ストーナーは一気に追い詰めた

 すぐさま反応したロレンゾを引き連れながらも、一度も振り返らずただひたすらにハイペースで走り続けるストーナー…

c0041105_14391357.jpg 予選”ヒート”を見ていた10万人を超える地元の大観衆も、テレビで見ていた多くのファンも、ここからスパニッシュ主演のドラマが始まると期待したことだろう

 しかし、ここで3位以下の経験がないペドロサも、序盤にリズムを乱し、なかなかトップグループに迫ってこない

 様子を窺っているかに見えたここで2連勝中のロレンゾも、ワンチャンスの射程距離ギリギリのところから詰められない

 異様な膠着状態が続く中、残り4ラップとなったところで遂にロレンゾがストーナーに迫っていった

 何度も最終コーナーでインを狙うロレンゾ…しかし、腕上がりに苦しんでいるはずのストーナーが最終ラップを前にさらにマシンにムチを入れると、ロレンゾに追いすがる余力は残っていなかった…

 これまで何度も、ライバルの地元でその速さを見せつけて勝ってきた"KY"ストーナー

 しかしこの日の彼は決して"Show Spoiler"ではなかった

 最後にスパートした際の、イン側の縁石にさえブラックマークを引いていく驚異的な走り…それは、真後ろで見ていたロレンゾはもちろん、ライバルの地元のファンをも納得させる見事なものだった

 絶好調でホームタウンに帰ってきた英雄2人を両脇に従えて、初めてこのヘレスの表彰台の真ん中に立ったストーナー

 新時代のMotoGPの聖地で、大観衆に拍手で迎えられた彼は、まるでオーストラリアで勝った時のように嬉しそうだった

 決して雄弁でもなければ、派手なパフォーマンスでウイニングランをするタイプでもない
 
 しかし、純粋にその走りの凄さで自らを主張しつづけてきたストーナーは、この日堂々たる”Showの主役”として、誰よりも輝いていた

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by taros_magazine | 2012-05-04 15:01 | motorcycle diary
"aftermath" (MotoGP 2012 Round-1 QATAR)
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 ”待ちに待った”はずの開幕戦…しかし、その日を迎えてなお、自分の気持ちは”停滞”ムードを拭い去れないでいた

 オールニューの1000ccマシンの咆哮、久しぶりに7列目まで埋まったグリッド…でも、それらを目の当たりにして感じたのは、期待感ではなくその向こうに透けて見える”大人の事情”だった

 グランプリが曲がり角にさしかかっているのは誰の目にも明らかだ

 カウルの一部にしかスポンサーロゴの見当たらないファクトリーマシン、スペアマシンを用意できないサテライトチーム…

c0041105_16475222.jpg そしてマーケットを拡大する上で絶対的な存在だったバレンティーノ・ロッシの凋落と、次世代のスターになるはずだったマルコ・シモンチェリの悲劇的な事故…

 ドルナがMotoGPの命運を賭けて臨むこの2012年シーズンも、これら有り余るネガティブな要素がもたらす余波を食い止めることはできないと思っていた

 しかし、レースが始まるや否やそんな考えは吹き飛んだ

 まるで王座奪還に執念を燃やすロッシを相手に、言うことを聞かないマシンで驚異的なコントロールを見せていた2008年を思わせるような走りで、ケーシー・ストーナーはRC213Vにムチを入れ続けた

c0041105_16504819.jpg そのストーナーから一時は2秒以上離されたホルヘ・ロレンゾは、すべてのラップで電波時計のように正確かつスーパーハイペースな周回を刻み続け、遂にはそのストーナーを仕留めて見せた

 そして1000ccマシンとのマッチングが不安視されていたダニ・ペドロサは、彼ら2人に一歩も引かない激しい走りで追いすがり、ストレートエンドでストーナーをかわす際にはストーナーがブレーキをかけるまで自分はレバーを引かないと決めていたようなアクロバティックなブレーキングを決めて見せた

 終わってみれば、表彰台の顔ぶれはいつもとまったく変わり映えのしないものだった

 しかし、そこに至るレース内容の濃さはおそらく多くのファンの予想を遥かに超えていただろう

 昨シーズンまでに、既に他のライダー達との”格”の違いを見せていた3人…しかし、そのレベルは彼らにとって通過点でしかなかったのだ

 3人の技術には一層磨きがかかり、その勝利への執念は一段と激しいものとなり、そしてその激しさ故にさらなる高みへと己の走りの次元を上げていく”天上のバトル”

c0041105_1649056.jpg レースを見終わった今は、どうしても胸の高鳴りを押さえられない
 表彰台の3人の姿に、どうしたって”あの時代”をダブらせてしまう

 レイニー、シュワンツ、ドゥーハン…

 20年の時を経て蘇るこの感情…
 
 自分も2012年に賭けてみようと思う



※申し訳ありません、長い間エキサイトの仕様変更についてまったく知りませんでしたので、コメントやファン申請などの機能の設定がめちゃくちゃになっていました。随時対応していきます。ごめんなさい!
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by taros_magazine | 2012-04-27 22:47 | motorcycle diary
My Life (MotoGP 2011 Round-18 VALENCIA)
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 最終戦独特の波乱の予感も、サーキットに詰め掛けたスパニッシュの情熱も感じることはなかった

 そこにあったのは、失ったもののあまりの大きさに戸惑うことしかできないライダー達と、これから始まるであろう最高峰のイベントに対して、どうやって気持ちを高めていけばいいのかわからないファン達の姿だった

c0041105_15515029.jpg しかも、あろうことかレースはその去就すら取り沙汰されたバレンティーノ・ロッシや、スズキワークス最後のレースとなった地元のアルバロ・バウティスタら4人がスタート直後にクラッシュするという凄惨な幕開けになってしまった

 しかしコースに残った12人が見せたファイトは素晴らしいものだった
 
 何も無理をする必要のないケーシー・ストーナーが、悪条件の中王者のプライドを賭けてベン・スピーズを追い上げ、最後の最後に大逆転するというドラマチックなフィナーレ・・・

 それはまるで、マルコ・シモンチェリというスターを失ったグランプリを、残されたライダー達が一丸となって盛り上げていこうという強い意思を感じさせるようなレースだった

 ”グランプリはこれからも走り続ける”
 
c0041105_2375917.jpg 今まで疑いもしなかった、そんな当たり前のこと…

 それすらも揺らいでいた自分の心に、バレンシアでのフィナーレは少しだけ希望を取り戻させてくれた

 だから今、シモンチェリと同じようにレース中のアクシデントで命を落としてしまった一人のレーサーの言葉で、悲しいシーズンに別れを告げると同時に、来るべきシーズンが素晴らしいものであることを祈りたい

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” 様々な思いが頭をよぎった

 でもやめることなどできない

 たとえ あんな不幸を見てしまった後でも…

 何とか気持ちを整理して

 現場を離れ マシンに乗り込み再び走り出した

 そして さらにいい走りを目指した

c0041105_238546.jpg そうすることでしか

 あの衝撃を振り払うことができないからだ

 恐怖と一緒に捨てるわけにはいかない

 僕の目標 僕の目的、情熱 そして夢を…

 これが僕の人生だ "

 
  Ayrton Senna da Silva ( 1960 - 1994 )

※1990年、スペインGPでのマーチン・ドネリーの大クラッシュの後で
   (映画『アイルトン・セナ 音速の彼方へ』より)

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 彼らの人生が、喜びにつつまれたものでありますように…

 そして、グランプリが心から楽しめるものでありますように…


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by taros_magazine | 2012-01-13 15:55 | motorcycle diary
too many to tell…(MotoGP 2011 Round-17 MALAYSIA)
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 若井のときも、大治郎のときも…そして祥也のときも同じだった

 国内で走っている時から、下のカテゴリーで走っている頃から見ていたから…
 雑誌やネット、それにサーキットで、テレビ中継とは違う一面を知っていたから…
 そして何より、日本のライダーだから…

 だから、こんなに悲しいんだと思った

 でも、そうじゃなかった

 250cc時代、あれだけラフ・ファイトを批判したのに
 MotoGPでもロレンゾを巻き込み、ダニを怪我させ…

 なのに、彼のヘルメットがコースサイドを転がっていく最悪のシーンを見た時から、ただただ奇跡を祈り続けた。大治郎や祥也のときと同じように…

 マルコ・シモンチェリは、まぎれもなくグランプリファミリーの一員だった

 パドックでは誰よりも気さくにファンと接し、一触即発だったあのロレンゾとの舌戦でも思いもつかないようなジョークで一瞬で会見場を和ませた

 そんなシッチを、いつのまにか大好きになっていた
 
 だから、彼がいなくなってしまった今、またあのときと同じように深い悲しみがこみ上げ、耐えがたい喪失感に襲われている


 でも、きっとシッチも大治郎たちも、同じ気持ちで旅立っていったと信じたい

 『レースが大好き』だった自分の事故で、ファンが減ったりグランプリが衰退することを望んでいないだろうと…
 
 だから、これからもモーターサイクル・ロードレースを好きであり続けようと思う

 だから、ものすごく寂しいけれど、君のいないレースも見ることにするよ

 
 ありがとうシッチ、安らかに…

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by taros_magazine | 2011-10-28 23:27 | motorcycle diary
" Casey Stoner " (MotoGP 2011 Round-16 AUSTRALIA)
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 この日のフィリップアイランドでのケーシー・ストーナーの走りを見ながら、子供の頃に本で読んだ不思議な話を思い出した

 ある日、イギリス近海で沈没したフェリーからただ一人生き残った泳げなかった乗客
 それから100年ほど後、やはり同じ海域で沈没したフェリーからただ一人救助された泳げなかった船医
 さらにテムズ川で難破した遊覧船から唯一救助された男の子
 そしてさらに数十年後の第二次大戦中、機雷に触れて沈没した漁船から救助された2名のおじとおい…

 この助かった人が全て同じ名前だった、という話だ

 どこまでが本当なのかは今となっては知る由も無い”絶対に水で死なない名前”の話…

 常識や科学では説明できない、何か超自然的な不思議な力が特定の人にだけ作用する…そんなことが、もしかしたら本当にあるのかもしれない…そんな気にさせるほど、ストーナーの走りは特別だった
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 本当なら、かなり高いハードルだったはずの”母国GPでのタイトル決定”も、ホルヘ・ロレンゾのクラッシュと負傷で一気に現実味を帯びた

 強風と寒気で誰もがマシンのコントロールに苦しむ中、ラップごとに1秒近く後続との差を広げていき、雨粒がコースを叩きはじめ、たちまちサバイバルレースの様相を呈しても、ストーナーだけが悠然と走り続けていた

 そう、この”フィリップアイランドでは、"Casey Stoner"という名前は”絶対に転ばない名前”なのではないのか?そう思ったのだ

 一昨年のバレンティーノ・ロッシとの超接近戦、ガチンコのバトルを仕掛けてきた”王者”ロレンゾを一蹴した去年…

 どちらも”最速・最強”の相手が本気でプッシュしていたにもかかわらず、ストーナーはさらに高いレベルで、それでいてまったく破綻の兆しさえ見せない美しい走りで、彼らを倒してきたのだ

 この日、レース後には『何度も転びそうになった』と笑顔でコメントしたストーナー

 でも、ここでのレース中、彼が転倒することなどこれからもないだろうと思う
 
 彼が"Casey Stoner"である限り… 
 
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by taros_magazine | 2011-10-28 22:43 | motorcycle diary
the Racer (MotoGP 2011 Round-15 JAPAN)

c0041105_15265957.jpg もはや自分が”勝負できる”コンディションにないことは、7月の8時間耐久レースの時点でわかっていただろう

 それでも、世界最高峰の舞台に立てる喜びに抗うことはできなかった
 他の誰よりも、そして今でもレースを愛しているから…

 伊藤真一が始めてグランプリを走ったのはもう四半世紀ほども前のことだ

 国際A級昇格後、下位カテゴリーを経験せず、いきなりワークスでトップカテゴリーのGP500を走ったシンデレラボーイ
 その88年、スポット参戦の鈴鹿でのエディ・ローソン、クリスチャン・サロンらとの3位争い、そしてクラッシュ
 史上初めてグランプリで時速200マイルを超えたライダー

 しかしそのキャリアは、必ずしも栄光に満ちたものではなく、またその走りも端正なルックスとは裏腹の泥臭いものだった

 ミック・ドゥーハン全盛期に、何度も掴みかけながら、あと一歩届かなかったグランプリでの勝利 

 92年の8時間耐久での、闇に包まれたヘアピンでハンドルバーの折れたマシンを必死にスタートさせようとする姿

 そして”再起不能”と言われた2007年の転倒…

 どんなに怪我をしても、グランプリを去りワークスを離れても、彼は決してレースをやめなかった
 
 その彼が遂に”引退”を口にした2010年…その長いキャリアに終止符を打ち、故郷宮城で静かに暮らしていた2011年3月11日…

 亡くした親族のため、そして多くの被災者のために、彼がするべきこととして選んだのは”レース”だった

 全日本で表彰台に上り、因縁の8耐では4度目の優勝を成し遂げた

 そして遂に帰ってきたグランプリの舞台…あれほど転倒の多かったライダーが、荒れたレースを走りきって見事獲得した3ポイントは、走り続けることがどれほど尊いことなのか、レースがどれほど素晴らしいものなのかを誰よりも知っていた彼に神様が与えたプレゼントなのだと思う

 彼と同じ時代を走ったライダーはもうグランプリにはいない

 命を落としてしまった後輩も一人や二人ではない

 それでも走り続けてきた伊藤真一のこの日の姿は、この数ヶ月パドックで肩身の狭い思いをしてきた青山博一や、この日伊藤と同じゼッケンでmoto2を走り、転倒してしまった高橋裕紀に、そしてこのレースを見ていた全ての日本の人に、絶対に希望と勇気を与えたはずだ

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by taros_magazine | 2011-10-14 15:30 | motorcycle diary