報い
 
 寒狭上流の解禁日…毎年その日、決まって天に祈ることがある
 『どうか大雨が降りますように… ガンガンに冷え込みますように… 』

 この管内では、解禁初日はフライ(ルアー)は禁止となっている
 ところが今年は”フライ・ルアー専用区”なるものが設置されると聞き一瞬腰が浮いたが、その内情…前年に禁止の件を知らずに入漁券を購入し、釣ろうとしたルアーマンが他の釣り客および漁協とトラブったための緊急避難的対応…を知り、やはりいつものように自宅でテルテル坊主を逆さ吊りして過ごすことにした

c0041105_194174.jpg そして解禁日は見事に雨だった
 前日から三河山間部に降り続いた雨は、保水力の乏しい山林を駆け下り、濁流となって寒狭上流に流れ込んだ
 前日に河原に突き刺さっていた何本もの”場所取り棒”もあっけなく流され、大増水した本流での釣果は非常に厳しいものだったと地元紙は報じていた

 この結果に、自分は手放しで喜んだ
 リリース派が圧倒的に少ない東三河のこの渓では、大勢の釣り人がクーラーボックスを抱えて集まってくる解禁初日の天候が、その後9月末までの釣りを大きく左右する”はず”だからだ
 
 自分の性格の悪さに呆れながらも「これで今年は良い年になる…」と思っていた。この時までは…

 解禁から2日後、選んだポイントは増水の治まった本流区間だった
 ここ数年、橋から確認できなかった魚影が、この日はいくつも見えた。フッキングこそしなかったものの、ファーストキャストでアマゴが出迎えてくれた

 何度かの惜しいやりとりの後、およそ5ヶ月ぶりに寒狭上流のアマゴをキャッチした
 至福の瞬間を迎えたはずだったが、やや銀化したそのアマゴの表情はとても怒っているように見え困惑した

c0041105_191159.jpg 理由はすぐにわかった
 
 すぐにフライを外したはずのそのアマゴの口には、別の鉤が残されていたのだ
 フォーセップで外そうとしたが途中で折れてしまい、結局完全には外せないままリリースしてしまった
  
 気分を変えようとお気に入りの支流に向かった
 ところが、入渓して様子がおかしいことに気づいた
 水量も透明度も相変わらずなのに、何かが違う…

 それは魚の気配だった
 
 小さいながらも、イキの良い美しいアマゴが春先からドライに反応してくれるはずのこの渓に、まったく魚の気配がないのである

 いつも何匹もがクルージングしている浅いプールも、完全に釣り人をナメきって定位している木の下の淵にも魚の姿はなかった

 そのとき、解禁日の様子を報じていた新聞記事の一節を思い出した
 『増水した本流を避け、支流を選んだ○○さんは好釣果を…』

 
 やがて、ネット上でも寒狭上流での釣行記がアップされだした
 そのどれもが”支流”や”上流部”での釣果を誇らしげに掲載していた
 中には、腹を割かれたピレピンの小型アマゴをプラケースに山盛りにした画像もあった

 猛烈に腹が立った
 小型アマゴまでもキープする釣り人に…ではなく、解禁日の雨を、増水を願い、そして大喜びしていた自分に…

c0041105_110261.jpg 結局、悪天候は成魚放流のない支流や自然繁殖で種を保っている上流部へ”キープしたくてたまらない釣り人”を誘導しただけだったのだ
 そして、ここで10何年も釣りをしていながら、そんなことにすら自分は気づいていなかったのだ…

 この支流に魚影が戻ってくるまでどれくらいの時間がかかるのか?もしかしたら、もう二度とそんな時は来ないんじゃないだろうか?
 解禁日、多くの釣り人の不幸を願った”報い”がこれなのだろうか?

*today's tackle
rod:"fujimaki"Special 8'07 #3 (Factory Haru)
reel:Halcyone baby trout (KIRAKU)

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by taros_magazine | 2007-02-24 01:14 | fly fishing diary


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