el fantasma (MotooGP 2013 Round-2 America's GP)
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 今まで何人ものライダーが”彼”の再来と言われた

 ある者は若さで、またある者は破壊的なライディングで、そしてある者はその奇行で…

 しかし、彼らはいつのまにか”普通”のライダーになり、やがてグランプリを去っていった

 そして誰もが『”彼”の再来などいない』と思い知らされるのも束の間、ほとぼりが冷める頃になるとまたぞろ”彼の亡霊”に悩まされるのだ… 


 フレディ・スペンサーの走りを初めて(テレビで)見たのは、もう30年も前のことだ

 1983年、あのケニーVSフレディの世界グランプリ終了直後の全日本最終戦、鈴鹿

 ゲスト参加のスペンサーは、予選でコースレコードを出した平忠彦よりも3秒も速い圧倒的なタイムを叩き出すと、決勝でも別次元の速さで当然のように優勝をさらってしまった

 どこにでもいそうな童顔の青年と、コースで見せる驚異的なライディング…
 その凄まじいギャップは、まさに努力や経験というものとは無縁の”天才”の成せる業そのものに思えた


c0041105_232019100.jpg このオースチンの予選でのマルク・マルケスのライディングを見た瞬間、アナウンサーが記録のことに触れるまでもなくあの日のスペンサーのことを思い出した

 もちろん、前乗りで上体を起こし気味に乗るスペンサーと全身をリーンインさせるフォームのマルケスは一見すると正反対のように見える

 しかし、その深々とバンクさせたマシンと路面との間に自らの身体を挟むようにしてコーナーリングしていく姿が、ヒザを路面に激しく擦りつけてバンク角とトラクションをコントロールするようなスペンサーのフォームとどこかダブって見えたからだ

 決勝レースでもマルケスのマシンはお世辞にもベストセッティングとは思えない激しい挙動を最初から最後まで見せていた

c0041105_2320535.jpg それでも彼は、アップダウンのきついコースを、不安定なマシンのコントロールを楽しんでいるかのように縦横無尽に駆け抜け、そして勝利して見せた

 それは、あの日テレビ画面で見たスペンサーの姿…まるで氷の上をスリックタイヤで疾走しているかのようなマシンコントロールを見せていた…そのものに見えた


 そしてまた繰り返す無意味な問答… 

 はたして、彼はスペンサーの再来なのか?それとも彼もまた”亡霊”なのか?

 ただ、マルケスにはいままでの”彼の亡霊たち”と決定的に違う点があった

 それは、この30年間誰もできなかったスペンサーの記録をひとつ消し去ってみせたことだ

 そして、彼がもうひとつのスペンサーの記録を消し去る時…

 その時こそ、未だグランプリを彷徨う肥大化したスペンサーの記憶…”スペンサーの亡霊”…をも消し去る瞬間なのかもしれない

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by taros_magazine | 2013-05-05 16:32 | motorcycle diary


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