カテゴリ:fly fishing diary( 123 )
明日の忍野
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 忍野に出掛けるとき、いつも決まってひとつの不安が頭をよぎる
 『今度こそ…釣れないんじゃないか…』

 昨年、初めて忍野の川岸に立った時、まず思ったのは『これは…絶対に釣れないだろう』というコトだった

 10年以上、フライフィッシングをしてはいるけれど、それまで目の前で悠々と泳いでいる尺ほどもある魚が釣れたことなど1度もなかった
 それに忍野での鱒釣りについて、他のフライフィッシャーのブログやホームページに綴られている内容から、忍野は”エキスパートと称される人が、その経験と技術で賢い鱒たちを相手に知恵比べをする川”だという印象を持っていた

 しかし、ごく普通のニンフを流すとあっさり最初の1匹が釣れた
 
c0041105_239045.jpg 自分はその瞬間、忍野での”サイトフィッシング”の魅力の虜になった
 1日中ニンフを沈めては鱒が口を開けるのを待ち、『入った!』と思った次の瞬間、合わせた右腕に伝わる魚の重さに酔い続けた

 2度目の忍野は豪雨と濁流だった
 それでもマーカーを付ければウソのように魚が釣れた
 部分的にクリアになっているところではドライでヤマメのライズもキャッチできた

 3度目、家族でのドライブの途中に寄った短い時間の中でも、サイトの釣りを充分に楽しむことができた

 4度目、相変わらずのサイトの他に、小さなドライでヤマメのライズを何回も仕留めた

 こんな他の渓流では考えられないような素晴らしい釣りを毎回経験しながら、それでもこの日の道中はやっぱり…というよりも、これまでになく大きな不安に悩まされた
 『今日こそ釣れないんじゃないか…』

 そんな不安に拍車をかけたのがこの日の魚影だった

 漁協駐車場から見える魚の姿は、これまでより明らかに寂しいものだった
 
c0041105_2383882.jpg 鯉の釣り堀が大賑わいなのに比べ、お盆休みだというのに普段の週末より少なく見える釣り人の数も、その不安を増幅させた…

 しかし、結論から言えば、この日も充分な釣果を得ることができた
 
 レインボーは相変わらずのファイトを楽しませてくれたし、ブルックや忍野で初となるブラウンもキャッチすることができたというのに…

 それでも、次に忍野へ行くときのことが不安なのである
  
 毎回素晴らしい釣りをコンスタントに経験しているのに、そのたびに次の忍野に対する不安…『今度こそ釣れないんじゃないか』…はどんどん大きくなっていく

 他の渓流では考えられないような素晴らしい釣りを毎回経験させてくれる忍野…
 そこでは、他の河川では笑ってネタにできるはずのことが、いつの間にか自分にとってもの凄いプレッシャーになってしまっていた

 このまま”不安”は膨らみ続けるのか、それとも”現実”になると同時に弾け飛ぶのか?
 自分にとっての忍野の”明日はどっちだ?”

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*other side …
大好き!管理釣り場』(by Mr,sammy)
アマゴ釣りの憂鬱』(by Mr,M's)

*today's tackle  
rod:Cremona 8'07 #3/4 (Coatac)
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by taros_magazine | 2007-08-15 23:14 | fly fishing diary
The Promised River

 そのイワナがフッキングした瞬間、本当に心から思った
 『ここへ来て良かった…』と
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 『さて、明日はドコへ行こうか…』

 愛しのイトシロも、美しい忍野も、きっとどちらも涼しくて気持ちいいだろう…。西野川だって水もひいてちょうどいいコンディションになっているかもしれない。そういえば、下伊那にも今年はまだ一度も出掛けていない…

 結論を出せないまま、#2から#4までの長短何本かのロッドを車に積み、そのまま床についた
 そして、目が覚めた時間とそれぞれの目的地までの所要時間を計算し、夜明けと同時に釣り始めることのできる川を選ぶことにして…

 そして目が覚めた時間…それはいつも仕事に行く時間と同じ…石徹白や忍野はもちろん、どんなに近い川の”マヅメ時”もとうに過ぎていた

 すっかりテンションが落ちたまま、朝のラッシュも終わりかけの幹線道路を北上する
 豊川本流、海老川、そして寒狭中部…すでに多くの鮎師が立ち並ぶ川は、先週の濁流がウソのように清冽な流れとなっていた

c0041105_0352595.jpg そんな絶好のコンディションを見るにつけ、後悔ばかりがこみ上げてくる

 『朝イチで下伊那にでも入ってりゃ、きっと爆釣だったんだろうなぁ…』

 そんな冴えない気分のまま、車に載っていた中で一番の低番手ロッドを片手に竹藪の間を抜け、勝手知ったるポイントを流すいつものフライに、護岸際で水しぶきが上がった…

 寒狭でのアベレージ…いや、もしかしたら若干それを下回る程度の何の変哲もないイワナがフッキングした瞬間に感じた、『ここへ来て良かった…』
 それは、ただ”釣れたから”というような小さな満足感なんかじゃなく、何かもっと心の中から沸き起こってくるような不思議な感情だった
 
 そのイワナをリリースした直後には、やはりそれほど大きくはないけど精悍なアマゴがヒットした
 
 堰堤上のプールでライズしていた大物は見向きもしてくれなかったけれど、その上流の浅い流れからは、この谷らしい美しいアマゴが姿を見せてくれた

 もう、何も後悔していなかった
 
 石徹白で釣れたかもしれない野性的なイワナも、忍野でファイトしたかもしれないブラウンのことも、もうどうでもよくなっていた

c0041105_0502133.jpg 自分は、この日この流れで、ここに棲むイワナやアマゴと会うために昨夜から準備していたんだと思った
 
 そしてそんな”約束”を、寒狭川の魚たちが律儀に守ってくれたというコトが、『ここへ来て良かった…』と心から思えた理由だと実感した


*today's tackle
rod:EUFLEX XF 8'02 #2 (TIEMCO)
reel:Fates TM-1 (TENRYU)

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by taros_magazine | 2007-07-31 23:59 | fly fishing diary
理想のタックル
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 今年の渓流シーズンが始まる前後、何本かのロッドといくつかのリールを処分した
 
 どうしても欲しかったロッドがあったため、その購入資金に充てた…というのが最大の理由ではあったけれど、もうひとつ大きな理由があった

 それは、この数年”道具に振り回されている”と感じることが何度かあったからだ

 10数年間、フライフィッシングを楽しんできた中で、気が付けば道具だけは一丁前の数を揃えていた
 もちろん、それぞれなんらかの目的や意味があって購入したのだが、いつしか『最近使ってないから持っていこう』とか『せっかく買ったんだから使わなきゃ…』みたいな理由で、その日のタックルを選択していることがままあった

c0041105_2315369.jpg そのくせうまく振れなかったり、思うような釣りができないと『やっぱり慣れないロッドじゃ無理だ』などと自らの技術や戦略を棚に上げて嘆いてみせたりした…

 なかなか時間がとれない今シーズンは、少なくともそんな気持で釣りはしたくないと思った
 せめて釣りをしている時間だけは、自分と川、そして魚のことだけを考えていたかった

 この日川に入っていた時間はちょうど1時間。ネットに納まったのはアマゴ1匹

 でも、そんな短い時間でも、この日の川の表情や、たった1回のアマゴとのファイトの感触ははっきりと覚えているし、それはとても濃密なものだった
 一方、この日どんなロッドとリールを使っていたかは…すぐには思い出せなかった

 でも、それでいいと思った
 
 そんなふうに、余分なコトを考えさせずに、川での濃密な時間を提供してくれたロッドとリール…それこそが自分が思い描く”理想のタックル”だと思ったからだ

c0041105_2316117.jpg 世の中には飾っておくだけでも充分美しく、所有しているだけで満ち足りてしまうロッドやリールもあるだろう 
 でも、自分は渓流でいろいろな思い出を重ねていくことで、その”価値”を高めていこうと思う

*today's tackle
rod:EUFLEX XFP 7'09 #2 (TIEMCO)
reel:CFO1 (ORVIS)

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by taros_magazine | 2007-07-19 23:20 | fly fishing diary
小さな村の小さな漁協

 自分が初めて購入した年券は寒狭川上流漁協のもの、そしてその次が岐阜の宮川下流漁協のものだった

 当時、片道でたっぷり4時間かかった旧河合村までの道程…それでも、モンカゲロウのスーパーハッチと圧倒的な濃さを誇る魚影に魅せられ、夜明けからイブニングまで竿を振り続け、最後に温泉に入って帰る…という、タフな日帰り釣行を5月末から9月の禁漁まで間、何度も繰り返した

c0041105_22281666.jpg その一方で、寒狭上流からわずか峠を一つ越えたところにある小さな漁協の管内には、何故か足が向かなかった

 県道や国道に沿って流れる小さな渓…それは、自分にとってはフライフィッシングを始めるよりずっと前から、バイクで何度も何度も走った場所だったせいか、『釣りをするところ』というよりも、『缶コーヒーでも飲みながら休憩する場所』というふうに見ていたのかもしれない

 『釣りをしたことのない川に行ってみたい…』 
 そう思ったのは、北海道を1週間ほどかけて釣って回った遠征から帰ってきた翌週のことだった
 そして、いつもバイクで走る茶臼山の周辺の、のどかでどことなく北海道に似た雰囲気の景色が頭に浮かんだ 
 
 写真も要らない、そして3500円という”破格の安さ”の年券に少々拍子抜けしながらも、国道のすぐ脇を流れるごく普通の里川に入った

 この地域特有の白っぽい川底と未熟な技術のため、いつも寒狭川で使っていたエルクヘアカディスを何度も見失いながら、やっと手にした最初の1匹…それは、その川底と同様に色白で朱点の美しいアマゴだった

 それ以来、自分のフライベストの背中には、毎年寒狭上流と根羽川の年券がブラ下がっている

c0041105_22283147.jpg クーラーボックスを抱えた釣り人が何人か入れば、たちまち魚影が消えてしまうような小さな村の小さな漁協管内での今シーズン初釣行…
 いつになく不安な気持ちで迎えた遅い”根羽川解禁”だったけど、それは杞憂に終わった 

 大型トラックが100キロ近いスピードで走り去っていくすぐ脇で、あの日と同じ色白の美しいアマゴが何度も飛び出した
 民家の軒先を流れる細い筋では、いつものように悠々とライズを繰り返す良形のアマゴの姿があった

 そんな9ヶ月ぶりのこの川での釣行は、あの北海道帰りの日のように新鮮で印象的なものだった…

 東海豪雨の後遺症のため両岸はキッチリと護岸され、最上流部ですらドライブインや別荘地が林立する根羽川
 そこには、かつての小鳥川のようなスーパーハッチや濃密な魚影もなければ、道東の河川のようなバイカモもクレソンももちろんない

 でもそこに立つだけで、不思議とリラックスした気分でゆったりと釣りができるのは、きっとその渓自体が、無理に飾らない、ありのままの姿だからなのだろうと思う

 そして、その渓が流れる小さな村の小さな漁協は、”ありのまま”でいることの素晴らしさを、その小振りながらも抜群に美しいアマゴを通じて教えてくれているのかもしれない

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*today's tackle
rod:Rightstaff 7'10 #2 (CFF)
reel:TR-L (Abel)

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by taros_magazine | 2007-06-21 22:20 | fly fishing diary
   命
c0041105_2143383.jpg この谷を目指して車を走らせている時は、いつも”良くない結果”を思い描いては不安な気持ちになってしまう
 もちろん、普段別の流れを目指しているときでも、「先行者の車が止まっていたらどうしよう…」というようなイヤな予感を多少なりとも抱えてのドライブになるのだが、この谷での不安はもっと根源的なものだ

 「まだ、魚は残っているのだろうか…」

 フライフィッシングを始めた頃、年に何度か通った源流があった
 しばらく釣り上がると、次に林道が交差する遥か先まで、そのまま深い谷を遡行しなければならない寒狭川水系きっての本格源流は、その頃の自分の技術でも多くのイワナを釣り上げることが可能な流れだった
 
 しかし、東海豪雨以降その付近の支流での釣りがシブくなると、多くの釣り人がそれまで”自主規制”していたその谷に入っていった
 
 ほどなくしてイワナが釣れるポイントは上流へとズレていき、ついにはときどき小さなイワナやアマゴが釣れる”普通の源流”になっていった
 
 偶然に知った別の源流部は、3日間続けて通って3日間とも良形のイワナが次から次へと飛び出すほど魚影が濃い谷だった
 しかし、隣接する地域の道路工事が進み、渓相が一変すると同時に魚の姿も極端に少なくなっていった…

 この日目指した谷は、さらに悪い状況にさらされている
 
c0041105_21514325.jpg 数年前に県道が再整備されたのに伴い、これまでその谷を覆い隠していた森は切り開かれ、堰堤が造り出すプールがあらわとなり、さらに釣り人を誘うかのように駐車スペースまでが確保されてしまったのだ

 付近にはたちまち釣り人の放置するゴミが散乱し、山の斜面には産廃までが不法投棄されるようになった
 プールの横の”広場”はたき火の跡が何カ所も残され、谷にはハッキリとわかる踏み跡が目立つようになっていった

 それでも、この日のわずかな時間にこの流れを目指した理由…それは『5月後半』、『雨の後』、そして『夜明けと同時』…という、考えられるすべての好条件を揃えた上で、この流れにイワナがまだいるのかどうかを確かめたかったからだった

 しかし、目の前にあったのはいきなり愕然とする光景だった

 2日前にあれだけの雨が降ったはずのこの森の中の流れは、まるで盛夏の渇水時期のように細かった
 そしてどのポイントからもイワナは姿を見せようとしなかった

 焦りにも似た激しい不安を抱えたまま、次から次へとポイントを叩いていくが、状況は変わらない…
 
 やがて、この森の中で唯一思いっきりキャストできるポイントにさしかかった
 まるでハイプレッシャーな有名河川での釣りのように、ラインを細く長くし、フライを小さくし、そして枝の陰からそっとプレゼンテーションした

 最初に10センチちょっと、次に15センチほどのイワナがやっと顔を見せてくれた…

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 森から戻り、峠を下り、さっきの谷の流れが注ぐ支流で少しだけ竿を出してみた
 あのイワナよりも大きいアマゴがウソのようにたくさん釣れた

 何の疑いも持たないかのように毛鉤に飛びつくアマゴたちを見ているうちに、数十分前まで自分を苦悩させたあの森のイワナたちのスレた態度が悲しいほどに頼もしく思えてきた

 ベストシーズンを迎えた寒狭上流…そこはキャッチ&リリース区間でもなければ、もちろん禁漁区でもない

 あの森のイワナたちがこれからも生き延びていくためには、”釣られない”ことが何よりも大事なのだから


*today's tackle
rod:George Selvin Marryat 8'00 #2 (Marryat)
reel:SK-1 (Caps)

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by taros_magazine | 2007-05-30 22:02 | fly fishing diary
Rise Fishing Strategy (day2)
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 前日に訪れた石徹白が”ライズの川”だとすると、この日訪れた忍野は自分にとっては”サイトの川”である

 川底まで見通せる湧水の中にフライを漂わせ、口をあけて向かってくる魚を待ちかまえ、そしてフッキングさせる…それはまったく違うシチュエーションであるハズの石徹白のライズ狙いと、同じように官能的な釣りだった

 だから今年初めて立った桂川のほとりでも、迷わずティペットにはニンフを結んだ
 赤いプラスティック・ビーズの付いたマラブーに、すぐにレインボーが食いついた

 気をよくして向かった下流では、多くのヤマメがライズを繰り返していたが、”サイトの川”に来たはずの自分は、そのままマラブーを沈めるべく流れに向かってキャストすると…

 それは意外な光景だった
 水に馴染んで沈む前の、水面を漂う黒い流下物に、ヤマメたちが激しく反応したのだ

c0041105_196182.jpg 忍野でのライズは、それこそ”コムズカシイ”釣り方でしか取れないと思っていた
 星の数ほどのブログやWEBサイトが、忍野でのライズフィッシングをドラマチックかつロジカルに語っていることもあり、忍野ではサイトを楽しむことに専念していたのに…

 その光景を見た後から、ポイントごと、釣れるごとにドライとニンフを取り替えながらの中途半端な釣りをすることになった

 ドライで釣れる、ドライで釣れない、ニンフで釣れる、ニンフで釣れない、じゃまたドライ…そんなローテーションを繰り返しながら、最上流部まで釣り上がっていった

 そこでは、この日一番のライズリングが広がっていた

 今までの自分ならスルー、石徹白なら夢中になってしまうその光景を前に、おそらくはこの日最後になるであろうセッションを、ドライにするかニンフにするか、なかなか結論を出せずにいた

 そんなとき、思い出したのがあの頃何度も見たビデオのあのシーンだった

 東北の美しい渓の中、おそらくは尺近いヤマメとのやりとりの最中、”痛恨”のバラシをしてしまったハズの、あるフライフィッシャーの表情…
 それは、故西山徹氏のような満面の笑顔とも、岩井氏のちょっとニヒルな笑顔とも違う、とても無邪気で、それでいて逃げていった魚にさえ深い愛情を感じさせるような素敵な笑顔だった

c0041105_1964423.jpg そんなシーンを思い出し、出なくても、バレても、笑って帰ろうと思い、小さなドライを結んでキャストした

 パワフルなロッドのおかげでうまく飛んでくれたフライに、ライズリングの主はゆっくりと近づき、そして水しぶきを上げた…

 あの頃、何度も見たフライフィッシングのビデオ…

 それは、”フライフィッシング学”の教材としては自分には難しすぎのたかもしれないけど、”遊び”としてのフライフィッシングの楽しさは、存分に伝えてくれていたんだと気づいた


special thanks
 "Rise Fishing Strategy"(VHS-VIDEO) , by Seiji Sato

*today's tackle
rod:G884 #4 (Scott)
reel:CMR 3/4 BRN (Marryat)

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by taros_magazine | 2007-05-26 19:07 | fly fishing diary
Rise Fishing Strategy (day1)

 こんな自分でも、フライフィッシングを始めて間もない頃は、いろんなハウツー本を読んだり、何本ものビデオも見た

 しかし、いわゆる”学術的”なコトは何一つ身に付かなかった…というか、まったく頭に入らなかった
 フライのマテリアルの名前も、川に棲む昆虫の種類も、さらには釣りそのものの”戦略”なんていう部分も、そうした”教材”から吸収することはできなかった

c0041105_17543416.jpg おそらくはプールでのシビアなライズなんかの取り方を、懇切丁寧に教えてくれていただろうその種の教材の甲斐もなく、自分は釣り上がっていった先でプールに行き当たると、ほとんど竿を出すことなくスルーして、また次の瀬に向かうようになっていた

 『どうせ釣れやしないよ。そんなコムズカシイ釣りよりも、次のポイントで勝負した方がイイに決まってる』

 長い間、そんな釣りを続けてきた自分を、プールに何時間も張り付かせたのがこの石徹白・峠川だった
 
 目の前に間違いなくいる魚、そして目の前で”ヤル気”を見せている魚を相手に、七転八倒しながらも何とかキャッチ…昨年のシーズン終盤、この”ライズの天国と地獄”を味わったときには『このオフにはもうちょっと勉強しなきゃな…』などと反省したつもりだったのだが…

 結局、この日も昨年同様”手ぶら”で来てしまった
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 早朝からプールで繰り返されるライズに、あーでもないこーでもないと悶絶しながら、何とか数匹を仕留める…

 しかし、釣れたパターンに何らかの方向性や共通性など見いだせる知識もなく、次のプールでまた同じようなコトを繰り返し、みるみるうちにフライパッチには大小色とりどりのフライがストックされていく…

 そして、去年も玉砕しっぱなしだった駐車場前のプールにやってきた
 淵尻では何匹ものアマゴやイワナが悠々とライズを繰り返していた

 『コレは無理だろ…いくらなんでも…』

 おそらくはこれまで何十人ものフライフィッシャーがキャストする何百もののフライを見て、学習してきたここの魚たちに、自分の戦略が通用するとは思えなかった

c0041105_18144727.jpg いくつもの波紋を目の前にしながら、これまで寒狭川で釣り上がっていたときのように、そんな”コムズカシイ”釣りはあきらめて、帰ろうとしたのだが…

 何故か、このときは『やってやろう』と思った

 捕食してるモノも、サイズもよくわからない。でも、ダウンクロスで目一杯慎重に流すコトが、今の自分にできる精一杯のストラテジー…

 飛び出したのは9寸ほどのイワナだった

 思えば、去年のこの峠川から、自分の釣りの戦略に、ひとつだけ進歩があったのかもしれない。それは…

 ”プールでも竿を出してみる”

 こんな大事なコト(笑)を教えてくれた石徹白に、やっぱり今年も夢中だ
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*today's tackle
rod:G882 #2 (Scott)
reel:CMR 3/4 BLK (Marryat)

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by taros_magazine | 2007-05-25 23:59 | fly fishing diary
寒狭川での2日間 day-2 「アマゴの渓」
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 誰からの情報にも頼らず、自分で地図を見て、現地へ行ってみて、入渓点を探し、そして実際にアマゴに出会える川だと知ったのがこの支流だ

 もうひとつ下流側の支流のアマゴよりも艶やかで、もうひとつ上流側の支流のアマゴよりもちょっと金色っぽいこの渓のアマゴは、寒狭のどの流れのそれよりも美しく、そして優しい表情をしている

 東海豪雨以降、寒狭への釣行ではいつもまずこの渓を目指した

c0041105_2324117.jpg 他の支流が大増水や濁り、あるいは逆に渇水で釣りにならない時でも、この渓にだけはいつも澄んだ流れがあった

 覆い被さった枝を避けるためのサイドキャストで水面ギリギリを振り抜く…
 ただでさえ基本の無い自分のキャストが、上腕だけの醜いサイドモドキのキャスティングなのは、この渓に通ったからだと今でも思っている

 そんな自分のキャストにも、ここのアマゴは気持ちよく応えてくれる

 魚だけでなく、なぜかガチョウを飼っていて、ときどきこの渓で”散歩”させている地元のおじさんや、今はもういなくなってしまったけれど、いつも人なつっこい表情で不自由な足で駆け寄ってきた白い犬…そんな里の雰囲気が好きで、この渓ではとてもゆったりと過ごすことができる

 でも、この日はほんの少し不安を抱えてこの渓にやってきた

c0041105_23244615.jpg 解禁直後の荒れ果てた雰囲気がどうにも心に引っ掛かっていたからだ

 この日も真新しい先行者の足跡がいくつかあった
 
 でも、それほど殺伐とした雰囲気に感じられないのは、なにもあの日から気温が20℃以上上がったのが理由ではないように思えた

 あの日と同じように、お約束のポイントから魚は出ないけれど、『いる…絶対…』という願望にも似た妙な確信があった

 緑のトンネルを抜けたところで、ティペットを継ぎ足しフライのサイズを#20まで落とし、風が弱くなるのを待って、そっと”サイドキャスト”した

 飛び出したのは、まさにこの渓のアマゴだった

 イワナでも、レインボーでもない。もちろん尺サイズなんて望まない
 色も、艶も、朱点のバランスも、どれもが完璧なこの季節にここで釣れるアマゴ…このアマゴに会いたかったんだ

 フライをいつものパラシュートに戻した後も、何度も”アベレージ”のアマゴが水面を割った
 そんな釣りが本当に楽しかった…
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 2ヶ月ぶりの釣り、2ヶ月ぶりの寒狭…
 そこには、イワナもアマゴもまた”戻って”きていた

 そしてその魚たちに、自分もまた渓に”戻って”きたことを実感させてもらった2日間だった


*today's tackle
rod:"Fujimaki" 8'06 #3 (Factory haru)
reel:Halcyone babytrout (KIRAKU)

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by taros_magazine | 2007-05-10 00:01 | fly fishing diary
寒狭川での2日間 day-1 「イワナの谷」
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 アマゴで有名な寒狭川だけど、自分にとっては長い間『イワナの渓』だった

 大名倉の集落付近の路肩で夜明けを待ち、鳥の鳴き声を聞きながら釣り上がる…
 朝マヅメの大名倉川では、決まって瀬尻にグッドサイズのイワナが定位していた

 自分のヘタクソなアップストリームキャストでは視界にラインが落ちてしまうことも多かったけど、それでも何匹かは雑なエルクヘアカディスに飛び出してくれた

c0041105_22251062.jpg 開けたプールでは、大石の脇にいつも何匹かのイワナが付いていた
 毎回毎回、フライを替え立ち位置を変え狙っていたけど、結局一度も釣れなかった

 イブニングは、かつての森林鉄道の停車場跡の下の淵で過ごした
 水面の1メートル上空を夥しい数のカディスやメイフライが同じ方向に飛んでいく様は、まるでもう一つの川が流れているように見えた

 そこでは何匹かのイワナを釣ることができたけど、ときおり回遊してくる50センチ超の”主”だけはフライに見向きもしてくれなかった…

 これらの経験を全て『過去形』で語らなくてはならないのは、あの東海豪雨があったからだ

 あの大水でこの川の渓相は一変し、瀬はフラットな浅瀬になり、大石のプールは澱んだ水たまりになり、スーパーハッチも見られなくなった
 そして自分も、よりアクセスが良く魚影も濃い当貝津方面へと通うようになっていった…

 2ヶ月ぶりの釣り。そのフィールドとして選択したのは大名倉川のあの区間だった

c0041105_22254362.jpg やはり当時とは随分景色は変わっていたけれど、あの懐かしい”匂い”は戻っていた
 『あの頃は、こんなところにイワナがいたんだよな…』
 そんなことを考えながら何気なくキャストしたフライに、いきなり太ったイワナが飛び出した

 あまりの出来事にフライは見事にスッポ抜けてしまったけれど、その金色の巨体は何年もの空白の時間を埋めるのに充分な見事さだった

 そのまま何度か同じようなコトを繰り返しながら、流れが2筋に分かれているハズのところにやって来た

 『水が…ない…』

 メインの流れとなる左側に対し、かつてそこには幅1メートルほどのボサっ川が流れている谷があった
 そしてその流れには、まるでスレていない美しいイワナや、明らかに再生産された小さなイワナが棲んでいた

 あの頃、ボサをかき分けながらボウ・アンド・アローでイワナを狙っていたその谷は、乾いた石と枯れた葉っぱが積もった”ただの谷”になってしまっていた…

c0041105_22281990.jpg その後、良型のイワナを1匹ランディングしたところで納竿し、県道へ出て車まで戻っていった

 帰り道、ふと気になってもう一度あの谷を見下ろしてみる…
 
 すると、あの枯れ谷の上流部にわずかに残っていた水たまりのような小さなプールに、ハッキリとそれとわかる魚影が見えた

 『イワナだ!…こんなところに、まだいたんだ!』

 山の斜面から流れ落ちてくるわずかな清水が作り出す小さなプールには、25センチほどから10センチほどのイワナが何匹も見えた

 自然が残した”爪痕”と、自然が育む”生命”…

 大名倉川は、また大切な何かを自分に教えてくれた
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*today's tackle
rod:G882 #2 (Scott)
reel:CMR 3/4 (Marryat)

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by taros_magazine | 2007-05-09 22:31 | fly fishing diary
賛歌
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 このオフシーズンは、いろんなところへ出掛けた
 見たこともないようなサイズのレインボーを釣り、100匹単位の魚が目の前で群れている釣り場へも行った

 2月に入ると、解禁日の渓流へも出掛けた
 土手から竿を出す釣り人や、プールに1列に並んでキャストするフライマンたちの間に入ったりもした

 でも、やっぱりこの寒狭川で、小さくても抜群に可愛いアマゴを釣りたかった
 もし釣れなくても、その姿を確認できるだけでもいいとさえ思った

 降りしきる雪の中、いつもよりキャストする時間が短かったのは、何も狭い渓で仲間たちと交代で竿を出したからじゃない
 この細く浅い流れの中に、あの可愛らしいパーマークをずっと探していたからだ

 やがて同行した友人のフライにアマゴが飛び出した
 フッキングこそしなかったけれど、そこにアマゴがいたことがとても嬉しかった
 
 もう一人の仲間はグッドサイズのアマゴを掛けものの、惜しくもラインブレイク…
 けれども、今年もこの淵のアマゴが健在だったことに本当に安心した

 そして、自分のランディングネットに納まった、たった1匹の小さなアマゴ…
 こんな天気の中、元気よくドライフライに反応してくれたアマゴに、心から感謝した
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 *other side …
一から出直し修行的毛鉤釣』(by Mr,godzilla2004)
空色ライフ』(by Mr,Hiroshi)

*today's tackle
rod:EUFLEX XFP 8'03 #3 (Tiemco)
reel:CFO1D (ORVIS)

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by taros_magazine | 2007-03-12 23:59 | fly fishing diary