カテゴリ:fly fishing diary( 123 )
忍野 '09 夏 "CODA"

c0041105_11531773.jpg “奇跡の川”
 それが自分にとっての忍野だ

 初めて訪れたときに目にした魚影、手にしたサイズと魚種、そして何よりその夜の“ロッドティップ”をめぐる出来事だ

 温泉裏のあたりでイブニングを楽しんだ後、駐車場に戻り帰り支度をするときにそのコトに気づいた
 『ティップがない!』

 おそらくはラインを外し、暗い木立の中を歩いているうちに抜け落ちてしまったであろうティップを、すでに闇に包まれた忍野の川辺でその日同行した仲間がみんなで探してくれた

 でもやっぱり見つからず、もうすっかり忘れかけていた頃にその電話があった
 『見つかったらしいよ』

 仲間の一人が忍野の有名ショップのオーナーに事情を伝えてくれていたのだ
 そして“奇跡”は起きた

c0041105_11554827.jpg 誰かがあの昼でも薄暗い木立の中で、細いティップを見つけた
 おそらくはフライフィッシャーであろうその人(そうでなければ“ただのゴミ”にしか見えないだろう)は、それを拾い上げると目に付きやすいように近くの看板に立て掛けた

 そこをまた別のフライフィッシャーが通り掛かる
 看板に立て掛けてあったティップを見つけた彼は、ちょくちょく顔を出すあのショップにそのティップを持ち込んだ
 『コレ、誰かが落としたんじゃないかなぁ?』

 それを聞いたオーナーはふと思い出した
 『もしかして…』
 そして電話機を手にした

 この奇跡的な体験は、釣りそのもの以上に自分の“忍野観”を決定的なものにした

 自分にとってこの湧水の流れは、まるでカトリック信者にとってのルルドの泉の聖なる水のようですらあった

c0041105_1154204.jpg だから、この日もいつもより少しだけ敬意を持ってやってきた
 
 足場の高い上流部用のほかに、聖なる流れに住む魚たちにふさわしいネットを用意し、奇跡の川で1日を過ごすつもりで…

 その新しいネットでいくつかのリリースをした後、車へ今まで使っていたスライド式の長柄のネットを取りに戻った
 『ない…』

 車の車体下に置いてあったネットは、跡形も無く消えていたのだ

 どこにでも売っている安物のネット…しかし、それ故に誰が持っていても不思議はなく、犯人探しなどする気にもなれなかった

 初めてここを訪れた日の、あの夜と同じ駐車場で消えてしまったネット…

 この程度の出来事は、きっとどこの釣り場でもあるごくありふれた話なのだろう
 しかし、勝手な考えだとわかってはいるけれど、この忍野でだけはこういう体験をしたくなかった

c0041105_11551260.jpg それでも、この川の流れに罪があるわけではない

 奇跡を起こしたのも、また罪悪を犯すのも、ここにやってくる釣り人…
 そして自分もまた、その中の一人だということ…これが今の自分の“忍野観”だ


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by taros_magazine | 2009-07-30 12:06 | fly fishing diary
根羽川 '09 夏 "Niche"
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 この川の特徴は…何もない

 護岸ばかりが目に付く貧相な流れ、どうしたって隣接する漁協に比較されてしまう魚影、交通の要所にありながら、下伊那や岐阜方面へ向かう釣り人の通過点となってしまうような寂しい知名度

 愛知県との県境に位置する、長野でも最も小さな村のひとつ…そこを流れる矢作川の源流部がその根羽川漁協の管轄だ

c0041105_11381352.jpg そんなエアポケットのような釣り場が、自分の釣りに対するスタンスにピッタリと合ってしまってからもう10年以上が経過した

 そして今年もこの流れの、いつものポイントにやってきた

 目と鼻の先にある幹線国道を走り抜けるトラックの爆音が聞こえるような法面脇の小さな落ち込み…今まで何度もアマゴやイワナの良形がヒットしたその場所で、今年も派手な水しぶきがあがった

 『何だ、この引きは…』

 この細い流れにはおよそ不釣合いな激しいファイト…
 やがて水面を飛び出したその魚体に思わず声が出た

c0041105_11384159.jpg 『レインボー?!』

 根羽でも別の支流…上流に管理釣り場があるような…でなら、何度もこの姿を見た
 
 でも、この川はそこから一番離れた源流部…しかも大小いくつもの魚止めがあるというのに…

 理由はひとつしか考えられなかった

 この流れの先にある開発地…かつてイワナの種沢だったこの谷をモルタルで濁った排水路に変え、申し訳程度のアマゴを放流することで“清流が流れる里”という付加価値を謳うあの別荘地…

 レインボーを放ったのが業者なのか、それとも住民なのか、善意かどうかさえも自分にはわからない
 それに、今ここにレインボーがいるからと言って、とりたてて何かを嘆くほどのことでもないだろう

 ただ、今まで自分の心のスキマにピッタリとはまっていたこの川での釣り…そのスキマがほんの少し広がって、そして何かが漏れだしてしまったような気がした
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by taros_magazine | 2009-07-30 11:45 | fly fishing diary
寒狭川 '09 春~夏 "the Fortune Teller"
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 それなりに年月だけは積み重ねてきた寒狭川でのフライフィッシング…

 早春の北風をやるすごす谷も、増水の影響を受けない流れも知ってし、それにどうしても魚の顔が見たいときに入り込むようなポイントだって分かっているつもりだった

c0041105_1125597.jpg だから、初めてバンブーロッドを持って訪れた3月も、魚影の濃さではなく気持ちよく振れる渓相でこの大名倉を選んだ

 『今日釣れなくても、また今度あそこに行けばいいから…』

 1時間ほどの短い釣りは“予想通り”不発だったけれど、失望も不安もない、穏やかな1日だった

 それから3ヶ月、こんどは“釣り”に行った
 平日の午前、張り巡らされた蜘蛛の巣に先行者がいないことを確信し、今度こそバンブーロッドから伝わる魚信を期待して…

 結論から言えば、その期待は現実のものとなった
 この流れに棲む飴色のアマゴも、吉田ロッドとの見事な一体感も堪能することができた

 でも、小さな違和感を抱えたまま、寒狭を後にしたのもまた事実だった

 その違和感は翌週には耐え切れないほどの大きさになってしまった
 イブニング近くに訪れた、かつて尺アマゴをヒットした小さなプールでは、数匹のカワムツが替わるがわるライズを繰り返していた
 同じくイブニングの名ポイントだった堰堤上は、上流の工事の影響で濁ったプールになっていた

c0041105_11255973.jpg これまでにも、何度かこの川での釣りというものに対する不安や危機感みたいなものを感じる瞬間があった
 実際、鰻沢や澄川といったかつての“種沢”も、もう何年も前にすっかり様相が変わってしまい、今ではただの釣れない谷川だ

 しかし、今年に入って感じた寒狭川の“変化”の具合は、その範囲もスピードも明らかに常軌を逸した程度で進行しているように感じた

 でも実際には災害をもたらすような豪雨があったわけでもない、土木工事が行われている箇所も規模も例年とそう変わっていない
 正確に調べれば、きっと目に見える流れの姿も、そこに棲む魚たちの数も、変わっていないのだろうと思う

 理由はわかっていた
 ついに今年着工されることになった36年前の計画…そのことが頭から離れないから、ほんの些細な魚影の変化や流れの濁りにどうしても過敏に反応してしまう…

 6月に3週続けて通ったこの寒狭川…そして今まで何十、何百回と通ったこの川に、今初めて、釣りに行くことが“怖い”と感じている
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by taros_magazine | 2009-07-30 11:30 | fly fishing diary
天竜川 '09 早春 "see you"

 去年の11月、このエリアのシーズン最初のヒットは見たこともない巨大なレインボーだった

 #6ロッドをバットからグイグイ曲げてもがく銀色の魚体をやっとネットの届くところまで寄せた時、そのレインボーと目が合った

 次の瞬間、想像もつかないようなスピードで一気に走ったレインボーのパワーに、5xのティペットはあっさりと根をあげた…

 その週末にはこれまでより一回りゴツいリーダーとティペットを購入し、その数日後にまた同じポイントに入った

 そしてまた確かな手応えがあった
 慎重に手繰り寄せ、あと少しでその姿を…という時、またしても猛スピードで流れに乗られてしまい、そして切られてしまった

c0041105_1324258.jpg そんなことはあったけれど、このシーズンの天竜での釣りはいつも上々だった
 毎回のように50センチ級をキャッチできたし、いままでのどのシーズンよりも充実した秋~冬だった

 そしていよいよ渓流の解禁が近づいた1月半ば…
 おそらくはシーズン最後の天竜…選んだ場所は当然あのポイントだった

 秋に比べれば随分と反応はシブくなっていたけれど、それなりのサイズがいいテンポで釣れてくれた

 帰り時間も近づき、もう何度もラインブレイクしたことなど忘れかけていた時、かすかに動いたマーカーに合わせた右手に強烈な重さが伝わってきた

 “ギ…ギシ…”
 実際にはそんな音は聞こえていないのかもしれない。でも、明らかにヤバそうなベンドを見せるロッドが悲鳴を上げていることは確かだった

 瀬だろうが流れだろうが、入っていけそうなところでは迷わず魚に付いていった
 この数ヶ月でリールのドラグの使い方も何となくわかってきた

 おそらく、釣り経験の中で最も長時間だったであろうファイトの末、やっとネットインさせた自分にとっての“堰堤下の主”

 もちろん、このレインボーが11月のアイツと同じ魚かなんてわからない
 この天竜にはこのサイズのレインボーは何10匹もいるだろうし、本当の“主”はもっとデカくて、自分なんかでは到底太刀打ち出来ないサイズかもしれない

 でも、あの時一瞬だけ交わした視線を、その時伝わってきた無言のメッセージを、今ネットの中にいるレインボーから確かに感じたのだ

c0041105_1324479.jpg ネットから大きくはみ出したレインボー…リリース前に再び合わせたその目から、今度ははっきりとメッセージが伝わってきた

 『釣られてやったよ。最後だからナ』

 だから、自分はこうつぶやいてリリースした
 
 『最後なんかじゃないよ。また秋に会おうや…』


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by taros_magazine | 2009-07-30 11:05 | fly fishing diary
Never-Ending Story
c0041105_23502455.jpg 例えば、寒狭上流へと向かう道のりがそうだ
 
 渋滞する市街地の幹線道路を抜け、郊外の田園風景の中を走り、小さな峠を越えると目の前には農村風景が広がる
 道はしだいに細い山道になり、いつしか道路脇にせせらぎが見えてくる…

 こんな”景色のグラデーション”と、高揚していく気持ちとが見事に調和するおよそ1時間の"ROAD TRIP"は、もしかしたら釣りと同じくらい楽しく、そして大切な時間なのではないかとさえ思う

 でも、この天竜川へと向かう道のりは少々異質である

 新興住宅地の真ん中を抜け、県境のトンネルを越えると、目の前に広がるのは洒落たマンションの立ち並ぶ浜名湖のリゾート街だ
 
 そして政令指定都市:浜松の中心市街地へ向かう渋滞の車列に巻き込まれ、ハイテク関連の企業団地の真ん中を通り、天竜の流れが見えるところまでやって来てもまだ、そこは”街”なのである

 まるで自分の住んでいる町内の周辺をぐるぐる回っているような抑揚のない景色…

 しかし天竜へと向かう本当の"TRIP"はここから始まる

 ”熊”をやりすごし、”月”を越え、”雲”を横目に見ながら”龍”の山に掘られたトンネルを抜け、谷を蛇行する竜の川で”モンスター”と戯れる…

 天竜二俣の街から秋葉ダムまでのほんの数十分で、それまで”近所”を車で流していた自分は不思議な物語の主役に"TRIP"してしまう

 そこでは、普段は持て余してしまう高番手の長竿を操り、背中から太ももまで届きそうな非現実的なネットをぶら下げ、2リットルのペットボトルよりも遙かに逞しいレインボーを相手に闘う"HERO"なのだ

 
 レギュラーシーズンの釣果から見れば本当に”夢”のような、11月から1月初旬までの短い物語…
 しかしそれは鮮烈な記憶を残し、また次の晩秋へと続いていく物語だ

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*other side of 12/30
輝ける沢の辺で』(by Mr,Rise)
いわなバカ』(by Mr,Shaku iwana)
MickのFF雑記(フライフィッシング) 』(by Mr,Mick)

*tackle (11/25,12/10)  
rod:G3 RPL 9'00 #5 (Sage)
reel:FLYSTART 1 (ROSS)

(11/13,12/10,12/30)  
rod:Fujimaki Special 8'05 #5 (Factory haru)
reel:Halcyone trout (KIRAKU)

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by taros_magazine | 2009-01-03 00:25 | fly fishing diary
思い出したもの
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 2~3年前まで、ここでの釣りは”オマケ”みたいなものだった

 この地方ではまだ暑い9月で終わってしまう渓流シーズンの余韻に浸りながら、そして2月の解禁までの心と身体のスキマを埋めるため、軽く楽しむ程度の近場のフィールドのはずだった…

 この日も、二俣の町の手前でその流れを見てもまだ冷静だった
 旧道でゆっくりと走る軽トラックにつき合わされても平気だった

 船明ダムまで来てもまだ”ドライブ”だった
 道路工事で足止めされても、DVDをのんびりと眺めていた

c0041105_0394229.jpg しかし、 横山橋を渡った瞬間、突然もの凄い勢いで鼓動が早くなるのが分かった
 雲名橋付近から見える水量に目を凝らし、秋葉トンネルを抜けると対岸に止まっている車の数を必死で数えた

 そして何より驚いた…と言うよりも、自分で笑ってしまったのはフックのアイのティペットを通そうとした手が震えていることに気づいた時だった…

 こんなにも、この天竜川のC&R区間の解禁が待ち遠しいと思ったのは今年が初めてだった

 それは、何も昨シーズン幸運にも何匹かのビッグレインボーをキャッチできたからとか、あるいは長竿を存分に振り回せるから、というような理由なんかじゃない
 
 むしろ釣れる魚のサイズはこの数年小振りなものになってきているというし、風の強い日にはキャスト自体が修行のように感じることもある

 この、川幅が何十メートルもありそうな重く濁った流れの最大の魅力…それは、ここが紛れも無く”渓流”であるということに気づいたからだ

c0041105_0435369.jpg 今年も支流の流れ込みでは、婚姻色に染まったレインボーが何組もペアリングしていた
 
 明らかに産卵床と思われる変色した川底があり、そしてこの川に通い詰めているベテラン達は、今年もシラメをキャッチしたという

 使うロッドも、フライも、ラインシステムも、寒狭や根羽で使うモノとはまるで違うけれど、そこに持っていく”気持ち”は地元の愛すべき小渓流とまったく変わらない…そう思えるようになって初めて迎えた天竜の解禁…

 この日キャッチした中の1匹は、信じられないほど美しいコンディションのレインボーだった
 
 しっかりと伸びた尾鰭、うっすらと輝く七色の魚体は、何故かサイズも模様もまったく異なる大名倉のイワナを思い出させてくれた

 今シーズン、思うように足を運べなかった大好きな川…そこに棲むあの愛くるしい中にもしっかりと自然の厳しさと生命のたくましさを感じさせてくれる、あのイワナ達のことを…
 
 その理由はこのレインボーをリリースした後、すぐにわかった

 大名倉で釣りをしているときにはいつも頭から離れないコト…それを、この中島の瀬のすぐ背後にもそびえ立つ巨大な壁を見たときに思い出した

 ”渓流”の魚達の営みを寸断する、この巨大なコンクリートの壁のことを…

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*today's tackle  
rod:G3 RPL 9'00 #5 (Sage)
reel:FLYSTART 1 (ROSS)

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by taros_magazine | 2008-11-13 00:56 | fly fishing diary
four seasons
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 どこへ行くとも決めず、ただ何となく釣りがしたいという気持ちで車を走らせると、大抵の場合いつも同じ場所にたどり着く

 そこは、何時間も高速道路を走ることになる石徹白や忍野ではもちろんない
 思い入れの強い大名倉でも、魚がどこにいるかほとんどわかっている根羽の小川川でもない

 茶畑に囲まれた小さな集落を抜けると見えてくる、古びた橋と青い欄干…そのたもとにある公民館横に車を止め、7月よりもずっと濃くなった緑の中で深呼吸をする

 栃洞川は何の変哲もない、ごくありふれた小さな支流だ

c0041105_2241446.jpg 段戸の原生林を水源とするこの流れは、雨の後でも濁りを気にすることはほとんどない
 早春からドライの釣りを楽しむことができ、時には思いもよらない大物に出会えたりする…そんな飾らない普段着の釣りが似合う渓だ

 だからここでは、息を詰めてライズを狙うような釣りではなく、ただのんびりとフライを流し、魚が遊んでくれるのを待つような感覚で過ごすことが多い

 この日は魚たちもリラックスしているのか、いくつものポイントで大らかに水面を割って出てきた
 25センチはあろうかというアマゴをバラしたのはご愛嬌だったが、最初の堰堤までの短い区間を、いつもよりもゆっくりと釣り上がっていった

 風景が一変したのは、その堰堤を越えてからだった

 いや、正確には見た目はそれほどいつもと違ってはいなかったのかもしれない
 ただ、底に沈む葉っぱの筋まで見えるほど透明なプールや頭上を覆う緑のトンネルが創り出すいつもの“癒し”の景色が、この日は妙に殺伐としたものに感じられたのだ

c0041105_222291.jpg 原因はすぐにわかった
 そのプールの横のスペースには、何カ所もの黒々とした焚き火と乗り入れた車の跡、そして付近にはゴミが散乱していた

 川原に残された、夏休み、そしてお盆休み明けの“名物”…それまでの反応が幻だったかのようにパッタリと途切れてしまった魚の反応に、自分が渓から遠ざかっていたこの1ヶ月余りの間に進んだ季節を痛感した

 キャッチ&リリース区間でもなければ、フライ専用区でもない寒狭上流…ましてやアクセスの容易なこの流れで、シーズンを通じて楽しめることの方がもしかしたら異常なのかもしれない

 5月には何匹ものアマゴがライズを繰り返していた二股手前のプールに群れるカワムツの姿を見て浮かんだのは“限界”という言葉だった

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 その釣行から10日ほどが過ぎたある夜、とあるブログを見ているとあの支流での釣行の様子が記されていた
 ひとしきりコメントを入れ、そしてパソコンの電源を落とし、遅い食事をとりながらも1つのことが頭から離れなかった

 『さっきのアマゴの姿…あれはもしかして…』

 どうしても気になり、ふたたびパソコンに向かい、そして目にしたアマゴ…その体型、パーマーク、そして朱点…それがハードディスクに保存されていたあの日自分が釣ったアマゴとまったく同じだとわかった瞬間、震えるような感動がこみ上げてきた

 あの流れで昨年からいくつもの季節を過ごしてきたであろうあのアマゴは、きっと何人もの釣り人に笑顔をもたらし、そしてその釣り人たちにより再び渓に戻されてきたのだろう

 そして今、過ぎゆく渓流シーズンを前に、このような形でその“生”を目にしたことが、あの日ネットにおさまった姿を見たときよりもはるかに嬉しかった

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*special thanks
"スマイル Days"(by Mr.まっす~)

*today's tackle  
rod:Geroge Selvin Marryat 8'00 #2 (Marryat)
reel:CT 2/3 (Redington) 

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by taros_magazine | 2008-09-10 22:25 | fly fishing diary
忍野スタイル
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 朝イチで見つけたこのプールの”主”は、陽がすっかり高くなった昼前になってもまだそこで悠々とクルーズしていた

 もちろん、朝だって素通りしたわけじゃない
 ニンフも、ミッジも、テレストリアルも試した。でもヒットするのは”主”の回りで様子を伺っているヤマメやブラウンだった

 『いくら忍野でも…さすがにコレはなぁ…』
 そう言い聞かせて下流部まで下っていき、昼食を前に駐車場まで戻ってきたときに再び目にした釣堀横の”主”…

c0041105_10412186.jpg 昼食前の余興とばかりに半信半疑で投じたニンフ…その波紋と水音に、50センチはあろうかという砲弾型のレインボーはかすかに反応したように見えた
 そしてそのフライがまさに鼻先を通過しようとしたとき、大きな口を開け、そして軽く首を振った

 “ギ…ギィ“
 音にならないロッドの悲鳴が、手首を通じて脳に伝わってきた
 2年前のあのときと同じように…

 
 初めてこの忍野を訪れた2年前、茂平橋下流で同行した友人の一人が見つけた大きなレインボー…
 その友人のフライチェンジの合間に、自分がダメもとで投じたニンフを、そのレインボーは引ったくっていった

 身をくねらせながらジワジワと下流へ逃げていく銀色の巨体…
 やがて河岸からせり出した樹木の下へ逃げ込まれそうになった時、意を決して強引に引き寄せた 
 そして別の友人が差し出したネットまであと少しのところまで寄せた時、乾いた音を立ててティペットがブレイクした…

 
c0041105_10414785.jpg あの日からちょうど2年。あの日と同じこの頼りない…でも、たくさんの想いの詰まった3番ロッドから伝わってきた感触は、あの時の友人達の声まで鮮明に思い出させた

 『竿立てて!』
 『茂みに入られないように!』
 『もう少し!』
 
 脳裏に蘇るそんな声に励まされ、何とかネットの届くところまで引き寄せた時、レインボーはそれまで貯めていた力を爆発させるように一気に上流へ走った

 ロッドのパワーでタメるべきか、それとも一旦ラインを送り出すべきか…そう迷った一瞬、再び聴くこととなったあの乾いた音…
 その音の残響は、あの日のように大きな笑い声にかき消されることもなく、静寂の中でいつまでも頭の中でリフレインされた…

 
 あの日から数えて7回目の忍野
 夢のような魚影、ドラマチックなファイト、でも最後には決まってしてヤラれる…

 それが自分の”忍野スタイル”
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*today's tackle  
rod:Cremona 8'07 #3/4 (Coatac)
reel:Philius small trout (KIRAKU)

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by taros_magazine | 2008-08-17 10:43 | fly fishing diary
呪縛

 派手な水しぶきがあがったのは、「何とかして1匹を…」なんていう気持ちももう薄れかけていた頃だった

c0041105_23241032.jpg 昼下がりの寒狭上流・本谷。そこで自分を歓迎してくれたのは、おそらくは放流されたばかりであろう10センチほどのアマゴばかりだった
 それほど魚影の濃くないこの区間…普段ならそれでも充分楽しめる小さなアマゴたち相手の釣り上がり…
 でも、梅雨の晴れ間の清々しい日差しの中、この美しい渓にふさわしい魚の姿を写真に収めたくて、なかなかカメラの電源を入れるまでには至らなかった

 しかし足下で良型のイワナをバラし、超1級ポイントでナイスサイズのアマゴにティペットを切られ…そんなコトを繰り返しているうちに、気がつけば脱渓点が見えるところまで釣り上がっていた
 そして魚の写真は皆無のままだった

 焦りにも似た気持ちに衝き動かされ、そのままさらに釣り上がった
 しかし、たまに水面に出てくる魚は下流部よりさらに一回り小さいアマゴ達ばかりだった

 焦りはいつしか惰性に変わっていた
 そして目の前の“いかにも”なフラットな流れを、#16のパラダンは珍しく綺麗にドリフトしていた

 『出るんじゃないかな…』
 
 直感的にそんなふうに思えた
 そしてあがった派手な水しぶき…しかし、その時自分がとった行動は、自分でも理解しがたいものだった

 ロッドをあおるでもラインをたぐるでもなく、そのままただ波紋を眺めていた
 そして数秒後、何事もなかったようにフライをピックアップした

c0041105_23251393.jpg 一瞬よそ見をして、合わせるタイミングを逃したわけじゃない。目的の魚種・サイズじゃないことがわかって合わせなかったわけでもない
 ただ、その時の自分の判断は“見ている”ことを選択したのだった…


 翌週、今度は根羽川で出掛けた
 ここでも入渓直後から放流したての小さなアマゴ達のアタックが続いた

 そしてしばらく釣り上がると6寸、7寸としだいにサイズアップしていき、ついに8寸ほどの元気の良いアマゴをキャッチすることができた

 2週間ぶりに取り出したデジカメは、電池が切れていた
 電波の届かないこの小渓での釣りだから、携帯電話も持ってきていなかった

 でも、全く落胆などしなかった
 それどころか、何か重荷を下ろしたような爽快感さえ感じ、その後も存分に美しい景色と力強いファイトを楽しんだ

 これまで、せっかくのニコパチがフィルム未装填だったり、撮影前に尺アマゴに逃げられたりというようなことも何度かあった
 そのたびにいつも言いようのない悔しさに襲われ、その瞬間までの幸せな気分を台無しにし、楽しませてくれた魚たちを恨んだりもした

 以前の自分なら、写真撮影が不能だとわかった時点で楽しさも半減だったろう
 もしかしたら、一旦釣りを中断して車まで携帯電話を取りに戻ったかもしれない

 なのに今は、たとえ“記録”はなくても、フライフィッシングの楽しさは少しもスポイルされない、とハッキリと言える

c0041105_23252856.jpg なぜそんな風に思えるようになったのかは自分でもよくわからない
 ただ、あの本谷でのエアポケットに墜ちたような体験…あの数秒こそが、自分自身を縛り付けていた”何か”から解放した瞬間だったのかもしれない


*tackles  
(at KANSA)
rod:Euflex XF 8'02 #2 (Tiemco)
reel:Fates TM-1 (TENRYU)
(at NEBA)
rod:Freestone XT 8'08 #2 (Shimano)
reel:Marquis Silverface #2/3 (HARDY)

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by taros_magazine | 2008-07-18 23:32 | fly fishing diary
夏が来る前に…
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 もう何年も前から、『年末だから…』といって大掃除などしなくなった
 別に部屋が散らかっていようが車が汚れていようが年など越せるに決まっているのだから…

 でも、ことフライフィッシングに関しては、もうずーっと前から『○○の前に△△しなきゃ…』と実践しているコトがある

 それは解禁前に毛鉤を巻くとか、ティペットを新調するというようなごく当たり前の準備とかではなく、それこそやらなきゃやらないで済むようなコトで、しかもやったからといって大した達成感もないようなコトだ

 もう、それを実行する”期限”がギリギリまで迫っていることは明らかだった
 だから平日の朝だというのに向かった先は、この時期のこんな時間にはまず先行者もいなければ魚影もあるかどうかあやしいような藪沢だった

 今にも踏み抜きそうな木造の橋を渡り、朝露に濡れた草木をかき分け土手を降りその沢に降りると、幾筋もの蜘蛛の糸が水面の上に架かっていた

c0041105_23441057.jpg 『ちょっとだけ、遅かったかな…』

 そう、本当は蜘蛛の糸が張り巡らされる前に来たかったのだ
 ティペットを絡めとる蜘蛛の糸、フォルスキャストを許さない生い茂る草木、容赦なくまとわりつき、刺していく虫たち…

 それらによってこの沢がクローズされる前に、ここで釣りをしなければ…それがこの日の、そして自分の夏が来る前の年中行事なのだ

 この沢にはいろんな思い出がある
 上流部の小さなプールでは、漁協のエリアである長野県側から禁漁の愛知県側に向かってキャストし、上流のキャンプ場にある管理釣り場から”密放流”されたレインボーを何匹もキャッチしたこともあった
 ドライブの途中、土手から見ている妻に魚影を指差してもらい、そこをめがけて落としたフライに一発でグッドサイズが飛び出し、2人で狂喜したこともあった

 この日顔を見せてくれたのは、数匹の小型のアマゴだけだったけれども、ここで釣りをしている間中、かつてのいろんな出来事を思い出し、とても穏やかな時間を過ごすことができた

c0041105_23445567.jpg 次に向かったのも、やはりあと一ヶ月もすればキャストはもちろん、歩くことさえままならなくなるような谷だった

 寒狭に残された数少ない天然イワナの棲家…しかし、そこで感じたのはかつてない危機感だった

 いつのまにか川底は堆砂でフラットになり、至る所で伐採された短い丸太が川の流れを不自然に蛇行させていた 
 
 いつも必ず反応があった小さなプールのすぐ上流では、赤土がむき出しになった斜面がV字型に大きく削り取られていた

 それでも、イワナは確かにいた。10センチにも満たないイワナが、今までのどのポイントよりも上流でやっと釣れた…

 もうすぐ夏が来る
 この谷もしばらくの間、釣り人から少しは開放され、そのまま秋を迎えるだろう

c0041105_23452021.jpg そして、その次の夏が来る前…この日流れに戻っていった小さなイワナはどうなっているのだろう…


*today's tackle  
rod:Geroge Selvin Marryat 8'00 #2 (Marryat)
reel:SK-1 (Caps)



【information】
 現在、田口方面から大名倉へ向かう県道が、松戸橋上流で土砂崩れのため通行止めになっています(国道257号線経由で迂回可能です)。
 また栗島川沿いを走る県道も、西川合流点下流付近で工事のため通行止めとなっています(栃洞川~西川ルートで迂回可能です)。
 どちらも6月中をめどに復旧の見込みとのことですが、釣行の際は十分お気をつけください
 (※詳細は設楽町観光協会のサイトの新着情報(6月4日付)でご確認ください)


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by taros_magazine | 2008-06-06 23:31 | fly fishing diary