余韻
 
 いつものように、県境の『道の駅』で夜が明けるまでの時間を過ごす
 
 こんなふうにここで過ごすのも今年はこれが最後。次にここにやってくるのは、冷えたコーラではなく、暖かいコーヒーが美味しい季節になっているのだろう
 午前5時。ついこの間まで渓に立ち、#16のフライがドリフトするのがはっきり見えるほど明るかったこの時間も、今は頭上に輝くオリオン座を見ている…

c0041105_223342.jpg いつのまにか、根羽での“最後の釣り”に過剰なほど感傷的になっていた 
 
 白み始めた稜線も、そこかしこから聞こえる鳥のさえずりも、国道の路肩に散らばったコンビニのレジ袋までもが、そんな気持ちを増幅させた
 空はどんどん明るくなっていくのに、自分の心はウェットなまま、ただキャスティングを繰り返していた

 ふと、目の前に足跡があるのに気づいた

 この2~3日雨は降っていない。日曜日か、それとも昨日の夕方か、もしかしたら一足違いで…
 でも、そんなことさえ差して気にならないほど、何とも言えない澱んだ気持ちで釣り上がっていった

 やがて流れが2筋にわかれているポイントにやってきた
 いつも両方を釣ろうと欲張り、せっかくフライを見に来たアマゴに何度も見切られた左の筋。そのやや手前の、小さいながらも反応の良いアマゴが何匹も付いているはずの右の筋…

 足跡は右側を攻めたことがはっきりとわかるように残っていた

 この日の”LOW”な自分でも『何も同じポイントを攻めることはない』ぐらいの判断能力はまだ残っていた 
c0041105_22332989.jpg  そして、左側の筋からはこの川ではグッドサイズと呼べる26センチのアマゴが飛び出した…

 それでも、まだテンションは上がらなかった

 まるで見えない先行者のすぐ後ろを付いているかのように、足跡は相変わらず目の前にあった
 やがて別荘地の横を通り過ぎ、川幅が1メートル程度になっても足跡は続いていた

 ふと、この”先行者”と同じようにポイントを攻めてみようと思った
 
 粘土質の岸にくっきりと残っている足跡…自分の足よりちょっとだけ小さいその足跡の上に立ち、おそらくその足跡の主がしたように、目の前の細い流れの流心を狙ってみた

c0041105_22335092.jpg 小さな飛沫とともにフライは消えた
 ロッドに伝わってくる感触から、それがこの谷に棲むイワナのものであることがすぐにわかった

 そのイワナをリリースし、次のポイントへ歩き出そうとすると、もうその先に足跡はなかった
 自分も、根羽での今年最後の釣りをそこで終えることにした

 朝から抱え込んでいた”感傷”は、いつのまにか心地よい”余韻”に変わっていた


*today's tackle
rod:EUFLEX XF 8'03 #3 , EUFLEX XFP 7'09 #2 (TIEMCO)
reel:CMR 3/4 (Marryat) , CFO1 (ORVIS)

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by taros_magazine | 2005-09-14 22:44 | fly fishing diary


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