"without asterisk" (MotoGP 08' Round-14 Indianapolis GP)
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 雨のレースでは、レーシングライダーという者が普段心の奥にしまい込んでいるある種の”葛藤”というものを垣間見ることができる

 些細な操作ミスが、あるいは一瞬の判断ミスが自らの命を奪いかねないこのスポーツの”業”を十分に理解しながらも、並外れた闘争本能と自らの技術に対する自身で限界に挑む彼らが、狭い視界と想定外のマシンの挙動に直面したとき、まるで死神とタンデムしてしまったかのように、心を乱し身体を硬直させてぎこちない走りに陥ってしまう

c0041105_21555978.jpg その時、彼らは転倒しないライディングを心がけながら周回を重ね、チェッカーや赤旗が振られるのをひたすら待ち続ける一方で、ここまで耐えて守ってきたポジションに、あるいは目の前にあるさらに上の栄光に固執する…

 このインディアナのGPをはじめ、4輪のF1イタリアGP、そして先週のスーパーバイク選手権と、週末にテレビで見た3つのレースはすべてウェットレースだった

 F1ではレース開始早々から心が”折れて”しまったドライバーもいた。乾いたレコードラインの奪い合いの中で、濡れた芝生に他のマシンを押し出してでも前に突き進むドライバーもいた

 スーパーバイクでは清成龍一が素晴らしいテクニックで雨を克服した陰で、トロイ・コーサーはレースの中断を訴えるアクションを何度も見せた

 そしてインディアナ…

c0041105_21562672.jpg ニッキー・ヘイデンとのバトルを制し、バレンティーノ・ロッシがトップに立つと、金曜日からこの伝統あるレーストラックを悩ませ続けてきたハリケーンがまたもや牙を剥いた

 スタンドに近いセクションではゴミが飛来し、インフィールドでは折れた木の枝が舞っていた
 仮設のホスピタリティブースは崩壊し、暴風にあおられたクラッシュパッドは風船のように激しく揺られていた

 レースの継続はロッシの”左手”にかかっていた
 彼が左手を軽く挙げれば、それで念願のタイトルに王手をかける4連勝と25ポイントが転がり込んでくることは容易に推測できたからだ

 しかし、彼の左手は最後までハンドルバーを握ったままだった
 序盤から何度もマシンが真横を向くようなスライドを味わいながらも、彼はレースオーガナイザーが赤旗を提示するその瞬間まで戦い続けた

c0041105_2157982.jpg もしかしたら、それは賢明な判断ではなかったかもしれない
 むしろ新しく舗装し直された路面や悪天候の原因を考えれば、彼は左手を挙げるべきだったのかもしれないし、彼自身ですら走りながら赤旗を願っていたという

 それでも彼が自らレースを終わらせようとしなかったのは…
 それは彼のプライドにほかならない

 2006年、『度重なるロッシのマシントラブルがあったから…』
 2007年、『ブリヂストンタイヤの圧倒的パフォーマンスのおかげで…』

 MotoGPクラスの創設以来ロッシが全霊を捧げて守り続けた”王座”は、皮肉にも彼が失ったことでさまざまな”アスタリスク”を付されてしまった

 しかし今、再びその座に返り咲こうとしている彼は、そんな”注釈”を抜きにした純粋で美しいタイトルを欲しているのではないだろうか?

c0041105_2159383.jpg そのためにも、このアメリカンモータースポーツの聖地で、そこに集まった目の肥えたファンに、バレンティーノ・ロッシという”王者”の存在をその目と記憶に刻みたかったのではないだろうか

 この日、ロッシが吹き荒れる嵐の中でさえも必死に守ろうとしたその”完全なるタイトル”は、まもなく海を越えてこの日本の地で完結することになる

 その時、日本のファンが目にする”チャンピオン”バレンティーノ・ロッシの姿は、いつもの笑顔なのか、それとも…


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by taros_magazine | 2008-09-16 22:15 | motorcycle diary


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