表情
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 『あ…、まただ…』

 日の出と同時に川に入った直後から、何度も何度もフライには良型のアマゴがヒットし続けたが、そのすべてがことごとフライを自力で外して流れに帰っていってしまった
 
 今シーズン初めてやってきた下伊那の里川…
 そこでは何とも言えない郷愁を感じさせる風景と、美しく力強いアマゴが今年も出迎えてくれたのだが、ネットに入ることだけは頑なに拒んでいるようだった

c0041105_14333498.jpg 日もだいぶ高くなり、川沿いの道路を通勤の車が行き交うようになった頃、ようやく1匹のアマゴがネットに納まってくれた
 
 それは、明らかにこれまでバラしてきたものよりも一回り小さなアマゴだった
 
 しかし、何か怒っているようにすら見えたそのアマゴは、写真撮影を終えるか終えないかのうちに早々と川へ戻っていってしまった

 ほぼ1年ぶりにやってきた下伊那の大好きな渓に立ちながらも、何か心の中に小さなスキマが開いてしまったかのように、いつしか心から楽しむことができなくなっていた

 川から上がり、狭い道路を歩いていると向こうから村営バスがやってきた
 めいっぱい左側のガードレールまで寄って歩いていた自分に対し、バスは右側に余裕を残しながら、自分のスレスレを速度を上げて通過していった

c0041105_1433477.jpg 去っていくバスをにらみつけていると、朝には清々しく見えた里の風景も、すぐ横を流れる川も、遠くで農作業をしている住民も、すべてが敵意を持っているようにすら見えた

 とても虚しい気持ちでこの里を後にした

 そして下伊那のいくつかの支流で様子見程度に竿を出した後、最後に寄ったのは”いつもの渓”だった

 下伊那の豊かな自然の中を流れる渓に比べると、随分貧相に見える里川だけど、その水の中に足を踏み入れた瞬間、さっきまでの不愉快な気分は霧散していった

 いつも1発でアマゴが飛び出す瀬、丹念に攻めれば必ず良型が出てくる深み、そしていつもライズしているプール…
 それらすべてのポイントから、この川らしい色白のアマゴが姿を見せ、そしてランディングネットまで来てくれた

 まるで、この川も、そこに棲むアマゴたちも、すべてが自分を歓迎してくれているかのようだった

c0041105_1434351.jpg 『ありがとう…』
 魚に向かって言うのは、照れくさくてあまり好きじゃないけれど、この日はそっとつぶやいてみた

 この時、アマゴが微笑んだように見えたのは、錯覚なんかじゃないと思いたい


*today's tackle
rod:Euflex XF 8'03 #3 (TIEMCO)
 Freestone FS 8'00#3 (Shimano)
reel:CMR 3/4 (Marryat)
 SK-CL (Caps)

 
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by taros_magazine | 2006-06-03 14:44 | fly fishing diary


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