「次、頑張ろう」(MotoGP 07' Round-5 French GP)
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 1990年シーズン、250ccクラスはジョン・コシンスキーとカルロス・カルダスの2人による熾烈なタイトル争いが最終戦までもつれていた
 その時点でのランキングトップ、カルダスは1年の集大成とも言える走りで悲願のタイトルへ向けてシフトアップしようとした…

 そのとき、信じられないトラブルが彼を襲う
 何と、シフトペダルを繋ぐロッドが外れてしまい、ギアチェンジができなくなってしまったのだ

 為す術もなく後続のライダーにかわされた彼は、固定されたギアでピットロードに滑り込むと、ピットレーンで待っていたメカニックをはね飛ばさんばかりの勢いで後輪をロックさせ、シフトペダルを指さしながらひとしきり叫んだ後、マシンを放り投げるようにメカニックに預けてピットの奥へ去っていった
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 確かに、彼は自らには責任のないミスにより、タイトルを失うという悲劇を味わった
 確かに、そのミスは世界のトップを争うチームにはあってはならないものだった

 でも、そのシーンを目にしたとき、自分はカルロス・カルダスというライダーに激しい嫌悪感を抱いた
 『スタッフのおかげで勝ったコトだってあるだろうに…』と…


 レース途中から激しい雨に降られてしまったこのフランスGPは、『レースは走っているライダーだけが勝負しているものではない』ということを改めて感じたレースだった
 
 限られたタイヤからベストのものをチョイスするスタッフ、一度も試していないレインセッティングを出すメカニック、そしてモニターに映し出されるライダーの走りに一喜一憂するチーム… 
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 そんなチームスタッフの努力を知っているからこそ、これまで抜群の速さを見せてきたストーナーが3位でも笑顔を見せ、何度も優勝を経験しているメランドリが2位でもガッツポーズを繰り返し、そして6位でフィニッシュしたバレンティーノ・ロッシでさえも安堵の表情を浮かべたのだろう
 
 めまぐるしく変わる難しいコンディションの中、チームは最後まで走りきったライダーを拍手で迎え、ライダーもまたスタッフの努力に敬意を払う…そんな美しい光景が随所に見られたこのル・マンで、一際印象的だったのが125ccクラスでの出来事だった

 トップ走行中、残り5ラップというところでまたもやマシントラブルによるリタイヤを余儀なくされたマティア・パシーニ…

 チームクルーが顔を覆う姿が映し出される中、力無くマシンをウォールに横たえピットに戻る彼の姿を見たとき、90年のカルダスのことが頭をよぎった。しかし…
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 ピットウォールを乗り越え、スタッフに歩み寄った彼がとった行動は、穏やかに笑みを浮かべ、スタッフ一人一人と抱き合い、握手をしながら言葉を交わすというものだった 

 そのシーンを見たとき、今度はカルダスのことではなく、4輪の国内レースでの出来事を思い出した

 同じようにトップ走行中に、ピットインの際のメカニックの不手際によるタイムロスのため勝利を逃した彼は、レース後目を赤くして詫びにきたメカニックにこう言ったという
 『いいよ。次、頑張ろう』

 その後、彼…本山哲は、国内で”絶対王者”とまで呼ばれるドライバーとなった
 
 メカニックとの絆を一段と強いものにしたパシーニは、”ライダーだけが勝負しているものではない”この世界で、さらなる力を得たはずだ
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by taros_magazine | 2007-05-21 00:21 | motorcycle diary


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