"Crazy Hour" (MotoGP 07' Round-7 Catalunya GP)
 
 目の前で繰り広げられていたのは、にわかには信じがたい、壮絶なバトルだった

 1988年、鈴鹿8耐。各組のエースが一斉にスタートした最初のセッションで、この鈴鹿で絶対的な強さを誇る前年の世界GPチャンピオン、ワイン・ガードナーが、8耐初参戦のライダーにキリキリ舞いさせられていた

 S字で、デグナーで、そしてスプーンで…”帝王”ガードナーがまるで”1時間のスプリントレース”のように、何度となくその意地とプライドを賭けて仕掛けてくる猛攻を、彼は真っ向から受けて立ち、そして力でねじ伏せるように常に先行してペアのケビン・マギーにマシンを託した…

 翌年の鈴鹿の世界GPで伝説のドッグファイトをケビン・シュワンツと演じることになる彼=ウェイン・レイニーは、このたった1時間のセッションで8耐に君臨する王者…ガードナーとRVF…を玉座から引きずり落とし、世界GPでの”序列”までも覆してしまったのだった

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 この日のカタルニアでも、そんな”序列”の崩壊を見た思いがした

 本気で勝ちに行き、その方程式の答えが見えるところまでたどり着きながら、MotoGP参戦2年目の21歳のライダーに力負けしたバレンティーノ・ロッシ…

 そしてこれまで最高峰のタイトルを独占してきたミシュランタイヤ、モーターサイクルレースの巨人ホンダ、さらにはヨーロッパやアメリカからやってきたレーシングエリート達…
 
 その全てが、ケーシー・ストーナーというライダーがこの日見せた1時間弱の走りによって、これまで築き上げてきたモノを狂わされ、そして音を立てて崩れていってしまったかのようだった

c0041105_063476.jpg ロッシは努めて冷静を保ち、シーズンの終着点に目標を切り替えることで、この”狂った時間”を何とか受け入れようとした

 ペドロサはいつものポーカーフェイスすら取り繕うことが出来ず、『自信はあったのに、ペースが速すぎて見ていることしかできなかった…』と思わず弱音を漏らすほど心理状態を”狂わされて”いた…

 そんな中、”狂喜”していいハズのストーナーだけが、自分をしっかりと取り戻していた

 パルクフェルメでヘルメットを脱いだ彼の目からはレース前の不安げな表情は霧散し、これまでにないほど強い自信と決意が見て取れた
 彼はこのおよそ1時間で、自らがMotoGPのチャンピオンとしてふさわしいライダーだという確信を得て、そしてそれを絶対に獲得するという決意を持ったのだろう

 
 あの8耐の翌週、ウェイン・レイニーはイギリスGPで初勝利を挙げ、翌年にはランキング2位を、そしてその翌年以降3年連続のチャンピオンとなった

 次のグランプリは、くしくも英国・ドニントン…

 世界中のレースファンや関係者は、そこで今シーズン…いや、今後数年の展開を見ることになるのかもしれない
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by taros_magazine | 2007-06-11 00:26 | motorcycle diary


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