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only one

 通勤の車が長い列をなす反対車線…
 いつもならひねくれた優越感と、ほんの少しの罪悪感を感じながら眺めるそんな光景も、この日はただぼんやりと見つめるだけだった

c0041105_22244543.jpg 市街地を抜け、山の緑が間近に見えるところまで来ても、前を走るもみじマークのセダンの後ろをダラダラと走り続けた

 『仕方ない。寒狭”でも”行くか…』

 岐阜、あるいは長野方面への遠征を計画していた平日釣行は、時間的な都合から急遽予定変更となり、結局、半日で行って帰ってこられる寒狭”しか”選択支がなくなってしまったのだ

 『石徹白じゃ、きっと今頃そこらじゅうでライズしてるんだろうなぁ…』
 『この時期の下伊那はベストコンディションなのに…』

 そんな後ろ向きな気持ちに輪をかけるように、いつも駐車する公民館横のスペースには、釣り人のものであることが一目でわかるワンボックスカーと、その横で今まさに身支度を整えている釣り人の姿があった

c0041105_22252711.jpg ただ、この日は先行者がいようと、多少増水していようと自分にはあまり関係なかった
 『どうせ時間もないし、ほかに行く先もない…ここらを適当に釣り上がって、帰りにあそこの堰堤上のプールをのぞいて、ライズでもあれば軽く竿を出してオシマイ…』そんな程度でこの日は過ごすつもりだったから…

 ワンボックス氏と挨拶がてら簡単な情報交換をしていると、車の傍らに置かれたロッドに自然と目がいった

 『フライロッドだ…』
 無性に嬉しくなり、相手が支度中であるにもかかわらずベラベラと寒狭上流のフィールドについてひとしきり講釈をたれてしまった
 おそらく自分より経験のあるだろうそのフライマンは、終始笑顔で自分の拙いポイント案内に耳を貸してくれた

 お互いに良い釣りができるよう健闘を祈り、ワンボックス氏は上流へ、自分は支流へと向かった
 
c0041105_22255065.jpg 鼻歌で生い茂る草木をかき分け、入渓路の急斜面を降りた
 すぐにこの支流らしい飴色のアマゴがヒットし、その後も何匹かの小ぶりなアマゴが短い釣りを楽しませてくれた

 空を見上げれば文字通りの五月晴れ、後ろを振り向けば新緑のトンネルに木漏れ日が差し込んでいた
 そして、目の前にはいつもの…いや、いつもより一際輝いて見える渓があった

 ”もし、夜明けから石徹白で釣りをしていたら…”
 ”もし、あのときワンボックスを避けて別の支流の向かっていたら…”

 そんな”タラレバ”に、あまり意味はないんだろうと思う
 同じように、この日出かけるときに感じていた”デモシカ”だって、後になれば全然些細なことだった

 ”一期一会”
 どの川のどんなポイントも、一瞬たりとも同じ表情じゃない
 その一瞬一瞬の”出会い”を楽しむことができる場所…それは、その日のその場所に”しか”ない

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*today's tackle  
rod:Rightstaff 7'10 #2 (CFF)
reel:TR-L (abel)


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by taros_magazine | 2008-05-29 22:55 | fly fishing diary
八つ当たり

 この2~3年、地元である寒狭や根羽へ行く回数と、忍野や西野、それに石徹白へ行く回数がほとんど同じような状況だった

 確かに高速道路の整備が進み、下伊那へ行くより石徹白へ行くほうが早かったりするという交通事情もあるだろう
 それに何より”魚影”という部分での魅力も大きい

 しかし、解禁からほぼ地元だけで釣りをしてきた今年、それ以外に大きな理由が…本能的に感じ取っていた理由があったことに気づいた…

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 明け方まで降り続いた雨は、この植林の合間を流れる里川を増水させ、田畑やむき出しの山肌から流れ出た土でその水を濁らせることは容易に想像できた

 そして、そんなコンディションの中で釣りができる数少ないフィールド…比較的川幅が広く、多くの堰堤が水量を調節しているこの支流に釣り人が集中することも予想どおりだった

 平日だというのに、合流点から中流域まで、めぼしいポイントには、どこもかしこも準備中の釣り人やいかにもの車の姿があった
 普段着そのままで川に降りようとする若いルアーマン、フル装備の自分と同年代の2人組、名古屋ナンバー、浜松ナンバー、豊田ナンバー…

 それらを横目に見ながらなんとか潜り込んだポイントでは、#18のフックすら口にできないようなサイズの魚が何度かアタックしてきただけだった…

c0041105_21545445.jpg 相変わらずコンディションは最悪だったが、混雑を避けて実績のある上流域に向かった

 中流域ほどではないものの、それでも普段の平日よりは格段に多い釣り人に閉口しながら目的のポイントに着くと、そこには真新しい轍が濡れた芝生にくっきりと残されていた

 小さな流れの細い筋を、いつもより慎重に、そして入念に叩くと、いつもより小さな波紋を残してイワナがヒットした

 何とも言えない疲労感に包まれた帰り道、魚籠を腰にぶら下げた初老の釣り人が川から上がってくる姿が目に入った

 それは、この都市近郊の里川ではごくありふれたスタイルのはずだった
 いつもなら『ここにも一人…』くらいの感覚でやりすごす光景のはずだった

 しかし、この日はその姿に強烈な嫌悪感を抱いた
 車を降りて「そんなに持って帰ってどうするつもりなんだ?」と言おうとさえ思った

 でも、それは”八つ当たり”なのだ

c0041105_21565293.jpg いつも『川に立っていれば、それで幸せ』みたいなキレイ事を口にしていながら、お気に入りのポイントで先行者に阻まれ、思うような釣りができなければ、、結局は”魚の数を減らす=自分が釣れる可能性を低くする”行為がやっぱり容認できないだけなのだ

 翌日、地元スポーツ紙の釣りコーナーには、その川での釣果が誇らしげに踊っていた
 ”アマゴ26匹!”という文字と、例によって新聞紙の上に並べられた無数のパーマーク…

 その写真から感じる強烈な不快感は、”命”とか”自然”というもの以前に、その数だけ減ってしまった”自分のターゲット”に対する悔しさなのだと思った

 それに先月の終わりに訪れた根羽川でも、東海豪雨の復旧工事がやっと一段落し、蘇りつつある渓に立ちながらも、復旧工事中に比べて格段に増えた釣り人の姿に閉口した…


 結局、どんなにその川を愛し、どれだけ通いつめても、何人かが魚籠をもってやってきたら、そこはもう渓流釣りのフィールドではなくなってしまう…そんなことを考えるのがイヤで、キャッチ・アンド・リリースの川へ通っていたのがこの数年だったんじゃないだろうか?

 ”魚がいる”、”魚影が見える”ということがC&Rの良さだと思っていた
 でも、本当に大事なのは”魚がいなくならない”ということだと、今あらためて思う

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*tackles  
(Apr 26)
rod:Euflex XFP 6'09 #3 (Tiemco) , reel:CANTATA 2150 (ufm ueda)
(May 14)
rod:G882 8'08 #2 (Scott) , reel:CMR #3/4 (Marryat)

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by taros_magazine | 2008-05-17 21:51 | fly fishing diary
心から…
 
 そこにいるのはわかっている
 たとえ、もう半年この場所に近寄っていなくてもわかる。こんな日には絶対にいると…

 この流れでは、いつもそう信じてキャストしてきた
 そしてその思いが裏切られることはほとんどなかった

c0041105_21503432.jpg 今年初めての寒狭支流での釣り上がりに選んだのは、この日と同じような雨の後には何かが起きる魔法の川…
 
 狙い通りにイワナはヒットした。この流れのレギュラーサイズとでも言うべきイワナが…
 しかし、その愛嬌ある姿を今年も確認できたことに安心する裏側で、何か満たされない感覚がヒットからランディングに至るまでの間中、胸につかえていた

 その原因が何なのか、だいたい見当はついていた 
 でも、それを否定したくて早足でポイントを叩いて釣り上がった
 
 そしてやはりレギュラーサイズのアマゴを何匹がヒットした後も消えないその感覚に突き動かされるように、予定にはなかった淵を目指しその小さな谷から上がり、上流を目指した

 過去に何度も尺アマゴにラインを切られたその淵…しかし、この日は最後まで魚の反応はなかった
 そして胸に支えていたモノはいよいよ押さえがたい衝動となっていた

 『もっと大きな魚を、もっと重く激しいファイトを…』

c0041105_21561064.jpg そんな気持ちになったのは何もこの日が初めてではなかった
 下伊那で尺近いアマゴを連発した時も、あの西野川の後も、もちろん今回のように忍野の直後の釣行でも…
 少なからず”サイズ”に対する欲求不満を抱えて釣りに出かけたものだった

 でも、今までは手のひらに収まりそうな寒狭や根羽の1匹が、そんな気持ちを吹き飛ばしてくれたのに…

 そんな気持ちを抱えたまま峠を越え、4月から解禁となった根羽川へ向かった
 実は、この日根羽へ向かったのは年券の購入の他に、もうひとつ目的があった

 『今まで禁漁だったあの区間に入れば…』

 今年から禁漁区間が大幅に削減されたこの漁協管内では、数年前にやはり漁区設定が変更された時、それまで禁漁だった枝沢に入ると何匹もの(痩せてはいたけれど)グッドサイズのイワナをキャッチしたことがあった
 そのことがあったので、今回も”そこに入りさえすれば…”という目論見があったのだ

 期せずして一致を見たこの日の予定と欲求不満の解消法…

c0041105_21512565.jpg しかしその“究極の解決法”は、路肩に止められていた4輪駆動車の姿で実行不可能となってしまった

 その4駆の横を通り過ぎ、そのまま惰性で支流のそのまた支流にやってきた
 
 “大物”とはおよそ縁遠いその流れの最初の1匹は、まるでレインボーのように激しくファイトする20センチほどのイワナだった

 そのイワナをきかっけに、次から次へとイワナやアマゴがヒットした
 
 流れるフライ、割れる水面、振動を伝えるロッド、そして響いてくる小さな魚達の生命感…

 やっと気づいた
 ビッグトラウトとのファイトの後の物足りなさを、なぜ地元の小さな魚が解消してくれたのか

 それは、このフィールドでの1匹は、単純に”魚”だというだけでなく、そこにある景色や雰囲気、そしてそこで日出会った人達との会話や川のほとりで食べた弁当…そんなすべてを感じながら手にした1匹だったからなんだと
 
 そう気づいた今、心から思う

 きっと今度忍野で大物を手にしたら、前回よりもっと気持ちいいだろう
 そして今度地元の渓に立つときは、今日よりずっと満たされた気持ちになれるだろうと…
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*today's tackle  
rod:cremona 7'11 #2/3 (Coatac)
reel:philius babytrout (KIRAKU)

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by taros_magazine | 2008-04-23 21:58 | fly fishing diary
Release
 
 冬の天竜のビッグレインボー、早春の寒狭のシラメ、数年ぶりの宇連川のアマゴ…

 これまでになく、精力的にオフの釣りに精を出し、渓流解禁の声に胸を躍らせて出かけ、そして充実した渓でのひとときを過ごしながらも、正直に言えば心のどこかに引っかかっているものがあった

 それは『自分はいつになったらドライで釣り上がる気なのか?』ということだった

c0041105_21353160.jpg もちろん、ニンフでの釣りに否定的な訳じゃない
 ドライで釣ることがニンフで釣るより価値があるなんて思っている訳でもない
 マーカーをひったくるように持っていく天竜でのレインボー相手のルースニングは例えようもなくエキサイティングな釣りだと思う
 寒狭中部で目の前で悠々と定位しているスレッカラシのシラメの鼻先にニンフを流し込み、それを加えさせるまでの一部始終を目撃した日には、しばらくの間その光景が脳裏から離れないほど刺激的だ

 そんな釣りを繰り返しているうちに、今までなら当たり前のように解禁からドライで釣り上がっていた寒狭上流でも、この1~2年の春は大場所で魚影を探し、そしてニンフとマーカーをセットするようになっていた

 そして今、あれほど積もっていた雪が解け、ぶ厚いフリースのインナーがいらない季節になってもまだ相変わらずニンフのフライボックスにしか手が伸びない自分に、焦りにも似た違和感を感じるようになっていた

 『どこかで、切り替えなければ…』

c0041105_21355394.jpg 選んだのは忍野だった

 『忍野でニンフを満喫したらそこで一区切り。次からは地元でドライの釣り上がりを…』

 そう思って、いつものように高い足場からのサイトフィッシングに興じた

 最初の1匹は思い通りにヒットした
 だけど、その次がまったく続かない

 持っている全てのニンフはことごとく無視された。サイトフィッシングをあきらめ、ルースニングで下流部を探ってみたが、マーカーが引き込まれることはなかった

 気がつけば、澄んだ流れでは何匹ものヤマメやレインボーがライズしていた
 彼らは、水生昆虫にはまったく知識のない自分にもわかるほどのサイズと色の流下物を片っ端から口に入れていた

 寒狭での釣り上がりに使うフライをティペットに結び、タイミングを計ってフィーディングレーンに運ぶと、それまでニンフで悶絶していたのがウソのようにあっさりと口にした

 そのまま二又、テニスコート、湧水、釣り堀とドライで”釣り上がり”を楽しんだ

c0041105_2136109.jpg その頃には、もう妙な”焦り”は消えていた
 それは待ち望んだ”ドライの季節”に入ったことを実感したからではなく、ドライだニンフだという区分けが無意味だと気づいたからだった

 一昨年の夏、自分の”ドライ”という固定観念を取り払ってくれた忍野は、今度は”ニンフ”という呪縛から自分を解放してくれた

 予定とは随分違った1日になってしまったけれど、やっぱり忍野を選んで正解だったと思った


*today's tackle  
rod:G2 8'08 #4 (SCOTT)
reel:CMR 3/4 (Marryat)

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by taros_magazine | 2008-04-13 23:59 | fly fishing diary
priceless

 「利用料が1000円以上だったら、ゴミなんかテン場に放置して当然。管理人が片づけりゃいい」

 恥ずかしながら20年前ほどの自分のセリフだ

 その頃、オートバイで各地のキャンプ場を泊まり歩くことの多かった自分にとって、『キャンプサイトの利用なんてタダが当たり前。たかだかタタミ1~2畳のスペースを一晩使うくらいならせいぜい300円か500円が妥当だろう』と思っていた
 
 もちろん、まだ学生だった当時の金銭感覚のコトもあったが、それにも増してキャンプ場の維持や管理といった、裏方業務の大変さをしらなかった己の無知が言わせたセリフだった
(実際には、1000円以上の利用料のところでもゴミはゴミ捨て場に捨てて帰ったけど)
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 天竜川:1500円、宇連川:1000円、寒狭中部:1000円、寒狭上流:1000円、根羽川:700円、忍野:800円、石徹白:1000円

 昨シーズンに自分が訪れた漁協の日釣券の価格設定(解禁初日は除く)だ

 年券という設定や、あるいは鮎との共通利用可能な漁協もあるために単純に比較はできないが、これらは決して高いとは思わない

 集中豪雨や渇水という異常気象にさらされ、鵜の食害に悩み、後継者不足に不安を感じながらも、毎年楽しませてくれるこうした漁協の活動に対し、1000円前後の対価を支払うことにまったく抵抗はない

 だが、敢えて言わせてもらおう
 『名倉川の特別漁区の2000円は高い』と

 この3月1日解禁の漁協では、2004年から管内の一部区域を『特別に魚影の濃い区間』として他の区域より多く放流するかわりに、プラス1000円の価格設定で日釣券を別途発売している

c0041105_2213551.jpg その区間を初めて訪れたのは2006年。”放流日”だったはずの『特別に魚影の濃い区間』では、最下流部の堰堤から最上流部のプールまで釣り上がる間に、確認できた魚影はわずか数匹だった
 
 その日話をした多くの釣り人も「魚がいない」と怒り、ある漁協の関係者は「前日に放流済み」と言い、また別の監視員は「これから放流するところだ」などと曖昧な態度だった

 そして昼も近くなった頃、最上流部のプールで途方に暮れていると、片手にバケツを持った3~4人の男性が道路から降りてきて、そのプールにチョボチョボと魚を入れた

 この区間で一番人気のプール、取り囲む何人もの釣り人、放たれた2,30匹のアマゴ…

 『これが”特別”かよ…』
 目の前で泳ぐアマゴを見ながらも、気持ちは晴れなかった

 2年ぶりに訪れたこの日も、状況はほとんど同じ…それどころか、この日は目の前での”放流”すらなかった
 結局、午後からは”魚影の濃くない”一般区間に移動した
 
c0041105_2215259.jpg 美しい景色の中、ゆったりとした流れが作り出す大きなプールには、特別漁区よりもはるかに多くの魚影があった…

 ”釣り”に求める価値は、人それぞれ違って当然だろう
 1匹でも多くの魚をクーラーボックスに詰め込みたい人、美しい自然の中で渓魚との出会いに胸を踊らせる人…それぞれの価値観で楽しみ、そしてその対価として支払う遊漁料…

 はたして、名倉川の特別漁区にその価値はあるのか?
 名ばかりの”特別”で釣り人の心を弄んでいないか?
 
 この日、その区間が”特別”だったのは、魚影に比較して圧倒的に過剰な「釣り人の数」、そして渓流釣りをなんとか盛り立てていこうと努力を重ねている他の漁協と際だって異なるその姿勢だけに思えた…

 名倉川からの帰り道、寒狭上流の大物が潜むポイントをのぞきに行った

 かつて50センチオーバーのイワナが見られたその淵には、上流の養魚場から流れてきたと思われる大型のホウライマスが定位していた

 様子を見るだけのつもりが、いつしかロッドを持ち、時を忘れて夢中でキャストし続けた…が、やっぱり釣れなかった

 たった1匹の”落ちマス”相手の七転八倒…
 でも、端から見れば1円にもならないようなそんな釣りが、この上なく楽しかった

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*otherside…
 『輝ける沢の辺で』(by Mr,RISE)

*today's tackle  
rod:Freestone XT 8'08 #3 (Shimano)
reel:Marquis #2/3 (Hardy)

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by taros_magazine | 2008-03-18 22:27 | fly fishing diary
think about …

 『せっかくだから、普段行かないところの様子でも見てみようか…』

 名古屋からやってくるゲストを待つ間、もう何年も入っていない支流に沿って車を走らせた
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 ひなびた里の間を流れるその川が、お世辞にも綺麗とは言えない細く浅い流れになっていたのは何もこのとことろの渇水のせいばかりじゃない
 上流に行くほど大きな集落が点在するこの支流では、放流ポイントにほど近い下流部ですら解禁後1ヶ月もすると釣り人の姿を見ることはほとんどなくなる

 増水すれば田畑からあふれ出た水で濁り、渇水になれば生活排水が川底を覆う…
 
 『何もそんな川でウェーダーをぬらさなくても、寒狭上流には他にいくつもの好ポイントがあるんだから…』
 数年前にこの川沿いにある旅館で一泊したときですら、ここで釣りをしようとは思わなかった程だった

 左岸を走る細い道は、数年前の豪雨で部分的に寸断しているという
 でも、そんなことは関係ない。どうせ様子見に行くのは本流との合流点から数分の地点…もうずいぶん昔のコトだけど、大きなアマゴがクルージングしていたあのプールまでだから…

c0041105_0102855.jpg 小さな堰堤に立ち、上流のその浅いプールを双眼鏡で見るが魚影はなかった
 安心したような、ガッカリしたような、何とも妙な気分で車に戻ろうとしたとき、堰堤の下のプールで波紋が広がった

 『まさか…だよな…』

 そのプールは、カワムツの巣窟のはずだった
 あの頃も堰堤からいつも様子を見たけれど、群泳するカワムツに混じって、ほんの1~2匹のアマゴがいるかいないか、というのがセキの山だった

 しかし、双眼鏡を通じて見えたのは信じられない光景だった

 『アマゴだ!アマゴばっかりだ!』

 ハッキリとパーマークを確認できる何匹ものアマゴが代わる代わるライズしていたのだった

 久しぶりの再会の挨拶もほどほどに、すぐに2人で堰堤に戻ってきた…が、そこには既に餌釣りの人が陣取っていた…

 転戦した上流部では大苦戦となった
 時おり姿を確認できる底ベッタリのイワナやアマゴの姿を見るにつけ、さっきの堰堤のライズリングが頭をよぎった

 『堰堤…行ってみましょうか?』

c0041105_0105327.jpg 傾きかけた日差しの中、文字通りの鏡面フラットではまだアマゴのライズは続いていた
 ミッジ、ニンフ、果ては大きなストリ-マーモドキまでティペットに結んだけど、アマゴは最後までくわえてくれなかった

 思いがけないポイントでの、思い通りにいかない釣り…
 でも、だからこそ繋がっていく”次への想い”…

 『さぁ、今度は…   』


*otherside…
 『一から出直し修行的毛鉤釣』(by Mr,godzilla2004)

*today's tackle  
rod:Fujimaki Special 8'07 #3 (Factory haru)
reel:Freizeit 3/4 (NAC)

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by taros_magazine | 2008-03-10 23:29 | fly fishing diary
看板
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 かつて、このプールの左岸に位置する岩には、水位計が設置されていた
 そして対岸からは大きな柳の木が張り出し、その枝がプールを覆うように被さっていた

 その枝が作り出す淡い影の中で、大きなアマゴが悠々とライズを繰り返し、流れ込みの脇では何匹ものイワナが底に定位していた

 そんな姿を見て素通りできる釣り人などいないだろう
 
 かくして、この”水位計プール”にはいつも釣り人の姿があった
 餌釣り師は岩の上から枝に気をつけて慎重にダウンで流し、フライマンなら下流から枝の下めがけて水面ギリギリのサイドキャストを繰り返していた

c0041105_0582726.jpg 自分は”最後まで”この水位計プールでは釣れなかった
 
 何度かフッキングしたことはあったがすべてバラしてしまった
 何度も何度もフライを絡め取られた枝を気にしてしまい、無意識に合わせが小さくなっていたのかもしれない
 でも、この岩の上からアマゴやイワナの姿を見ながら弁当を食べていると、不思議と幸せな気持ちになったものだった

 ある日、そんなこのプールに棲む魚達を”守って”いた柳がボッキリと折れていた
 岩に刺さっていた水位計も跡形もなく消えていた
 
 東海豪雨が魚もろとも流し去ってしまったのだ

 時間の経過とともに、日当たりのいい”普通のプール”になってしまったこのポイントにも魚は戻ってきた
 しかし、釣り鉤から魚を守ってくれる柳の枝はもうない
 駐車スペース、それに入渓路の直下にあるこのプールでは、その姿が見えたなら釣り人の格好のターゲット…ここに残っているのはそんな”獲物”としての魅力の薄い小型のアマゴばかりになっていった

 『あの頃のように、ここで魚を見て(川から)上がろう』

 そう思い、今年初めての大名倉釣行となったこの日、岩の上からすっかり浅くなってしまったプールをのぞき込んだ

c0041105_0584571.jpg すると、流線型の影が川底に落ちていた
 そしてそのすぐ上には、一目見てそれとわかる魚の姿があった

 『イワナだ!』

 慌ててティペットをセットし直し、ニンフを底まで流し込んだ
 何度目かのキャストに、イワナがついに口を使った…

 
 リリースすると、イワナはそのプールではなく下流の瀬に去っていった
 ”丸見え”のプールを拒絶したその姿に一瞬安堵しながらも、すぐにまた暗澹たる気持ちになった

 『ここも…下流も…結局は沈んじゃうんだよ』

 車に戻り、ものの1~2分も下流に走ると、緑の里におよそふさわしくない紅白の看板が見える
 
 ”標高450m地点” 

 『ハッキリ書いたらいいじゃないか…”ここが水没ラインです”って…』

 さらに数分走ると、旧田口線の終点だった田口駅舎が見えた
 そこには、漁協が主だった釣りポイントに付けた名称が記された看板が立っていた
 
 ”駅裏”

 鉄道なんて、もう40年近く前に無くなった
 駅舎だって、明日崩壊するかもしれないし、そもそもこれが”駅”だったなんて想像すらできないのに…それでも、このポイント”駅裏”なのだ

c0041105_05720100.jpg 『そうか…それでいいじゃないか…』

 水位計が無くなっても、あのプールは自分にとって”水位計プール”なのだ
 そしてこの素晴らしい渓は、たとえダムの底に沈もうと、いつまでも”大名倉”だ


*today's tackle  
rod:Rightstaff 7'10 #3 (CFF)
reel:TR-L "solid" (abel)

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by taros_magazine | 2008-03-03 00:56 | fly fishing diary
Heaven's Door
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 豊橋方面から寒狭川上流漁協管内のフィールドへ向かうとき、大抵は稲目トンネルを通ることになる

 かつて鉄道専用だったこの長いトンネルを抜けるとそこには寒狭本流が横たわり、そこで信号を左に折れても、あるいはそのまま直進しても、アマゴやイワナが棲む支流群がそこから先には広がっている

 そのトンネルを抜けるときの感覚をどう表現すればいいのだろう?
 暗く長い闇を抜け、目映いばかりの光を放つ世界に飛び込んでいく瞬間…

 それは、臨死体験をしたと称する者が語る”天国”へ向かう瞬間のようなものなのかもしれない
 あるいは、「もしかしたら皇室に伝わる”人から神”に変わる儀式がこういうものなのかもしれない」とさえ思えてしまう

 寒狭上流での今シーズン最初の釣行となったこの日も、”俗世”と”パラダイス”を隔てるこのトンネルを抜けてやってきた

 トンネルを出てすぐのポイントを眺めると、古い橋からは餌釣りのおじいさんが糸を垂らし、上流のプールではルアーマンがキャストを繰り返していた

c0041105_2253819.jpg いつもと変わらないのどかな光景…しかし、その穏やかな気持ちは川原へ降りて一変した

 食い散らかされたコンビニ弁当のパッケージと、明らかにゴミを燃やした焚き火の跡、そして無惨にうち捨てられた魚の内臓…
 3日前の解禁日は、寒狭中部で使うものと同じフライをくわえた数匹のシラメだけでなく、この”パラダイス”には到底不釣り合いな”俗物”をもたっぷりと残していた

 ふと、昨年のこの時期に見た支流の釣り荒れた姿を思い出した 
 この日トンネルを抜けてやってきたのは、本当に”パラダイス”なのか、それとも… 
 ところどころに雪の残る川沿いの国道を走り、上流部の堰堤に向かった

 そこで見たものは意外な光景だった
 堰堤上のプールはほぼ全面が氷結し、その下のポイントはおそらく堰堤からはき出された堆砂ですっかり浅くなってしまっていた

 無駄とはわかっていながら、魚影のないプールでミッジをキャストし続けた
 でもやっぱり、何も起きなかった…

 トンネルの先にあったものは、”天国”でも”パラダイス”でもなかった
 確かにそこは時々夢のような気分にさせてくれるけれど、それは神から与えられたものでも、天から降ってきたものでもない

c0041105_22542125.jpg そこにあるのは、厳しい自然とそこに住む人の生活、そして漁協や釣り人の行為がもたらした現実なのだ

 それでも、また今度フライロッドを積んでこのトンネルを走り、出口の光が見えたなら、自分はきっと高揚してしまうだろう

 ここでフライフィッシングができなくなるその日まで…


*today's tackle  
rod:Rightstaff 8'10 #2 (CFF)
reel:Marquis #2/3 (HARDY)

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by taros_magazine | 2008-02-25 23:04 | fly fishing diary
”祭りの後”を想う

 2月も半ばとなると、この地域では渓流釣りのフィールドの選択支が一気に増える

 全国的に有名な2月初旬の寒狭中部の解禁から始まり、16日の下伊那、そしてその直後の寒狭上流と続く2週間は、本当に刺激的で、その反面妙な焦りを感じる何とも不思議な時間である

c0041105_024384.jpg そんな十分な選択支があったはずの日曜の朝、自分はもう何年も解禁直後に結果が出ていない宇連川にいた

 もちろん、久しぶりに会うこととなる仲間との会話も楽しみであったが、それよりもこの川の、漁協の”今の姿”を見ておきたいと思ったからだ

 ここでの渓流釣りは、数年前までは寒狭中部漁協とほぼ同時期に解禁していた
 しかし昨年、突然2月後半の日曜日へと解禁日をシフトした

 それについて、その前の年の10月に気になる発言をある会合の席で漁協の組合長が述べていた
 『もう宇連川ではアマゴは無理だ。来年はやめようかという話も出とる』

 メインの釣り場だった大島川でのダム建設、万年渇水の宇連ダムからはき出されるヘドロ、天竜川からの導水による生態系の変化、そして平成の大合併…何がどう影響しているのか、それとも何も変わっていないのか…とにかく宇連川漁協が深刻な状況にあることだけは間違いなかった

 そんな中で起きた”謎の解禁日変更”と、わずか1年で元に戻った日程…
 それは”復活”なのか、それとも”断末魔”なのか、確かめたかった

 結果的にはわからなかった

c0041105_0373076.jpg でも、この日は何年かぶりに、宇連川らしい小降りながらも愛嬌たっぷりのアマゴをキャッチすることができた
 昨年に比べれば、釣り人の数もずっと多かった
 駐車場で会った年配の釣り人は『ここはエエよ。空いとるし、そんな寒くないし』と笑顔を見せていた

 少なくとも自分にとって、この日宇連川は輝いて見えた
 里の風景も、釣り人の笑顔も、そして魚たちの姿も、断末魔には見えなかった

 一方、午後から訪れた寒狭中部は大勢の釣り人で賑わっていた
 地元はもちろん、遠く関西方面のナンバーの車も見かけるこのフィールドだが、ひとつ気になるのはメインのポイントとなるヤナの駐車場だ

 解禁日こそ釣り人に解放されているが、その後はロープで締め切られていることも多い
 遠方からの釣り人には、漁券を売っている店の、超一級ポイントの真ん前の駐車場が釣り人を閉め出している姿はどう写るのだろう?

 そしてこの日解禁となった寒狭上流…

 昨年に引き続きフライ・ルアーに一部解放された釣り大会日だが、その区間は専用区ではなく餌釣りも可能だという
 もともとフライ・ルアー禁止の初日に、知らずにやってきたルアーマンと餌釣りの人とのトラブルが原因で設置されるようになった経緯があるだけに、その告知が十分にされているのだろうか?

 それぞれの漁協が抱えるそれぞれの課題…

 これから始まるシーズンを心から楽しむためにも、解禁という”祭り”の後のことに対しても目を向けていかなければと思う


*other side …
輝ける沢の辺で』(by Mr,Rise)
釣り三昧・猫三昧』(by Mr,NENEKO)
アマゴ釣りの憂鬱』(by Mr,M's)
いわなバカ』(by Mr,Shaku iwana)

*today's tackle  
rod:Rightstaff 8'10 #3 (CFF), G2 8'08 #4 (SCOTT)
reel:CT-3/4 (Redington), CMR 3/4 (Marryat)

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by taros_magazine | 2008-02-20 00:43 | fly fishing diary
"TROUT" change the World
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 その流れを前にしても、ごく当たり前のようにくニンフを結んだ
 新緑の中を流れる澄んだ渓…車で降りることのできる広い川原もなければ、60センチを超えるレインボーもいないこの寒狭中部の流れで、ロッドの番手こそ違うものの気がつけば天竜川と同じラインシステムで臨んでいた

 ものの数分で奇妙な感覚に襲われた
 天竜なら濁った流れの上を漂うマーカーを見つめていればよかったのに、ここではその下にいるシラメの姿はもちろん、水中を漂うフライさえも見ることができるのだ

 水面、水中、川底…めまぐるしく目配りをしているうちに、どうしていいのかわからなくなってしまった
 サイトで合わせようとするとスッポ抜け、マーカーの反応も読みとれない
 釣り初めて1時間ほどが過ぎ、集中力がとぎれかけていた時、1匹のシラメが目の前でライズを始めた

 そのシラメはまるで挑発するかのように、何度も何度も目の前でライズを繰り返した
 『ココは寒狭だよ。何やってるんだよ』と言わんばかりに…

c0041105_22234314.jpg ほぼ半年ぶりにミッジ用のフライボックスに手を伸ばした
 そしてその中にあったひときわ小さなフライ…と言っても#24程度だけれど…を何種類も10xのティペットに結び、めまぐるしくローテーションした 
 
 でも、見に来るのは最初の数投だけ、そして偶然に目の前でドラッグがかかってフライがスイッと動いたときだけだった

 やがて冷たい風が吹いてきた
 穏やかだった水面が小刻みに波立った

 それでもライズは続いてた
 それどころかそのシラメにつられるように、近くにいたもう1匹のシラメも水面を突つきはじめた

 そのとき、フライはその2匹がもつれ合うようにライズを繰り返しているポイントにあった
 後からライズを始めたシラメがフライの方向に体の向きを変えた瞬間、先にライズしていたシラメがその背後から瞬時にフライに食いついた

 しなやかでパワフルなお気に入りの3番ロッドに伝わる手応えは、長い5番ロッドで受け止める天竜のレインボーのファイトに勝るとも劣らない官能的な重さだった


 ブランニューの小さなネットに横たわるそのシラメは、季節を、そして僕の心のギアを一瞬で変えてみせた

 そして、次のシフトアップももうすぐ…
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*today's tackle  
rod:Fujimaki Special 8'07 #3 (Factory haru)
reel:Halcyone babytrout (KIRAKU)

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by taros_magazine | 2008-02-12 22:24 | fly fishing diary