Reconquista (motogp 08' Round-4 CHINESE GP)
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 その瞬間、彼と彼のマシンを包む空間だけが、時間を超えたように見えた

 16ラップ目の後半セクション、長いストレートに向かう手前のコーナーにさしかかったバレンティーノ・ロッシは、それまでよりも明らかに低い姿勢で、そして早いタイミングでスロットルをひねった

 そのロッシを包む空気の変貌を、彼の真後ろで仕掛けるタイミングを計っていたダニ・ペドロサも、瞬時にその本能で感じ取った
 残りラップ数は5周以上…しかし、ダニにとっての勝負所はもう”そこ”しか残されていなかった
 もし”そこ”で捉えることができなければ…結果は…
 
c0041105_23572594.jpg その数ラップ前まで、ダニはストレート区間では敢えて並びかけることをせず、ロッシのブレーキング・スキルを解析していた

 これまで何度となく煮え湯を飲まされてきたロッシとのブレーキング勝負…
 しかし、今のロッシ相手なら、今年のマシンでなら、そして何より今の自分なら…そう信じて選んだ勝負所のストレートエンドで見せた渾身のハードブレーキング…

 グランプリ最強の”ブレーキ・キング”ロッシの背中に触れることができそうな距離までは迫った。でも、そこまでだった

 前を行くロッシと追走するダニ…2人はその後しばらくの間、わずか数メートル、時間にしてコンマ5秒ほどの距離でエキサイティングなレースを”演出”してはいたが、それはダニが見せた最後の”意地”の成せる技でしかなかった…

 バックファイヤーを噴きながら逃げていくロッシの姿…それは、2006年に何度も見せつけられた”最強最速の王者”の姿と寸分違わぬものだったろう

 しかし、ロッシ自身には大きな変化があった

c0041105_012796.jpg  これだけのパーフェクトなレース、そして勝利を手にしながらも、彼は派手なパフォーマンスを一切しなかった

 チェッカーこそウィリーとガッツポーズで受けたものの、すぐにコースサイドにマシンを止め、フロントカウルにキスをし、穏やかな笑みを浮かべながらゆっくりとウィニングランをするロッシ…

 その手に握られていたのは、イタリア国旗ではなく『46』と染め抜かれた黄色いフラッグだった

 きっと、今の彼が伝えたいコトの全てが、このフラッグに凝縮されているのだろう

 ささやかれる限界説に対して、タイヤメーカーの選択をめぐる批判に対して、そして自分を踏み台にしていこうとする若きライバル達に対して、ロッシは黄色いフラッグの下で高らかに宣言したのだ

 『オレがバレンティーノ・ロッシだ!』と…
 
 インタビューの最後に、『これからは自信を持ってチャンピオンシップを獲りに行く』と言い切ったロッシ
 
 そう、バレンティーノ・ロッシは、この日の16ラップ目から、失ったモノを奪い返す旅に出たのだ
 
 いつのまにか”ロレンゾ王国”になってしまった土地を、ニッキー・へイデンが、ケーシー・ストーナーが持ち去っていった王冠を、そして失いかけていた自信と誇りを再びこの手に取り戻すために…

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by taros_magazine | 2008-05-04 23:56 | motorcycle diary


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