four seasons
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 どこへ行くとも決めず、ただ何となく釣りがしたいという気持ちで車を走らせると、大抵の場合いつも同じ場所にたどり着く

 そこは、何時間も高速道路を走ることになる石徹白や忍野ではもちろんない
 思い入れの強い大名倉でも、魚がどこにいるかほとんどわかっている根羽の小川川でもない

 茶畑に囲まれた小さな集落を抜けると見えてくる、古びた橋と青い欄干…そのたもとにある公民館横に車を止め、7月よりもずっと濃くなった緑の中で深呼吸をする

 栃洞川は何の変哲もない、ごくありふれた小さな支流だ

c0041105_2241446.jpg 段戸の原生林を水源とするこの流れは、雨の後でも濁りを気にすることはほとんどない
 早春からドライの釣りを楽しむことができ、時には思いもよらない大物に出会えたりする…そんな飾らない普段着の釣りが似合う渓だ

 だからここでは、息を詰めてライズを狙うような釣りではなく、ただのんびりとフライを流し、魚が遊んでくれるのを待つような感覚で過ごすことが多い

 この日は魚たちもリラックスしているのか、いくつものポイントで大らかに水面を割って出てきた
 25センチはあろうかというアマゴをバラしたのはご愛嬌だったが、最初の堰堤までの短い区間を、いつもよりもゆっくりと釣り上がっていった

 風景が一変したのは、その堰堤を越えてからだった

 いや、正確には見た目はそれほどいつもと違ってはいなかったのかもしれない
 ただ、底に沈む葉っぱの筋まで見えるほど透明なプールや頭上を覆う緑のトンネルが創り出すいつもの“癒し”の景色が、この日は妙に殺伐としたものに感じられたのだ

c0041105_222291.jpg 原因はすぐにわかった
 そのプールの横のスペースには、何カ所もの黒々とした焚き火と乗り入れた車の跡、そして付近にはゴミが散乱していた

 川原に残された、夏休み、そしてお盆休み明けの“名物”…それまでの反応が幻だったかのようにパッタリと途切れてしまった魚の反応に、自分が渓から遠ざかっていたこの1ヶ月余りの間に進んだ季節を痛感した

 キャッチ&リリース区間でもなければ、フライ専用区でもない寒狭上流…ましてやアクセスの容易なこの流れで、シーズンを通じて楽しめることの方がもしかしたら異常なのかもしれない

 5月には何匹ものアマゴがライズを繰り返していた二股手前のプールに群れるカワムツの姿を見て浮かんだのは“限界”という言葉だった

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 その釣行から10日ほどが過ぎたある夜、とあるブログを見ているとあの支流での釣行の様子が記されていた
 ひとしきりコメントを入れ、そしてパソコンの電源を落とし、遅い食事をとりながらも1つのことが頭から離れなかった

 『さっきのアマゴの姿…あれはもしかして…』

 どうしても気になり、ふたたびパソコンに向かい、そして目にしたアマゴ…その体型、パーマーク、そして朱点…それがハードディスクに保存されていたあの日自分が釣ったアマゴとまったく同じだとわかった瞬間、震えるような感動がこみ上げてきた

 あの流れで昨年からいくつもの季節を過ごしてきたであろうあのアマゴは、きっと何人もの釣り人に笑顔をもたらし、そしてその釣り人たちにより再び渓に戻されてきたのだろう

 そして今、過ぎゆく渓流シーズンを前に、このような形でその“生”を目にしたことが、あの日ネットにおさまった姿を見たときよりもはるかに嬉しかった

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*special thanks
"スマイル Days"(by Mr.まっす~)

*today's tackle  
rod:Geroge Selvin Marryat 8'00 #2 (Marryat)
reel:CT 2/3 (Redington) 

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by taros_magazine | 2008-09-10 22:25 | fly fishing diary


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