Heaven's Door
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 豊橋方面から寒狭川上流漁協管内のフィールドへ向かうとき、大抵は稲目トンネルを通ることになる

 かつて鉄道専用だったこの長いトンネルを抜けるとそこには寒狭本流が横たわり、そこで信号を左に折れても、あるいはそのまま直進しても、アマゴやイワナが棲む支流群がそこから先には広がっている

 そのトンネルを抜けるときの感覚をどう表現すればいいのだろう?
 暗く長い闇を抜け、目映いばかりの光を放つ世界に飛び込んでいく瞬間…

 それは、臨死体験をしたと称する者が語る”天国”へ向かう瞬間のようなものなのかもしれない
 あるいは、「もしかしたら皇室に伝わる”人から神”に変わる儀式がこういうものなのかもしれない」とさえ思えてしまう

 寒狭上流での今シーズン最初の釣行となったこの日も、”俗世”と”パラダイス”を隔てるこのトンネルを抜けてやってきた

 トンネルを出てすぐのポイントを眺めると、古い橋からは餌釣りのおじいさんが糸を垂らし、上流のプールではルアーマンがキャストを繰り返していた

c0041105_2253819.jpg いつもと変わらないのどかな光景…しかし、その穏やかな気持ちは川原へ降りて一変した

 食い散らかされたコンビニ弁当のパッケージと、明らかにゴミを燃やした焚き火の跡、そして無惨にうち捨てられた魚の内臓…
 3日前の解禁日は、寒狭中部で使うものと同じフライをくわえた数匹のシラメだけでなく、この”パラダイス”には到底不釣り合いな”俗物”をもたっぷりと残していた

 ふと、昨年のこの時期に見た支流の釣り荒れた姿を思い出した 
 この日トンネルを抜けてやってきたのは、本当に”パラダイス”なのか、それとも… 
 ところどころに雪の残る川沿いの国道を走り、上流部の堰堤に向かった

 そこで見たものは意外な光景だった
 堰堤上のプールはほぼ全面が氷結し、その下のポイントはおそらく堰堤からはき出された堆砂ですっかり浅くなってしまっていた

 無駄とはわかっていながら、魚影のないプールでミッジをキャストし続けた
 でもやっぱり、何も起きなかった…

 トンネルの先にあったものは、”天国”でも”パラダイス”でもなかった
 確かにそこは時々夢のような気分にさせてくれるけれど、それは神から与えられたものでも、天から降ってきたものでもない

c0041105_22542125.jpg そこにあるのは、厳しい自然とそこに住む人の生活、そして漁協や釣り人の行為がもたらした現実なのだ

 それでも、また今度フライロッドを積んでこのトンネルを走り、出口の光が見えたなら、自分はきっと高揚してしまうだろう

 ここでフライフィッシングができなくなるその日まで…


*today's tackle  
rod:Rightstaff 8'10 #2 (CFF)
reel:Marquis #2/3 (HARDY)

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by taros_magazine | 2008-02-25 23:04 | fly fishing diary


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