4500rpm
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 その日はすごく”乗れて”いた
 いや、実際にはオートバイの操縦技術なんて日ごとにそう変わるものじゃない。きっと”乗れている”と感じてしまっただけだろうけど…

 最近はバイクといえば小排気量のオフロードバイクか、通勤用のビジネスバイクにばかり乗っていたため、久しぶりに乗るリッターバイクのパワーとロードタイヤのグリップに、いつしか陶酔していた

 走り出して最初の交差点を曲がったとき、『今日はイケる』とわかった
 アクセルコントロール、ブレーキング、ライン取り…すべてが気持ち良く調和し、いつもなら4500回転あたりで心地よく感じるマシンの振動と排気音も、この日は6000回転を越えてからのそれが最高に気持ちよく響いた

 やがて県境を越え、小さな丘を越える農道にさしかかった

 20歳の頃には毎週…いや、週に何回も走っていたワインディング。登り始めの長いストレートで前を走っていたトラックを抜くと、目の前にはクリアなコースだけがあった

 右、左、グレーチングの排水路、右、左…
 あの頃…目の前にいる車なら、2輪4輪を問わずつっかかっていった頃のように、激しいリズムを刻んでカーブを抜けていく

 そして短いストレートにさしかかったとき、一瞬アドレナリンの分泌が止まった
 『おかしい…調子が良すぎる…』

 20年前なら躊躇せず、そのまま突っ込んでいっただろうその先にある右、左、左の3連…
 でも、こんな日に限って”良くない事”があるということを、この20年で何度も経験した

 雨がパラつき始めたサーキットで、自己ベストを狙ってマシンを大破させたこと…
 最新のマシンに乗る友人をチギった直後にコースアウトしてガードレールに突っ込んだこと…
 そして何より、スカイラインの丸いテールランプを追いかけて、この先の右で友人の車を廃車にしてしまったこと…

 結局、そのカーブのはるか手前でアクセルを戻し、ゆっくりと右から左へと切り返そうとしたとき、視界に飛び込んできたのは道路幅いっぱいに撒かれた大量の赤土だった…

 その後、下り坂のストレートをゆっくりゆっくりと走っていった
 さっきまでの高揚感はなくなってしまったけれど、なぜかとても満ち足りた気分だった

 タコメーターは4500回転を示していた


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by taros_magazine | 2006-03-06 23:45 | motorcycle diary


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