間合い (MotoGP 08' Round-10 Deutschland GP)
c0041105_21461336.jpg
 2人の間には5台のマシンが並んではいたが、2人はおそらく互いのことしか頭になかっただろう

 グリッド上のバレンティーノ・ロッシは、これまでテレビカメラの前ではほとんど見せることのなかった厳しい表情で2列前にある赤いマシンを凝視していた
 そしてその赤いマシンの傍らでは、ケーシー・ストーナーがロッシのマシンが纏っているタイヤに視線を飛ばしていた

 圧倒的な速さでもぎ取ったポールポジション。しかし、ほんの一瞬でその全てを失いかねないほどのバッド・コンディションになってしまった決勝レースを前に、ストーナーの緊張感は極限まで高められていた

 一方のロッシもまた、予選で見せつけられたケタ違いのスピードを帳消しにする千載一遇のチャンスともいえるヘヴィ・ウェットのトラックの中で、集中力を極限まで高めて力を出し切ろうとしていた
c0041105_21464345.jpg
 そんな2人の精神状態を弄んだのは、ポイントリーダーのペドロサだった
 
 6ラップ目のストレートエンドで彼がクラッシュパッドまで猛スピードで滑っていくのを目撃した2人は、攻めるべきか守るべきかの判断を迫られることになった

 先に決断したのはロッシだった
 彼は川のようなコーナーでコーリン・エドワーズのインにマシンをねじ込むと、彼にしかできないスロットルコントロールでさらに加速し、翌周には続けざまにドヴィツィオーゾをも抜き去り、ストーナーの追撃態勢に入った

 ストーナーの決心もまたロッシと同じだった
 ロッシの間合いである“接近しての乱打戦”に持ち込まれる前に、彼の間合いである“3秒前後での神経戦”で勝負をするべく、さらにペースを上げてみせた

 彼らよりペースの遅いライダー達が次々とグラベルの餌食となり、レインマスターと呼ばれるライダー達ですら割ってはいることの出来ない2人だけの静かなるバトル…
 “最速”の称号を争う2人は、この最悪の路面状況の中でバイクを操る技術、すなはち“巧さ”を競い合うようにファステストラップの叩き合いを見せた 

 しかし最後にリザルトを分けたのは、やはりペドロサのクラッシュだろう
c0041105_21482155.jpg
 最悪の予選の後の2位、そしてポイントリーダーの座に返り咲くという“当面の満足できる成果”を得ることが出来るロッシと、わずか3週間前まで50ポイント先にあったチャンピオンシップに、“1レース”差まで一気に詰めることができるストーナー…

 どちらが“勝ちにいくべきライダー”であるかは、トニ・エリアスの空虚な激走がロッシのタイムと集中力を失わせる以前にすでに明らかだった
 
 またしてもストーナーの間合いで勝負してしまったロッシ…
 一週間後、ラグナセカのグリッドに立つ彼の表情は、今回よりもさらに険しく、鬼気迫るものになるかもしれない

 そして、その彼と対峙することとなる若きディフェンディング・チャンピオンは、カリフォルニアのローラーコースターコースでも自らの間合いで走り続けることができるのか?

 2人のバトルは、他のすべてのライダーを置き去りにして、さらに高いステージへと向かっていく…

c0041105_21473764.jpg



taro's magazine mainsite …
[PR]
by taros_magazine | 2008-07-15 21:51 | motorcycle diary


<< 呪縛 "Fear the ... >>