正体
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 この日の寒狭川では、どこからでも魚が出た
 瀬、渕、流芯、巻き返し…とにかく、思ったところにフライを落とすことさえできれば、必ずと言ってよいほど飛沫が上がった

 もちろん、この時期の寒狭川支流ではサイズなど望むべくもない
 でも、こんな里川でもしっかりと”サビ”た魚体のアマゴが至る所で顔を見せてくれること、そして小気味よい引きがいたるところで堪能できることは、正直意外だった

 ここまでの道中、めぼしい入渓点付近はどこも釣り人のものと思われる車が止まっていた
 中にはイブニングを待っているのかウェーダーを履いたままドアを開けて昼寝をしている人の姿も見られた
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 久しぶりに入ったお気に入りの支流でも、夏休みの残骸が散らばっていた
 炭や花火の燃えかす、焼けこげた河原の石…そんな風景の中で、次から次へと飛び出してくるアマゴたち…そのけっして大きくない身体に秘められた本能と、散りばめられた秋の色に、気がつくと敬意にも似た感情を抱いていた

 やがて目の前に小さな堰堤が現われた
 そこには、去年の同じ時期、尺クラスの大物を取り損ねたポイントへとつながる流れがある

 波紋を立てないようにそっと岸際を歩き、腰をかがめ、そして覆い被さった木の枝を縫うようにサイドキャストでフライをその流れに送り込む…

 「きた!」
 一瞬、大きな銀色の魚体が反転するのが見えた
 呼吸を整え、もういちど慎重にプレゼンテーションすると…今度はしっかりフッキングした

 しかし、水面下に見える魚影は残念ながらさきほどのものより一回り小さいようだった
 それでも細いロッドから伝わってくる激しい抵抗…「何かが違う」と直感した

 ランディングネットに納まったのは、7~8寸の丸い尾鰭の、この支流では初めて見る”レインボー”だった
 
c0041105_21223924.jpg このとき、昨年からこの流れで追いかけていた”尺”の正体を知った

 適度な深さ…泳ぐにも、水遊びにも…の渕と、10数人分なら十分にキャンプやバーベキューのスペースがとれそうで、道路からそのまま下りることが可能な河原…
 夏休みを利用し、近隣の街から訪れた子供会や町内会が、この渕でニジマスつかみ取りや釣大会を催しても何の不思議もないようなところなのだ

 毎年、決まって8月後半になるとこの渕に現われる大物…解禁から半年以上経過したこの時期に、真っ昼間からドライフライに反応する尺モノ…

 その正体を知ってしまったことは、自分にとって良いことだったのか、それとも…

 でも、ただひとつ言えることは、このレインボーに罪はない、ということだ
 だからいつもと同じようにフックを外しリリースした。レインボーは丸い尾鰭を踊らせて何事もなかったように流れに帰っていった

 あのレインボーは冬を越すことができるのだろうか…もし、春まで生き延びたとしたら、あの流れに棲む小さなアマゴたちはどうなってしまうのか…

 そんないくつもの自問自答に耐えかねて、イブニングを待たずに午後の渓を後にした


*today's tackle
rod:FREESTONE 8'00 #3 (Shimano)
reel:SK-CL (Caps)

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by taros_magazine | 2006-09-29 21:25 | fly fishing diary


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