" I´m sorry for him, but happy for myself "(MotoGP 08' Round-6 Italian GP)

 よく『レースにアクシデントは付き物だ』と言うセリフを聞く
 そして、ある一面でそれは正しいと思う

 ただ、”アクシデント”と呼ばれるものは、モータースポーツのレースに限らずどんなスポーツにも伴うもののはずなのに、ことモータースポーツに関してこの言葉が用いられる時、自分は何とも言えない嫌悪感を抱かずにはいられない

 モータースポーツにおけるアクシデント…それは多くの場合、マシンの破片が散乱する現場であり、ライダーが路面に叩き付けられるシーンだ
 そして、その”不測の事態”と言うにはあまりにもシリアスなその瞬間は、間違いなくそれ自体が悪夢である
 
 しかし、レースにとっての真の悪夢は、起きてしまったその出来事が”アクシデント”という言葉で免責されるのだ、という考え方にあるのではないだろうか?
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 その身も凍るような”アクシデント”が起きたのは、250ccクラスのレースが最終ラップを迎えようとしたホームストレートだった
 ストレートスピードに勝るエクトル・バルベラにスリップストリームに入られるのを嫌ったマルコ・シモンチェリは、マシンが今まさにトップギアに入ろうかという瞬間、マシンを勢いよく左に振った

 その時、スリップから抜け出し、彼の左側からパスしようとしていたバルベラのフロントまわりと、シモンチェリのマシンが接触した

 フロントをロックさせ、縦回転して一瞬のうちに大破するバルベラのマシン、コース脇のフェンスに向かって弾かれていくバルベラ、そして凍り付くムジェロサーキット…

 自力で立ち上がったバルベラの姿を見た時、この”アクシデント”が”悪夢”たり得なかったことに安堵できるはずだった
 しかし、その後で国際映像に映し出されていたものは、起きてしまった”アクシデント”と同様か、もしくはそれ以上に見たくない光景だった
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 接触時の挙動、さらにはストレートで後ろを振り返り、何が起きたかを把握していたはずのシモンチェリは、派手なウィリーと大きなガッツポーズでチェッカーを受けた。大破したバルベラのマシンのすぐ横で…

 さらにバーンナウトとシャンパンファイトで初優勝を満喫した後、インタビューで開口一番『最高の日だ』と切り出し、バルベラとの接触については『申し訳ないとは思うけど、自分はハッピーだ』と言い切った

c0041105_23314333.jpg スリップに入られたくないライダーと、少しでもスリップを有効に使いたいライダーが接触してしまうことは、”レース”が順位を争うものである以上、起こりうることだろう

 でも、”レース”だからこそ、モータースポーツだからこそ、その起きてしまった”アクシデント”に対して、リザルトやファンサービスよりも大切にしなければいけないことがあるように思えてならない

 バレンティーノ・ロッシがこの日、地元で会心の勝利を飾った後、バーンナウトもいつもの大仕掛けなファンサービスもせずに足早にピットに戻ったのは、何も熱狂する観衆に取り囲まれることを恐れたばかりではない

 それは、今彼が最も大切にしている”チーム”のために、勝利の喜びとマシンのデータを一刻も早く届けようと考えたからだろう

 同じように地元で勝利を飾ったシモンチェリにも、派手なパフォーマンスをする前に、するべきことが、あるいは思いをめぐらせなければならない事があったのではないだろうか?

c0041105_23324411.jpg ニューヒーロー誕生を祝うはずのウィニングラン…
 しかし、勝利を決定付けた”アクシデント”が場内のモニターに何度もリプレイされるにつれ、歓声と拍手が少なくなっていったことに、はたしてシモンチェリは気づいたのだろうか?


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by taros_magazine | 2008-06-02 23:01 | motorcycle diary


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