小さな村の小さな漁協

 自分が初めて購入した年券は寒狭川上流漁協のもの、そしてその次が岐阜の宮川下流漁協のものだった

 当時、片道でたっぷり4時間かかった旧河合村までの道程…それでも、モンカゲロウのスーパーハッチと圧倒的な濃さを誇る魚影に魅せられ、夜明けからイブニングまで竿を振り続け、最後に温泉に入って帰る…という、タフな日帰り釣行を5月末から9月の禁漁まで間、何度も繰り返した

c0041105_22281666.jpg その一方で、寒狭上流からわずか峠を一つ越えたところにある小さな漁協の管内には、何故か足が向かなかった

 県道や国道に沿って流れる小さな渓…それは、自分にとってはフライフィッシングを始めるよりずっと前から、バイクで何度も何度も走った場所だったせいか、『釣りをするところ』というよりも、『缶コーヒーでも飲みながら休憩する場所』というふうに見ていたのかもしれない

 『釣りをしたことのない川に行ってみたい…』 
 そう思ったのは、北海道を1週間ほどかけて釣って回った遠征から帰ってきた翌週のことだった
 そして、いつもバイクで走る茶臼山の周辺の、のどかでどことなく北海道に似た雰囲気の景色が頭に浮かんだ 
 
 写真も要らない、そして3500円という”破格の安さ”の年券に少々拍子抜けしながらも、国道のすぐ脇を流れるごく普通の里川に入った

 この地域特有の白っぽい川底と未熟な技術のため、いつも寒狭川で使っていたエルクヘアカディスを何度も見失いながら、やっと手にした最初の1匹…それは、その川底と同様に色白で朱点の美しいアマゴだった

 それ以来、自分のフライベストの背中には、毎年寒狭上流と根羽川の年券がブラ下がっている

c0041105_22283147.jpg クーラーボックスを抱えた釣り人が何人か入れば、たちまち魚影が消えてしまうような小さな村の小さな漁協管内での今シーズン初釣行…
 いつになく不安な気持ちで迎えた遅い”根羽川解禁”だったけど、それは杞憂に終わった 

 大型トラックが100キロ近いスピードで走り去っていくすぐ脇で、あの日と同じ色白の美しいアマゴが何度も飛び出した
 民家の軒先を流れる細い筋では、いつものように悠々とライズを繰り返す良形のアマゴの姿があった

 そんな9ヶ月ぶりのこの川での釣行は、あの北海道帰りの日のように新鮮で印象的なものだった…

 東海豪雨の後遺症のため両岸はキッチリと護岸され、最上流部ですらドライブインや別荘地が林立する根羽川
 そこには、かつての小鳥川のようなスーパーハッチや濃密な魚影もなければ、道東の河川のようなバイカモもクレソンももちろんない

 でもそこに立つだけで、不思議とリラックスした気分でゆったりと釣りができるのは、きっとその渓自体が、無理に飾らない、ありのままの姿だからなのだろうと思う

 そして、その渓が流れる小さな村の小さな漁協は、”ありのまま”でいることの素晴らしさを、その小振りながらも抜群に美しいアマゴを通じて教えてくれているのかもしれない

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*today's tackle
rod:Rightstaff 7'10 #2 (CFF)
reel:TR-L (Abel)

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by taros_magazine | 2007-06-21 22:20 | fly fishing diary


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