先行者
 
 梅雨明けの頃から、夜明けと同時に川に入ることができるよう、深夜に家を出ることが多くなった

 もちろん、その目的はお気に入りのポイントに一番乗りするためであり、そうすることが望む釣果を得るための最も効率的な方法だと思うからである

 しかし深夜便にはいろんな”リスク”がつきまとう 

 午前3時過ぎ…今日もまだ眠っているアタマに渇を入れるかのように炭酸飲料を一気飲みし、半開きの眼に無理やりコンタクトレンズを張り付ける
 道では明らかに酔っぱらい運転と思われるような車が蛇行してるときもあるし、「こんな時間になんで…」と思わずにはいられない老人の徘徊も見かける 
 里ではネコ、山ではタヌキなんかが道に飛び出してこないことを祈りながらアクセルを踏み続け、ときおり道の真ん中で座り込んでるカエルと目が合ったりするときは『避けてやるから動くなよ…』と念じる…けど、何回かはタイヤから嫌な感触が伝わってきてしまう…

c0041105_11461774.jpg でも、最大のリスクは「こんなに苦労して来たのに、先行者が…」ということだ

 そもそもこれを嫌って早起きをしているのである。着いた現地に四輪駆動車なんかが止まっていた日には、何の落ち度もないその車の持ち主に対して”コノヤロー…”と怒りを覚えてしまう
 ただでさえ残り少ないシーズン、それも台風通過後の週末。きっとどこも多くの釣り人で賑わうことは想像に難くない…
 
 ということで、この日も当然”深夜便”で根羽川へやってきた
 
 幸いにしてこの日も、動物をはねることも先行者に遭遇することもなく目的の川で釣りを楽しむことができた
 盛期に比べれば、サイズも数も到底及ばない釣果ではあったけれど、先行者の足跡を見ることもなく、「あー、のんびりと釣りができてよかったなぁ…」と気持ち良く川から上がることができた

 そのまま、途中で枝分かれしているもうひとつの支流に入ろうと考え、川沿いの道を歩いていると、下流から釣り人が釣り上がってくるのが見えた

c0041105_11462982.jpg 当然、向こうからもコッチの姿は見えているだろう。「先行してやったぜ!」という”ザマーミロ”的な気持ちと、「あー、きっと恨まれてるんだろうなぁ…」という”後ろめたい”気持ちが入り交じる

 そんな何とも言えない微妙な”間”にとまどっていると、その釣り師はいったん釣りをやめてこっちに近づいてきた
 
 「どうでしたかー?」

 そのエサ釣り用の竿を脇に抱えた釣り師は、わざわざ岸際まで来て、笑顔で話しかけてきた
 
 きっと彼も深夜便で先行者がいないことを祈りながらこの川にやってきたのだろう
 もしかしたら僕の姿を見るまでは先行者はいないと思っていたのかもしれない
 それでも、明らかな先行者である僕に対し、釣りを中断してまで笑顔で話かけてくれた彼…

 「何匹か釣れましたよ。小さいのばっかりですけど!」
 自分も精一杯の笑顔で、短い会話を楽しんだあと、小さく会釈して別れた

 その後、しばらく歩いたところに彼のものと思われる四輪駆動車があり、そのすぐ先に入ろうと思っていたもうひとつの支流がある
 
 僕はそのまま支流の入り口を通り過ぎ、自分の車に向かった
 
 この日、もうひとつ支流に入る資格があるのは、自分ではなく”本当に釣りを楽しんでいる”彼だと思ったから…
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*today's tackle
rod:PETERS ROAD "PAYTO" 8'00 #2 (mamiya OP)
reel:halcyone babytrout (KIRAKU)

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by taros_magazine | 2005-09-11 11:50 | fly fishing diary


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