この10日間ほど、行こうと思えばいつでも釣りに行ける準備はできていた
 
 本流までカバーできる長めの#3、藪沢でも活躍できる#2の短めのロッド…
 でもその2本は、それぞれリーダー、ティペット、そしてフライまでもが装着された状態で、玄関の片隅に立て掛けられたままになっていた

 車のトランクにはウェーディング・ギア一式も積載されていたし、地元の渓で1,2時間竿を出すだけなら十分な時間もあったはずだった
 
c0041105_2025413.jpg でも、そのロッドを車に積み込むことはなかった
 雨に打たれて、汗だくになって、蜘蛛の巣にまみれて谷をさまよわなくても、バイクで走ったり、家族でドライブに出かけるだけで十分楽しかったから…

 この日曜日も、朝食後いつものように子供が散らかしたオモチャを片づけていた
 玄関に置かれたおもちゃ箱を取り出そうとしたとき、ふと2本のロッドが目に止まった
 
 その瞬間、交通事故に遭ったわけでもないのに、そのロッドとともに歩いた川の景色や魚の美しさがフラッシュバックした
 それは、広葉樹の森の中を流れる細く澄んだ流れの中で、小さなイワナと過ごした夏の日の記憶だった
  
 ふと我に返ると、子供のおもちゃをおもちゃ箱にしまい込んだ
 そして、残されていた”大人のおもちゃ”を車に積み込んだ

c0041105_2054448.jpg 下流部の大増水とも、中流部の濁りとも、その谷は無縁だった

 植林が原生林に変わりはじめるこの付近の森の中では、頭上を覆う木々の枝葉と川岸を覆う苔のおかげで、雨音はおろか雨に打たれることさえほとんどなかった
 
 そして、あのとき記憶によみがえったイワナたちも健在だった
 
 どれも10センチから15センチほどのかわいいイワナたち…しかし、その姿はどれも”無垢”という言葉がふさわしい美しさと気高さを兼ね備えていた

 そんなイワナたちに甘えて、ふとこれまで使う機会のなかったフライを試そうと思った

 見よう見まねで巻いたフォーム・ビートル…
c0041105_2055027.jpg 何故だかわからないけど、今日ここで使わなければ二度とフライボックスから取り出すことがないような気がしたからだ

 落ち込み下の小さなプールの真ん中に落ちた、毒々しくバランスの悪いフライが淵尻まで流れたとき、茶色い大きな口が水面から飛び出した

 瞬間、軽く合わせた細いロッドがそのままゴリゴリと絞られた時、初めて何が起きたのかを把握した
 『でかい!まさか…こんなところに…!』

 しかし数秒後、フライは水中から力無く戻ってきた
 
 今年も何度も繰り返してきたシーン…ただ、この日は少し違った

 全然、”惜し”くなんかなかった
 ただただ、この森のイワナが健在だったことが嬉しかった


 *today's tackle  
rod:Factory Haru 8'07 #3 , George Selvin Marryat 8'00#2 (SMITH)
reel:Halcyone baby trout (KIRAKU) , Marryat CMR 3/4 (SMITH)

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by taros_magazine | 2006-07-24 21:08 | fly fishing diary


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