魔力
c0041105_1661760.jpg
 水中を漂うフライを目がけて突進してきたレインボーが、その口をかすかに開いたのが見えた
 交差するレインボーの航跡とフライの流筋…軽く返した右手には、ほんの一瞬の間をおいて#5ロッドから強烈な重さが伝わってきた

 こんなふうに魚がフライを見つけ、フライに向かってきて、そして食いつくまでの一部始終をすべて味わうことのできるサイトフィッシング…それは7月末の忍野以来の快感だった

 あの忍野での釣りは、まさに”魔法”にかかったかのような1日だった
 日頃、小さな渓流で、特にライズを見つけるわけでもなくめぼしいポイントを見つけては叩き、何時間も歩き続けて魚が水面に飛び出してくるのを待つような釣りをしている自分にとっては、魚が目の前にいて、それが当たり前のようにフライを口に入れる瞬間を目撃するというのは鮮烈な体験だった

 実は、自分は初めて釣ったアマゴがどんなふうにフライに食いついたのかを覚えていない。 いや、正確には見えていなかったのだ

c0041105_1664061.jpg 大きな石の陰からキャストしたエルクヘアカディスは、自分としては会心のドリフティングを描いていた
 やがてその大きな石の向こうの死角にフライが入り、それをのぞき込もうとしたときにフライが”消えた気がした”のである
 そして”合わせる”とも”ピックアップ”ともつかない中途半端な気持ちで持ち上げたロッドからプルプルと小気味よい振動が伝わってきた…そんな初アマゴ(その頃はそれが”アマゴ”ということさえも知らなかった)だったのだ

 もし、ビギナーの頃からライズを狙うような釣りをしていたり、オフシーズンを管理釣り場で過ごすような生活をしていれば、今さらのようにサイトフィッシングにこんな衝撃を受けることはなかったのかもしれない
 しかし、あの忍野の帰り道では、円錐形のモノ、菱形のモノ、細長いモノ…とにかく魚に類似した形状のモノすべてが、あの湧水の流れに漂うトラウトの幻影に見えてしまうほどのインパクトだった…

 この日訪れた段戸湖は、原生林の中を流れる渓流を水源とするダム湖すべてを管理釣り場とした美しい山上のフィールドである
 そして、そこにはあの日忍野で目撃した中で一番大きなサイズの魚クラスのトラウトが目の前に何匹もいた

c0041105_1682516.jpg そして、その中の1匹…かすかに口を開きフライを引ったくっていったレインボーが、#5ロッドに強烈な振動を伝えてきたとき、もうとっくに”解けた”と思っていた”魔法”がまた蘇ってしまった…
 
 かつて体験したことのない力強いファイトも、ネットからはみ出して横たわる迫力に満ちたレインボーの表情も、一夜明けた今はもう思い出せない

 しかし、あの瞬間…フライとレインボー、それぞれのベクトルが衝突するシーンだけは、鮮明に網膜に焼き付いている
 そしてそのシーンを反芻するとき、何故か歓喜や興奮というものよりも、妖しく危険な感覚のようなものに身を包まれるのである
 
 そんな得体の知れない感覚…それこそがサイトフィッシングの”魔力”なのかもしれない
 そして、そんな魔力に取り憑かれてしまったのは、もしかしたら、あの日初めての1匹のシーンを見逃してしまった自分の”トラウマ”のせいなのかもしれない


*other side …
輝ける沢の辺で』(by Mr,Rise)
大好き!管理釣り場』(by Mr,sammy)
釣り三昧・猫三昧』(by Mr,NENEKO)
アマゴ釣りの憂鬱』(by Mr,M's)

*today's tackle  
rod:"fujimaki"Special 8'06 #5 (Factory Haru)
reel:Halcyone Trout (KIRAKU)

 taro's magazine mainsite … 
[PR]
by taros_magazine | 2006-10-15 16:10 | fly fishing diary


<< "straight ... フィナーレ (F-1 2006... >>