やり残したコト (motogp 06' Round-6 イタリアGP)
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 1990年10月。鈴鹿サーキットに姿を見せたアイルトン・セナは、氷のように冷たく、そして固い意思を秘めているのがハッキリとわかるほど、その全身から張り詰めた雰囲気を漂わせていた

 予選で前年に失格裁定を受ける原因となった因縁の相手、アラン・プロストと壮絶なタイムバトルを演じ、そしてポールを獲得した後、レースウィーク中沈黙を守ってきた彼の”想い”が爆発した

 『去年も勝っていたのは自分だ。タイトルも僕のものだったハズだ』
 
 そして決勝レースを前にこう言い切ったという
 『絶対にラインは譲らない。どんな結果になろうとも…』

c0041105_12295.jpg かくして、2年連続の両者接触…そしてセナは2年越しのタイトルを”奪還”した
 
 『このムジェロに、バレンティーノ・ロッシがどんな表情で現われるのか…』
 このイタリアGPの前、それを考えると、少なからず不吉な予感がしていた

 なぜなら、昨シーズン終盤から不運に見舞われ続けてきた彼が、前戦でのリタイヤ直後に見せたこれまでにない沈痛な表情…
 
 その後のホームタウンGPでの”勝利”というものに対し、彼が”手段を選ばない走り”をするのではないか…と思ったからだ
 
 もし、ロッシの瞳にあのときのセナのような”氷の意思”が見えたら、このレースはおろか、今後のmotoGPの存在すら危うくなるのではないかとさえ思っていた

c0041105_124413.jpg しかし彼は見事なまでにリフレッシュされていた

 そしてその大きな力となったのが、これまで彼に巨大なプレッシャーをかけてきただろう地元のティフォーシたちだったのは間違いない

 このイタリアGPに詰めかけたファンは、これまでのようにロッシの華麗な走りに酔い、そして騒ぐ、という雰囲気とは明らかに違っていた
 
 スタンドで、そしてパドックでロッシに送られる拍手や声援は、日本で言うならサッカーや野球のスタジアムのものではなく、むしろ苦悶の表情を浮かべて走り続ける駅伝の選手に対する声援に近いものに感じた

 もしかしたら、ロッシは勝てない自分に対して、イタリアのファンは怒っている、と思っていたのかもしれない

c0041105_13347.jpg しかし、ランキング8位でイタリアに”帰ってきた”彼に対して送られた暖かい声援…
 それは、彼が失いかけていた”誇り”、そして天性の”明るさ”を取り戻すのに充分な大きさだった  

 『まだmotoGPでやり残したコトがある』
 
 この数ヶ月、さまざまな憶測が乱れ飛んだ自らの今後について、このイタリアでヤマハとの契約延長を発表した彼は、そう言い切ってレースに臨み、そして自ら”ベストレース”と言うほどの感動的な勝利を地元で飾った
 
 チェッカー後、いつものように取り巻きたちと派手なパフォーマンスをする前に、満員のスタンドのファンの前で、大声援をその全身で味わうかのように仁王立ちしていたロッシ

 そのとき、彼がバイクを止めたコースサイドのフェンスにあった『6』の文字… 

 そう、まずは6年連続の最高峰のタイトル獲得こそが、やるべきコトだと彼が言っているように見えた
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by taros_magazine | 2006-06-07 00:55 | motorcycle diary


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