Performance (motogp 06' Round-7 カタルニアGP)

 そこにいたのは、紛れもなくあの”手がつけられないほど強い”ロッシだった
 
c0041105_0325917.jpg 前戦イタリアでは、ただ勝利の余韻に浸っていた彼が、このカタルニアでは何度も派手なウィリーやバーンナウトを繰り返し、さらにはコース上で記念撮影に応じるほど無邪気に喜ぶ姿…
 それは勝ち続け、タイトルを獲得してはいるものの、どこか”ルーチンワーク”としてパフォーマンスを見せていたこの数年の”王者・バレンティーノ”の姿ではなかった

 それは上田昇や坂田和人といった老獪なテクニシャンを弄ぶように勝利を重ねていた”恐るべきルーキー”だった125cc時代や、原田哲也やオリビエ・ジャックを力でねじ伏せ”底知れぬ速さ”を見せていた250cc時代、そして500ccからmotogpへと時代が変る中で、その才能をいかんなく発揮し、誰もが認める”天才ライダー”として輝きはじめた頃のロッシそのものの姿だったのだが… 
 
 スタート直後の多重クラッシュにより赤旗中断となったとき、ピットに戻った彼はヘルメットも取らずにテレビ中継を映し出しているモニターに向かい、何が起こったのかを食い入るように見つめていた
 何度も様々な角度からの映像がリプレイされていたそのモニターには、1コーナー先のグラベル上で、横たわったまま動こうとしないマルコ・メランドリの姿があった

c0041105_0344355.jpg コースオフィシャルやメディカルスタッフに囲まれた彼の姿に、ロッシはあの日の悪夢を思い起こしたに違いない

 2003年、鈴鹿…
 シケイン手前のアスファルトの上で、加藤大治郎は猛スピードで駆け抜けるマシンのすぐ横で、ぐったりと横たわっていた
 遅い救急車、出ない赤旗…そしてレース後の勝利者インタビュー前にスタッフから告げられた絶望的な彼の容態…

 そのとき、ロッシは両手で顔を覆いテーブルに突っ伏し、しばらくの間顔をカメラの前に向けることができなかった
 そして記念すべき開幕戦のウィナーは、テレビカメラの前で一度も笑顔を見せることなく控え室に去っていった…

c0041105_0402588.jpg あの日以降、彼の勝利後のパフォーマンスは、自らの勝利に対して喜びを爆発させている、というよりも、自分を応援してくれているファンのために”見せて”いたように思う
 
 いつも自分を映し出すカメラに気がつけば、お茶目におどけてはいたものの、ときおりふっと見せる疲れ切った表情…そんな姿が印象的な、この数年の彼のウィニング・ランだった

 しかし、そんな彼がなぜこの多重クラッシュが起きたカタルニアで、久々に歓喜のパフォーマンスを見せたのか?

 その答えを、彼自身がレース後のインタビューで語ってくれた
 「すごく心配だったけど、再スタート前にクラッシュしたライダーが皆大丈夫だと、ドクター・コスタから聞いたんだ」

 今も彼のヘルメットに貼られている”74”のステッカー…
 彼が、自らの勝利やタイトルと同じように…いや、それより遥かに強く願うこと…
 そんな彼が、”心からのパフォーマンス”を見せることができるレースを、これからも…
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by taros_magazine | 2006-06-26 23:59 | motorcycle diary


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